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用語集 / 商法 / 営業譲渡・事業譲渡と商号の続用

営業譲渡・事業譲渡と商号の続用(譲受人の責任・債務引受けの広告)とは

えいぎょうじょうとじぎょうじょうととしょうごうのぞくよう

商法 商法総則

商号の続用とは、営業・事業を譲り受けた者が譲渡人の商号を引き続き使用することで、この場合には譲受人も譲渡人の営業によって生じた債務を弁済する責任を負い(商法17条1項・会社法22条1項)、譲渡人の債務者が譲受人にした弁済は善意・無重過失なら有効になります(同条4項)。商号を続用しない譲受人も、譲渡人の債務を引き受ける旨の広告をしたときは債権者からの請求を受けます(商法18条・会社法23条)。

長年「梅月堂」の看板で商売をしてきた和菓子店が、営業ごと別の人に売られたとします。看板がそのままなら、仕入先は店主が代わったことに気づかず、気づいても借金ごと引き継いだのだろうと思うのが普通です。そこで商法は、看板を引き継いだ新しい店主にも、前の店主の営業上の借金を払わせることにしました。新店主がそれを避けたいなら、譲り受けてすぐに「前の債務は負わない」と登記するか、債権者に通知しなければなりません。看板を変えても、「前の店の債務は引き受けます」と広告すれば、同じように請求を受けます。

和菓子店の店先の場面。看板「梅月堂」はそのままで、店の中に新しい店主の先生(札「譲受人 商号を続用」)が立つ。店先に男性の仕入先(札「譲渡人の債権者」)が請求書「前の店主への売掛金」を差し出している。店の脇に前の店主の男性(札「譲渡人」)が

譲渡人の商号を続用する譲受人は譲渡人の営業上の債務を弁済する責任を負い、その責任は譲り受けた財産を限度としません

営業を譲り受けた商人が譲渡人の商号を引き続き使用する場合には、譲受人も、譲渡人の営業によって生じた債務を弁済する責任を負います(17条1項)。会社については会社法22条1項が同じ規律を置き、会社と個人商人の間の譲渡にも適用されます(会社法24条)。判例は、この規定の趣旨を、商号が続用されると債権者は営業譲渡があったことを知り得ず、知り得たとしても譲受人により債務が引き受けられたと信じるのが通常なので、そのような債権者の信頼を保護する点にあるとしています(最判昭和47年3月2日)。「譲受人が譲渡人の商号を引き続き使用する場合には,その譲受人も,譲渡人の営業によって生じた債務を弁済する責任を負うとの商法の規定の趣旨は,当該債務の債権者において,同一の営業主体による営業が継続しているものと信じたり,営業主体の変更があったけれども譲受人により譲渡人の債務の引受けがされたと信じたりすることが通常の事態と考えられるため,そのような信頼を保護することにある」という肢は正しいです。譲受人の責任は譲渡人の債務と並ぶ不真正連帯の責任で、条文はその範囲を限定していないので、譲り受けた財産の価額を限度とするものではありません。「営業を譲り受けた商人が譲渡人の商号を引き続き使用する場合には,その譲受人も,譲渡人の営業によって生じた債務について,譲り受けた財産を限度として,弁済責任を負う」という肢と、「Bは,甲商店の商号を引き続き使用するときは,譲り受けた財産の価額を限度として,C債務を弁済する責任を負う」という肢はいずれも誤りです。承継した財産の価額を限度とするのは、詐害営業譲渡の残存債権者の請求(18条の2)です。譲受人がこの責任を免れるには、営業を譲渡した後、遅滞なく、譲受人が譲渡人の債務を弁済する責任を負わない旨を登記するか、譲受人及び譲渡人から第三者に対してその旨の通知をすることが必要です(17条2項。通知の場合は通知を受けた第三者についてだけ免れます)。「営業譲渡がされ,譲受人が譲渡人の商号を引き続き使用する場合には,譲渡人の当該営業によって生じた債務を引き受けなかった譲受人も,営業譲渡後遅滞なく譲渡人の債務を弁済する責任を負わない旨を登記しない限り,当該債務を弁済する責任を免れることができない」という肢は、通知による免責を落としている点で誤りです。譲受人が責任を負う場合、譲渡人の責任は、営業を譲渡した日後2年以内に請求又は請求の予告をしない債権者に対しては2年を経過した時に消滅します(同条3項)。

判例は、「新」の字句を加え会社の種類も異なる商号は続用に当たらないとし、営業の現物出資・ゴルフクラブの名称・新設分割にも同じ規律を及ぼしています

どのような場合に商号の「続用」といえるかについて、判例は、「有限会社米安商店」から営業を譲り受けた会社が「合資会社新米安商店」の商号を使用した事案で、会社の種類を異にし、かつ「新」の字句を付加したものは、新会社が旧会社の債務を承継しないことを示す字句であって商号の続用に当たらないとしました(最判昭和38年3月1日)。「「霞が関商事合同会社」から事業を譲り受けた会社が「新霞が関商事株式会社」の商号を使用するときは,譲受人が譲渡人の商号を引き続き使用する場合に当たらず,譲受人は,譲渡人の事業によって生じた債務を弁済する責任を負わない」という肢は正しいです。他方で、判例はこの規律を営業譲渡以外の場面にも広げています。営業が会社設立の際の現物出資の目的とされ、設立された会社が出資者の商号を続用した場合にも、債権者の信頼を保護する必要は同じなので、規定が類推適用されます(最判昭和47年3月2日)。「営業の現物出資を受けて設立された会社が現物出資をした商人の商号を引き続き使用する場合には,当該会社は,当該商人の営業によって生じた債務を弁済する責任を負う」という肢は正しいです。預託金会員制のゴルフクラブの名称がゴルフ場の営業主体を表示するものとして用いられている場合に、ゴルフ場の営業を譲り受けた者がそのゴルフクラブの名称を続用しているときは、譲渡人の商号そのものを続用していなくても、会員が営業主体の交替を知らず又は債務が引き受けられたと信じるのが通常なので、譲受人は特段の事情のない限り預託金返還義務を負うとされました(最判平成16年2月20日)。「ゴルフクラブの名称がゴルフ場の事業主体を表示するものとして用いられている場合において,ゴルフ場の事業が譲渡され,譲渡人が用いていたゴルフクラブの名称を譲受人が引き続き使用しているときであっても,譲渡人の商号を譲受人が引き続き使用していないときは,譲受人は,譲渡人の事業によって生じた債務を弁済する責任を負わない」という肢と、「判例の趣旨によれば、預託金会員制のゴルフクラブが設けられているゴルフ場の営業又は事業の譲受人が、当該ゴルフクラブの名称を続用しており、当該ゴルフクラブの名称が当該ゴルフ場の営業又は事業の主体を表示するものである場合であっても、当該譲受人は、譲渡人の商号を続用していない限り、当該ゴルフクラブの会員が当該譲渡人に交付した預託金の返還義務を負わない」という肢はいずれも誤りです。さらに、会社分割によってゴルフ場の事業が設立会社に承継され、設立会社がゴルフクラブの名称を続用した場合にも、事業譲渡と同様に会社法22条1項が類推適用されます(最判平成20年6月10日)。「新設分割により新設分割会社の事業を承継した新設分割設立会社は,新設分割会社の商号を引き続き使用する場合であっても,新設分割会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負わない」という肢は誤りです。

ゴルフ場のクラブハウス前の場面。入口の看板「○○カントリークラブ」はそのまま。先生がゴルフ場の新しい運営会社の社長役(札「譲受会社 クラブ名称を続用」)で立ち、男性会員(札「会員 預託金返還請求」)が預託金証書を差し出す。横の立て看板「会社

商号を続用しない譲受人も債務を引き受ける旨の広告をすれば請求を受け、2年で消滅するのは譲渡人の責任です

譲受人が譲渡人の商号を引き続き使用しない場合でも、譲渡人の営業によって生じた債務を引き受ける旨の広告をしたときは、譲渡人の債権者はその譲受人に対して弁済の請求をすることができます(18条1項)。自ら債務を引き受けると公に示した者は、その外観どおりの責任を負うべきだからです。この請求は、債権者が現にその広告を見たかどうかを問いません。「営業を譲り受けた商人(以下「譲受人」という。)が営業を譲渡した商人(以下「譲渡人」という。)の商号を引き続き使用しない場合であっても、譲渡人の営業によって生じた債務を引き受ける旨の広告をしたときは、当該債務の引受けがされたと信じた譲渡人の債権者は、当該広告を見たか否かにかかわらず、譲受人に対して弁済の請求をすることができる」という肢は正しいです。譲受人がこの責任を負う場合、譲渡人の責任は、広告があった日後2年以内に請求又は請求の予告をしない債権者に対しては2年を経過した時に消滅しますが(同条2項)、譲受人の責任に期間の制限はありません。「Bが甲商店の商号を引き続き使用しない場合において,Aの営業によって生じた債務を引き受ける旨の広告をしたことによりBが負担するC債務を弁済する責任は,その広告をした日から2年を経過すれば,消滅する」という肢は、2年で消滅するのが譲渡人の責任である点を取り違えており誤りです。商号続用の場合の譲渡人の責任(17条3項)も同じ構造です。

商号を続用する譲受人に対して譲渡人の債務者がした弁済は、善意でかつ重大な過失がなければ有効です

商号が続用されると、譲渡人の債務者も営業主の交替に気づかず、譲受人を債権者だと思って弁済することがあります。そこで、譲受人が譲渡人の商号を続用する場合に、譲渡人の営業によって生じた債権について譲受人にした弁済は、弁済者が善意でかつ重大な過失がないときは効力を有します(17条4項・会社法22条4項)。譲渡の対象から外された債権についても同じです。「Bが甲商店の商号を引き続き使用するときは,DがBに対してしたD債権に係る債務の弁済は,Dが善意でかつ重大な過失がないときは,その効力を有する」という肢は正しいです。弁済を受けた譲受人は、真の債権者である譲渡人に対して不当利得として返還する関係になります。

商号の続用と譲受人の責任(商法17条・18条、会社法22条・23条)

  • 要件: 営業・事業の譲受け+譲渡人の商号の続用。「新」を加え会社の種類も異なる商号は続用でない(最判昭38.3.1)
  • 類推適用: 営業の現物出資(最判昭47.3.2)、ゴルフクラブ名称の続用(最判平16.2.20)、会社分割(最判平20.6.10)
  • 効果: 譲受人も譲渡人の営業上の債務を弁済する責任。範囲の限定なし(譲り受けた財産を限度としない)
  • 免責: 譲渡後遅滞なく、責任を負わない旨の登記、又は譲受人・譲渡人からの通知(通知を受けた第三者のみ)(17条2項)
  • 譲渡人の責任: 譲渡の日後2年以内に請求・請求の予告をしない債権者に対して消滅(17条3項)
  • 債務者の弁済: 続用譲受人への弁済は善意・無重過失なら有効(17条4項)
  • 債務引受けの広告(18条): 商号を続用しなくても請求を受ける。広告を見たかは問わない。2年で消滅するのは譲渡人の責任
  • 詐害営業譲渡(18条の2): 商号続用が無くても残存債権者は承継財産の価額を限度に請求できる(別の語で扱う)

商法17条1項

営業を譲り受けた商人(以下この章において「譲受人」という。)が譲渡人の商号を引き続き使用する場合には、その譲受人も、譲渡人の営業によって生じた債務を弁済する責任を負う。

商法17条2項

前項の規定は、営業を譲渡した後、遅滞なく、譲受人が譲渡人の債務を弁済する責任を負わない旨を登記した場合には、適用しない。営業を譲渡した後、遅滞なく、譲受人及び譲渡人から第三者に対しその旨の通知をした場合において、その通知を受けた第三者についても、同様とする。

商法18条1項

譲受人が譲渡人の商号を引き続き使用しない場合においても、譲渡人の営業によって生じた債務を引き受ける旨の広告をしたときは、譲渡人の債権者は、その譲受人に対して弁済の請求をすることができる。

論文ではこう使う

論文で事業を承継した会社に譲渡会社の債務の履行を求める構成を書くときは、会社法22条1項(商法17条1項)の趣旨を、債権者が営業主体の交替を知り得ず又は債務引受けがあったと信じるのが通常であるという信頼の保護(最判昭47.3.2)に求め、そのうえで①商号そのものでなく屋号・ゴルフクラブ名称などの続用でも営業主体を表示する名称なら類推適用できること(最判平16.2.20)、②事業譲渡でなく会社分割でも類推適用できること(最判平20.6.10)、③免責の登記・通知(22条2項)の有無、を順に検討します。商号続用が認められない事案では、債務引受けの広告(23条)、詐害事業譲渡(23条の2)、法人格否認の順で代替の構成を探します。

試験ではこう問われる

「営業譲渡・事業譲渡と商号の続用」が短答式でどう出題されてきたか、ひっかけの型7件と関係する過去問の肢12本は、無料のアカウントでログインすると読めます。

読んだあとに、商法の肢別演習を

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