仲立営業(仲立人の義務と報酬)とは
なかだちえいぎょう
仲立営業とは、他人間の商行為の媒介をすることを業とする仲立人の営業のことで、仲立人は契約の当事者にならず、媒介した契約は当事者間に成立します(商法543条)。仲立人は見本の保管義務と結約書の交付義務を負い、その手続を終えた後でなければ報酬を請求できず、報酬は当事者双方が等しい割合で負担します(商法545条・546条・550条)。
ホテルと旅行者の間に入って宿泊契約をまとめる業者のように、他人同士の商売の契約を取り持つことを業とするのが仲立人です。仲立人は契約の当事者にはならず、契約は取り持たれた二人の間に成立します。見本を預かったら取引が終わるまで保管し、契約がまとまったら結約書を作って渡し、その後でなければ報酬を請求できません。報酬は両方の当事者が半分ずつ負担します。一方の名前を相手に隠したときは、自分が履行する責任を負います。
仲立人は他人間の商行為の媒介を業とする者で、契約は当事者間に成立し、一方からの委託だけでも仲立人に当たります
商法543条は、仲立人とは他人間の商行為の媒介をすることを業とする者をいうと定めます。媒介は契約の成立に尽力する事実行為で、仲立人は自ら契約当事者にならず、代理人でもありません。したがって、媒介された売買契約は委託者と相手方の間に成立します。「CがAから委託を受けた仲立人である場合には,売買契約はC・B間に成立する」という肢は誤りです。「他人間の商行為」は当事者の一方にとって商行為であれば足り、ホテル会社の宿泊契約は営業的商行為(502条7号)なので、商人でない旅行者のために宿泊契約の媒介を業とする者は仲立人です。当事者双方から委託を受けることは要件ではなく、一方からの委託だけでも仲立人に当たります。「Aが宿泊契約の相手方であるホテル会社からその媒介の委託を受けていないときは,Aは,仲立人に該当しない」という肢は誤りです。商行為でない行為の媒介を業とする者は民事仲立人で、仲立ちに関する行為を営業とする商人(502条11号)ではありますが、商法の仲立営業の規定は当然には適用されません。判例は、宅地建物取引業者は商事仲立人ではなく民事仲立人であるとしています(最判昭和44年6月26日)。この判例は、買主の委託だけで媒介をした業者は、委託をしておらず業者に売主のためにする意思もなかった売主に報酬を請求できないともしているので、「宅地建物取引業者は,買主からの委託によって土地の売買の媒介をした場合であって,売主からの委託によるものでなく,かつ,売主のためにする意思をもってしたものでないときでも,当該売主に対し,相当な報酬を請求することができる」という肢は誤りです。「商行為以外の行為の媒介をすることを業とする民事仲立人は,当事者間で行為が成立したときは,当事者の氏名又は商号,行為の年月日及びその要領を記載した書面を各当事者に交付しなければならない」という肢は、結約書の交付義務(546条)が民事仲立人には適用されないので誤りです。
仲立人は別段の意思表示や慣習が無い限り当事者のために支払を受けることができず、見本を受け取ったときは行為が完了するまで保管します
544条は、仲立人はその媒介により成立させた行為について当事者のために支払その他の給付を受けることができないと定め、当事者の別段の意思表示又は別段の慣習があるときだけ例外です。仲立人は当事者でも代理人でもないので、代金を受け取る権限が当然にはありません。「仲立人は,別段の意思表示や慣習がない限り,その媒介している行為について当事者のために支払を受けることができない」という肢は正しいです。545条は、仲立人がその媒介に係る行為について見本を受け取ったときは、その行為が完了するまでこれを保管しなければならないと定めます。見本売買で後日品質が争われたときの証拠を中立の仲立人に残させる趣旨です。「仲立人は、その媒介に係る商行為について見本を受け取ったときであっても、当該見本を保管する義務を負わない」という肢と、「仲立人は,その媒介する行為に関して見本を受け取った場合でも,それを保管する義務を負わない」という肢はいずれも誤りです。
報酬は結約書の交付の手続を終えた後でなければ請求できず、当事者双方が等しい割合で負担し、一方の氏名を相手方に示さなかった仲立人は自ら履行する責任を負います
媒介に係る行為が当事者間に成立したときは、仲立人は遅滞なく、各当事者の氏名又は名称、行為の年月日とその要領を記載した結約書を作成して署名し、各当事者に交付しなければなりません(546条1項)。仲立人はこの546条の手続を終了した後でなければ報酬を請求できません(550条1項)。「仲立人は,その媒介する行為が当事者間に成立する前に,報酬を請求することができる」という肢は誤りです。報酬は当事者双方が等しい割合で負担します(550条2項)。委託していない相手方も半分を負担するので、「仲立人の報酬は,最初に行為の媒介を依頼した者が負担する」という肢は誤りで、「仲立人の報酬は、当事者双方が等しい割合で負担する」という肢は正しいです。当事者が氏名又は名称を相手方に示してはならない旨を命じたときは、仲立人は結約書と帳簿の謄本にその氏名等を記載できません(548条)。その場合、仲立人は当事者の一方の氏名又は名称をその相手方に示さなかったときは、その相手方に対して自ら履行をする責任を負います(549条)。相手方が誰に請求すればよいか分からなくなるからです。「仲立人は、当事者の一方の氏名又は名称をその相手方に示さなかったときは、当該相手方に対して自ら履行する責任を負う」という肢は正しいです。
仲立営業(商法543条〜550条)
- 543条 定義: 他人間の商行為の媒介を業とする者。契約は当事者間に成立。一方からの委託だけでもよい。民事仲立人には商法の仲立営業の規定は当然には適用されない
- 544条: 別段の意思表示・慣習が無ければ当事者のために支払を受けられない
- 545条: 見本は行為が完了するまで保管
- 546条: 成立後遅滞なく結約書を作成・署名して各当事者に交付。547条: 帳簿に記載し当事者は謄本を請求できる
- 548条・549条: 当事者の命令で氏名を示さなかったときは、仲立人が相手方に自ら履行する責任を負う
- 550条: 報酬は546条の手続の終了後。当事者双方が等しい割合で負担
商法543条
この章において「仲立人」とは、他人間の商行為の媒介をすることを業とする者をいう。
商法550条
仲立人は、第五百四十六条の手続を終了した後でなければ、報酬を請求することができない。2 仲立人の報酬は、当事者双方が等しい割合で負担する。
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