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用語集 / 商法 / 手形の署名と法人の手形行為

手形の署名と法人の手形行為(代表機関の表示)とは

てがたのしょめいとほうじんのてがたこうい

商法 手形行為と振出し

手形の署名とは、手形行為をする者が手形上に自分の名を記すことで、自署のほか記名捺印でもできます。法人の手形行為は、法人名と代表関係を表示したうえで代表者自身が署名してする必要があり、会社名と社印だけでは法人の手形行為になりません。

手形に責任を負うのは、手形に署名した人です。会社が手形を振り出すときは、会社そのものはペンを持てないので、代表取締役が「○○株式会社 代表取締役 △△」と書いて自分の名前で署名します。会社名と社印だけが押してあって代表者の名前が無い手形は、誰の署名も無いのと同じで、会社の手形行為になりません。逆に、会社名と個人名が並んでいて、会社の手形なのか個人の手形なのか紙面から決められないときは、受け取った人を守るため、どちらにも請求できることにしています。

会社の社長室の場面。先生が代表取締役役(札「代表取締役」)で机に向かい、約束手形の振出人欄に記入している。手形の振出人欄を拡大した吹き出し枠に3行「○○株式会社」「代表取締役」「山田太郎 ㊞」、3行目の名前の部分に深紅の下線。机の端に、会社

法人の手形行為は、法人名と代表関係の表示と代表者自身の署名でします

手形行為は署名によってしますが、法人は機関である自然人の行為を離れて別に法律行為をするわけではないので、法人の代表者が法人のために手形行為をするには、法人のためにする旨を表示して代表者自身が署名又は記名捺印しなければなりません。判例は、裏書人が会社その他の法人である場合には、法人の代表機関が法人のためにすることを明らかにして自己の署名をすることを要するとし、会社名の記載と社印の押捺だけで代表者の署名の無い裏書は会社の裏書としての効力を生じないとしています(最判昭和41年9月13日)。「甲株式会社の代表取締役乙が約束手形の裏書欄に「甲株式会社」と記載し,会社印を押印しただけで,乙の自署又は記名捺印がない場合,当該裏書は,甲株式会社の裏書としての効力を生じない」という肢は正しく、「裏書人欄に会社の名称が記載され、社印が押捺されている場合には、当該会社の代表者の自署又は記名捺印がないときであっても、その裏書は、無効とはならない」という肢は誤りです。代表関係の表示は、「代表取締役」という肩書に限らず、法人のためにされたものであることを認識できる程度の記載があれば足ります。「法人の代表者が法人のために手形行為をする場合の代表機関としての表示は,法人のためにされたものであることを認識し得る程度に手形上記載すれば足りる」という記述は、紙面から法人のためとも個人のためとも読める場合に所持人がどちらにも請求できるとする見解とも整合します。

法人の手形行為の3要素

  • 法人の表示(○○株式会社)
  • 代表関係の表示(代表取締役 など。法人のためにすることが分かる程度でよい)
  • 代表者自身の署名又は記名捺印。会社名+社印だけでは法人の手形行為にならない(最判昭和41年9月13日)

法人のためか代表者個人のためか紙面から決められないときは、所持人はどちらにも請求でき、手形外の証拠は使えません

手形は文言証券なので、振出しが法人のためにされたのか代表者個人のためにされたのかも、手形上の記載だけから一般の社会通念に従って合理的に判断し、手形外の証拠によって決めることは許されません。それでもどちらとも読める場合、判例は、手形取引の安全を保護するため、所持人は法人と代表者個人のいずれに対しても手形金を請求でき、請求を受けた者は、振出しが真実どちらの趣旨でされたかを知っていた直接の相手方に対してはその旨の人的抗弁を主張できるとしています(最判昭和47年2月10日)。「真実の趣旨を知らない受取人は,甲及び乙のいずれに対しても手形金の請求をすることができる」という肢は正しいです。この見解との整合を問う問題では、「手形上の記載を解釈するに当たっては,一般の社会通念に従ってその記載の趣旨を合理的に判断すべきである」という記述と、「その振出しが真実いずれの趣旨でされたかを知っていた直接の相手方に対し,その旨の人的抗弁を主張することができる」という記述は見解と整合します。これに対し、「法人名と個人名とが併記されている場合には,法人の代表者である旨の記載がなくても,法人の代表者が法人のために手形行為をする場合の代表機関としての表示と解釈すべきである」という記述は、どちらとも読める場合を初めから法人の手形行為と決めてしまう点で、所持人に選択を認める見解と整合しません。また、「手形上の記載を解釈するに当たっては,手形外の証拠もしんしゃくすることができる」という記述は、債務の内容を手形上の記載だけで決める前提に反するので、見解と整合しません。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に座り、証拠として大きく掲げられた手形の振出人欄「甲株式会社 乙 ㊞(個人印)」。原告席に男性(札「所持人」)、被告席に男性社長(札「甲株式会社/乙」)。法壇の前の板書「手形の記載だけで判断・

自己を表示する名称として他人の氏名を使って振り出した者は、自ら振出人として責任を負います

振出人欄に書かれた名前が他人の氏名であっても、振出した本人が自分を表す名称として(通称や芸名のように)その氏名を使ったのであれば、署名した本人の手形行為として扱われ、その者が振出人として手形金の支払義務を負うと判例はしています。「自己を表示する名称として他人の氏名を振出人欄に記載して約束手形を振り出した者は、振出人としてその手形金の支払義務を負う」という肢は正しいです。本人になりすまして他人名義を使う偽造とは違い、自分の行為として署名している点で、署名者自身の手形行為が成立するからです。名義を使われた他人は、自分の手形行為をしていないので責任を負いません。

手形法75条7号

約束手形ニハ左ノ事項ヲ記載スベシ(略)七 手形ヲ振出ス者(振出人)ノ署名

論文ではこう使う

論文では、会社の手形か代表者個人の手形かが争われる事案で使います。「法人の手形行為は、法人のためにする旨を表示して代表者自身が署名することを要する。手形は文言証券であるから、法人のためか個人のためかは手形上の記載のみから社会通念に従って判断し、手形外の事情は考慮できない。記載のみからいずれとも解し得る場合には、手形取引の安全のため、所持人は法人・個人のいずれに対しても請求でき、請求を受けた者は真実の趣旨を知っていた直接の相手方に対してのみ人的抗弁を主張できる(判例)」と規範を示し、振出人欄の記載(肩書の有無・押された印の種類)から当てはめます。所持人が直接の相手方かどうかで人的抗弁の可否が変わることを最後に確認します。

試験ではこう問われる

「手形の署名と法人の手形行為」が短答式でどう出題されてきたか、ひっかけの型4件と関係する過去問の肢14本は、無料のアカウントでログインすると読めます。

読んだあとに、商法の肢別演習を

この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。

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