絶対的商行為と営業的商行為とは
ぜったいてきしょうこういとえいぎょうてきしょうこうい
絶対的商行為とは、利益を得て譲渡する意思でする動産・不動産・有価証券の有償取得やその譲渡、取引所の取引、手形その他の商業証券に関する行為のように、行為の性質から誰が1回しても商行為となる行為のことです(商法501条)。営業的商行為とは、賃貸する意思でする物の取得・賃貸、製造・加工、運送、作業・労務の請負、出版・印刷・撮影、場屋の取引、両替その他の銀行取引、保険、寄託の引受け、仲立ち・取次ぎ、商行為の代理の引受け、信託の引受けのように、営業としてするときに商行為となる行為のことです(商法502条)。
会社員が安く仕入れた中古車を高く売ろうと1台買う行為は、商売人でなくても、その1回だけで商法上の商行為です。転売目的の売買は、それ自体が商売の核心だからで、こうした行為を絶対的商行為と呼びます。一方、運送や印刷や宿泊は、1回だけなら友人の引越しを手伝うのと同じで商行為ではなく、繰り返し営業として行って初めて商行為になります。これが営業的商行為です。どちらかを業として行う者が商人になるので、ある行為がこの表に載っているかどうかが、商人かどうか、商法の特則が掛かるかどうかの出発点になります。
絶対的商行為は行為の性質から商行為とされ、商人でない者が1回だけしても商行為になります
商法501条は、利益を得て譲渡する意思をもってする動産・不動産・有価証券の有償取得又はその取得したものの譲渡を目的とする行為(1号。投機購買とその実行行為)、他人から取得する動産・有価証券の供給契約とその履行のためにする有償取得を目的とする行為(2号。投機売却とその実行行為)、取引所においてする取引(3号)、手形その他の商業証券に関する行為(4号)を商行為としています。これらは営利性が行為自体に表れているので、誰が行っても、営業としなくても、1回だけでも商行為です。「利益を得て譲渡する意思をもって動産を有償取得する行為は,商人が行う場合に限り,商行為となる」という肢は誤りです。1号の行為は、取得の時点で利益を得て譲渡する意思があることが要件で、取得した後に転売を思い立った場合は当たりません。目的物に不動産が含まれるのは1号だけで、2号の投機売却の目的物は動産・有価証券に限られます。
営業的商行為は502条に列挙された行為を営業としてするときに商行為になり、婚姻の媒介も営業としてすれば仲立ちに関する行為に当たります
商法502条は、営業としてするときに商行為となる行為を13種類列挙しています。賃貸する意思でする動産・不動産の有償取得・賃借とその賃貸(1号。レンタル業)、他人のためにする製造・加工(2号)、電気・ガスの供給(3号)、運送(4号)、作業・労務の請負(5号)、出版・印刷・撮影(6号)、客の来集を目的とする場屋における取引(7号。ホテル・飲食店・劇場)、両替その他の銀行取引(8号)、保険(9号)、寄託の引受け(10号。倉庫業)、仲立ち又は取次ぎに関する行為(11号)、商行為の代理の引受け(12号)、信託の引受け(13号)です。ただし、専ら賃金を得る目的で物を製造し又は労務に従事する者の行為は除かれます(同条ただし書)。「営業として」とは営利の目的で反復継続することで、1回限りでは商行為になりません。11号の仲立ちは他人の間の法律行為の媒介のことで、媒介される行為が商行為である必要はないので、結婚相談所が営業として行う婚姻の媒介も仲立ちに関する行為として商行為になります。「自己の営業として婚姻の媒介をする行為は、商行為となる」という肢は正しいです。宅地建物取引業者も、他人間の商行為の媒介を業とする商事仲立人(543条)ではありませんが、仲立ちに関する行為を営業とする者として商人に当たると判例はしています(最判昭和44年6月26日)。同じ判例は、買主から委託を受けて媒介をした業者は、委託をしておらず業者に売主のためにする意思もなかった売主に対しては512条の報酬請求権を取得しないとしたので、「宅地建物取引業者は,買主からの委託によって土地の売買の媒介をした場合であって,売主からの委託によるものでなく,かつ,売主のためにする意思をもってしたものでないときでも,当該売主に対し,相当な報酬を請求することができる」という肢は誤りです。
質屋営業者の金員貸付けは銀行取引に当たらず、判例は商行為でないとしています
502条8号の「両替その他の銀行取引」は、預金などで他人から資金を受け入れ、それを貸し付ける受信行為と与信行為の両方を行う取引を指すと解されています。判例は、個人の質屋営業者の金員貸付行為は商法502条8号の銀行取引に当たらないとしました(最判昭和50年6月27日)。自己の資金を貸し付けるだけで、他人からの資金の受入れを伴わないからです。「個人である質屋営業者の金員貸付行為は,商行為に当たらない」という肢は正しいです。同じ理由で、自己資金で貸付けを行う貸金業者の貸付けも銀行取引には当たらないと解されています(貸金業者が会社であれば会社法5条により商行為になります)。また、営利を目的としない協同組織の信用金庫などは、銀行取引を営業とする者に当たらず商人ではないと判例はしています。なお、絶対的商行為・営業的商行為は商人概念の基礎になる基本的商行為で、これに対し商人が営業のためにする行為は附属的商行為(503条)として商行為になります。
絶対的商行為と営業的商行為
- 絶対的商行為(501条): ①利益を得て譲渡する意思でする動産・不動産・有価証券の有償取得とその譲渡 ②他人から取得する動産・有価証券の供給契約とその履行のための有償取得 ③取引所の取引 ④手形その他の商業証券に関する行為。誰が1回しても商行為
- 営業的商行為(502条): ①賃貸目的の取得・賃借と賃貸 ②製造・加工 ③電気・ガスの供給 ④運送 ⑤作業・労務の請負 ⑥出版・印刷・撮影 ⑦場屋の取引 ⑧両替その他の銀行取引 ⑨保険 ⑩寄託の引受け ⑪仲立ち・取次ぎ ⑫商行為の代理の引受け ⑬信託の引受け。営業としてするときに商行為。専ら賃金を得る目的の製造・労務は除く
- 銀行取引に当たらないもの(判例): 質屋営業者の貸付け(最判昭50.6.27)。自己資金の貸付けは受信を伴わない
- 仲立ちに関する行為: 媒介される行為は商行為でなくてよい。婚姻の媒介、宅地建物取引業者の媒介(最判昭44.6.26)
- 附属的商行為(503条): 商人が営業のためにする行為。別の語で扱う
商法501条
次に掲げる行為は、商行為とする。一 利益を得て譲渡する意思をもってする動産、不動産若しくは有価証券の有償取得又はその取得したものの譲渡を目的とする行為 二 他人から取得する動産又は有価証券の供給契約及びその履行のためにする有償取得を目的とする行為 三 取引所においてする取引 四 手形その他の商業証券に関する行為
商法502条柱書
次に掲げる行為は、営業としてするときは、商行為とする。ただし、専ら賃金を得る目的で物を製造し、又は労務に従事する者の行為は、この限りでない。
論文ではこう使う
論文で商法の特則(連帯債務・法定利息・商人間の留置権・商事売買の規定)を適用するときは、当事者が商人か、その行為が商行為かを最初に認定します。個人が当事者なら、その行為が501条・502条のどの号に当たるか、又は商人の営業のためにする行為(503条)かを示し、会社が当事者なら会社法5条で事業としてする行為・事業のためにする行為が商行為であることを一言で示します。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。