支払呈示と支払呈示期間とは
しはらいていじとしはらいていじきかん
支払呈示とは、手形の所持人が満期に支払場所で手形を示して支払を求めることで、支払呈示期間とは、確定日払などの手形では支払をすべき日とこれに次ぐ2取引日をいいます(手形法38条1項)。期間内に呈示しなければ裏書人に対する遡求権を失いますが、振出人に対する権利は時効まで行使できます。
手形は、満期になったら所持人が支払場所に持って行って「払ってください」と示すことで支払われます。これが支払呈示です。振出人の方から所持人を探して払いに行く仕組みではないので、所持人が呈示しなければ振出人は遅れたことになりません。確定日払の手形なら、支払をすべき日とその後の2取引日の間に呈示しなければ、裏書人に遡求する権利を失います。ただし振出人への権利は呈示が遅れても消えず、時効まで請求できます。
確定日払手形の支払呈示期間は、支払をすべき日とこれに次ぐ2取引日です
確定日払、日附後定期払又は一覧後定期払の手形の所持人は、支払をすべき日又はこれに次ぐ2取引日内に支払のため手形を呈示しなければなりません(手形法38条1項、77条1項3号)。手形交換所における呈示も支払のための呈示の効力を持ちます(38条2項)。「確定日払の約束手形の所持人は,支払をすべき日に支払のために適法に当該手形を呈示しなければ,裏書人に対する遡求権を失う」という肢は、期間を支払をすべき日だけに限っている点で誤りです。「約束手形の所持人が裏書人に対して遡求権を行使するためには,原則として,満期又はこれに次ぐ2取引日内に振出人に対して支払のための呈示をするなど,手形法所定の要件を満たさなければならない」という規律は、所持人に負担を課すものであって、約束手形の流通性を高める趣旨のものではありません。一覧払の手形は振出日から1年内に呈示します(34条1項、77条1項2号)。
期間内に呈示しないと遡求権を失いますが、振出人への権利は時効まで行使できます
支払呈示期間内に適法な呈示をしてはじめて、所持人は裏書人に遡求できます(43条、53条1項)。これに対し、約束手形の振出人は為替手形の引受人と同一の義務を負う第一次的な支払義務者なので(78条1項)、呈示期間を過ぎても振出人に対する権利は消えず、満期の日から3年の時効(70条1項)で消滅するまで請求できます。「振出人は,所持人が支払をすべき日又はこれに次ぐ2取引日内に支払のために手形を呈示しないときでも,所持人に対する手形金の支払義務を免れない」という肢と、「Bが支払呈示期間内に本件手形の支払呈示をすることを怠っても,BのAに対する本件手形上の権利は,消滅しない」という肢はいずれも正しいです。振出人は満期前の請求を拒めるので、「約束手形の振出人は,満期前にあっては,所持人からの約束手形金の支払を拒むことができる」という肢は正しいです。
呈示が無ければ振出人は遅滞に陥らず、期間経過後の呈示では呈示の時から遅滞の責任を負い、満期以後の利息は請求できません
振出人は、所持人が呈示して初めて履行遅滞に陥ります。支払呈示期間内に呈示があったのに支払わなければ、振出人は手形金額に加えて満期以後の法定利率による利息を支払わなければなりません(48条1項2号、78条1項、28条2項)。判例は、呈示期間内に適法な呈示が無かったときは、その後に呈示されても振出人はこの利息の支払義務を負わないとしています(最判昭和55年3月27日)。期間経過後の呈示(請求呈示)があれば、振出人はその時から遅滞の責任を負うにとどまります。「確定日払の手形の振出人は,所持人が支払のために手形を呈示しないときでも,支払をすべき日に支払をしない限り,同日以後の利息を支払わなければならない」という肢と、「Bから裏書を受けたCは,Aに対し,支払呈示期間経過後に支払のため手形を呈示した場合であっても,満期日からの遅延損害金を請求することができる」という肢はいずれも誤りです。手形訴訟で振出人に請求するときも、満期以後の利息を請求するには期間内の呈示を主張しなければならず、「Xは,訴状記載の請求原因の主張で,手形満期日から支払済みまでの手形法所定年6分の割合による利息の支払も請求することができる」という肢は、呈示の主張が無い以上誤りです(出題当時の「年6分」は、現在は法定利率に改められています)。他方、手形金そのものを振出人に請求する請求原因には呈示の主張は要りません。呈示は遡求権保全と付遅滞の要件であって、第一次的義務者である振出人に対する請求の要件ではないからで、「Xの手形金請求が認容されるためには,Xは,更に手形の満期に支払場所で呈示をした旨を請求原因として主張することを要しない」という肢は正しいです。
満期前の訴え提起や訴状の送達は、遡求権行使の要件である支払呈示の効力を持ちません
判例は、所持人が振出人に対して満期前に将来の給付の訴えとして手形金請求訴訟を提起し、口頭弁論終結前に満期が到来した場合でも、裏書人に遡求するには支払呈示期間内に支払場所で振出人に支払呈示をしなければならず、訴訟の提起や訴状の送達は遡求権行使の要件である支払呈示としての効力を持たないとしています(最判平成5年10月22日)。呈示が要件とされているのは、第一次的な支払義務者である振出人に対して期間内に支払場所で呈示することで、請求者が正当な所持人であることを確知させ、振出人が支払うかどうかを明らかにさせるためであり、その必要は訴えが提起されていても変わらないからです。「約束手形の振出人に対する満期前の手形金請求訴訟の提起又は当該訴訟に係る訴状の送達は,裏書人に対する満期後の遡求権行使の要件である支払のための呈示としての効力を有しない」という肢は正しいです。
支払呈示の効果
- 期間(38条1項): 確定日払等は支払をすべき日+2取引日。一覧払は振出日から1年(34条1項)
- 遡求権保全: 期間内の呈示が無いと裏書人への遡求権を失う(53条1項)。白地のままの呈示や満期前の訴え提起では保全されない
- 振出人への権利: 呈示が無くても消えない。満期から3年の時効まで請求できる
- 付遅滞: 呈示があって初めて遅滞。期間内の呈示があれば満期以後の利息(48条1項2号)。期間経過後の呈示なら呈示の時から(最判昭和55年3月27日)
- 請求原因: 振出人への手形金請求に呈示の主張は不要。満期以後の利息の請求には期間内の呈示の主張が必要
手形法38条1項
確定日払、日附後定期払又ハ一覧後定期払ノ為替手形ノ所持人ハ支払ヲ為スベキ日又ハ之ニ次グ二取引日内ニ支払ノ為手形ヲ呈示スルコトヲ要ス
論文ではこう使う
論文では、所持人が誰にいくら請求できるかを整理するときの出発点として使います。「約束手形の振出人は第一次的な支払義務者であり(手形法78条1項)、支払呈示期間内の呈示は振出人に対する権利行使の要件ではないから、呈示を怠っても所持人は満期から3年の時効が完成するまで振出人に請求できる。これに対し、裏書人に遡求するには、支払呈示期間(支払をすべき日とこれに次ぐ2取引日。38条1項、77条1項3号)内の適法な支払呈示と支払拒絶が要件である(43条、53条1項)」と立て、問題文の呈示の日付・白地の有無・訴え提起の時期から、呈示が適法かを当てはめます。利息を請求するなら期間内の呈示の有無を分けて書きます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。