司法試験・予備試験AIブートラボ 司法試験AIブートラボ
用語集 / 商法 / 設立中の会社と開業準備行為

設立中の会社と開業準備行為とは

せつりつちゅうのかいしゃとかいぎょうじゅんびこうい

商法 設立

設立中の会社とは、定款が作成されてから設立の登記によって会社が成立するまでの間にある、会社になる前の団体のことです。発起人が設立中の会社の機関としてその権限の範囲内でした行為の効果は、成立後の会社に帰属すると考えられています。開業準備行為とは、会社の成立後すぐに事業を始められるように、成立前に店舗を借りたり原材料を仕入れたりする行為で、判例は発起人の権限に含まれないとしています。

会社は登記をして初めて生まれますが、その前にも発起人は定款を作り、出資を集め、登記の準備をしています。この途中の段階の団体を設立中の会社と呼び、成立後の会社と実質的に同じものだと考えると、発起人が設立のためにした行為の効果が、登記の瞬間に当然に会社のものになると説明できます。問題は、発起人がどこまでのことをしてよいかです。会社ができたらすぐ営業したいからと、成立前に店を借りたり仕入れをしたりする開業準備行為は、会社の財産を危うくするので、判例は発起人の権限の外だとしています。

工事中の店舗の前の場面。先生が発起人役(札「発起人」)で立ち、背後に骨組みだけの建物と足場があり、建物に札「設立中の会社」、建物の屋上に取り付け途中の看板「株式会社(成立は登記の時)」。先生の手元に書類が2枚、1枚は「定款」「株式の引受けの

発起人が設立中の会社の機関として権限の範囲内でした行為の効果は、成立後の会社に帰属します

発起人が定款を作成すると(26条1項)、会社になる前の団体として設立中の会社が生まれ、設立の登記によって会社が成立します(49条)。設立中の会社と成立後の会社は実質的に同一のものなので、発起人が設立中の会社の執行機関としてその権限の範囲内でした行為の効果は、成立後の会社に当然に帰属します。判例は、株主募集の広告のような設立事務の執行に必要な行為から生じた権利義務は、定款に記載された設立費用の限度で、その性質上当然に成立後の会社に移転し、発起人はその法律関係から脱退するとしています(大判昭和2年7月4日)。発起人が複数いるときは、発起人の間に会社の設立を目的とする組合(発起人組合)があり、業務執行組合員の定めがなければ組合員の過半数が対外的に組合を代理する権限を持ちます(最判昭和35年12月9日)。会社が成立しなかったときは、発起人が連帯して設立に関してした行為の責任を負い、費用を負担します(56条)。

教室の場面。先生が教壇に立ち、黒板に左から右へ3つの箱を矢印でつないだ流れを描く。箱は「定款の作成(26条)」「設立中の会社」「設立の登記で成立(49条)」。2つ目と3つ目の箱を深紅の等号「=」でつなぎ、深紅の文字「実質的に同一」。2つ目の

発起人の権限は会社の設立に必要な行為に限られ、開業準備行為の効果は当然には成立後の会社に帰属しません

発起人の権限がどこまで及ぶかについては、定款の作成や株式の引受け・払込みの受領など会社の設立そのものに必要な行為に限るとする見解、設立のために法律上・経済上必要な行為(事務所の賃借など)を含むとする見解、さらに開業準備行為まで含むとする見解が対立しています。判例は、発起人が成立前に会社の営業のために商品の販売に関する契約を結んだ事案で、その契約は会社の設立に関する行為とはいえないから、その効果が成立後の会社に当然に帰属するいわれはないとし、発起人の権限は会社を成立させるために必要な行為に限られ、開業準備行為はこれに当たらないとした原審の判断を是認しました(最判昭和33年10月24日)。開業準備行為を広く認めると、発起人が会社の財産的基礎を危うくする契約を成立前に結べてしまうからです。会社法が開業準備行為のうち財産引受けだけを取り上げ、定款への記載と検査役の調査という厳格な要件の下で認めている(28条2号)のは、その裏返しです。この要件を欠く財産引受けは無効で、成立後の会社が追認しても有効になりません。

  • 設立に必要な行為(定款の作成、株式の引受けの受付、創立総会の招集など)発起人の権限内。効果は成立後の会社に帰属する
  • 設立費用に当たる行為(事務所の賃借、募集の広告など)定款に記載された額の限度で成立後の会社に帰属する(28条4号、大判昭和2年7月4日)
  • 開業準備行為(店舗の賃借、原材料の仕入れなど)発起人の権限外。効果は当然には会社に帰属しない(最判昭和33年10月24日)。財産引受けだけが28条2号の要件の下で認められる

権限の外の行為をした発起人は、民法117条の類推適用により相手方に履行の責任を負います

開業準備行為の効果が会社に帰属しないとすると、発起人を信じて契約した相手方が宙に浮きます。判例は、いまだ存在しない会社の代表者として契約をした発起人は、無権代理人として契約した者に類似するとして、無権代理人の責任を定める民法117条の類推適用を認め、発起人自身に契約の履行の責任を負わせました(最判昭和33年10月24日)。民法117条は本来、実在する他人の代理人として契約した場合の規定ですが、相手方の保護の必要は同じだからです。成立後の会社がその契約を望むのであれば、会社が改めて契約を結ぶことになります。

会社法49条

株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。

会社法56条

株式会社が成立しなかったときは、発起人は、連帯して、株式会社の設立に関してした行為についてその責任を負い、株式会社の設立に関して支出した費用を負担する。

論文ではこう使う

論文では、発起人が成立前にした契約の効果が成立後の会社に帰属するかを論じます。「定款の作成により設立中の会社が成立し、設立中の会社と成立後の会社は実質的に同一であるから、発起人が設立中の会社の機関としてその権限の範囲内でした行為の効果は、成立後の会社に当然に帰属する。そこで発起人の権限の範囲が問題となる」と問題提起し、「発起人の権限は会社の設立に必要な行為に限られ、開業準備行為は含まれない。会社法が財産引受けだけを定款の記載等の厳格な要件の下で認めている(28条2号)のは、開業準備行為が原則として許されないことを前提とするものである(最判昭和33年10月24日参照)」と規範を示します。あてはめでは、問題の契約が設立に必要な行為か開業準備行為かを内容から判断し、権限外であれば会社に効果は帰属せず、相手方は民法117条の類推適用により発起人に履行を求められると結論づけます。財産引受けの要件を満たすかどうかの検討を忘れないようにします。

試験ではこう問われる

「設立中の会社と開業準備行為」が短答式でどう出題されてきたか、ひっかけの型6件は、無料のアカウントでログインすると読めます。

読んだあとに、商法の肢別演習を

この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。

関連する用語

会社法総論

法人格否認の法理