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会社と取締役との間の訴えにおける会社の代表とは

かいしゃととりしまりやくとのあいだのうったえにおけるかいしゃのだいひょう

商法 監査役・会計監査人・委員会型の会社

会社と取締役との間の訴えにおける会社の代表とは、株式会社が取締役(取締役であった者を含む)を訴え、又は取締役から訴えられる場合に、誰が会社を代表して訴訟を追行するかの規律のことです。監査役設置会社では監査役が会社を代表し(会社法386条1項1号)、株主からの取締役の責任を追及する訴えの提起の請求を受けるのも監査役です(同条2項1号)。監査役設置会社でない会社では、株主総会又は取締役会が定めた者が代表し(353条・364条)、その定めがなければ代表取締役が代表します(349条4項)。

会社が取締役を訴えるとき、普通どおり代表取締役が会社を代表すると、仲間の取締役を訴えることになり、手加減した馴れ合いの訴訟になりかねません。そこで会社法は、監査役がいる会社では、取締役を相手にする訴えは監査役に会社を代表させ、株主が「取締役を訴えてほしい」と会社に請求するときの宛先も監査役にしました。監査役がいない会社では株主総会や取締役会が代表者を決め、決めなければ代表取締役が代表します。逆に、監査役や会計監査人を訴えるときは馴れ合いの心配がないので、代表取締役が代表します。

法廷の場面。原告席に先生が監査役役(札「監査役=会社の代表」)で立ち、手に訴状「訴状 原告 甲株式会社 被告 元取締役A」を持つ。被告席に男性の元取締役(札「元取締役A」)が座る。傍聴席に男性の代表取締役(札「代表取締役」)が座っていて、原

監査役設置会社が取締役(取締役であった者を含む)を訴え、又は取締役から訴えられるときは、監査役が会社を代表します

株式会社を代表するのは代表取締役で、会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を持ちます(349条1項・4項)。しかし、監査役設置会社が取締役(取締役であった者を含む)に対し、又は取締役が監査役設置会社に対して訴えを提起する場合には、その訴えについては監査役が会社を代表します(386条1項1号)。取締役どうしの同僚意識による馴れ合いを防ぎ、業務執行から独立した監査役に訴訟を追行させるためです。退任した元取締役も現任の取締役と人的関係が残るので、「取締役であった者」も含まれます。「監査役設置会社が当該監査役設置会社の取締役であった者に対してその責任を追及する訴えを提起する場合には,当該訴えについては,代表取締役が当該監査役設置会社を代表する」という肢は誤りです。代表するのは責任追及の訴えに限らず、会社と取締役との間の訴えであれば、取締役の地位と関係のない貸金返還請求の訴えでも監査役です。「会社法上の公開会社である監査役設置会社が取締役であった者に対して貸金返還請求の訴えを提起する場合には、監査役が当該監査役設置会社を代表する」という肢は正しいです。監査役設置会社でない会社では、株主総会がその訴えについて会社を代表する者を定めることができ(353条)、取締役会設置会社では株主総会の定めがない限り取締役会が定めることができ(364条)、どちらの定めもなければ代表取締役が代表します(349条4項)。被告以外の取締役が当然に代表するという規律はありません。「会社が取締役に対して訴えを提起する場合には,監査役設置会社であるか否かを問わず,被告となる取締役以外の取締役が会社を代表する」という肢は誤りです。監査等委員会設置会社では監査等委員会が選定する監査等委員が、指名委員会等設置会社では監査委員会が選定する監査委員が会社を代表します(399条の7第1項2号・408条1項2号)。

株主からの取締役の責任を追及する訴えの提起の請求を受けるのも監査役で、公開会社でなくても同じです

株主が会社に対して取締役の責任を追及する訴えの提起を請求するとき(847条1項)、監査役設置会社ではこの請求を受けるのも監査役です(386条2項1号)。会社が訴えを起こすかどうかを判断するのは監査役だからです。この規律は公開会社かどうかとは関係がなく、公開会社でない会社でも、監査役会設置会社であれば監査の範囲を会計に限定できないので(389条1項括弧書)、当然に監査役設置会社(2条9号)に当たり、請求を受けるのは監査役です。「甲社が会社法上の公開会社でない場合には,Aの責任を追及する訴えの提起の請求を受ける際に甲社を代表する者は,代表取締役である」という肢は、甲社が監査役会設置会社なので誤りです。請求の宛先を代表取締役と誤って記載した提訴請求書が送られた場合について、判例(最判平成21年3月31日)は、監査役に当たる者がその記載内容を正確に認識したうえで訴えを提起すべきかどうかを自ら判断する機会があったといえるときは、適式な提訴請求書が送付されたのと同視でき、訴えを不適法として却下することはできないとしました。提訴請求の制度は会社自身に訴えを提起するかを判断する機会を与えるためのものなので、その機会が実質的にあれば形式の誤りで株主の訴えを退けるべきでないという考えです。この判例は農業協同組合の監事に関するものですが、会社の監査役にも同じ理が当てはまると解されています。

会社の受付の場面。男性株主(札「株主」)が封筒「提訴請求書 取締役Aの責任を追及する訴えを起こしてください」を差し出している。受付の奥に、先生が監査役役(札「監査役」)で手を挙げて受け取ろうとしており、その横で男性の代表取締役(札「代表取締

監査役や会計監査人に対する訴えは代表取締役が代表し、監査委員に対する訴えは株主総会か取締役会が定めた者が代表します

386条1項が監査役に代表させるのは、会社と取締役との間の訴えだけです。会社が監査役や会計監査人を訴える場合は、取締役どうしの馴れ合いの心配がないので、原則に戻って代表取締役が会社を代表します(349条4項)。「監査役設置会社が会計監査人に対して責任を追及する訴えを提起する場合には,当該訴えについては,監査役が監査役設置会社を代表する」という肢は誤りです。指名委員会等設置会社では、会社が執行役又は取締役を訴える場合、監査委員会が選定する監査委員が会社を代表するのが原則ですが、監査委員自身がその訴えの当事者であるときは、株主総会がその訴えについて会社を代表する者を定めていればその者が、定めていなければ取締役会が定める者が代表します(408条1項1号・2号)。監査委員は取締役なので、監査委員会に代表させると自分で自分を訴えることになるからです。「監査役会設置会社が監査役に対して訴えを提起する場合には,代表取締役が当該監査役会設置会社を代表し,委員会設置会社が監査委員に対して訴えを提起する場合には,株主総会で当該訴えについて当該委員会設置会社を代表する者を定めたときはその者が,当該定めがないときは取締役会の定める者が,当該委員会設置会社を代表する」という肢は正しいです(出題当時の「委員会設置会社」は現在の指名委員会等設置会社です)。監査等委員会設置会社で監査等委員が当事者となる訴えも同じ構造です(399条の7第1項1号)。

会社が被告の取締役を補助するため株主代表訴訟に参加するには、監査役会ではなく各監査役の同意が要ります

株主や会社は、共同訴訟人として、又は当事者の一方を補助するため、責任追及等の訴えに係る訴訟に参加することができます(849条1項)。しかし、会社が被告である取締役の側に補助参加することは、本来責任を追及すべき会社が取締役に加勢することになるので、監査機関の同意が要ります。監査役設置会社では監査役(監査役が2人以上ある場合は各監査役)、監査等委員会設置会社では各監査等委員、指名委員会等設置会社では各監査委員の同意です(同条3項)。監査役会設置会社であっても、監査役会の決議(過半数)ではなく、監査役全員それぞれの同意が要ります。「株主代表訴訟において,会社が被告である取締役を補助するためその訴訟に参加するには,監査役会の同意を得なければならない」という肢は誤りで、「監査役(監査役が2人以上ある場合にあっては、各監査役)の同意を得なければならない」という肢は正しいです。会社が訴えの提起を請求され、訴訟告知や和解の通知・催告を受ける場合も、監査役が会社を代表して受けます(386条2項1号・2号)。

誰が会社を代表するかの整理

  • 監査役設置会社が取締役(元取締役を含む)を訴える・訴えられる: 監査役(386条1項1号)。責任追及に限らず貸金返還請求などの訴えも同じ
  • 株主からの取締役の責任追及の訴えの提訴請求・訴訟告知・和解の通知を受ける: 監査役(386条2項)。公開会社でなくても監査役設置会社なら同じ
  • 監査役設置会社でない会社が取締役を訴える: 株主総会が定めた者(353条)→取締役会が定めた者(364条)→代表取締役(349条4項)
  • 会社が監査役・会計監査人を訴える: 代表取締役(349条4項)
  • 監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社が取締役・執行役を訴える: 監査等委員会・監査委員会が選定する監査等委員・監査委員(399条の7第1項2号・408条1項2号)。監査等委員・監査委員が当事者のときは株主総会が定めた者、なければ取締役会が定める者(同項1号)
  • 会社が被告取締役を補助するため代表訴訟に参加: 各監査役・各監査等委員・各監査委員の同意(849条3項)
  • 提訴請求の宛先を誤った場合: 監査役が内容を正確に認識して提訴の当否を自ら判断する機会があれば適式な請求と同視(最判平21.3.31)

会社法386条1項1号

第三百四十九条第四項、第三百五十三条及び第三百六十四条の規定にかかわらず、次の各号に掲げる場合には、当該各号の訴えについては、監査役が監査役設置会社を代表する。
一 監査役設置会社が取締役(取締役であった者を含む。以下この条において同じ。)に対し、又は取締役が監査役設置会社に対して訴えを提起する場合

会社法849条3項1号

株式会社等(略)が、当該株式会社等(略)の取締役(監査等委員及び監査委員を除く。)、執行役及び清算人並びにこれらの者であった者を補助するため、責任追及等の訴えに係る訴訟に参加するには、次の各号に掲げる株式会社の区分に応じ、当該各号に定める者の同意を得なければならない。
一 監査役設置会社 監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては、各監査役)

論文ではこう使う

論文では、株主が代表取締役宛てに提訴請求をして60日経過後に代表訴訟を提起した事案で、監査役設置会社では提訴請求を受けるのは監査役である(386条2項1号)ことから請求が不適式ではないかを問題にし、提訴請求の趣旨が会社自身に提訴の当否を判断する機会を与える点にあることを規範として、監査役が請求の内容を正確に認識して提訴すべきかを自ら判断する機会があったといえるかを事実から認定します(最判平21.3.31)。機会があったといえれば適式な提訴請求と同視して訴えは適法、いえなければ却下という結論になります。会社が取締役を訴える場面では、監査役が代表する(386条1項1号)ことを一言で確認し、代表取締役名義で提起された訴えの扱いを論じます。

試験ではこう問われる

「会社と取締役との間の訴えにおける会社の代表」が短答式でどう出題されてきたか、ひっかけの型8件と関係する過去問の肢9本は、無料のアカウントでログインすると読めます。

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