発起人(資格・員数・株式の引受け)とは
ほっきにん
発起人とは、株式会社を設立するために定款を作成し、これに署名又は記名押印した者です(会社法26条1項)。発起人は1人でも法人でもよく、各発起人は設立に際して設立時発行株式を1株以上引き受けなければなりません(25条2項)。
友人3人でカフェの会社を作ろうと決めたとします。誰かが定款を書き、公証人の認証を受け、お金を払い込み、役員を決めて、法務局で登記をします。この一連の仕事を引き受けて、定款に名前を書いて署名した人が発起人です。発起人は会社が生まれる前の段階で会社の財産の土台を作る人なので、自分も必ず株を引き受けて出資の危険を負わなければならず、設立がうまくいかなかったときには重い責任を負います。だからこそ、1人でもよく法人でもなれる一方で、1株も引き受けない発起人は認められていません。
発起人は定款に署名又は記名押印した者で、1人でもよく、法人もなることができます
株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければなりません(26条1項)。会社法は発起人の資格と員数に制限を設けていないので、定款を作成して署名又は記名押印した者であれば、自然人でも法人でも発起人になれます。「A株式会社を設立するに当たり、B株式会社は、その発起人となることができる」という肢は正しいです。「法人は,発起人及び設立時取締役のいずれにもなることができない」という肢は誤りです。法人は設立時取締役にはなれませんが(39条4項・331条1項1号)、発起人にはなれます。員数も1人で足り、発起人が1人の会社(一人会社)も設立できます。「定款の作成時に発起人が2人以上いなければ、株式会社を設立することはできない」という肢は誤りです。発起人が複数いる場合に発起人総代を選んでも、定款には全員の署名又は記名押印が要ります。「そのうちの1人を発起人総代に選定したときは,定款には,当該発起人総代のみの署名又は記名押印があれば足りる」という肢は誤りです。発起人の氏名又は名称及び住所は定款の絶対的記載事項です(27条5号)。
各発起人は、設立時取締役になるかどうかを問わず、設立時発行株式を1株以上引き受けなければなりません
各発起人は、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を1株以上引き受けなければなりません(25条2項)。発起設立でも募集設立でも同じです。発起人は設立中の会社の運営主体として設立事務を進め、出資された財産の価額が不足したときの責任(52条)や任務懈怠の責任(53条)を負うので、自らも株主として出資の危険を負担させることで、設立を慎重にさせ、他の引受人や会社債権者を守ろうとしているからです。「発起人は、設立時取締役になるか否かにかかわらず、設立時発行株式を1株以上引き受けなければならない」という肢は正しいです。「発起人が2名以上ある場合,そのうちの発起人1名が設立時発行株式の全てを引き受け,他の発起人は,設立時発行株式を引き受けないことができる」という肢は誤りです。募集設立は、発起人が設立時発行株式を引き受けるほかに、設立時発行株式を引き受ける者を募集する方法なので(25条1項2号)、発起人が自ら引き受けずに募集だけをすることはできません。「募集設立の場合,発起人は,自ら株式を引き受けてはならず,株主の募集を行って申込人に株式を割り当てなければならない」という肢は誤りです。
発起人が出資を履行しなければ失権し、発起人の1人が株主となる権利を全部失えば設立の無効事由になります
発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、出資に係る金銭の全額を払い込み、又は金銭以外の財産の全部を給付しなければなりません(34条1項)。出資の履行をしない発起人がいるときは、他の発起人が期日を定めて、その期日の2週間前までに、期日までに履行するよう通知し、それでも履行しなければ、その発起人は設立時発行株式の株主となる権利を失います(36条)。発起人の1人が株主となる権利を全部失うと、その発起人は1株も引き受けていないことになり、25条2項に反するので、他の発起人の出資で定款に記載した出資される財産の価額又はその最低額を満たしていても、設立の無効事由になります。「他の発起人がその引き受けた設立時発行株式について出資の履行をした財産の価額が定款に記載された設立に際して出資される財産の価額又はその最低額を満たしているときは,株式会社の設立の無効事由とはならない」という肢は誤りです。
株式会社が発起人となって事業の全部を現物出資するときは、出資する会社の側で株主総会の特別決議が要ります
金銭以外の財産による出資(現物出資)ができるのは発起人だけです(28条1号・34条1項。設立時募集株式の引受人は金銭の払込みしかできません。63条1項)。株式会社が発起人となり、自分の事業の全部を現物出資して新しい会社を作ることがあります。出資する会社から見ると、事業という組織的な財産を丸ごと新会社に移転し、対価として設立時発行株式を受け取るのですから、事業の全部の譲渡(467条1項1号)に当たります。対価が金銭でなく株式であることは、事業が移転するという実質を変えません。したがって、現物出資をする会社では、効力発生日の前日までに株主総会の特別決議による承認が要ります(467条1項1号・309条2項11号)。「株式会社が発起人となってその事業の全部を現物出資する場合には,現物出資をする会社において株主総会の特別決議を経なければならない」という肢は正しいです。発起人が複数いるときは、発起人の間に会社の設立を目的とする組合(発起人組合)が成立し、判例は、業務執行組合員の定めがない場合には組合員の過半数が対外的に組合を代理する権限を有するとしています(最判昭和35年12月9日)。
会社法26条1項
株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。
会社法25条2項
各発起人は、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を一株以上引き受けなければならない。
論文ではこう使う
論文では、発起人が会社の成立前にした契約の効果が成立後の会社に帰属するかを問われたときの前提として使います。「発起人とは定款に署名又は記名押印した者であり(会社法26条1項)、Aは原始定款に署名しているから発起人に当たる。発起人は設立中の会社の執行機関として設立に必要な行為をする権限を有するが、その範囲が問題となる」と書き起こし、設立中の会社と開業準備行為の論点につなぎます。発起人かどうかで迷わせる問題では、定款への署名の有無を事実から拾い、署名していない者は募集の広告に氏名と設立を賛助する旨を記載することを承諾した場合に限り発起人とみなされる(103条4項)ことを添えます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。