問屋営業(準問屋・運送取扱人を含む)とは
といやえいぎょう
問屋営業とは、自己の名をもって他人のために物品の販売又は買入れをすることを業とする問屋の営業のことで、売買契約は問屋と相手方の間に成立し、問屋が自ら権利を取得し義務を負います(商法551条・552条)。自己の名で販売・買入れ以外の行為を取り次ぐ者は準問屋、自己の名で物品運送の取次ぎをする者は運送取扱人で、問屋の規定が準用されます(商法558条・559条)。
証券会社に株を買ってほしいと頼むと、証券会社は自分の名前で取引所の相手と売買し、買った株をあなたに渡します。このように、自分の名で、他人のために物を売ったり買ったりすることを業とするのが問屋です。契約の当事者は問屋なので、相手方に対して権利を持ち義務を負うのは問屋ですが、損得は委託者に帰属します。売買以外の行為を自分の名で取り次ぐ者は準問屋、物品運送の取次ぎを業とする者は運送取扱人で、問屋の規定が準用されます。
問屋は自己の名で他人のために物品の販売・買入れをする者で、売買契約は問屋と相手方の間に成立し、問屋が自ら権利を取得し義務を負います
商法551条は、問屋とは自己の名をもって他人のために物品の販売又は買入れをすることを業とする者をいうと定めます。自己の名で法律行為をする点で、本人の名で代理する代理商や、当事者にならない仲立人と区別されます。問屋は他人のためにした販売又は買入れにより、相手方に対して自ら権利を取得し、義務を負います(552条1項)。契約は問屋と相手方の間に成立し、委託者と相手方の間には成立しません。「CがAから販売委託を受けた問屋である場合には,売買契約はA・B間に成立する」という肢は誤りです。問屋と委託者の内部関係には委任及び代理に関する規定が準用されます(552条2項)。問屋は、相手方が債務を履行しないときは、別段の意思表示又は慣習が無い限り自ら履行する責任を負い(553条)、委託者の指定した金額より低く売り又は高く買った場合でも、差額を自ら負担すれば委託者に対して効力を生じます(554条)。
問屋は販売・買入れをしたら遅滞なく委託者に通知し、取引所の相場がある物品なら自ら買主・売主になれ、留置権は代理商と同じですが競業の制限はありません
557条は、代理商の通知義務(27条)と留置権(31条)を問屋に準用します。問屋は委託者のために販売又は買入れをしたときは、委託者の請求を待たずに遅滞なく通知を発しなければなりません。「問屋は、委託者のために物品の販売又は買入れをしたときは、遅滞なく、委託者に対し、その旨の通知を発しなければならない」という肢は正しいです。留置権は、販売又は買入れにより生じた債権が弁済期にあるときは、別段の意思表示が無い限り、弁済を受けるまで委託者のために占有する物又は有価証券を留置できるというもので、商人間の留置権と違って委託者の所有物であることや商行為によって占有したことは要りません。「問屋は、別段の意思表示がない限り、販売又は買入れにより生じた債権が弁済期にあるときは、その弁済を受けるまで、委託者のために占有する物又は有価証券を留置することができる」という肢は正しいです。これに対し、代理商の競業の禁止(28条)は準用されておらず、問屋は多数の委託者のために同種の物品を反復して売買する者なので、委託者の営業の部類に属する取引を自ら行うことは禁じられていません。「問屋は、委託者の許可を得ない限り、自己又は第三者のために、委託者の営業又は事業の部類に属する取引をすることができない」という肢は誤りです。取引所の相場がある物品の販売又は買入れの委託を受けたときは、問屋は自ら買主又は売主となることができ、代価は通知を発した時の相場で定まり、報酬も請求できます(555条)。「問屋は,取引所の相場がある物品の販売の委託を受けたときは,自ら買主となることができる」という肢は正しいです。委託者が買い入れた物品の受領を拒んだときは、売主の供託・競売の規定(524条)が準用されます(556条)。
自己の名で他人のために販売・買入れ以外の行為をする者は準問屋、自己の名で物品運送の取次ぎをする者は運送取扱人で、問屋の規定が準用されます
558条は、問屋の章の規定を、自己の名をもって他人のために販売又は買入れ以外の行為をすることを業とする者に準用します。これが準問屋で、旅行者の委託を受けて自己の名でバス会社と旅客運送契約を締結する業者がその例です。「AがBから委託を受けて自己の名でBのためにバス会社との間で旅客運送契約を締結する場合,Aは,いわゆる準問屋に該当する」という肢は正しいです。559条1項は、運送取扱人とは自己の名をもって物品運送の取次ぎをすることを業とする者をいうと定め、別段の定めが無い限り問屋の規定を準用します(同条2項)。取次ぎとは自己の名で他人の計算で法律行為をすることなので、運送取扱人自身が運送人との運送契約の当事者になります。委託者と運送会社の間で運送契約が結ばれるように宅配便をあっせんしただけの者は、自己の名で契約をしていないので運送取扱人ではありません。「Bと運送会社との間で物品運送契約が締結された場合,Aは,運送取扱人に該当する」という肢は誤りです。運送取扱人は運送品の受取から荷受人への引渡しまでの滅失・損傷・延着について、注意を怠らなかったことを証明しなければ責任を負い(560条)、運送品を運送人に引き渡したときに報酬を請求でき(561条)、自ら運送をすることもできます(563条)。
問屋・準問屋・運送取扱人と代理商・仲立人の比較
- 問屋(551条): 自己の名で他人のために物品の販売・買入れ。契約は問屋と相手方の間。問屋が権利義務の主体
- 準問屋(558条): 自己の名で他人のために販売・買入れ以外の行為。問屋の規定を準用
- 運送取扱人(559条): 自己の名で物品運送の取次ぎ。あっせんだけの者は当たらない。問屋の規定を準用
- 代理商(27条): 商人のために本人の名で代理又は媒介。契約は本人と相手方の間
- 仲立人(543条): 他人間の商行為の媒介。契約は当事者間
- 問屋に準用される代理商の規定: 通知義務(27条)・留置権(31条)。競業の禁止(28条)は準用されない
- 介入権(555条): 取引所の相場がある物品は自ら買主・売主になれる。履行担保責任(553条)、指値との差額負担(554条)
商法551条
この章において「問屋」とは、自己の名をもって他人のために物品の販売又は買入れをすることを業とする者をいう。
商法552条1項
問屋は、他人のためにした販売又は買入れにより、相手方に対して、自ら権利を取得し、義務を負う。
論文ではこう使う
問屋が買い入れた物品の帰属が問題になる事案、とりわけ問屋が破産した場合に委託者がその物品を取り戻せるかを論じるときは、まず552条1項により相手方との関係では問屋が権利を取得することを示し、次に問屋と委託者の内部関係には委任の規定が準用される(552条2項)ので、問屋が取得した権利は委託者の計算に属し、委託者は問屋に対して権利の移転を求められることを述べます。そのうえで、判例が、問屋の債権者との関係でも委託者を保護し、問屋が買い入れた物の所有権は問屋の破産財団に属さず委託者に帰属するとしたことに触れ、相手方との関係では問屋が当事者である(対外関係)という整理と、委託者の計算で行う(内部関係)という整理を分けて書きます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。