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用語集 / 商法 / 手形の支払と支払免責

手形の支払と支払免責とは

てがたのしはらいとしはらいめんせき

商法 手形の流通と支払・小切手

手形の支払とは満期に手形金を支払うことで、支払免責とは、満期に支払をする者が、悪意又は重大な過失が無い限り、所持人が無権利者であっても責任を免れることです(手形法40条3項)。支払う者は裏書の連続の整否を調べる義務はありますが、裏書人の署名を調べる義務はありません。

満期の日、手形を持ってきた人が本当の権利者かどうか、払う側は短い時間で判断しなければなりません。裏書の署名が一つ一つ本物かまで調べていては、手形の支払は回りません。そこで手形法は、裏書がつながっているかだけを調べて払えば、相手が実は無権利者でも、悪意か重大な過失が無い限り責任を免れると定めました。あわせて、満期の前に払おうとしても所持人は受け取らなくてよく、一部だけの支払は所持人が拒めないという、支払の場面のルールがあります。

銀行の窓口の場面。先生が窓口係役(札「支払担当の銀行」)で、男性客(札「所持人」)が差し出した約束手形の裏面を見て、裏書のつながりだけを指で追っている。カウンターの掲示「満期の支払(40条3項) 裏書の連続の整否は調べる 裏書人の署名の真否

所持人は満期前の支払を受けることを要せず、一部の支払は拒めません

手形の所持人は、満期前にはその支払を受けることを要しません(手形法40条1項、77条1項3号)。民法では期限の利益は債務者のためにあるのが原則ですが(民法136条)、手形では満期まで手形を流通させることについて所持人も利益を持つからです。「振出人が期限の利益を放棄して支払をすべき日より前に手形金の支払をしようとするときは,所持人は,その支払を拒むことができる」という肢と、「手形債務者が手形の満期前に期限の利益を放棄して手形金の支払をしようとするときは,手形所持人は,その支払を受けることを要しない」という肢はいずれも正しいです。他方、所持人は一部支払を拒むことができません(39条2項、77条1項3号)。一部でも支払われればその限度で裏書人などの遡求義務者の責任が消えるので、遡求義務者の利益を考えた規定です。「振出人が支払をすべき日に手形金の一部の支払をしようとするときは,所持人は,その支払を拒むことができる」という肢は誤りです。

満期に支払う者は悪意・重過失が無い限り免責され、裏書の連続の整否を調べる義務はあるが裏書人の署名を調べる義務はありません

満期において支払をする者は、悪意又は重大な過失が無い限りその責任を免れます。この者は裏書の連続の整否を調査する義務はありますが、裏書人の署名を調査する義務はありません(40条3項、77条1項3号)。裏書の連続による形式的資格を持つ所持人に支払えば、所持人が無権利者でも、悪意・重過失が無ければ免責されます。「振出人は,支払をすべき日に手形金の支払をするに当たり,裏書の連続の整否を調査する義務を負うが,裏書人の署名を調査する義務を負わない」という肢は正しいです。個々の裏書の真否まで調べなければならないのでは円滑な支払ができないので、裏書の連続という権利の外観を信頼して払えば保護されるからです。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に座る。原告席に男性(札「真の権利者」)、被告席に男性(札「支払った振出人」)。法壇の前の板書「悪意 = 無権利と知っている + 容易かつ確実に立証できる証拠方法があると知って支払った」「重過

悪意とは、無権利者と知っているだけでなく、容易かつ確実に立証できる証拠方法があると知りながら支払うことです

40条3項の「悪意」は、所持人が無権利者であることを知っているだけでは足りず、それを容易かつ確実に立証できる証拠方法があることを知っていながら支払を拒まなかったことをいうと解されています。支払を拒んで訴訟になれば、所持人の無権利は債務者が証明しなければならないので、確実な証拠が無いのに支払を拒むことを債務者に求めるのは酷だからです。「裏書の連続がある手形の手形債務者は,単に所持人が無権利者であることを知っているだけではなく,所持人が無権利者であることを容易かつ確実に立証し得る証拠方法があることを知っていながら手形金の支払を拒まなかった場合に,悪意があると認められ,支払免責を受けることができない」という肢は正しいです。判例は、重過失についても、必要な調査をすれば所持人が権利者でないことを容易に知ることができ、かつ無権利を証明する証拠方法も確実に得られたのに、何の調査もせずに漫然と支払った場合をいうとしています(最判昭和44年9月12日)。

支払免責は、手形債務者でない支払担当者が支払った場合にも適用されます

40条3項は「支払ヲ為ス者」と定めていて、振出人などの手形債務者に限っていません。実際の支払は支払場所とされた銀行などの支払担当者がすることが多く、支払担当者は手形債務者から支払を委託された代理人のような地位にあり、支払を拒めば遡求が生ずるのでそれを避けるために支払わざるを得ない立場にもあることから、支払免責の規定は支払担当者が支払った場合にも適用されると解されています。「手形の支払免責は,手形債務者ではなく,支払担当者が支払をした場合には,適用されない」という肢は誤りです。

手形の支払の規律

  • 満期前の支払: 所持人は受けることを要しない(40条1項)。満期前に支払う者は自己の危険で行う(同条2項)
  • 一部支払: 所持人は拒めない(39条2項)
  • 支払免責(40条3項): 満期に支払う者は悪意・重過失が無ければ免責。裏書の連続の整否は調べる義務あり、裏書人の署名を調べる義務なし
  • 悪意: 無権利を知り、容易かつ確実に立証できる証拠方法があると知って支払うこと。重過失: 必要な調査をせず漫然と支払うこと(最判昭和44年9月12日)
  • 支払担当者(銀行)の支払にも適用

手形法39条2項

所持人ハ一部支払ヲ拒ムコトヲ得ズ

手形法40条1項

為替手形ノ所持人ハ満期前ニハ其ノ支払ヲ受クルコトヲ要セズ

手形法40条3項

満期ニ於テ支払ヲ為ス者ハ悪意又ハ重大ナル過失ナキ限リ其ノ責ヲ免ル此ノ者ハ裏書ノ連続ノ整否ヲ調査スル義務アルモ裏書人ノ署名ヲ調査スル義務ナシ

論文ではこう使う

論文では、盗難手形の所持人に支払った振出人や支払担当銀行が、真の権利者から改めて支払を求められた事案で使います。「満期に支払をする者は、裏書の連続の整否を調査すれば足り、悪意又は重大な過失が無い限り免責される(手形法40条3項、77条1項3号)。悪意とは、所持人が無権利者であることを知り、かつそれを容易かつ確実に立証し得る証拠方法があることを知りながら支払うことをいい、重過失とは、必要な調査をすれば無権利を容易に知り得たのに漫然と支払ったことをいう(判例)」と規範を示し、支払時に支払人が得ていた情報(盗難の届出・事故の連絡の有無)を当てはめます。支払担当者にも適用があることを添え、免責されれば真の権利者は無権利者に不当利得の返還を求めるしかないことにつなげます。

試験ではこう問われる

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