代理商(締約代理商・媒介代理商)とは
だいりしょう
代理商とは、商人のためにその平常の営業の部類に属する取引の代理又は媒介をする者で、その商人の使用人でないもののことです(商法27条)。本人である商人を代理して契約を締結する締約代理商と、商人と相手方の契約の成立に向けて媒介をする媒介代理商があり、いずれも商人から独立した商人で、代理した契約も媒介した契約も本人と相手方の間に成立します。
メーカーの代わりに地方で注文を取ってくる販売代理店が代理商です。従業員ではなく自分の店を構えた独立の商人で、特定のメーカーと長く付き合い、その商品の契約を代理したり、客を紹介して契約の成立を手伝ったりします。従業員でないぶん自分の商売は自由ですが、同じメーカーの商品を自分で売って横取りすることは許可が要ります。注文を取ったらすぐメーカーに知らせ、メーカーが報酬を払わないときは、預かっている商品を手元に留めておけます。長い付き合いを前提にした関係なので、やめるときは2か月前に予告します。
代理商は商人から独立した商人で商業使用人ではなく、商人でない者のために媒介する者は代理商に当たりません
代理商とは、商人のためにその平常の営業の部類に属する取引の代理又は媒介をする者で、その商人の使用人でないものです(27条。会社の代理商は会社法16条)。支配人などの商業使用人が商人に従属して内部から営業を補助するのに対し、代理商は自分の営業所を持ち自己の計算で営業する独立の商人で、商人を外部から補助します。「代理商は,商業使用人の一種である」という肢は誤りです。本人である商人を代理して契約を締結する者を締約代理商、商人と相手方との契約の成立のために尽力する者を媒介代理商と呼び、どちらの場合も契約は本人と相手方の間に成立します。代理商は特定の商人のために「平常の営業の部類に属する取引」を継続的に補助する点で、不特定多数の者のために個別の取引を媒介する仲立人(543条)や、自己の名で他人の計算で売買をする問屋(551条)と区別されます。本人は商人でなければならないので、商人でない個人のために取引の媒介をする者は代理商ではありません。「AがBから委託を受けてBの希望に添うレンタカー契約の締結を媒介する場合,Aは,Bの代理商に該当する」という肢は、Bが商人ではないので誤りです。
代理商は取引の代理・媒介をしたときは請求が無くても遅滞なく通知を発し、許可が要るのは競業取引と同種事業の会社の役員就任で、自ら営業することは禁じられません
代理商は、取引の代理又は媒介をしたときは、遅滞なく、商人に対してその旨の通知を発しなければなりません(27条)。民法の受任者の報告義務は委任者の請求があったときに生じますが、商人は代理商の活動の結果を直ちに知って履行の準備をする必要があるので、請求を待たない通知義務としたものです。「代理商は、商人のために取引の代理又は媒介をしたときは、遅滞なく、その商人に対して、その旨の通知を発しなければならない」という肢は正しく、「代理商は,取引の代理をした場合においては,商人の請求があるときに限り,遅滞なく,その旨の通知を発しなければならない」という肢は誤りです。代理商は、商人の許可を受けなければ、自己又は第三者のためにその商人の営業の部類に属する取引をすること、その商人の営業と同種の事業を行う会社の取締役・執行役・業務執行社員となることができません(28条1項)。違反して競業取引をしたときは、代理商又は第三者が得た利益の額が商人の損害額と推定されます(同条2項)。支配人の営業避止義務(23条)と違って、代理商はもともと独立の商人なので、自ら営業を行うこと一般や他の商人の使用人になることは禁じられていません。「代理商は,商人の許可を受けなければ,自ら営業を行うことができない」という肢は誤りです。
物品販売の代理商は売買に関する通知を受ける権限を持ちますが、一切の裁判外の行為をする権限はありません
物品の販売又はその媒介の委託を受けた代理商は、買主からの目的物の契約不適合の通知(526条2項)その他売買に関する通知を受ける権限を有します(29条)。媒介代理商には本来代理権が無く、締約代理商の代理権も契約の締結に限られることが多いので、買主が代理商に通知しても商人に届かないという不都合を避けるため、通知の受領権限を法定したものです。「物品の販売又はその媒介の委託を受けた代理商は,売買契約成立後,当該売買契約の目的物に瑕疵がある旨の買主からの通知を受ける権限を有する」という肢は正しく、「物品の販売又はその媒介の委託を受けた代理商は、売買に関する通知を受ける権限を有しない」という肢は誤りです。これは通知の受領に限った権限で、支配人や表見支配人のような一切の裁判外の行為をする権限を代理商に与えるものではありません。「商人から物品の販売又はその媒介の委託を受けた代理商は、委託を受けた事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する」という肢は誤りです。代理商の代理権の範囲は代理商契約で定まります。
代理商契約は期間を定めなかったときは2か月前の予告で解除でき、やむを得ない事由があればいつでも解除でき、代理商の留置権は商人の所有物でも取引で占有した物でもない物に及びます
商人と代理商は、契約の期間を定めなかったときは、2か月前までに予告してその契約を解除することができます(30条1項)。代理商契約は継続的な関係なので、民法の委任のようにいつでも解除できるとはせず、相手方に準備の期間を与えたものです。「代理商は,契約の期間を定めなかったときは,いつでも,その代理商契約を解除することができる」という肢は誤りです。ただし、やむを得ない事由があるときは、期間の定めの有無にかかわらず、商人も代理商もいつでも契約を解除することができます(同条2項)。「代理商は、やむを得ない事由があるときは、いつでも、当該代理商が商人のためにその平常の営業の部類に属する取引の代理又は媒介をする契約を解除することができる」という肢は正しいです。代理商は、取引の代理又は媒介をしたことによって生じた債権(報酬・立替金など)の弁済期が到来しているときは、その弁済を受けるまで、商人のために占有する物又は有価証券を留置することができます(31条本文。当事者の別段の意思表示で排除できます)。民法の留置権と違ってその債権がその物に関して生じたことを要せず、商人間の留置権(521条)と違って債務者である商人の所有物であることも、商人との商行為によって占有した物であることも要しません。「代理商は,取引の代理をしたことによって生じた債権の弁済期が到来しているときは,当事者が別段の意思表示をしていない限り,その弁済を受けるまでは,当該取引によって占有するに至った物以外の物であっても,商人のために当該代理商が占有する物を留置することができる」という肢は正しく、「代理商の留置権の目的物は,個人商人の所有する物又は有価証券であることを要する」という肢は誤りです。
代理商の規律(商法27条〜31条・会社法16条〜20条)
- 定義(27条): 商人のために平常の営業の部類に属する取引の代理(締約代理商)又は媒介(媒介代理商)をする独立の商人。使用人ではない。本人は商人に限る
- 通知義務(27条): 代理・媒介をしたら請求を待たず遅滞なく通知
- 競業の禁止(28条): 許可なく営業の部類に属する取引・同種事業の会社の役員就任は不可。自ら営業することは自由。無許可の競業取引は利益額=損害額の推定
- 通知を受ける権限(29条): 物品販売(媒介)の代理商は売買に関する通知の受領権限。一切の裁判外の行為の権限ではない
- 解除(30条): 期間の定めなし→2か月前の予告。やむを得ない事由→いつでも
- 留置権(31条): 代理・媒介で生じた債権の弁済期到来で、商人のために占有する物・有価証券を留置。牽連性・商人の所有・商行為による占有は不要。別段の意思表示で排除可
- 比較: 仲立人(543条)は不特定の他人間の商行為を媒介、問屋(551条)は自己の名で他人の計算で売買
商法27条
代理商(商人のためにその平常の営業の部類に属する取引の代理又は媒介をする者で、その商人の使用人でないものをいう。以下この章において同じ。)は、取引の代理又は媒介をしたときは、遅滞なく、商人に対して、その旨の通知を発しなければならない。
商法31条
代理商は、取引の代理又は媒介をしたことによって生じた債権の弁済期が到来しているときは、その弁済を受けるまでは、商人のために当該代理商が占有する物又は有価証券を留置することができる。ただし、当事者が別段の意思表示をしたときは、この限りでない。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。