単元未満株主の権利(買取請求・売渡請求)とは
たんげんみまんかぶぬしのけんり
単元未満株主とは、単元株式数に満たない数の株式(単元未満株式)を有する株主で、その単元未満株式について株主総会と種類株主総会で議決権を行使できません(会社法189条1項)。単元未満株主の買取請求とは、自分の有する単元未満株式を会社に買い取るよう請求する権利で定款の定め無しにでき(192条)、売渡請求とは、単元未満株式と併せて単元株式数になる数の株式を会社に売り渡すよう請求する権利で定款の定めがある場合に限りできます(194条)。
100株で1単元の会社で30株しか持っていない株主は、株主総会で議決権を行使できません。これが単元未満株主で、株主管理のコストを減らすために会社法が認めた扱いです。ただし、議決権が無いまま株式を持ち続けるのは株主に酷なので、会社に買い取ってもらって投下資本を回収する権利は定款でも奪えないことになっています。逆に、足りない分を会社から買い足して1単元にする権利は、会社の自己株式を特別に処分させることになるので、定款に定めがある場合にだけ認められます。買取りと買増しのどちらに定款の定めが要るかが問われます。
単元未満株式には議決権が無く、定款で与えることもできず、株主提案権も行使できません
単元未満株主は、その有する単元未満株式について、株主総会と種類株主総会において議決権を行使できません(189条1項)。単元株制度は少額の出資者の権利を絞って株主管理のコストを減らす制度なので、定款で単元未満株式に議決権を与える例外は認められていません。「単元未満株主は,その有する単元未満株式について,株主総会において議決権を行使することができない」という規律は、株主管理のコストの削減を目的とするもので、会社支配の公正維持を目的とするものには当たりません。「株主は,単元未満株式について,定款に定めがある場合に限り,株主総会において議決権を行使することができる」という肢は誤りです。株主提案権は株主が議決権を行使できる事項に限って認められるので(303条1項括弧書)、単元未満株式について議決権の無い株主は株主提案権も行使できません。「単元未満株式について,議決権を行使することはできないが,株主提案権を行使することはできる」という肢は誤りです。会社は、定款で単元未満株主が行使できる権利を更に制限できますが、全部取得条項付種類株式の取得対価や取得条項付株式の取得の対価を受ける権利、株式無償割当てを受ける権利、単元未満株式の買取請求権、残余財産の分配を受ける権利などは定款でも奪えません(189条2項)。責任追及等の訴え(株主代表訴訟)を提起する権利はこの列挙に無いので、公開会社でも「単元未満株主は,その有する単元未満株式について,株主代表訴訟を提起する権利を有しないこととする旨」を定款で定めることができます(847条1項括弧書)。
会社に対する買取請求は定款の定めが無くてもでき、定款で奪うこともできません
単元未満株主は、会社に対し、自己の有する単元未満株式を買い取ることを請求できます(192条1項)。議決権の無い株式を持ち続けさせられる株主に投下資本の回収の道を保障するもので、定款の定めは要らず、この権利を行使できない旨を定款で定めることもできません(189条2項4号)。「株主は,単元未満株式について,定款に定めがあるときに限り,会社に対してその買取りを請求することができる」という肢は誤りで、「株式会社は,単元未満株主が当該株式会社に対して単元未満株式の買取りの請求をすることができない旨を定款で定めることができない」という肢は正しいです。請求は数を明らかにしてし、会社の承諾を得た場合に限り撤回できます(192条2項・3項)。価格は市場価格のある株式なら市場価格、無ければ協議で定め、請求の日から20日以内に裁判所に価格の決定を申し立てることができます(193条)。会社が応じなければならない買取りなので、買取りで株主に交付する金銭に分配可能額の規制はかかりません(461条1項に掲げられていません)。分配可能額の規制を問う問題では、「単元未満株式の買取りの請求があった場合において,当該単元未満株式の買取りにより株主に対して交付する金銭の額は,分配可能額を超えてはならない」という肢は誤りです。
単元株式数に足りない数の売渡請求は、定款に定めがある場合に限りできます
会社は、単元未満株主が、その単元未満株式の数と併せて単元株式数になる数の株式を自分に売り渡すよう会社に請求できる旨を定款で定めることができます(194条1項)。30株の株主が70株を買い足して1単元にする買増しの請求です。これは会社の自己株式を募集株式の発行等の手続によらずに特定の株主に処分させる例外的な制度なので、定款の定めがある場合に限られ、会社は請求の時に相当する数の自己株式を持っていない場合を除いて自己株式を売り渡さなければなりません(同条3項)。「株主は,単元未満株式について,定款に定めがあるときに限り,会社に対して自己が有する単元未満株式の数と併せて単元株式数となる数の株式の売渡しを請求することができる」という肢は正しく、「単元未満株主は、定款に定めがなくても、株式会社に対し、…売り渡すことを請求することができる」という肢は誤りです。買取請求と売渡請求を入れ替えて、買取請求に定款の定めが要るとする肢も誤りです。株券発行会社は、単元未満株式の株券を発行しないことができる旨を定款で定めることができます(189条3項)。「株券発行会社は、単元未満株式に係る株券を発行しないことができる旨を定款で定めることができない」という肢は誤りです。
買取請求と売渡請求の違い
- 買取請求(192条): 単元未満株式を会社に買い取らせる。定款の定めは不要で、定款でも奪えない(189条2項4号)。分配可能額の規制なし
- 売渡請求(194条): 単元株式数に足りない数の株式を会社に売り渡させて1単元にする。定款に定めがある場合に限る。会社は自己株式を持っていれば応じる
- 価格: どちらも市場価格、無ければ協議、20日以内に裁判所への申立て(193条・194条4項)
会社法189条1項
単元株式数に満たない数の株式(以下「単元未満株式」という。)を有する株主(以下「単元未満株主」という。)は、その有する単元未満株式について、株主総会及び種類株主総会において議決権を行使することができない。
会社法192条1項
単元未満株主は、株式会社に対し、自己の有する単元未満株式を買い取ることを請求することができる。
会社法194条1項
株式会社は、単元未満株主が当該株式会社に対して単元未満株式売渡請求(単元未満株主が有する単元未満株式の数と併せて単元株式数となる数の株式を当該単元未満株主に売り渡すことを請求することをいう。以下この条において同じ。)をすることができる旨を定款で定めることができる。
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