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商号の譲渡とは

しょうごうのじょうと

商法 商法総則

商号の譲渡とは、商人がその商号を他人に移転することで、営業とともにする場合又は営業を廃止する場合に限って認められ(商法15条1項)、譲渡の効力は当事者の合意で生じますが、登記をしなければ第三者に対抗することができません(同条2項)。

長年続いた老舗の屋号には、それだけで客を呼ぶ力があります。だから屋号は売り買いの対象になりますが、屋号だけを切り離して売ると、客は前と同じ店だと思って別の営業主と取引することになります。そこで商法は、商号を譲渡できる場面を、営業ごと譲る場合と、自分は営業をやめる場合の2つに限りました。どちらも同じ屋号を名乗る営業主が二人並ばないからです。譲渡そのものは当事者の合意で成立しますが、誰が今の持ち主かを外から分かるように、第三者に主張するには登記が要ります。

老舗の和菓子店の店先の場面。先生が店主役(札「譲渡人 営業を廃止」)で、看板「老舗 梅月堂」を外して若い男性(札「譲受人」)に手渡している。足元に契約書「商号の譲渡」。店の前の黒板「商法15条1項 商号を譲渡できるのは ①営業とともに ②営

商号を譲渡できるのは、営業とともにする場合と営業を廃止する場合の2つです

商人の商号は、営業とともにする場合又は営業を廃止する場合に限り、譲渡することができます(15条1項)。商号は営業の同一性を表示する機能を持つので、営業から切り離して商号だけが流通すると、取引の相手方が営業主体を誤認するおそれがあるからです。営業とともに譲渡すれば営業も商号も譲受人に移り、営業を廃止して譲渡すれば譲渡人はもうその商号で営業しないので、いずれも同じ商号を使う営業主が併存しません。「商人は,その営業を廃止するときは,その商号を譲渡することができる」という肢は正しく、「商人は,営業とともにする場合でなければ,商号を譲渡することができない」という肢と、「商号は,営業とともにする場合には譲渡することができるが,営業を廃止する場合には譲渡することができない」という肢はいずれも、2つの場合のうち片方を落としている点で誤りです。小商人も商号の譲渡はできますが、15条2項の登記に関する規定は小商人には適用されません(7条)。

譲渡の効力は当事者間の契約で生じ、登記は第三者への対抗要件で、善意・悪意を問わず登記が無ければ対抗できません

商号の譲渡は、譲渡人と譲受人の合意だけで効力を生じます。ただし、15条1項の規定による商号の譲渡は、登記をしなければ第三者に対抗することができません(同条2項)。「商号は一定の場合に譲渡することができ,その場合における譲渡の効力は当事者間の契約により生ずるが,当該譲渡を第三者に対抗するには,登記が必要である」という肢と、「登記した商号の譲渡は,その登記をしなければ,第三者に対抗することができない」という肢はいずれも正しいです。この規定は、商業登記の一般的な効力(9条1項)が「善意の第三者」と定めているのと違って、単に「第三者」と定めており、第三者の善意・悪意を問いません。したがって、登記が無ければ、譲渡の事実を知っている悪意の第三者に対しても対抗できません。「商号の譲渡は,その登記をしなくとも,悪意の第三者に対抗することができる」という肢は誤りです。また、営業とともに商号を譲渡した場合でも、営業を廃止して譲渡した場合でも、登記が対抗要件であることに変わりはありません。「商号の譲渡は、営業とともにする場合には、登記をしなくても、第三者に対抗することができる」という肢は誤りです。同じ商号を二重に譲り受けた者どうしの優劣も、登記の先後で決まります。

法務局の窓口の場面。先生が登記官役(札「法務局」)でカウンターに座り、向かいに若い男性(札「譲受人」)が申請書「商号の譲渡の登記」を差し出す。窓口の横に別の男性(札「第三者(悪意)」)が腕を組んで立ち、その横に札「登記がなければ悪意の第三者

営業とともに商号を譲り受けた譲受人には、商号続用による責任の規律が別に働きます

営業とともに商号を譲り受けて商号を引き続き使用する譲受人は、譲渡人の営業によって生じた債務について弁済する責任を負い(17条1項)、譲渡人の債務者が譲受人に善意・無重過失でした弁済は有効になります(同条4項)。商号を続用しない譲受人も、譲渡人の債務を引き受ける旨の広告をしたときは債権者からの請求を受けます(18条)。これらは商号の譲渡の対抗要件とは別の、営業譲渡に伴う債権者・債務者の保護の規律で、別の語で扱います。商号の譲渡と区別される場面として、自己の商号を使用して営業を行うことを他人に許諾する名板貸し(14条)があります。名板貸しでは商号は譲渡されず、許諾した商人が商人として残ったまま他人に使わせるので、誤認して取引した相手方に対する連帯責任が問題になります。

商号の譲渡の規律

  • 譲渡できる場合(15条1項): 営業とともにする場合、営業を廃止する場合。どちらか一方に限る肢は誤り
  • 効力発生: 当事者の合意(契約)で生じる
  • 対抗要件(15条2項): 登記。第三者の善意・悪意を問わない。営業とともにする譲渡でも同じ
  • 小商人: 譲渡はできるが15条2項は適用なし(7条)
  • 関連: 商号続用の譲受人の責任(17条)、債務引受けの広告(18条)、名板貸し(14条)は別の規律

商法15条1項

商人の商号は、営業とともにする場合又は営業を廃止する場合に限り、譲渡することができる。

商法15条2項

前項の規定による商号の譲渡は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

試験ではこう問われる

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