承認のない譲渡制限株式の譲渡の効力とは
しょうにんのないじょうとせいげんかぶしきのじょうとのこうりょく
承認のない譲渡制限株式の譲渡の効力とは、会社の承認を得ないでされた譲渡制限株式の譲渡が誰との関係で効力を持つかという問題で、判例は、譲渡当事者間では有効であり、会社に対する関係では効力を生じないとしています。
譲渡制限株式の株主が会社の承認を取らずに株式を売ってしまったとき、その売買が無かったことになるのかが問題になります。譲渡制限は会社にとって好ましくない人が株主になるのを防ぐための仕組みなので、会社が譲受人を株主として扱わなければ目的は足ります。そこで判例は、承認のない譲渡は会社に対する関係では効力を生じないが、売った人と買った人の間では有効だとしています。買った人は株式取得者として改めて会社に承認を求めることができます。株主が1人しかいない会社では守るべき他の株主がいないので、承認がなくても会社に対しても有効です。
承認のない譲渡は当事者間では有効で、会社に対する関係では効力を生じません
判例は、定款による譲渡制限の目的を、会社にとって好ましくない者が株主となることを防止して他の株主の利益を守る点に求め、この目的は会社が譲受人を株主として扱わなければ達せられるから、承認を欠く譲渡は会社に対する関係では効力を生じないにとどまり、譲渡当事者間では有効であるとしました(最判昭和48年6月15日)。「譲渡制限株式について,会社の承認を得ないで譲渡がされた場合,その譲渡は,譲渡当事者間において,その効力を有しない」という肢は誤りです。株券発行会社では株式の譲渡に株券の交付が要りますが(128条1項)、譲渡の合意をして株券を交付していれば、承認が無くても当事者間では譲渡の効力が生じます。「当該譲渡は,当該株式会社に対する関係では効力を生じないが,当事者間では有効である」という肢は正しいです。承認の有無は会社が誰を株主として扱うかの問題なので、自ら承認を得ずに譲渡した者が、当事者間で譲渡が無効であると主張することは許されません。譲受人は株式取得者として会社に承認を請求でき(137条1項)、承認されれば会社に対しても株主になります。承認を得ないで譲渡制限株式を譲渡担保に供した場合も同じで、譲渡担保権の設定は契約当事者間では有効です。「その譲渡担保権の設定は,契約当事者間においては有効である」という肢は正しいです。
一人会社の唯一の株主が譲渡した場合は、承認がなくても会社に対する関係でも有効です
譲渡制限は他の株主の利益を守るための仕組みなので、株主が1人しかいない会社では、その株主が株式を譲渡しても害される他の株主がいません。判例は、株式の譲渡につき定款で取締役会の承認を要する旨を定めている会社でも、いわゆる一人会社の株主がその保有する株式を他に譲渡した場合には、定款所定の取締役会の承認がなくても、その譲渡は会社に対する関係においても有効であるとしました(最判平成5年3月30日)。「取締役会設置会社の唯一の株主がその保有する譲渡制限株式を他に譲渡した場合には,取締役会の決議による承認がないときであっても,その譲渡は,当事者間だけではなく,会社に対する関係においても,有効である」という肢は正しく、「いわゆる一人会社であっても,取締役会の承認がない限り,譲渡制限株式の譲渡は,会社に対し,その効力を有しない」という肢は誤りです。
従業員が退職時に会社の指定する者へ株式を譲渡する合意は有効です
従業員持株制度では、従業員が在職中に会社の株式を取得し、退職するときには取得価格と同額で会社の指定する者に譲渡するという合意がされることがあります。株主は株式を自由に譲渡できる(127条)ので、このような合意が譲渡の自由を侵して無効ではないかが争われました。判例は、譲渡制限に関する規定は会社と株主との間で個々に締結される契約の効力を直接規律するものではないこと、会社が相当な配当を続けて持株制度が従業員の財産形成に寄与していたこと、売渡価格が取得価格と同額でも直ちに投下資本の回収を著しく制限する不合理なものとはいえないことから、この合意は株式の譲渡自由の規定に違反せず、公序良俗にも反しないから有効であるとしました(最判平成7年4月25日)。「従業員の退職に際してはその有する当該会社の譲渡制限株式を会社の指定する者に譲渡する旨の合意をした場合には,その合意は,無効である」という肢は誤りです。
会社法127条
株主は、その有する株式を譲渡することができる。
最判昭和48年6月15日(譲渡制限に違反した株式譲渡の効力)
株式の譲渡性の制限を許しているが、その立法趣旨は、もっぱら会社にとって好ましくない者が株主となることを防止することにあると解される。そして、右のような譲渡制限の趣旨と、一方株式の譲渡が本来自由であるべきこととに鑑みると、定款に前述のような定めがある場合に取締役会の承認をえずになされた株式の譲渡は、会社に対する関係では効力を生じないが、譲渡当事者間においては有効であると解するのが相当である。
論文ではこう使う
論文では、承認のない譲渡の後に開かれた株主総会で誰を株主として扱うべきかを問われたときに使います。「本件譲渡は取締役会の承認を欠くが、譲渡制限の目的は会社にとって好ましくない者が株主となることを防ぎ他の株主を保護する点にあるから、承認のない譲渡は会社に対する関係では効力を生じないにとどまり、当事者間では有効である(最判昭和48年6月15日)。したがって甲社は譲渡人Aを株主として扱うべきであり、Aに招集通知を発しなかった本件総会には招集手続の法令違反(831条1項1号)がある」と展開します。一人会社の事案なら、他の株主がいない以上承認の趣旨が妥当しないとして、会社に対する関係でも有効とした判例(最判平成5年3月30日)を使い、譲受人を株主として扱わなかった会社の側の主張を退けます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。