為替手形(引受け・支払人・約束手形との違い)とは
かわせてがた
為替手形とは、振出人が支払人に対して一定の金額を受取人に支払うよう委託する証券で、支払人の名称が手形要件です(手形法1条)。支払人は引受けをして初めて主たる債務者になり、振出人は引受け・支払を担保する遡求義務者です。約束手形は振出人自身が支払を約束する証券で支払人がなく、振出人が第一次的な支払義務を負います。
約束手形は「私が払います」という紙ですが、為替手形は「あの人に払ってもらってください」という紙です。振出人が支払人を指定し、受取人に渡します。ただ、名前を書かれただけの支払人には払う義務が無く、支払人が手形に「引受」と署名して初めて主たる債務者になります。振出人は、支払人が引受けや支払をしなければ代わりに払う遡求義務者です。為替手形には支払人が必要で、満期の種類や受取人の記載など、約束手形と共通する点と違う点を整理して覚えます。
為替手形は支払を委託する証券で、支払人の名称が要件ですが、支払人は銀行に限られず資金関係も要件ではありません
為替手形には、一定の金額を支払うべき旨の単純な委託と、支払をすべき者(支払人)の名称を記載しなければなりません(手形法1条2号・3号)。「為替手形には、支払人の名称を記載しなければならない」という肢は正しいです。約束手形は振出人が自ら支払を約束する証券なので支払人がありません。「為替手形及び小切手は,他人に支払を委託する証券であり,支払人が不可欠であるが,約束手形は,自ら支払を約束する証券であるから,支払人は存在しない」という肢は正しいです。小切手の支払人は銀行などに限られ、振出人が支払人のもとに資金を持っていることが要求されますが(小切手法3条)、為替手形の支払人にはそのような制限が無く、資金関係も要件ではありません。「為替手形の支払人は、銀行でなければならない」という肢と、「為替手形の支払人及び小切手の支払人は,いずれも,銀行又は銀行と同視される人若しくは施設に限られる」という肢はいずれも誤りです。為替手形は振出人の自己指図(振出人を受取人とする)でも、自己宛て(振出人を支払人とする)でも振り出せます(手形法3条)。「為替手形は、振出人の自己宛てで振り出すことができる」という肢は正しいです。
支払人は引受けをして初めて主たる債務者になり、振出人は遡求義務者です
支払人は、引受けによって満期に為替手形の支払をする義務を負います(28条1項)。引受けは手形に「引受」その他同じ意味の文字で表示して支払人が署名し、手形の表面にした支払人の単なる署名は引受けとみなされます(25条1項)。引受けをするまでの支払人は手形上の義務を負いません。小切手には引受けの制度が無く、小切手にした引受けの記載は無いものとみなされ(小切手法4条)、小切手には主たる債務者がいません。「為替手形においては,支払人が引受けをした場合に主たる債務者となるが,小切手においては,支払人が引受けをすることは禁止されており,主たる債務者はいない」という肢は正しいです。「為替手形においては,支払人が引受けをすることができるが,小切手においては,支払人が引受けをすることはできない」という違いは、手形が信用の手段、小切手が支払の手段として規律されていることと関係があります。為替手形の振出人は引受けと支払を担保し(9条1項)、支払人が引受けや支払をしなければ遡求義務を負います。小切手の振出人も支払を担保する遡求義務者なので、「為替手形の振出人及び小切手の振出人は,いずれも,第一次的な支払義務者ではなく,遡求義務者である」という肢は正しいです。約束手形の振出人は為替手形の引受人と同一の義務を負う第一次的な支払義務者です(78条1項)。「約束手形の振出人は,為替手形の引受人と同一の義務を負う」という規律は、振出人の責任の性質を定めたものであって、約束手形の流通性を高める趣旨のものではありません。
満期は4種類で、受取人の記載が必要で持参人払式は認められず、第三者方払の記載ができます
為替手形と約束手形の満期は、一覧払・一覧後定期払・日附後定期払・確定日払の4種類に限られます(33条1項、77条1項2号)。手形には受取人(支払を受け又はこれを受ける者を指図する者)の名称が要件で(1条6号、75条5号)、受取人を書かない無記名式・持参人払式は認められません。小切手は持参人払式で振り出せ、受取人の記載の無い小切手は持参人払式小切手とみなされます(小切手法5条1項3号・3項)。「為替手形については持参人払式のものが認められないが,小切手については持参人払式のものが認められる」という肢は正しく、「小切手については,無記名式も許され,指図式小切手とみなされる」という肢は、持参人払式とみなされるので誤りです。為替手形の支払人は裏書をすることができ(11条1項・3項)、裏書をした支払人は担保責任を負いますが、小切手の支払人の裏書は無効です(小切手法15条3項)。「為替手形の支払人は裏書をすることができるが,小切手の支払人は裏書をすることができない」という肢は正しいです。為替手形は、支払人の住所地にあるかどうかを問わず第三者の住所で支払うものとすることができ(4条)、小切手にも同様の規定があります(小切手法8条)。「為替手形及び小切手については,第三者方払は支払人の住所地以外とすることはできない」という肢は誤りです。利息文句は、一覧払と一覧後定期払の為替手形でだけ効力があります(5条1項)。
約束手形・為替手形・小切手の違い
- 性質: 約束手形=支払約束証券(支払人なし)。為替手形・小切手=支払委託証券(支払人が要件)
- 支払人: 為替手形は制限なし・資金関係不要。小切手は銀行等に限り資金が要る(小切手法3条)
- 主たる債務者: 約束手形は振出人。為替手形は引受けをした支払人。小切手にはいない(引受け不可)
- 振出人の地位: 約束手形は第一次的義務者。為替手形・小切手は遡求義務者
- 満期: 手形は4種類。小切手は一覧払のみ
- 受取人: 手形は記載が必要(持参人払式不可)。小切手は持参人払式も可
- 自己宛て: 為替手形も小切手も可(手形法3条2項、小切手法6条3項)。第三者方払: いずれも可
手形法28条1項
支払人ハ引受ニ因リ満期ニ於テ為替手形ノ支払ヲ為ス義務ヲ負フ
手形法3条1項・2項
為替手形ハ振出人ノ自己指図ニテ之ヲ振出スコトヲ得 為替手形ハ振出人ノ自己宛ニテ之ヲ振出スコトヲ得
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。