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用語集 / 商法 / 指名委員会等設置会社の取締役会

指名委員会等設置会社の取締役会(執行役への決定の委任)とは

しめいいいんかいとうせっちがいしゃのとりしまりやくかい

商法 監査役・会計監査人・委員会型の会社

指名委員会等設置会社の取締役会とは、経営の基本方針や内部統制システムの整備などの決定と執行役等の職務の執行の監督を職務とする取締役会のことで(会社法416条1項)、その決議によって、法定の事項を除き業務執行の決定を執行役に委任することができます(同条4項)。監査役会設置会社の取締役会が重要な財産の処分や多額の借財の決定を取締役に委任できない(362条4項)のと違い、これらの決定も執行役に委任できます。

普通の取締役会設置会社では、重要な財産を売る、多額の借金をするといった大事な決定は取締役会で決め、一人の取締役には任せられません。これに対し指名委員会等設置会社は、取締役会を監督役に徹しさせて経営を速くするために、こうした決定も執行役に任せることを認めています。ただし、株主総会に出す議案の中身、株主総会の承認が要る合併の契約内容、代表執行役の選定、内部統制の仕組みづくりといった、会社の土台や監督そのものに関わる決定は取締役会が自分で決めます。報酬は報酬委員会の仕事なので、取締役会が任せる対象ではありません。

取締役会の会議室の場面。長机に男性取締役5人が座り、机の中央に札「取締役会(指名委員会等設置会社)」。先生が議長役(札「取締役会議長」)で立ち、書類の束を2つに分けて机に置いている。左の束に札「執行役に委任する:重要な財産の処分/多額の借財

取締役会は経営の基本方針の決定と執行役等の監督を職務とし、業務執行の決定を広く執行役に委任できます

指名委員会等設置会社の取締役会は、362条の規定にかかわらず、経営の基本方針、監査委員会の職務の執行のため必要な事項、執行役が2人以上ある場合の職務の分掌と指揮命令の関係、執行役からの取締役会の招集請求を受ける取締役、内部統制システム(執行役の職務の執行が法令・定款に適合することを確保するための体制その他会社と企業集団の業務の適正を確保するために必要な体制)の整備、その他の業務執行の決定と、執行役等の職務の執行の監督を職務とします(416条1項)。このうち基本方針・監査委員会のための事項・執行役の分掌・招集請求を受ける取締役・内部統制システムの整備は、取締役会が決定しなければならず(同条2項)、1項各号の職務の執行を取締役に委任することはできません(同条3項)。そのうえで取締役会は、その決議によって、業務執行の決定を執行役に委任することができます(同条4項本文)。監査役会設置会社の取締役会が重要な財産の処分及び譲受け、多額の借財、重要な使用人の選任・解任などを取締役に委任できない(362条4項)のと違い、指名委員会等設置会社では委任できない事項が416条4項ただし書の各号に限定列挙され、それ以外は執行役に任せられます。「重要な財産の処分」は執行役に委任できる事項です。「会社法上の公開会社である指名委員会等設置会社の取締役会は、取締役会の決議によって定めることができる事項のうち、募集株式の発行、多額の借財並びに支配人その他の重要な使用人の選任及び解任の各決定を、その決議によって執行役に委任することができる」という肢は正しく、「取締役及び執行役は,いずれも,多額の借財の決定について,取締役会から委任を受けることができない」という肢は、執行役について誤りです。特別取締役による議決の制度(373条1項)は指名委員会等設置会社には適用がなく、迅速な決定は執行役への委任で実現します。「委員会設置会社においては,特別取締役の制度は認められておらず,取締役会は,その決議によって,重要な財産の処分の決定を執行役に委任することができる」という肢は正しいです。公開会社で払込金額が引受人に特に有利でない募集株式の募集事項の決定(201条1項)や、社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項の決定も、ただし書に挙がっていないので執行役に委任できます。「払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額でない場合における募集株式の発行に係る募集事項の決定」は執行役に委任できる事項で、「委員会設置会社が社債を発行する場合,取締役会は,社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項の決定を執行役に委任することができる」という肢は正しいです。有利発行は株主総会の特別決議事項で(199条2項・201条1項)、株主総会に提出する議案の内容の決定として委任できません。

教室の板書の場面。先生が黒板の前に立ち(札「先生」)、黒板に左右2列の表。左の列の見出し「監査役会設置会社の取締役会(362条4項)」、その下に「重要な財産の処分→取締役に委任×/多額の借財→×/内部統制システム→×/株主総会の議案→×」。

株主総会に出す議案の内容、代表執行役の選定、内部統制システムの整備、株主総会の承認を要する合併契約の内容などは委任できません

416条4項ただし書に列挙されている委任できない事項は、大きく分けて、①株主総会に関わる事項、②取締役会の監督の根幹に関わる事項、③会社の基礎の変更に関わる事項です。①は、株主総会の招集事項(298条1項各号)の決定、株主総会に提出する議案(取締役・会計参与・会計監査人の選任・解任・不再任に関するものを除く)の内容の決定、計算書類等の承認、譲渡制限株式の譲渡承認などです。②は、取締役会を招集する取締役の決定、各委員会の委員の選定・解職、執行役の選任・解任、代表執行役の選定・解職、会社と執行役・取締役との間の訴えで会社を代表する者の決定、競業・利益相反取引の承認、業務執行の社外取締役への委託、責任の一部免除、補償契約・役員等賠償責任保険契約の内容の決定です。「執行役が2名以上ある場合における代表執行役の選定」は執行役に委任できない事項です。内部統制システムの整備は416条1項1号ホの事項で取締役会が決定しなければならず(同条2項)、執行役に委任できません。監査役会設置会社・監査等委員会設置会社の取締役会がこれを取締役に委任できない(362条4項6号・399条の13第1項1号ハ)のと同じです。「指名委員会等設置会社の取締役会は、当該決定を執行役に委任することができる」という肢は誤りです。③は、事業譲渡等の契約、合併契約、吸収分割契約、新設分割計画、株式交換契約、株式移転計画、株式交付計画の内容の決定です。ただし、株式移転計画以外は「株主総会の決議による承認を要しないものを除く」とされているので、簡易手続や略式手続によって株主総会の承認を要しない合併契約や株式交換契約の内容の決定は執行役に委任できます。「株主総会の決議による承認を要しない合併契約を除き,委員会設置会社の取締役会は,その決議によって,執行役に当該合併契約の内容の決定を委任することができない」という肢と、「委員会設置会社にあっては,株主総会の決議による承認を要しない株式交換契約について,その内容の決定を執行役に委任することができる」という肢は、いずれも正しいです。株主総会の承認を要する組織再編は会社の基礎を変えるので取締役会自身が契約内容を決めるべきであるのに対し、株主総会の承認すら要らない組織再編は株主への影響が小さいからです。

取締役の報酬の決定と会計監査人の議案の内容の決定は委員会の権限で、取締役会が執行役に委任する対象になりません

416条4項ただし書の列挙は、取締役会の権限のうち執行役に委任できないものです。これとは別に、そもそも取締役会の権限ではなく委員会の権限とされている事項があります。取締役・執行役の個人別の報酬等の内容は報酬委員会が決定し(404条3項)、株主総会に提出する会計監査人の選任・解任・不再任の議案の内容は監査委員会が決定します(同条2項2号)。取締役の選任・解任議案の内容は指名委員会が決定します(同条1項)。これらは取締役会の決議でも決められず、執行役に委任することもできません。「取締役の報酬の決定」と「株主総会に提出する会計監査人の解任に関する議案の内容の決定」は、いずれも執行役に委任できない事項です。取締役会の運営については、招集権者の定めがあっても各委員会が委員の中から選定する者は取締役会を招集でき(417条1項)、執行役は招集請求を受ける取締役に請求して、5日以内に2週間以内の日を会日とする招集通知が発せられなければ自ら招集できます(同条2項)。

執行役に委任できる事項とできない事項(416条4項)

  • 委任できる: 重要な財産の処分・譲受け、多額の借財、重要な使用人の選任・解任、支店等の設置、公開会社の有利発行でない募集株式の募集事項、募集社債の募集事項、株主総会の承認を要しない(簡易・略式の)合併契約・分割契約・株式交換契約・株式交付計画の内容
  • 委任できない(株主総会関係): 株主総会の招集事項、株主総会に提出する議案の内容(役員・会計監査人の選任等を除く)、計算書類等の承認、譲渡制限株式の譲渡承認、自己株式の取得事項(165条3項)
  • 委任できない(監督の根幹): 招集権者の決定、委員の選定・解職、執行役の選任・解任、代表執行役の選定・解職、会社を代表する者の決定、競業・利益相反取引の承認、社外取締役への業務執行の委託、責任の一部免除、補償契約・役員等賠償責任保険契約
  • 委任できない(会社の基礎): 株主総会の承認を要する事業譲渡等・合併・会社分割・株式交換・株式交付の契約や計画の内容、株式移転計画の内容
  • 取締役会が決定しなければならず委任できない: 経営の基本方針、監査委員会のための事項、執行役の分掌、招集請求を受ける取締役、内部統制システムの整備(416条1項1号・2項)
  • そもそも委員会の権限: 取締役・執行役の個人別の報酬(報酬委員会)、取締役の選任・解任議案(指名委員会)、会計監査人の選任等の議案(監査委員会)(404条)

会社法416条4項

指名委員会等設置会社の取締役会は、その決議によって、指名委員会等設置会社の業務執行の決定を執行役に委任することができる。ただし、次に掲げる事項については、この限りでない。(略)
五 株主総会に提出する議案(取締役、会計参与及び会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関するものを除く。)の内容の決定
(略)
十二 第四百二十条第一項前段の規定による代表執行役の選定及び同条第二項の規定による代表執行役の解職
(略)
十九 合併契約(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定

会社法416条2項・3項

指名委員会等設置会社の取締役会は、前項第一号イからホまでに掲げる事項を決定しなければならない。
3 指名委員会等設置会社の取締役会は、第一項各号に掲げる職務の執行を取締役に委任することができない。

試験ではこう問われる

「指名委員会等設置会社の取締役会」が短答式でどう出題されてきたか、ひっかけの型9件と関係する過去問の肢13本は、無料のアカウントでログインすると読めます。

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