手形保証とは
てがたほしょう
手形保証とは、手形上の債務者のために第三者(又は手形上の署名者)が手形又は補箋に署名して、その手形の支払を担保する手形行為です(手形法30条〜32条)。保証人は保証された者と同一の責任を負い、主たる債務が方式の瑕疵以外の理由で無効でも保証は有効です。
振出人の信用だけでは手形を受け取ってもらえないとき、第三者が手形に署名して「振出人が払わなければ私が払う」と約束することがあります。これが手形保証です。民法の保証と違って、保証人は振出人と並んで同じ責任を負い、「まず振出人に請求してください」とは言えません。振出人の手形行為が未成年者を理由に取り消されても保証は有効ですが、振出人の債務が時効で消えたときや、原因関係上の債務が発生しないことが確定したときには、保証人も支払を拒めます。
手形保証は手形又は補箋への署名でし、表面の単なる署名は保証とみなされます
手形の支払は、金額の全部又は一部について保証によって担保でき、第三者だけでなく手形にすでに署名した者も保証人になれます(手形法30条、77条3項)。保証は手形又は補箋にし、「保証」その他これと同じ意味の文字で表示して保証人が署名します(31条1項・2項)。「約束手形の手形保証は、手形保証人が約束手形又は補箋に署名しなければ、することができない」という肢は正しいです。手形の表面にした単なる署名は保証とみなされます(31条3項)。判例は、補箋の表面にした単なる署名も、保証その他これと同じ意味の文字が無くても保証とみなされるとしています(最判昭和35年4月12日)。「約束手形の補箋の表面にした単なる署名は,保証その他これと同一の意義を有する文字の表示がなくても,保証とみなされる」という肢は正しいです。誰のために保証をするかを表示しないときは、振出人のためにしたものとみなされます(31条4項、77条3項)。
主たる債務が方式の瑕疵以外の理由で無効でも保証は有効ですが、時効で消滅すれば保証債務も消滅します
保証人は保証された者と同一の責任を負い(32条1項)、保証は、担保した債務が方式の瑕疵を除く他のどのような事由によって無効であっても有効です(32条2項)。これは手形行為独立の原則を保証について定めたもので、振出人が未成年者で法定代理人が振出しを取り消しても、保証債務は無効になりません。「Aが未成年者であり,その法定代理人がAの手形行為を取り消した場合でも,これによって,Cの手形保証債務は,無効とはならない」という肢は正しく、「振出人が未成年者であることを理由に当該約束手形の振出しに係る意思表示が取り消された場合には、手形金を支払う義務を負わない」という肢は誤りです。他方、判例は、主たる債務について消滅時効が完成したときは手形保証債務も消滅し、保証人は自ら主たる債務者の手形債務の時効を援用して履行を拒めるとしています(最判昭和45年6月18日)。保証人が履行すれば主たる債務者に求償できる(32条3項)ことが保証の前提なのに、主たる債務が時効で消滅した後も保証債務が残るとすると、保証人は求償の途を失うからです。「判例によれば,Aの手形債務が時効により消滅した場合でも,Cの手形保証債務は,消滅しない」という肢は誤りです。
原因関係上の債務の不発生が確定したときは、保証人は受取人からの請求を権利の濫用として拒めます
保証人は、主たる債務者が受取人に対して持つ人的抗弁を当然には援用できませんが、判例は、将来発生する債務の担保のために振り出され振出人のために保証がされた手形について、原因関係上の債務の不発生が確定したときは、受取人は特別の事情が無い限り振出人だけでなく保証人に対しても手形上の権利を行使する実質的理由を失ったのであり、手形を返還せず手元にあるのを奇貨として保証人に支払を求めるのは信義則に反する権利の濫用に当たるとして、保証人は支払を拒めるとしています(最判昭和45年3月31日)。「判例によれば,A・B間の手形振出しの原因関係においてAの債務の不発生が確定した場合でも,Cは,Bに対し,手形保証債務の履行を拒むことはできない」という肢は誤りです。
振出人の保証人への請求に遡求権保全の手続は要らず、催告・検索の抗弁もなく、振出人への請求の時効の効力は保証人に及びません
保証人の責任は保証された者と同じ性質・範囲です。約束手形の振出人は第一次的な支払義務者なので、その保証人に請求するために所持人が支払呈示をして遡求権を保全する必要はありません。「BがCに手形保証債務の履行を請求するためには,遡求権保全の手続を採る必要はない」という肢は正しいです。振出し・裏書・保証をした者は所持人に対して合同して責任を負うので(47条1項、77条1項4号)、保証人には民法の保証人のような催告の抗弁・検索の抗弁がありません。「Cが,Aに弁済をする資力があり,かつ,執行が容易であることを証明した場合でも,Bは,Aの財産についてではなく,Cの財産について執行することができる」という肢は正しいです。手形債務は各自独立しているので、時効の完成猶予・更新はその事由が生じた者に対してだけ効力を生じ(71条)、受取人が振出人に履行を請求しても保証人に対しては時効の完成猶予・更新の効力を生じません。「約束手形の受取人が振出人に対して手形上の債務の履行を請求した場合には,手形保証人に対しては時効の中断の効力が生じない」という肢は正しいです(出題当時の「中断」は現在の完成猶予・更新に当たります)。
手形保証と民法の保証の違い
- 方式: 手形又は補箋への署名。表面(補箋の表面も)の単なる署名は保証とみなす(31条3項)
- 独立性: 主たる債務が方式の瑕疵以外の理由で無効・取消しでも有効(32条2項)
- 付従性: 主たる債務が時効で消滅すれば保証債務も消滅(最判昭和45年6月18日)。原因債務の不発生が確定すれば権利濫用で拒める(最判昭和45年3月31日)
- 責任: 合同責任(47条)。催告・検索の抗弁なし。振出人の保証人への請求に遡求権保全は不要
- 時効: 振出人への請求の完成猶予・更新は保証人に及ばない(71条)
手形法31条3項
為替手形ノ表面ニ為シタル単ナル署名ハ之ヲ保証ト看做ス但シ支払人又ハ振出人ノ署名ハ此ノ限ニ在ラズ
手形法32条2項
保証ハ其ノ担保シタル債務ガ方式ノ瑕疵ヲ除キ他ノ如何ナル事由ニ因リテ無効ナルトキト雖モ之ヲ有効トス
論文ではこう使う
論文では、手形保証人が振出人の抗弁を援用して支払を拒めるかを問われたときに使います。「手形保証は、担保した債務が方式の瑕疵以外の事由で無効でも有効であり(手形法32条2項、77条3項)、保証人は被保証人とは独立した手形債務を負う。したがって、被保証人の人的抗弁を保証人が当然に援用することはできない。もっとも、判例は、原因関係上の債務の不発生が確定した場合に、手形を返還せず保証人に請求することを権利の濫用として、保証人の支払拒絶を認める」と立て、受取人が手形を保持する正当な理由を失っているかを当てはめます。主たる債務の時効消滅の事案では、保証の求償を前提とする性質から保証債務も消滅するという判例の理由付けを書きます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。