設立時取締役(選任・解任・設立手続の調査)とは
せつりつじとりしまりやく
設立時取締役とは、株式会社の設立に際して取締役となる者です(会社法38条1項)。発起設立では出資の履行が完了した後に発起人の議決権の過半数で選任し、募集設立では創立総会の決議で選任します。選任後遅滞なく設立の手続が法令・定款に違反していないかを調査し、取締役会設置会社では設立時代表取締役を選定します。
会社ができたその日から取締役がいないと困るので、会社が成立する前に、成立したら取締役になる人を決めておきます。この人が設立時取締役です。発起人が出資を終えた後に、発起人の多数決で選びます。発起人自身がなってもよいし、発起人でない人を選んでもかまいません。設立時取締役の大事な仕事は、発起人が進めてきた設立の手続が法律や定款のとおりかを点検することです。発起人の仲間内で見過ごされた不正や、現物出資の値段のつけ方のおかしさを、成立前に見つける役目です。
設立時取締役は発起人でなくてもなれますが、法人はなれません
会社法は設立時取締役を発起人の中から選ばなければならないとはしていません。「設立時取締役は,発起人であることを要しない」という肢は正しく、「発起人でない者も,設立時取締役になることができる」という肢も正しいです。設立時取締役になれないのは、成立後の会社の取締役になることができない者です(39条4項)。法人は取締役になれないので(331条1項1号)、設立時取締役にもなれません。これに対して、発起人の資格には制限がないので法人も発起人になれます。「法人は,発起人及び設立時取締役のいずれにもなることができない」という肢は、発起人の部分が誤りです。
発起設立では、出資の履行が完了した後に発起人の議決権の過半数で選任し、定款で定めた者は履行の完了時に選任されたものとみなされます
発起設立では、発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく、設立時取締役を選任しなければなりません(38条1項)。選任は発起人の議決権の過半数で決定し、発起人は出資の履行をした設立時発行株式1株につき1個の議決権を持ちます(40条1項・2項)。出資の履行の前には、誰がどれだけの議決権を持つかが定まらないからです。「発起人による出資の履行に先立って、発起人の過半数の賛成により設立時役員等を選任しなければならない」という肢は、順序と決定方法の両方で誤りです。定款で設立時取締役として定められた者は、出資の履行が完了した時に設立時取締役に選任されたものとみなされます(38条4項)。定款の認証を受けた時ではありません。「定款で設立時取締役として定められた者は,その定款について公証人の認証を受けた時に,設立時取締役に選任されたものとみなされる」という肢は誤りです。募集設立では、設立時取締役の選任は創立総会の決議によります(88条1項)。
発起人は、定款で定めてみなし選任された者も含めて、会社の成立の時までは設立時取締役を解任できます
発起人は、株式会社の成立の時までの間、その選任した設立時役員等を解任することができます。38条4項によって選任されたものとみなされた者も含みます(42条)。解任は発起人の議決権の過半数で決定します(43条1項。設立時監査役などは3分の2以上)。「公証人の認証を受けた定款で設立時取締役として定められ,設立時取締役に選任されたものとみなされたものは,発起人の全員の同意によっても解任することができない」という肢は誤りです。「発起設立において,発起人は,公証人の認証を受けた定款で定められて選任されたものとみなされた設立時取締役を会社の成立の時よりも前に解任することができない」という肢も誤りです。
設立時取締役は、選任後遅滞なく設立の手続を調査し、違反があれば発起人に通知し、設立時代表取締役を選定します
設立時取締役(監査役設置会社では設立時監査役も)は、その選任後遅滞なく、検査役の調査を経ない現物出資財産等の価額の相当性、専門家の証明の相当性、出資の履行が完了していること、そのほか設立の手続が法令又は定款に違反していないことを調査しなければなりません(46条1項)。調査の結果、法令・定款に違反し、又は不当な事項があると認めるときは、発起人にその旨を通知します(同条2項)。「設立時取締役は,その選任後遅滞なく,設立の手続が法令又は定款に違反していないことを調査しなければならない」という肢は正しく、「法令又は定款に違反する事項があると認めるときは,発起人にその旨を通知しなければならない」という肢も正しいです。募集設立では、調査の結果を創立総会に報告します(93条)。検査役の調査が必要な現物出資財産は、設立時取締役の価額相当性の調査の対象ではありません。「現物出資をした有価証券について検査役による調査が必要な場合でも、設立時取締役は、当該有価証券について定款に記載又は記録された価額の相当性を調査しなければならない」という肢は誤りです。設立しようとする会社が取締役会設置会社(指名委員会等設置会社を除く)であるときは、設立時取締役が、その中から設立時代表取締役を選定しなければならず、選定と解職は設立時取締役の過半数で決定します(47条1項・3項)。発起人が選定するのではありません。「発起人は、設立時代表取締役を選定しなければならない」という肢は誤りです。
- 資格発起人でなくてもよい。法人は不可(39条4項・331条1項1号)
- 発起設立の選任出資の履行の完了後、発起人の議決権の過半数(38条1項・40条1項)。定款で定めた者は履行完了時にみなし選任(38条4項)
- 募集設立の選任創立総会の決議(88条1項)
- 解任成立の時まで発起人の議決権の過半数で解任できる。みなし選任の者も含む(42条・43条1項)
- 職務設立手続の調査と発起人への通知(46条)、設立時代表取締役の選定(47条)
会社法38条1項
発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく、設立時取締役(株式会社の設立に際して取締役となる者をいう。以下同じ。)を選任しなければならない。
会社法38条4項
定款で設立時取締役(中略)として定められた者は、出資の履行が完了した時に、それぞれ設立時取締役(中略)に選任されたものとみなす。
会社法42条
発起人は、株式会社の成立の時までの間、その選任した設立時役員等(第三十八条第四項の規定により設立時役員等に選任されたものとみなされたものを含む。)を解任することができる。
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