準備金の額の減少と剰余金の処分とは
じゅんびきんのがくのげんしょうとじょうよきんのしょぶん
準備金の額の減少とは、株主総会の決議で、減少する準備金の額・資本金とする額・効力発生日を定めて資本準備金や利益準備金の額を減らすことで(会社法448条1項)、欠損の填補や剰余金の配当の財源にするためにもできます。剰余金の処分とは、剰余金の額を減少して資本金や準備金を増やしたり(450条・451条)、損失の処理や任意積立金の積立てをしたりすること(452条)で、いずれも株主総会の決議によります。
資本金の外側には準備金という第二の箱があり、さらにその外側に配当に回せる剰余金があります。会社は株主総会で決めて、準備金の数字を減らして剰余金に移したり、逆に剰余金を準備金や資本金に組み入れたり、剰余金の一部を将来のために任意積立金として取り分けたりできます。これらは会社の財産を外に出す行為ではなく帳簿上の数字の組替えですが、配当できる枠が広がる方向の組替えは債権者に、配当できる枠が狭まる方向の組替えは株主に影響します。そのため、どの組替えに債権者の異議手続が要り、どの機関が決めるかが細かく分けられています。
準備金の額の減少は株主総会の普通決議で、欠損の填補のためにも配当の財源にするためにもできます
株式会社は、株主総会の決議によって、減少する準備金の額、減少額の全部又は一部を資本金とするときはその旨と資本金とする額、効力発生日を定めて、準備金の額を減少することができます(448条1項)。資本金の額の減少と違って309条2項に掲げられていないので、普通決議で足ります(309条1項)。減少する額は効力発生日の準備金の額を超えることができません(448条2項)。準備金の額を減らすと、その分が剰余金になります。欠損が生じているときに準備金を取り崩して埋めることも、欠損がないときに準備金を剰余金に振り替えて配当の財源にすることも、会社法は禁じていません。「資本準備金は,欠損てん補のためにその額を減少することができる」という肢は正しく、「剰余金の分配の財源とするために資本準備金の額を減少することはできない」という肢は誤りです。株式の発行と同時に準備金の額を減少する場合で、効力発生日後の準備金の額が前を下回らないときは、資本金と同じく取締役の決定(取締役会設置会社では取締役会の決議)で行えます(448条3項)。また、剰余金の配当等を取締役会が決定する旨の定款の定めを置ける会計監査人設置会社(459条1項)では、定時株主総会での欠損填補の範囲内の準備金の額の減少を取締役会が定める旨を定款で定めることができます(459条1項2号)。
減少額の全部を資本金とするときは債権者異議手続が要らず、欠損填補の範囲内で定時株主総会が定めるときも要りません
準備金の額の減少でも、原則として債権者は異議を述べることができます(449条1項本文)。準備金も資本金と並んで配当の歯止めになる数字だからです。ただし、減少する準備金の額の全部を資本金とする場合は、449条1項本文のかっこ書で初めから除かれています。準備金という拘束から、より減らしにくい資本金という拘束へ数字が移るだけで、債権者を害するおそれがないからです。「会社が準備金の額を減少する場合において,その減少額の全部を資本金とするときは,その会社の債権者は,その会社に対し,準備金の額の減少について異議を述べることができない」という肢と「資本準備金の額の減少をする場合において,減少する資本準備金の額の全部を資本金とするときは,債権者保護手続を経ることを要しない」という肢は正しいです。さらに、準備金の額のみを減少する場合で、定時株主総会において定め、かつ減少額がその定時株主総会の日における欠損の額を超えないときも、債権者異議手続は不要です(449条1項ただし書1号・2号)。欠損を埋めるだけで配当の原資は増えないからです。資本金の額の減少にはこうした例外がなく、欠損の範囲内でも債権者は異議を述べられる点が違います。
債権者異議手続の要否(449条1項)
- 資本金の額の減少: 常に要る(欠損填補の範囲内でも、株式の発行と同時でも)
- 準備金の額の減少(原則): 要る
- 減少する準備金の額の全部を資本金とする: 要らない(本文かっこ書)
- 準備金の額のみを減少し、定時株主総会で定め、欠損の額を超えない: 要らない(ただし書)
- 剰余金の額を減少して資本金・準備金を増やす: 要らない(配当の枠が狭まる方向なので449条の対象外)
準備金の額の減少の無効は訴えによらずに主張でき、訴えに限られるのは資本金の額の減少だけです
会社の組織に関する行為の無効の訴え(828条1項)に列挙されているのは資本金の額の減少(5号)であって、準備金の額の減少は列挙されていません。そのため、準備金の額の減少の手続に瑕疵があるときは、一般原則に戻り、訴えによらなくても、また6か月の期間制限もなく、その無効を主張することができます。「株式会社における準備金の額の減少は,訴えによらなくてもその無効を主張することができる」という肢は正しく、「資本準備金の額の減少の手続に瑕疵がある場合,その無効は,会社法が定める会社の組織に関する行為の無効の訴えをもってのみ,主張することができる」という肢と「資本金又は準備金の額の減少は,その手続に違法がある場合であっても,当然には無効とならず,その無効は,訴えをもってのみ主張することができる」という肢は誤りです。
剰余金の額を減少して資本金や準備金を増やすのはいずれも株主総会の普通決議で、取締役会の決議ではできず、特別決議も要りません
株式会社は、剰余金の額を減少して資本金の額を増加することができ、減少する剰余金の額と効力発生日を株主総会の決議で定めます(450条1項・2項)。剰余金の額を減少して準備金の額を増加する場合も同じで、株主総会の決議によらなければなりません(451条1項・2項)。剰余金は本来株主に配当されうる数字なので、それを配当できない資本金や準備金に移すことは株主の利益の処分に当たり、取締役会に任せず株主総会に決めさせています。他方で会社財産が外に出る方向ではないので、309条2項に掲げられておらず、特別決議は要りません。「株式会社が剰余金の額を減少して,資本金の額を増加するには,株主総会の特別決議によらなければならない」という肢は誤りです。資本金への組入れと準備金への組入れで決議機関に差はないので、「取締役会設置会社において,剰余金の額を減少して資本金の額を増加することは,株主総会の決議によらなければならないが,剰余金の額を減少して準備金の額を増加することは,取締役会の決議によりすることができる」という肢、「取締役会設置会社が剰余金の額を減少する場合において,その減少額の全部を準備金とするときは,取締役会の決議によって剰余金の額の減少をすることができる」という肢、「取締役会設置会社にあっては,取締役会の決議により,その他資本剰余金の額を減少して資本準備金の額を増額することができる」という肢、「株式会社は,株主総会の決議によることなく,剰余金の額を減少してその分を準備金とすることができる」という肢はいずれも誤りです。
損失の処理や任意積立金の積立てなどの剰余金の処分も株主総会の決議によりますが、定時株主総会に限られません
株式会社は、株主総会の決議によって、損失の処理、任意積立金の積立てその他の剰余金の処分をすることができます(452条)。剰余金の配当や会社財産を処分するものは除かれ、剰余金の内訳を組み替える処分がここに入ります。条文は「株主総会の決議によって」としか定めておらず、定時株主総会に限っていないので、臨時株主総会で任意積立金を積み立てることもできます。「会社が剰余金の処分として任意積立金の積立てをする場合には,定時株主総会の決議によらなければならない」という肢は誤りです。剰余金の配当等を取締役会が決定する旨の定款の定めを置ける会計監査人設置会社では、452条後段の事項を取締役会が定める旨を定款で定めることができます(459条1項3号)。
会社法448条1項
株式会社は、準備金の額を減少することができる。この場合においては、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。一 減少する準備金の額 二 減少する準備金の額の全部又は一部を資本金とするときは、その旨及び資本金とする額 三 準備金の額の減少がその効力を生ずる日
会社法450条1項
株式会社は、剰余金の額を減少して、資本金の額を増加することができる。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。一 減少する剰余金の額 二 資本金の額の増加がその効力を生ずる日
会社法450条2項
前項各号に掲げる事項の決定は、株主総会の決議によらなければならない。
会社法452条
株式会社は、株主総会の決議によって、損失の処理、任意積立金の積立てその他の剰余金の処分(前目に定めるもの及び剰余金の配当その他株式会社の財産を処分するものを除く。)をすることができる。この場合においては、当該剰余金の処分の額その他の法務省令で定める事項を定めなければならない。
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