附属的商行為と会社の行為の商行為性とは
ふぞくてきしょうこういとかいしゃのこういのしょうこういせい
附属的商行為とは、商人がその営業のためにする行為のことで、営業資金の借入れや従業員の雇入れのように、それ自体は絶対的商行為・営業的商行為に当たらなくても商行為とされ、商人の行為は営業のためにするものと推定されます(商法503条)。会社の行為の商行為性とは、会社がその事業としてする行為と事業のためにする行為が商行為とされ(会社法5条)、会社の行為は商行為と推定されるので、争う側が事業のためにするものでないことを主張立証しなければならないという判例の規律のことです。
洋服店の店主が店の改装資金を銀行から借りる行為は、売買でも運送でもありませんが、商売を続けるための行為なので商行為として扱われます。これが附属的商行為で、商人の行為には商法の特則が広く掛かることになります。ただ、個人の商人は私生活でも金を借りるので、どちらか分からないときは営業のためにしたものと推定し、違うと言う側が証明する仕組みです。会社には私生活がありませんから、判例は会社の行為はすべて商行為と推定し、事業と無関係だと主張する側が立証するとしました。
商人がその営業のためにする行為は附属的商行為で、営業資金の借入れも商行為になります
商人がその営業のためにする行為は商行為です(503条1項)。絶対的商行為(501条)と営業的商行為(502条)が商人になるための基本的商行為であるのに対し、附属的商行為は商人であることを前提に、営業を助ける行為に商行為性を認めるものです。金銭の借入れは501条にも502条にも挙げられていませんが、個人商人が営業資金として借り入れれば営業のためにする行為として商行為になります。「個人商人がその営業のために金銭を借り入れる行為は、商行為となる」という肢は正しいです。営業所の賃借、商品運搬用の車の購入、広告の依頼なども同じです。附属的商行為になると、商人間の留置権(521条)、多数当事者の債務の連帯(511条)など商行為に関する商法の規定が適用されます。特定の営業を開始する目的でした開業準備行為も、それにより商人資格を取得するので附属的商行為になりますが、判例は、準備行為は客観的に開業準備行為と認められうるものであることを要し、単なる金銭の借入れは相手方が開業目的を知っていた場合でなければ開業準備行為とは認められないとしています(最判昭和47年2月24日)。「営業を行っていなかった個人が映画館を買い受けて経営する目的で特にそのことを説明せずに当該目的を知らない信用協同組合からその手付金相当額の金銭を借り受けた場合…10年である」という肢は、出題当時は正しい肢でしたが、旧商法522条の削除により、現行法では商行為かどうかで時効期間は変わりません(民法166条1項)。
商人の行為は営業のためにするものと推定され、従業員の雇入れも附属的商行為と推定されます
商人の行為は、その営業のためにするものと推定されます(503条2項)。個人商人の行為は、営業上のものか私生活上のものか外形から区別しにくいので、商行為であることを主張する側に営業関連性の立証を求めず、商行為でないと主張する側に営業のためでないことの立証を負わせたものです。判例は、商人が労働者と締結する労働契約について、反証のない限り商人がその営業のためにするものと推定されるとしました(最判昭和51年7月9日)。「商人が使用人を雇用することは,附属的商行為と推定される」という肢は正しいです。したがって、雇用契約から生じる賃金債権などにも、反証がなければ商行為に関する規定が及びます。
会社の行為は商行為と推定され、事業のためにするものでないことの主張立証責任は争う側が負うと判例はしています
会社がその事業としてする行為とその事業のためにする行為は商行為です(会社法5条)。会社は自己の名をもって商行為をすることを業とする者として商法上の商人に当たり(商法4条1項)、その行為は事業のためにするものと推定されます(503条2項。会社については「営業」を「事業」と読み替えます)。判例は、会社が代表者個人の債務を保証した事案で、会社の行為は商行為と推定され、これを争う者において、その行為が当該会社の事業のためにするものでないこと、すなわち会社の事業と無関係であることの主張立証責任を負うとしました(最判平成20年2月22日)。「判例の趣旨によれば,会社の行為は,商行為と推定され,これを争う者において,その行為がその会社の事業のためにするものでないことの主張立証責任を負う」という肢と、「判例の趣旨によれば,会社の行為は商行為と推定され,これを争う者において当該行為が当該会社の事業のためにするものでないことの主張立証責任を負う」という肢はいずれも正しいです。この推定が働く結果、会社が当事者の貸付けや保証には、反証のない限り商行為に関する規定が適用されます。出題当時はこの推定の帰結として商事法定利率(旧商法514条)や商事消滅時効(旧522条)の適用が問題になりましたが、これらは平成29年民法改正に伴い削除され、現在は利率は民法404条、時効は民法166条1項によります。それでも、商人間の留置権(521条)や債務の連帯(511条)、商事売買の特則などの適用には商行為性の認定が今も必要です。
附属的商行為と推定の規律
- 附属的商行為(503条1項): 商人が営業のためにする行為。営業資金の借入れ・営業所の賃借・従業員の雇入れ・開業準備行為など
- 推定(503条2項): 商人の行為は営業のためにするものと推定。商行為でないと主張する側が立証
- 労働契約(最判昭51.7.9): 商人が労働者と締結する労働契約は反証のない限り営業のためにするものと推定
- 会社の行為(会社法5条・最判平20.2.22): 事業としてする行為・事業のためにする行為は商行為。会社の行為は商行為と推定され、争う側が事業と無関係であることを主張立証
- 開業準備行為(最判昭47.2.24): 客観的に開業準備行為と認められうるものに限る。単なる借入れは相手方が開業目的を知っていた場合だけ
- 適用される特則: 多数当事者の債務の連帯(511条)、商人間の留置権(521条)、商事売買(524条〜528条)など。商事法定利率・商事消滅時効は削除済み
商法503条1項
商人がその営業のためにする行為は、商行為とする。
商法503条2項
商人の行為は、その営業のためにするものと推定する。
会社法5条
会社(外国会社を含む。次条第一項、第八条及び第九条において同じ。)がその事業としてする行為及びその事業のためにする行為は、商行為とする。
論文ではこう使う
論文で会社がした貸付けや保証に商法の規定(511条の連帯、521条の留置権など)を適用するときは、会社法5条により会社の事業としてする行為・事業のためにする行為は商行為であり、会社は商人として商法503条2項の推定を受けるので、会社の行為は商行為と推定され、事業と無関係であることは争う側が主張立証しなければならない(最判平20.2.22)、と書いてから、反証の有無を事案で検討します。個人商人なら503条2項の推定を直接使い、開業前の行為なら商人資格の取得時期(最判昭47.2.24)から論じます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。