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用語集 / 民事訴訟法

民事訴訟法の用語集

短答式で問われる民事訴訟法の用語を章ごとに。全182語。定義・条文・判例と図解で、肢の正誤を判断する根拠を押さえます。

民訴の基礎と訴訟の構造

5語

訴訟と非訟(非訟事件の裁判と公開・対審の保障)

訴訟とは、当事者が主張する権利義務の存否を、公開の法廷における対審と判決によって終局的に確定する手続です。非訟とは、権利義務の存在を前提に、裁判所が後見的な立場から裁量でその具体的内容を形成する手続で、非公開で職権により事実を調べ、決定(家事事件では審判)の形で裁判します。

民事訴訟の審理の基本構造(処分権主義・弁論主義・職権進行主義・職権探知の役割分担)

民事訴訟の審理の基本構造とは、訴訟の開始・審判の範囲・訴訟の終了を当事者が決め(処分権主義)、判決の基礎となる事実と証拠の収集を当事者の権能と責任に委ね(弁論主義)、手続の進行は裁判所が主導する(職権進行主義)という役割分担のことです。公益性の高い事項と人事訴訟では、裁判所が職権で事実と証拠を集めます(職権探知主義)。

信義則と訴訟上の権能の濫用(2条・訴権の濫用・攻撃防御方法の提出と信義則)

信義則とは、当事者は信義に従い誠実に民事訴訟を追行しなければならないという原則(2条)です。訴訟上の権能の濫用とは、訴えの提起・忌避の申立て・管轄の選択などの訴訟上の権能を、制度の趣旨に反する目的で行使することで、信義則に反するものとして効力が否定されます。

人事訴訟の特則(職権探知・自白規定の不適用・処分権主義の制限・訴訟能力・検察官の被告適格)

人事訴訟とは、婚姻の無効・取消し、離婚、認知、実親子関係の存否の確認、離縁などの身分関係の形成又は存否の確認を目的とする訴えで、家庭裁判所が扱います。人事訴訟の特則とは、身分関係が公益にかかわることから、人事訴訟法が民事訴訟法の弁論主義・処分権主義・訴訟能力などの規定を修正していることです。

手続のIT化(令和4年改正)と旧規定で出た肢の読み替え

手続のIT化とは、令和4年の民事訴訟法改正により、口頭弁論や弁論準備手続をウェブ会議・電話会議で行えるようにし、判決書・調書・訴訟記録を電子化し、訴えの提起や送達をオンラインでできるようにしたことです。改正前の規定を前提にした過去問の肢は、現行の条文で読み替える必要があります。

裁判所

8語

裁判所の構成と権限分担(裁判長・受訴裁判所・受命裁判官・受託裁判官・裁判所書記官)

裁判所の構成と権限分担とは、事件を審理する受訴裁判所、合議体を代表して訴訟を指揮する裁判長、合議体の構成員から指定されて一部の職務を行う受命裁判官、他の裁判所に嘱託されて職務を行う受託裁判官、記録・送達などの事務を固有の権限で行う裁判所書記官のそれぞれについて、民事訴訟法が条文の主語を書き分けて、誰が何をするかを定めていることです。

除斥・忌避・回避(23条〜27条)

除斥とは、裁判官が当事者や事件と法律の定める一定の関係にあるときに、法律上当然にその事件の職務の執行から排除されることです(23条)。忌避とは、裁判の公正を妨げるべき事情がある裁判官を当事者の申立てに基づく裁判で職務から排除することで(24条)、回避とは、除斥や忌避の事由がある裁判官が許可を得て自ら職務を避けることです。

管轄の種類と基準時(職分管轄・事物管轄・土地管轄、専属管轄と任意管轄、15条)

管轄とは、ある事件の裁判権を、どの裁判所が行使するかの分担の定めです。職分管轄(裁判所の職務の種類による分担)、事物管轄(第一審を簡易裁判所と地方裁判所のどちらが担当するか)、土地管轄(同じ種類の裁判所のどこが担当するか)に分かれ、法律が公益から一つの裁判所に限ったものを専属管轄、合意や応訴で変えられるものを任意管轄といいます。

普通裁判籍と特別裁判籍(4条・5条・7条)

普通裁判籍とは、事件の種類を問わず被告に対する訴えをその地の裁判所に起こせる土地管轄の根拠で、人は住所、法人は主たる事務所又は営業所によって定まります(4条)。特別裁判籍とは、義務履行地・不法行為地・不動産所在地のように、事件の種類に応じて普通裁判籍に加えて認められる土地管轄の根拠で(5条)、一の訴えで数個の請求をするときの併合請求の裁判籍(7条)もその一つです。

合意管轄(11条:専属的合意と付加的合意・方式・合意の効力が及ぶ者)

合意管轄とは、当事者が第一審に限り、一定の法律関係に基づく訴えについて書面又は電磁的記録でした合意によって生じる管轄です(11条)。合意した裁判所だけに管轄を認め法定管轄を排除するものを専属的合意、法定管轄に加えて管轄を認めるものを付加的合意といいます。

応訴管轄(12条)

応訴管轄とは、管轄のない第一審裁判所に訴えが起こされても、被告が管轄違いの抗弁を提出しないで本案について弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときに、その裁判所に生じる管轄です(12条)。

移送の種類と要件(16条〜20条・274条)

移送とは、ある裁判所に係属している訴訟を、裁判によって他の裁判所に移すことです。管轄違いによる移送(16条1項)、遅滞を避ける等のための移送(17条)、簡易裁判所の裁量移送(18条)、申立てと同意による必要的移送(19条1項)、簡易裁判所の不動産訴訟の必要的移送(19条2項)、簡易裁判所の反訴による移送(274条)があります。

移送の裁判の効力と不服申立て(21条・22条・309条)

移送の裁判の効力とは、確定した移送の裁判が移送を受けた裁判所を拘束し(22条1項)、移送を受けた裁判所が更に事件を他の裁判所に移送できず(同条2項)、訴訟が初めから移送を受けた裁判所に係属していたものとみなされる(同条3項)ことです。移送の決定と移送の申立てを却下した決定には、即時抗告で不服を申し立てることができます(21条)。

当事者

14語

当事者の確定(表示説・意思説・行動説、氏名冒用訴訟・死者名義訴訟・表示の訂正・法人格否認)

当事者の確定とは、その訴訟の原告と被告が誰であるかを決めることです。当事者は、訴え又は訴えられることによって判決の名宛人となる者をいい、誰が当事者かは訴状の記載全体から合理的に解釈して決めるのが通説と実務です。

当事者能力(28条:胎児・清算法人・民法上の組合)

当事者能力とは、民事訴訟の当事者になることができる一般的な資格のことです。訴訟法に特別の定めがある場合を除いて民法その他の法令に従い(28条)、権利能力のある自然人と法人のほか、代表者又は管理人の定めがある法人でない社団・財団にも認められます(29条)。

法人でない社団の当事者能力と財産関係の訴訟(29条)

法人でない社団とは、法人格はないものの、団体としての組織をそなえ、多数決の原則が行われ、構成員が変わっても存続し、代表の方法・総会の運営・財産の管理など団体としての主要な点が確定している団体のことです。代表者又は管理人の定めがあれば、その名において訴え、又は訴えられることができます(29条)。

訴訟能力と制限行為能力者(31条・32条・人訴13条)

訴訟能力とは、自ら単独で有効に訴訟行為をし、又は受けるために必要な能力のことです。民法の行為能力を基本にしつつ、未成年者と成年被後見人は法定代理人によらなければ訴訟行為ができず(31条)、被保佐人と一定の被補助人は同意を得て訴訟行為をするなど、制限行為能力者ごとに民事訴訟法と民法が扱いを定めています。

訴訟能力の欠缺の効果(無効・追認・補正命令・上訴)

訴訟能力の欠缺の効果とは、訴訟能力を欠く者の訴訟行為が取り消せる行為ではなく無効となり、能力を得た本人又は法定代理人の追認によって行為の時にさかのぼって有効になる(34条2項)という扱いのことです。裁判所は期間を定めて補正を命じ、能力の有無の判断には本人が上訴で争うことができます。

法定代理人と特別代理人(35条・36条・親権者の共同代理)

法定代理人とは、本人の意思によらずに法律の規定で代理権を持ち、訴訟能力を欠く本人に代わって訴訟を追行する者のことで、親権者・後見人などの実体法上の法定代理人がそのまま訴訟法上の法定代理人になります(28条)。特別代理人とは、法定代理人がいないか代理権を行えない場合に、受訴裁判所の裁判長がその訴訟限りで選任する法定代理人のことです(35条)。

法人の代表者(37条:訴状の記載・送達・当事者尋問・表見法理・職務代行者・代表権消滅の通知)

法人の代表者とは、法人に代わって訴訟行為をし、又は受ける者のことで、株式会社では代表取締役などがこれに当たります。37条により法定代理及び法定代理人の規定が準用されるので、訴状・判決書への記載、送達、尋問の方式、代表権消滅の通知、追認と補正は法定代理人と同じに扱われます。

訴訟代理人の資格と権限(54条〜58条:弁護士代理の原則・特別委任事項・個別代理・更正権・代理権の不消滅)

訴訟代理人とは、当事者の委任や法令に基づいて、当事者の名で当事者のために訴訟行為をする代理人のことです。訴訟委任による訴訟代理人は原則として弁護士でなければならず(54条1項)、その権限の範囲・特別委任事項・個別代理・当事者による更正・代理権の不消滅は55条から58条が定めています。

訴訟代理権の範囲と弁護士法25条違反の訴訟行為(和解権限の範囲・訴訟行為の排除)

訴訟代理権の範囲とは、訴訟代理人が委任を受けた事件についてどこまで訴訟行為ができるかのことで、特に和解の権限が訴訟物以外の権利関係にどこまで及ぶかが問題になります。弁護士法25条違反の訴訟行為とは、相手方の協議を受けて賛助した事件など弁護士が職務を行ってはならない事件でした訴訟行為のことで、相手方の異議があれば裁判所が排除します。

当事者適格の意義と判断(給付・確認・形成の訴え、係争物の譲渡、法人の内部紛争)

当事者適格とは、特定の訴訟物について、当事者として訴訟を追行し本案判決を求め又は受けることができる資格のことで、訴訟追行権ともいいます。原告の側を原告適格、被告の側を被告適格といい、欠ければ訴えは却下されます。

債権者代位訴訟(法定訴訟担当:被保全債権の存否・債務者の地位・重複起訴・判決効)

債権者代位訴訟とは、債権者が自己の債権を保全するため、債務者に属する権利(被代位権利)を自己の名で第三債務者に対して行使する訴訟のことです(民法423条)。債権者が他人の権利について当事者となる法定訴訟担当であり、訴訟物は被代位権利、被保全債権の存在は原告適格を基礎づける訴訟要件です。

遺言執行者の当事者適格

遺言執行者の当事者適格とは、遺言執行者が遺言の執行に必要な範囲で相続財産の管理処分権を持つことから、その職務の範囲内の訴訟について、相続人に代わって自分の名で原告又は被告となる資格のことです。遺言執行者は法定訴訟担当の一つに当たります。

法定訴訟担当の類型と任意的訴訟担当(差押債権者の取立訴訟・破産管財人・業務執行組合員・支配人との区別)

訴訟担当とは、権利義務の帰属主体に代わって、第三者が自己の名で当事者となり、その判決の効力が本人に及ぶ場合のことです(115条1項2号)。法定訴訟担当とは法律の規定によるもの、任意的訴訟担当とは本人の授権によるものをいいます。

選定当事者(30条)

選定当事者とは、共同の利益を有する多数の者が、その中から全員のために原告又は被告となるべき者として選定した者のことです(30条)。選定した者を選定者といい、選定当事者は訴訟代理人ではなく自ら当事者として訴訟を追行し、その判決の効力は選定者に及びます。

訴えの提起

17語

訴えの3類型(給付・確認・形成)と請求の趣旨

訴えの3類型とは、原告が求める判決の中身によって訴えを分けた、給付の訴え・確認の訴え・形成の訴えの三つをいいます。給付の訴えは被告に給付を命じる判決を、確認の訴えは権利や法律関係の存否を確認する判決を、形成の訴えは判決の確定によって法律関係を変動させる判決を求めるもので、原告はどれを求めるかを訴状の請求の趣旨で示します。

形式的形成訴訟と共有物分割の訴え

形式的形成訴訟とは、判決の確定によって法律関係を変動させる形成の訴えのうち、どういう要件でどういう内容の判決をするかが法律に定められておらず、裁判所が裁量で合目的的に内容を決めるものをいいます。共有物分割の訴えと父を定めることを目的とする訴えが代表例で、判例は筆界確定の訴えもこれに当たるとしています。

筆界(境界)確定の訴え

筆界(境界)確定の訴えとは、相隣接する土地の筆界(登記された一筆の土地の範囲を区画する公法上の境界)が不明であったり争われていたりする場合に、裁判によって新たにその筆界を定めることを求める訴えです。境界確定の訴えとも呼ばれ、判例は土地所有権の範囲の確認ではない形式的形成訴訟としています。

訴訟物と訴訟物論(旧訴訟物理論・新訴訟物理論・1個の訴訟物の範囲)

訴訟物とは、原告が訴えによって主張し、裁判所が判決で判断する対象となる権利や法律関係をいいます。訴訟物論は、どこまでを一個の訴訟物とみるかをめぐる議論で、判例・実務は実体法上の請求権ごとに訴訟物を数える旧訴訟物理論に立ち、学説では一回の給付を求める法的地位を一個の訴訟物とする新訴訟物理論が有力です。

一部請求(訴訟物の範囲・明示の要否・時効・相殺と過失相殺の外側説・残部による相殺)

一部請求とは、一個の金銭債権のうち数量的な一部だけについて判決を求める訴えをいいます。判例は、一部であることを明示した場合には訴訟物はその一部に限られるとし、相殺の抗弁や過失相殺は債権の総額から差し引いて判断する外側説を採っています。

訴状の必要的記載事項と請求の特定(134条・規則53条・簡裁の紛争の要点)

訴状の必要的記載事項とは、訴状に必ず書かなければならない事項で、当事者及び法定代理人と、請求の趣旨及び原因をいいます(134条2項)。請求の原因は請求を特定するのに必要な事実をいい、請求の趣旨と合わせて訴訟物を他と区別できる程度に特定すれば足ります。

訴状審査と訴状却下(137条〜138条・140条)

訴状審査とは、訴状が提出されたときに、裁判長が必要的記載事項の記載、手数料の納付、送達の可否といった形式面を点検することをいいます。不備があれば期間を定めて補正を命じ(手数料は裁判所書記官が納付を命じる処分をします)、補正されなければ裁判長が命令で訴状を却下します。これを訴状却下といいます。

訴訟要件の意義と審理(職権調査・判断の順序・本案判決との関係・中間判決)

訴訟要件とは、裁判所が請求の当否について本案判決をするために必要な要件をいい、裁判権・当事者能力・当事者適格・訴えの利益・重複起訴でないことなどがあります。一つでも欠ければ訴えは却下され、多くは裁判所が職権で調べる職権調査事項です。

給付の訴えの利益(現在給付・執行障害・時効の完成猶予のための再訴)

給付の訴えの利益とは、給付の訴えについて判決を求めることが正当と認められる利益のことです。履行期の到来した請求権を主張する現在給付の訴えには原則として認められ、執行が事実上できない事情があっても失われませんが、すでに確定した給付判決がある場合には、時効の完成猶予のためにほかに方法がないときなどに限って認められます。

将来給付の訴え(135条:請求適格と事前請求の必要)

将来給付の訴えとは、事実審の口頭弁論終結時よりも後に履行期が到来する給付を求める訴えで、あらかじめその請求をする必要がある場合に限って起こせます(135条)。継続的不法行為による将来の損害などでは、判例の示す基準を満たす請求権でなければ請求権としての適格がありません。

確認の利益(方法選択の適否・対象選択の適否・即時確定の利益)

確認の利益とは、確認の訴えについて本案判決をすることが紛争解決のために有効適切であると認められる利益をいいます。判例・通説は、確認という方法を選ぶことの適否、確認の対象の選び方の適否、即時確定の利益(原告の権利・地位に現存する危険・不安を除く必要)の三つの観点から判断します。

相続をめぐる確認の訴え(遺言無効・遺産確認・具体的相続分・特別受益・相続人の地位・遺言者生存中)

相続をめぐる確認の訴えとは、相続の開始後に共同相続人などの間で、遺言の効力、遺産の範囲、相続分、相続人の地位といった遺産分割の前提となる事項について確認を求める訴えをいいます。遺言無効確認の訴えと遺産確認の訴えは現在の法律関係の確認として確認の利益が認められ、具体的相続分や特別受益財産であることの確認には確認の利益がないとされます。

証書真否確認の訴え(134条の2)

証書真否確認の訴えとは、法律関係を証する書面が作成者とされる人の意思に基づいて作成されたかどうか(成立の真否)の確認を求める訴えをいいます(134条の2)。確認の対象は原則として現在の権利・法律関係に限られるところ、書面の成立という事実の確認を例外として認めたものです。

形成の訴えの利益(後婚取消と離婚・決議取消訴訟と事情の変化)

形成の訴えの利益とは、形成の訴えについて判決を求めることが正当と認められる利益のことです。形成の訴えは法律に定めのある場合に限って許されるので、法定の要件を満たせば原則として利益がありますが、訴訟の係属中の事情の変化によって形成判決で法律関係を変える実益がなくなると、利益は失われます。

重複起訴の禁止(142条:事件の同一性・債務不存在確認と給付の訴え・反訴への移行)

重複起訴の禁止とは、裁判所に係属している事件について、当事者がさらに訴えを提起することを禁じる原則をいいます(142条)。二重起訴の禁止とも呼ばれ、事件の同一性は当事者の同一性と審判対象の同一性によって判断され、違反した後の訴えは不適法として却下されます。

相殺の抗弁と重複起訴(抗弁先行型・抗弁後行型・本訴反訴・訴訟上の相殺の再抗弁)

相殺の抗弁と重複起訴とは、別の訴訟で請求している債権を自働債権として相殺の抗弁を主張することが、重複起訴の禁止(142条)の趣旨に触れて許されないかという問題をいいます。相殺の判断には既判力が生じる(114条2項)ため、判例は、別訴で訴訟物となっている債権による相殺の抗弁を許さない一方、本訴と反訴の間や明示的一部請求の残部による相殺は許しています。

訴え提起の効果(訴訟係属・時効の完成猶予と更新・期間の遵守)

訴え提起の効果とは、訴えを提起したことによって生じる訴訟法上・実体法上の効果をいい、訴状が被告に送達された時に生じる訴訟係属と、訴状を裁判所に提出した時に生じる時効の完成猶予と法律上の期間の遵守があります(147条)。

審理の原則と手続

31語

口頭弁論の諸原則(公開主義・双方審尋主義・口頭主義・必要的口頭弁論・公開停止)

口頭弁論の諸原則とは、判決の基礎となる口頭弁論を、公開の法廷で(公開主義)、当事者双方に平等に主張の機会を与えて(双方審尋主義)、口頭で陳述されたものだけを判断の資料として(口頭主義)行うという審理の方式の原則のことです。判決は原則として口頭弁論を経てしなければならず(必要的口頭弁論)、決定で完結すべき事件では口頭弁論をするかどうかを裁判所が定めます。

直接主義と弁論の更新(249条)

直接主義とは、弁論を聴き証拠を調べた裁判官自身が判決をするという原則で、判決はその基本となる口頭弁論に関与した裁判官がします(249条1項)。弁論の更新とは、裁判官が代わったときに当事者が従前の口頭弁論の結果を陳述して、新しい裁判官のもとで審理を引き継ぐ手続のことです(249条2項)。

処分権主義と申立事項・判決事項(246条:一部認容・質的一部認容・引換給付・限定承認・不執行合意)

処分権主義とは、訴訟を始めるか、何について・どの範囲で判決を求めるか、判決によらずに終わらせるかを当事者が決めるという原則です。申立事項とは原告が判決を求めた審判の対象と範囲のことで、裁判所はその範囲を超え、又はそれと異なる事項について判決をすることができません(246条)。

債務不存在確認訴訟の申立事項と一部認容

債務不存在確認訴訟とは、債務者とされる者が原告となり、債権者と主張する者を被告として、債務の全部又は一定額を超える部分が存在しないことの確認を求める訴えのことです。一定額を超える部分の不存在確認では、債権の総額から原告が自認する額を控除した残額の部分が申立事項になり、裁判所はその範囲で一部認容判決をします。

弁論主義の内容と主要事実・間接事実(3つのテーゼ)

弁論主義とは、判決の基礎となる事実と証拠の収集を当事者の権能と責任に委ねる原則のことです。当事者の主張しない事実は判決の基礎にできず、争いのない事実はそのまま基礎にし、証拠は原則として当事者が申し出たものに限るという3つの内容からなり、主要事実についてだけ働きます。

当事者からの主張の要否(所有権の来歴・代理・公序良俗・過失相殺・弁済充当・否認の理由として現れた事実)

当事者からの主張の要否とは、裁判所が判決の基礎とする事実のうち、どの事実に当事者の主張が必要で、どの事実なら主張がなくても認定・判断できるかという問題のことです。主張が必要なのは法律効果を直接基礎づける主要事実で、否認の理由として現れた間接事実や法的評価には主張を要しません。

主張共通の原則と相手方の援用しない不利益陳述(先行自白)

主張共通の原則とは、主要事実はどちらの当事者が主張したものでも判決の基礎にでき、主張責任を負う当事者から主張されている必要はないという原則のことです。相手方の援用しない自己に不利益な陳述も判決の基礎になりますが、相手方が援用するまでは裁判上の自白は成立せず、援用されると先行自白として自白が成立します。

権利抗弁(留置権・同時履行・建物買取請求・限定承認)

権利抗弁とは、留置権や同時履行の抗弁権のように、その発生原因となる事実が弁論に出ているだけでは足りず、権利者が権利を行使する意思を表明して初めて裁判所が判決の基礎にできる抗弁のことです。通常の抗弁である事実抗弁は、その事実がどちらの当事者から出ていても判決の基礎になります。

職権調査事項・職権探知主義・職権証拠調べ

職権調査事項とは、当事者の申立てや指摘がなくても裁判所が自ら調査しなければならない事項のことで、重複起訴の禁止や既判力の存在など公益性の強い訴訟要件がこれに当たります。職権探知主義とは、裁判所が当事者の主張しない事実をしん酌し、職権で証拠調べをすることができる審理の方式で、人事訴訟や公益性の強い訴訟要件の審理でとられます。

釈明権と釈明義務(149条)

釈明権とは、裁判長が口頭弁論の期日又は期日外において、訴訟関係を明瞭にするため、事実上及び法律上の事項に関し当事者に問いを発し、又は立証を促すことができる権能のことです(149条1項)。釈明義務とは、一定の場合に裁判所が釈明権を行使しなければならず、これを怠ると判決が違法になるという義務のことです。

釈明処分(151条)

釈明処分とは、裁判所が訴訟関係を明瞭にするため、当事者本人の出頭、当事者のため事務を処理する者の陳述、文書の提出・留置き、検証・鑑定、調査の嘱託を命じることができる処分のことです(151条1項)。弁論準備手続にも準用されます。

訴訟指揮と当事者の関与の一覧(申立て・同意・意見聴取・異議がないこと・職権でできる行為)

訴訟指揮とは、裁判所(裁判長)が訴訟手続を主導して進める権能のことで、当事者の関与は、行為ごとに、当事者の申立て・同意・意見聴取・異議がないこと、のどれを要するか、又は裁判所が職権だけでできるかが条文で決まっています。

民事訴訟法上の制裁の一覧(真実擬制・過料・訴訟費用負担・却下・濫上訴の金銭納付)

民事訴訟法上の制裁とは、訴訟を遅らせたり証拠調べに協力しなかったりした当事者や第三者に、法律が科す不利益のことです。攻撃防御方法の却下、遅滞による訴訟費用の負担、訴状の却下、濫用的な控訴への金銭の納付命令、相手方の主張の真実擬制、過料があり、誰が何をしたかで制裁の種類が決まっています。

弁論の制限・分離・併合(152条)

弁論の制限とは、弁論が多岐にわたるときに特定の事項だけについて弁論をさせる措置のことで、弁論の分離とは併合されている請求を別々の手続に分けること、弁論の併合とは別々に係属している訴訟を一つの手続にまとめることです。いずれも裁判所が訴訟指揮として命じ、又は取り消すことができます(152条1項)。

口頭弁論の終結と再開・判決の言渡し

口頭弁論の終結とは、訴訟が裁判をするのに熟したと裁判所が判断して審理を締めくくることで、口頭弁論の再開とは、終結した口頭弁論を判決前に裁判所が再び開くことです(153条)。判決の言渡しとは、終結後に裁判長が主文を朗読して判決を告げることで、判決はこれによって効力を生じます(250条)。

準備書面(161条〜163条・規則)

準備書面とは、口頭弁論を準備するため、当事者が攻撃防御の方法と相手方の主張に対する陳述を記載して、あらかじめ裁判所に提出し相手方に直送する書面のことです(161条)。提出しただけでは判決の基礎にならず、口頭弁論で陳述して初めて訴訟資料になります。

準備的口頭弁論(164条〜167条)

準備的口頭弁論とは、争点及び証拠の整理を目的として開かれる口頭弁論のことです。口頭弁論そのものなので、公開の法廷で受訴裁判所が行い、証人尋問を含め口頭弁論でできる行為をすべて行うことができます。

弁論準備手続(168条〜174条)

弁論準備手続とは、争点及び証拠の整理を行うため、当事者の意見を聴いて事件を付し、当事者双方が立ち会うことのできる非公開の期日で、準備書面の提出や文書の証拠調べなどを行う手続です。受命裁判官に行わせることができ、その結果は口頭弁論で陳述しなければなりません。

書面による準備手続と進行協議期日

書面による準備手続とは、当事者の意見を聴いて事件を付し、当事者の出頭なしに準備書面の提出等と電話会議での協議によって争点及び証拠の整理をする手続です。進行協議期日とは、民事訴訟規則に基づき、証拠調べと争点との関係の確認など訴訟の進行に必要な事項を協議する期日です。

争点整理三手続の比較(準備的口頭弁論・弁論準備手続・書面による準備手続の対照表)

争点整理三手続とは、争点及び証拠の整理のために用意された準備的口頭弁論・弁論準備手続・書面による準備手続のことです。準備的口頭弁論だけが口頭弁論であることから、公開の有無、意見聴取の要否、主宰する者、できる証拠調べ、結果の陳述の要否に違いが生じます。

適時提出主義と時機に後れた攻撃防御方法の却下(156条・157条)

適時提出主義とは、攻撃又は防御の方法は訴訟の進行状況に応じ適切な時期に提出しなければならないという原則です(156条)。時機に後れた攻撃防御方法の却下とは、当事者が故意又は重大な過失により時機に後れて提出した攻撃防御方法で、訴訟の完結を遅延させるものを、裁判所が申立てにより又は職権で却下することです(157条1項)。

最初の期日の欠席と陳述擬制(158条・170条・277条・297条)

陳述擬制とは、原告又は被告が最初にすべき口頭弁論の期日に出頭せず、又は出頭しても本案の弁論をしないとき、その者が提出した訴状・答弁書その他の準備書面に記載した事項を陳述したものとみなし、出頭した相手方に弁論をさせることです(158条)。

双方欠席の効果(取下げ擬制・審理の現状に基づく判決・欠席当事者の申出による尋問)

双方欠席とは、当事者双方が口頭弁論又は弁論準備手続の期日に出頭しないことです。1か月以内に期日指定の申立てがないか連続2回欠席すれば訴えの取下げがあったものとみなされ(263条)、審理の現状に基づいて終局判決をすることもできます(244条)。

期日・期間と呼出し(93条〜97条:期日の指定・告知・言渡期日・訴訟行為の追完)

期日とは、裁判所と当事者その他の関係人が会して訴訟行為をするために定められた日時で、裁判長が指定し、電子呼出状の送達や出頭した者への告知などで呼び出します。訴訟行為の追完とは、責めに帰することができない事由で不変期間を守れなかった当事者が、事由の消滅後1週間以内にその訴訟行為をすることです(97条)。

送達の方法と送達場所(交付送達・補充送達・差置送達・就業場所送達・出会送達・書留郵便に付する送達・送達場所の届出)

送達とは、裁判所が当事者その他の関係人に訴訟上の書類を法定の方式で届けることです。交付送達が原則で、補充送達・差置送達・就業場所での送達・出会送達・書留郵便等に付する送達と段階的に方法が用意され、送達場所は住所等か届け出られた場所です。

送達の瑕疵と再審・上訴の追完(補充送達の利害対立・送達の不正取得)

送達の瑕疵とは、送達が法定の方式に反していたり、有効な送達でも書類が本人に届かなかったりして、受送達者が手続に関与できなかったことです。判例は、補充送達の効力と、本人が訴訟を知らないまま判決が確定したことの救済(再審・上訴の追完)とを分けて扱っています。

公示送達(110条〜113条)

公示送達とは、送達をすべき場所が知れない場合などに、裁判所書記官が送達すべき書類を保管していつでも交付する旨をインターネットと裁判所の掲示場等で公示し、一定期間の経過によって送達の効力を生じさせる送達の方法です(110条〜113条)。

訴訟手続の中断と受継(124条〜132条)

訴訟手続の中断とは、当事者の死亡や法定代理権の消滅など訴訟を追行する者に交代が必要な事由が生じたとき、新しい追行者が手続に関与できるまで訴訟手続が法律上当然に停止することです。受継とは、承継人などが中断した手続を受け継いで再開させることです(124条〜132条)。

異議権(責問権)の放棄と喪失(90条)

異議権(責問権)とは、裁判所や相手方の訴訟行為に訴訟手続に関する規定の違反があるとき、異議を述べてその効力を争う当事者の権利です。違反を知り又は知ることができたのに遅滞なく異議を述べなければ失われ(喪失)、あらかじめでなければ放棄もできますが、公益にかかわる規定の違反は放棄も喪失もできません(90条)。

訴訟記録の閲覧・謄写と秘密保護のための閲覧等の制限(91条・92条)

訴訟記録の閲覧とは、何人も裁判所書記官に請求して訴訟記録を見ることで、謄写は当事者と利害関係を疎明した第三者に限られます(91条)。秘密保護のための閲覧等の制限とは、私生活上の重大な秘密や営業秘密が記載された部分について、当事者の申立てにより閲覧等をできる者を当事者に限ることです(92条)。

専門委員と専門的知見の補充手段(92条の2〜92条の7・鑑定・調査の嘱託)

専門委員とは、専門的な知見を要する事件で、争点や証拠の整理、証拠調べ、和解などの手続に関与し、裁判所に専門的な知見に基づく説明をする非常勤の専門家です(92条の2〜92条の7)。説明は裁判所の理解を助けるためのもので、証拠資料にはなりません。

訴訟行為・攻撃防御

17語

訴訟行為の性質と私法規定の適用(条件・意思表示の瑕疵・撤回)

訴訟行為とは、訴えの提起・主張・証拠の申出・訴えの取下げなど、訴訟法上の効果を生じる当事者の行為のことです。手続の安定のため、訴訟行為には原則として条件を付けられず、民法の意思表示の規定もそのままは適用されませんが、訴訟内の条件は許され、刑事上罰すべき他人の行為による訴訟行為は効力を否定されます。

訴訟上の形成権の行使と相殺の抗弁の特殊性(予備的相殺・訴訟上の相殺の再抗弁・判決後の相殺)

訴訟上の相殺とは、訴訟の中で相手方の請求に対する防御として相殺の意思表示をし、その効果を主張することです。訴訟上の相殺は、受働債権の存在が認められることを前提とする予備的な抗弁で、自働債権の判断に既判力が生じるため、判断の順序・上訴・再抗弁・判決後の行使について特別な扱いを受けます。

否認と抗弁の区別(単純否認・積極否認・抗弁・再抗弁)

否認とは、相手方の主張した事実の存在を認めないことで、理由を付けずにする単純否認と、相手方の主張と両立しない事実を挙げてする積極否認(理由付き否認)があります。抗弁とは、請求原因事実と両立し、請求原因から生じる法律効果の発生を障害し、消滅させ、又は阻止する事実の主張で、これに対する同じ構造の主張を再抗弁といいます。

要件事実と主張立証責任の分配(売買代金・貸金・所有権に基づく明渡し・消滅時効・賃貸借の解除)

要件事実とは、権利の発生・障害・消滅・阻止という法律効果を定める実体法の要件に当たる具体的な事実のことです。主張立証責任の分配とは、どの要件事実をどちらの当事者が主張し証明しなければならないかの振り分けで、その効果を主張する側が負うのが原則です。

裁判上の自白の成立要件(口頭弁論等での陳述・相手方の主張と一致・不利益・主要事実)

裁判上の自白とは、口頭弁論又は弁論準備手続において、相手方の主張と一致する自己に不利益な事実を認める陳述のことです。不利益とは相手方が証明責任を負う事実を認めることをいうとするのが判例の一般論で、自白の対象は原則として主要事実です。

自白の効力と撤回の要件(審判排除効・不可撤回効)

自白の効力とは、主要事実について裁判上の自白が成立したときに、その事実が証明不要となり(不要証効)、裁判所がそのまま判決の基礎にしなければならず(審判排除効)、自白した当事者も撤回できなくなる(不可撤回効)ことです。撤回は、相手方の同意がある場合、刑事上罰すべき他人の行為による場合、真実に反しかつ錯誤による場合に限って認められます。

間接事実・補助事実の自白(書証の成立の真正)

間接事実・補助事実の自白とは、主要事実の存否を推認させる事実(間接事実)や、書証の成立の真正のように証拠の信用性にかかわる事実(補助事実)について、相手方の主張を認める陳述のことです。判例は、どちらも裁判所を拘束せず、自白した当事者も拘束しないとしています。

権利自白

権利自白とは、請求の当否の判断の前提となる権利や法律関係(所有権など)を、相手方の主張どおり認める陳述のことです。法の適用は裁判所の職責なので原則として裁判所を拘束しませんが、相手方はその権利の取得原因を主張立証する必要が一応なくなります。

擬制自白(159条)

擬制自白とは、当事者が口頭弁論で相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合に、その事実を自白したものとみなすことです(159条1項)。期日に欠席した当事者にも準用されますが、弁論の全趣旨から争ったと認められるときと、公示送達による呼出しを受けた当事者には成立しません。

訴訟上の合意(管轄合意・不控訴合意・証拠制限契約・自白契約・不起訴合意・訴え取下げの合意・仲裁合意)

訴訟上の合意とは、管轄・控訴・証拠・訴えの提起や取下げなど、訴訟に関する事項について当事者が結ぶ合意のことです。処分権主義と弁論主義によって当事者に任された範囲で有効とされ、手続の進め方を変えたり裁判官の自由心証を縛ったりする合意は無効です。

訴えの取下げの要件と方式(261条)

訴えの取下げとは、原告が裁判所に対して訴えを撤回する意思表示のことです。判決が確定するまで全部又は一部についてでき、被告が本案について応訴した後は被告の同意が必要で、書面でするのが原則ですが口頭弁論等の期日では口頭でもできます(261条)。

訴えの取下げの効果と再訴の禁止(262条)

訴えの取下げの効果とは、取り下げられた部分の訴訟が初めから係属しなかったものとみなされることです(262条1項)。本案の終局判決の後に訴えを取り下げた者は同一の訴えを提起できず(再訴の禁止、同条2項)、判例は再訴を正当とする新たな利益又は必要性があれば同一の訴えに当たらないとしています。

訴えの取下げの瑕疵と効力を争う方法(刑事上罰すべき行為・期日指定の申立て・訴訟終了宣言判決)

訴えの取下げの瑕疵とは、訴えの取下げが詐欺・脅迫・錯誤などの意思の瑕疵によってされた場合の問題のことです。判例は、明らかに刑事上罰すべき他人の行為による取下げを無効とし、取下げの効力を争う当事者は期日指定を申し立て、裁判所は取下げが有効なら訴訟終了宣言判決をします。

訴えの取下げと控訴の取下げの比較・取下げ擬制

訴えの取下げとは訴えを撤回して訴訟係属を遡って消滅させることで、控訴の取下げとは控訴を撤回して控訴審の係属を消滅させることです。訴えの取下げは判決の確定まで、控訴の取下げは控訴審の終局判決までできます。当事者双方の欠席が続くと取下げが擬制され、控訴審では控訴の取下げが擬制されます(263条・292条2項)。

請求の放棄・認諾(266条・267条)

請求の放棄とは原告が請求に理由がないことを認める期日での陳述で、請求の認諾とは被告が請求に理由があることを認める期日での陳述です(266条)。電子調書に記録されると確定判決と同一の効力を有します(267条1項)。

訴訟上の和解の要件と方式(89条・264条・265条・275条)

訴訟上の和解とは、訴訟の係属中に当事者が期日において互いに譲歩して争いをやめる合意のことです。裁判所は訴訟の程度を問わず和解を試みることができ(89条1項)、和解条項案の書面受諾(264条)や当事者の共同の申立てによる和解条項の定め(265条)でも成立します。

訴訟上の和解の効力と瑕疵(錯誤・期日指定の申立て・解除と訴訟の終了・執行力の範囲)

訴訟上の和解の効力とは、和解が電子調書に記録されたときに生じる、確定判決と同一の効力(訴訟の終了・執行力など)のことです(267条1項)。和解は私法上の契約でもあるので、錯誤などの瑕疵があれば効力を争うことができ、成立後に契約が解除されても訴訟は復活しません。

証拠

24語

証明と疎明・証明度(高度の蓋然性)

証明とは、事実の存否について裁判官が確信を得た状態、またはその状態に至らせるための当事者の立証活動をいい、疎明とは、証明の程度には至らないものの一応確からしいという心証で足りる状態をいいます。訴訟上の証明に求められる程度(証明度)は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得る高度の蓋然性です。

証明の対象と不要証事実(顕著な事実・経験則・外国法)

証明の対象とは、裁判所が判決の基礎とするために証拠によって認定しなければならない事項のことで、中心は当事者間に争いのある主要事実です。裁判所において当事者が自白した事実と顕著な事実は証明することを要しない事実(不要証事実)とされ(179条)、法規や経験則は原則として証明の対象になりませんが、外国法や専門的な経験則は証拠調べによって明らかにすることがあります。

自由心証主義(弁論の全趣旨・証拠共通・証拠能力)

自由心証主義とは、裁判所が判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨と証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する原則です(247条)。証拠として使えるものを原則として制限せず(証拠能力の無制限)、どの経験則で何を推認するかも裁判官に委ねる点で、証拠の種類や証明力を法律で決める法定証拠主義と対立します。

損害額の認定(248条)

損害額の認定とは、損害が生じたことは認められるものの、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときに、裁判所が口頭弁論の全趣旨と証拠調べの結果に基づいて相当な損害額を認定することをいいます(248条)。

証明責任の分配

証明責任とは、ある主要事実が審理の最後まで真偽不明に終わったときに、その事実を要件とする法律効果が認められないという一方当事者の不利益をいい、どちらの当事者がこの不利益を負うかを決めることを証明責任の分配といいます。判例・実務は、実体法の規定を権利根拠規定・権利障害規定・権利消滅規定・権利阻止規定に分け、それぞれの効果を主張する者が証明責任を負うとする法律要件分類説を基本にしています。

推定(法律上の推定・事実上の推定・暫定真実・意思推定)

推定とは、ある事実(前提事実)から別の事実や権利を推し量って認めることで、法規が定める法律上の推定(法律上の事実推定・法律上の権利推定)と、裁判官が経験則によって行う事実上の推定に分かれます。前提事実だけで他の要件を推定する暫定真実や、意思表示の内容を推定する意思推定(解釈規定)も推定の一種として扱われます。

証拠調べに協力しない者への効果の一覧(真実擬制・過料・勾引)

証拠調べに協力しない者への効果とは、証人・当事者本人・鑑定人・文書や検証物の所持者が出頭・宣誓・証言・提出などに応じないときに、民事訴訟法が定める不利益のことです。証人や第三者には過料・罰金・勾引などの制裁が、当事者には相手方の主張を真実と認める真実擬制が用意されています。

証拠の申出と採否・撤回

証拠の申出とは、当事者が裁判所に対し、証明すべき事実を特定して特定の証拠方法の取調べを求める申立てをいい(180条1項)、採否とは、申し出られた証拠を取り調べるかどうかを裁判所が決めることをいいます。申出は証拠調べの開始前なら自由に撤回できますが、開始後は相手方の同意が要り、終了後は撤回できません。

職権証拠調べの可否

職権証拠調べとは、当事者の申出によらずに裁判所が自ら証拠調べをすることです。弁論主義の下では証拠は当事者が申し出たものに限られるのが原則なので、職権証拠調べは、当事者本人の尋問・調査の嘱託・管轄に関する事項・検証の際の鑑定・訴訟係属中の証拠保全・人事訴訟など、法律が定めた場合に限ってできます。

証拠調べの期日と場所(欠席・裁判所外・受命裁判官・集中証拠調べ)

証拠調べの期日と場所とは、証拠調べをいつ・どこで・どの裁判官が行うかについての規律のことです。証拠調べは当事者が欠席しても実施でき(183条)、相当と認めるときは裁判所外で行い受命裁判官・受託裁判官にさせることができ(185条)、証人と当事者本人の尋問は争点整理の後に集中して行います(集中証拠調べ・182条)。

証人義務と証人能力

証人能力とは、証人として尋問を受けることができる資格をいい、当事者本人とその法定代理人(法人の代表者を含む)を除いて誰にでも認められます。証人義務とは、日本の裁判権に服する者が負う、証人として出頭し、宣誓し、証言する義務をいいます(190条)。

証言拒絶権と宣誓拒絶

証言拒絶権とは、証人が一定の事由(自己や近親者が刑事訴追・有罪判決を受けるおそれや名誉を害する事項、公務員の職務上の秘密、医師・弁護士等が職務上知った黙秘すべき事実、技術又は職業の秘密)について証言を拒むことができる権利です(196条・197条)。宣誓拒絶とは、証人が自己や近親者に著しい利害関係のある事項について宣誓を拒むことです(201条4項)。

証人尋問の方式(交互尋問・順序・書面尋問・映像等による尋問)

証人尋問の方式とは、証人に口頭で問いを発して証言を得る手続の進め方をいい、尋問の順序(202条)、書類に基づく陳述の禁止(203条)、映像と音声の送受信による尋問(204条)、尋問に代わる書面の提出(205条)などの規律がこれに当たります。

当事者尋問

当事者尋問とは、当事者本人を証拠方法として尋問し、その見聞きした事実についての陳述を証拠資料とする証拠調べです。申立てのほか職権でもでき、宣誓は裁判所の裁量で、不出頭などには真実擬制で対処する点が証人尋問と異なります。

鑑定と鑑定嘱託

鑑定とは、特別の学識経験を有する第三者に、その専門的な知識や、それを具体的な事実に当てはめた判断を報告させる証拠調べです。鑑定嘱託とは、官公署や相当の設備を有する法人に鑑定を依頼することです。

書証の申出と取調べ(提出・送付嘱託・原本・電磁的記録)

書証の申出とは、文書に記載された意味内容を証拠とするために、文書を提出し、所持者への提出命令を申し立て、又は送付の嘱託を申し立てることです。書証の取調べとは、提出又は送付された文書を裁判官が閲読して、その意味内容を証拠資料とすることです。

文書の証拠力と成立の真正(形式的・実質的証拠力、作成者、公文書)

文書の証拠力とは、文書が事実の証明に役立つ力をいい、作成者の意思に基づいて作られたかという形式的証拠力と、記載内容が要証事実の証明に役立つかという実質的証拠力に分かれます。成立の真正とは、挙証者が作成者と主張する者の意思に基づいて文書が作成されたことです。

私文書の成立と二段の推定

二段の推定とは、私文書の印影が本人の印章によるものであれば本人の意思で押印されたと事実上推定し(一段目)、その結果、本人の押印がある私文書として228条4項により文書全体が真正に成立したと推定する(二段目)判例の法理です。

文書提出義務(220条)

文書提出義務とは、文書の所持者が、文書提出命令の申立てがあったときにその文書の提出を拒むことができない義務です。220条1号から3号は引用文書・引渡閲覧請求権のある文書・利益文書と法律関係文書について定め、4号は除外事由に当たらない限りすべての文書に及ぶ一般義務を定めます。

文書提出命令の手続と不服申立て

文書提出命令とは、裁判所が、当事者の申立てに基づき、提出義務を負う文書の所持者に対し、決定でその文書の提出を命ずることです。申立ての記載事項と文書の特定(221条・222条)、審理と命令(223条1項〜6項)、即時抗告(223条7項)の手続が定められています。

検証

検証とは、裁判官が五感の作用によって人の身体や物の形状・性質・状態を直接に認識し、その結果を証拠資料とする証拠調べです。

調査の嘱託(186条)

調査の嘱託とは、裁判所が、官庁・公署や学校・商工会議所・取引所その他の団体に必要な調査を依頼し、その回答を証拠資料とする証拠調べです。

証拠保全

証拠保全とは、本来の証拠調べの時期まで待っていてはその証拠を使用することが困難となる事情があるときに、あらかじめ証拠調べをしておく手続です。

提訴前の証拠収集処分と当事者照会

当事者照会とは、訴訟の係属中に当事者が相手方に対し、主張や立証の準備に必要な事項について書面で回答するよう直接照会する手続です。提訴前の証拠収集処分とは、提訴予告通知をした者などの申立てにより、裁判所が訴えの提起前に文書の送付嘱託や調査嘱託などをすることです。

判決

7語

裁判の種類(判決・決定・命令)

裁判の種類とは、民事訴訟の裁判を、誰が裁判するかと手続の重さで判決・決定・命令の3つに分けたものです。判決と決定は裁判所の裁判で、命令は裁判長・受命裁判官・受託裁判官などの裁判官の裁判です。

判決の種類(終局判決・一部判決・追加判決・中間判決)

判決の種類とは、判決がその審級の審理を終わらせるか(終局判決)、途中の争点に決着を付けるだけか(中間判決)、事件の全部に答えるか一部に答えるか(全部判決・一部判決)による区別です。裁判所が請求の一部の判断を落としたときにその部分についてする判決を追加判決といいます。

判決の成立と言渡し(電子判決書・調書判決・欠席時の言渡し・送達)

判決の成立と言渡しとは、裁判所が電子判決書を作成し、それに基づいて公開の法廷で言い渡すことで判決が効力を生じ、その電子判決書を職権で当事者に送達するまでの手続です。争いのない事件などで請求を認容するときは、電子判決書に基づかずに言い渡し、電子調書に記録させることができます(調書判決)。

判決の自己拘束力と更正決定・変更判決

判決の自己拘束力とは、判決を言い渡した裁判所自身も、その判決を撤回したり変更したりできなくなる効力です。例外として、計算違い・誤記などの明白な誤りを正す更正決定(257条)と、法令違反を言渡し後1週間以内に正す変更の判決(256条)があります。

判決の確定(確定の時期と確定遮断の範囲)

判決の確定とは、判決が上訴などの通常の不服申立ての方法では取り消したり変更したりできない状態になることです。判決は控訴・上告の期間の満了前には確定せず、期間内に適法な控訴・上告があれば確定が遮断されます(116条)。

仮執行宣言

仮執行宣言とは、まだ確定していない財産権上の請求に関する判決に、確定前でも強制執行ができる効力を与える裁判所の宣言です。裁判所は、必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、担保を立てさせて又は立てさせないで付けることができます(259条1項)。

訴訟費用と訴訟上の救助

訴訟費用とは、訴え提起の手数料や証人の旅費・鑑定費用など、法律が定める訴訟の費用で、原則として敗訴した当事者が負担します(61条)。訴訟上の救助とは、費用を払う資力のない者などに、申立てにより、裁判費用の支払の猶予などを与える決定です(82条・83条)。

既判力と判決効

16語

判決の効力の全体像(既判力・執行力・形成力・参加的効力・反射効)

判決の効力とは、確定した判決などが当事者や第三者に及ぼす法的な力の総称で、後訴を拘束する既判力(114条)、強制執行を可能にする執行力、法律関係を変動させる形成力、補助参加人に及ぶ参加的効力(46条)などがあります。判例が認めない反射効も、この区別の中で位置づけられます。

既判力の意義と作用(訴訟判決の既判力を含む)

既判力とは、確定判決の訴訟物についての判断が、後の訴訟で当事者と裁判所を拘束し、それと矛盾する主張や判断を許さない効力です(114条1項)。後訴の訴訟物が前訴と同一の場合のほか、前訴の訴訟物と矛盾する関係にある場合や、前訴の訴訟物が後訴の先決関係にある場合にも働きます。

既判力の基準時(時的限界)

既判力の基準時とは、確定判決がどの時点の権利関係を確定したかを示す時点で、事実審の口頭弁論の終結時をいいます。基準時より前に存在した事由は後訴で主張できなくなり(遮断効)、基準時より後に生じた事由は後訴や請求異議の訴えで主張できます。

基準時前の形成権と遮断効

遮断効とは、確定判決の既判力により、基準時より前に存在した事由を後訴で主張して確定した判断を争えなくなる効力です。基準時前に行使できた形成権を基準時後に行使した場合、判例は、取消権・書面によらない贈与の解除権・白地手形の補充権は遮断され、相殺権と建物買取請求権は遮断されないとしています。

基準時後の事情変更(後遺症・将来給付・確定判決変更の訴え)

基準時後の事情変更とは、確定判決の基準時より後に、前の訴訟では予見も主張もできなかった事情が生じ、判決で確定した損害額などが実態に合わなくなることです。判例は、予見できなかった後遺症の損害や、事情変更で不相当になった将来の損害金の差額を後訴で請求することを認め、定期金賠償の判決には変更を求める訴え(117条)があります。

既判力の客観的範囲(主文と理由中の判断)

既判力の客観的範囲とは、確定判決のどの判断に既判力が生じるかの範囲で、主文に包含するもの、つまり訴訟物である権利関係の存否の判断に限られます(114条1項)。前提問題として理由中で判断した所有権や抗弁の成否には既判力は生じず、例外は相殺の抗弁の判断だけです(同条2項)。

相殺の抗弁と既判力(114条2項)

相殺の抗弁と既判力とは、相殺のために主張した反対債権の成立又は不成立の判断が、理由中の判断でありながら、相殺をもって対抗した額について既判力を持つという規律です(114条2項)。反対債権の存否を蒸し返して二重に行使することを防ぐためで、対抗した額を超える部分には既判力は及びません。

一部請求と残部請求(既判力)

残部請求とは、一個の金銭債権の一部を請求した訴訟の判決が確定した後に、その残りを請求する訴えです。判例は、一部であることを明示した一部請求の確定判決の既判力は残部に及ばないとしつつ、明示的一部請求で敗訴(一部敗訴を含みます)した原告の残部請求は、特段の事情がない限り信義則に反して許されないとしています。

争点効と信義則による遮断

争点効とは、前訴で当事者が主要な争点として争い、裁判所が審理して判断した理由中の判断に、同じ争点が問題になる後訴で拘束力を認めようとする学説上の効力です。判例は争点効を否定し、理由中の判断の蒸し返しは、事案ごとに信義則によって遮断しています。

限定承認と既判力に準ずる効力

既判力に準ずる効力とは、相続債務の給付訴訟で限定承認が認められ、相続財産の限度で支払を命じる留保付判決が確定したときに、限定承認の存在と効力の判断に判例が認めた拘束力です(最判昭和49年4月26日)。債権者は、基準時前の法定単純承認の事実を主張して、責任の限定のない判決を求める後訴を起こせなくなります。

既判力の主観的範囲(115条1項の4類型)

既判力の主観的範囲とは、確定判決の効力が及ぶ人の範囲です。原則は訴訟を追行した当事者だけですが、115条1項は、訴訟担当の被担当者、口頭弁論終結後の承継人、それらの者のために請求の目的物を所持する者にも効力を及ぼします。

口頭弁論終結後の承継人(固有の抗弁)

口頭弁論終結後の承継人とは、事実審の口頭弁論の終結後に、当事者から訴訟物の権利義務や、その訴訟の相手方となる地位(紛争の主体たる地位)を承継した者で、確定判決の効力を受けます(115条1項3号)。ただし、承継人が実体法上自ら取得した固有の抗弁は、前訴判決によって奪われません。

法人格否認と判決効

法人格否認と判決効とは、旧会社が債務を免れるために新会社を設立した法人格の濫用の場合に、旧会社が受けた確定判決の既判力・執行力を新会社に及ぼせるかという問題です。判例は、実体法上は新会社にも責任を追及できるとしつつ、手続の明確・安定を重んじる訴訟手続と強制執行手続では、判決効の新会社への拡張は許されないとしています(最判昭和53年9月14日)。

反射効

反射効とは、当事者間の確定判決が、当事者と実体法上の依存関係にある第三者に、反射的に有利又は不利な影響を及ぼすとする考え方です。主債務者が勝訴すれば保証人もそれを援用できるといった場面で論じられますが、判例は反射効を認めていません。

訴訟担当と判決効(債権者代位・破産管財人・選定当事者)

訴訟担当と判決効とは、他人の権利について自己の名で訴訟を追行する者(訴訟担当者)が受けた確定判決の効力が、権利の帰属主体である被担当者に及ぶという規律です(115条1項2号)。破産管財人の訴訟の破産者、選定当事者の訴訟の選定者、債権者代位訴訟の債務者がその例です。

対世効と形成力

対世効とは、確定判決の効力が当事者だけでなく第三者一般にも及ぶことで、人事訴訟の確定判決(人事訴訟法24条1項)や会社の組織に関する訴えの認容判決(会社法838条)に認められます。形成力とは、形成判決の確定によって法律関係そのものが変動する効力で、その変動は誰もが認めなければなりません。

複雑訴訟

21語

請求の併合(単純・予備的・選択的)

請求の併合とは、一人の原告が一人の被告に対して数個の請求を一つの訴えで審判してもらうことです。数個の請求を並べてすべてに判決を求める単純併合、両立しない請求に順位を付けて主位的請求が認められない場合に備える予備的併合、両立する請求のどれか一つの認容を求める選択的併合があります。

訴えの変更の要件

訴えの変更とは、訴訟の係属中に原告が請求の趣旨又は原因を変えて審判の対象を変えることです。請求の基礎に変更がないこと、著しく訴訟手続を遅滞させないこと、事実審の口頭弁論の終結に至るまでであることが要件です(143条1項)。

訴えの交換的変更と控訴審での訴えの変更

訴えの交換的変更とは、旧請求に代えて新請求を審判の対象にする訴えの変更で、判例は新請求の追加と旧請求の取下げ又は放棄が組み合わさったものとみます。控訴審での訴えの変更は、控訴審にも143条が準用されることから、相手方の同意なしにすることができます。

反訴

反訴とは、訴訟の係属中に、被告が本訴の手続を使って原告を相手に提起する訴えです。本訴の目的である請求又は防御の方法と関連する請求について、事実審の口頭弁論の終結に至るまで、本訴の係属する裁判所に提起できます(146条1項)。

中間確認の訴え

中間確認の訴えとは、訴訟の進行中に争いとなり、本来の請求の裁判がその成立又は不成立に係る法律関係について、当事者が請求を拡張してその確認の判決を求める訴えです(145条1項)。判決の理由中の判断には既判力が生じないので、先決関係にある法律関係にも既判力を得るために使われます。

通常共同訴訟と共同訴訟人独立の原則

通常共同訴訟とは、38条の要件を満たして数人が共同して訴え又は訴えられた訴訟のうち、判決が合一に確定する必要のないものです。共同訴訟人独立の原則とは、通常共同訴訟で、共同訴訟人の一人の訴訟行為、一人に対する相手方の訴訟行為、一人について生じた事項が他の共同訴訟人に影響しないという原則です(39条)。

固有必要的共同訴訟の成否

固有必要的共同訴訟とは、関係者全員が共同して訴え又は訴えられなければ当事者適格が認められない共同訴訟です。一人でも欠ければ訴えは不適法として却下されます。どの訴訟がこれに当たるかは、訴訟物である権利の性質を基本にして、紛争解決の実効性も考えて判断されます。

必要的共同訴訟の審判(40条)

必要的共同訴訟とは、訴訟の目的が共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき共同訴訟で、固有必要的共同訴訟と類似必要的共同訴訟があります。その審判では、一人の訴訟行為は全員の利益においてのみ効力を生じ、相手方の一人に対する訴訟行為は全員に効力を生じ、一人についての中断・中止は全員に効力を生じます(40条)。

類似必要的共同訴訟と共同訴訟参加

類似必要的共同訴訟とは、各自が単独でも訴え又は訴えられることができるものの、数人が共同して訴え又は訴えられたときは判決が合一に確定しなければならない共同訴訟です。共同訴訟参加とは、訴訟の目的が当事者の一方及び第三者について合一にのみ確定すべき場合に、第三者が共同訴訟人としてその訴訟に参加することです(52条1項)。

同時審判申出共同訴訟と主観的予備的併合

同時審判申出共同訴訟とは、共同被告の一方に対する権利と他方に対する権利が法律上併存し得ない関係にある場合に、原告の申出によって弁論及び裁判を分離しないでしなければならない共同訴訟です(41条)。主観的予備的併合とは、両立しない数人に対する請求に順位を付けて審判を求める併合で、判例は認めていません。

主観的追加的併合

主観的追加的併合とは、訴訟の係属中に、当事者でなかった者に対する請求や当事者でなかった者の請求を追加して、係属中の訴訟を共同訴訟にすることです。明文で認められた共同訴訟参加・選定者に係る請求の追加・参加承継と引受承継のほかに、明文のない主観的追加的併合は判例上認められていません。

補助参加の要件と手続

補助参加とは、訴訟の結果について利害関係を有する第三者が、当事者の一方を補助するため、その訴訟に参加することです(42条)。その申出は参加の趣旨及び理由を明らかにしてし、当事者が異議を述べたときに限り、裁判所が決定で許否を裁判します(43条・44条)。

補助参加人の地位

補助参加人とは、訴訟の結果について利害関係を有するため、当事者の一方を補助して訴訟に参加した第三者です。一切の訴訟行為をすることができますが、参加の時における訴訟の程度に従いすることができない行為と、被参加人の訴訟行為と抵触する行為は効力を有しません(45条1項・2項)。

参加的効力

参加的効力とは、補助参加した訴訟で被参加人が敗訴したとき、補助参加人が被参加人に対してその判決が不当であると主張することを禁ずる効力です(46条)。既判力とは異なり、判決理由中の事実の認定や先決的権利関係の判断にも及びます。

共同訴訟的補助参加

共同訴訟的補助参加とは、判決の効力が及ぶのに当事者適格がないため補助参加の形をとる第三者の補助参加です。解釈上、45条2項が適用されず、被参加人に有利な限りで被参加人の行為と抵触する行為もでき、上訴期間も独自に計算されます。

訴訟告知

訴訟告知とは、当事者が、訴訟の係属中、参加することができる第三者に訴訟の係属を知らせることです(53条1項)。告知を受けた者が参加しなかった場合でも、46条の適用については参加することができた時に参加したものとみなされ、参加的効力が及びます(53条4項)。

独立当事者参加の要件

独立当事者参加とは、訴訟の結果によって権利が害されることを主張する第三者(詐害防止参加)又は訴訟の目的の全部若しくは一部が自己の権利であることを主張する第三者(権利主張参加)が、当事者の双方又は一方を相手方として、当事者として訴訟に参加することです(47条1項)。

独立当事者参加の審判と訴訟脱退

独立当事者参加の審判とは、独立当事者参加があった訴訟で、47条4項により40条1項から3項までを準用し、三者間の紛争を一個の判決で合一に確定する審理の規律です。訴訟脱退とは、権利主張参加があったときに、参加前の原告又は被告が相手方の承諾を得て訴訟から離れることで、判決は脱退した当事者にも効力を有します(48条)。

参加承継と引受承継

参加承継とは、訴訟の係属中に訴訟の目的である権利又は義務を承継したと主張する第三者が、独立当事者参加の形で自ら訴訟に入ることです(49条・51条前段)。引受承継とは、当事者の申立てにより、裁判所が決定で、権利又は義務を承継した第三者に訴訟を引き受けさせることです(50条・51条後段)。

承継人の範囲(紛争の主体たる地位)

承継人とは、訴訟の係属中に訴訟の目的である権利又は義務を承継し、参加承継や引受承継によって訴訟を引き継ぐ第三者です(49条〜51条)。判例は、訴訟物である権利義務そのものに限らず、紛争の主体たる地位を承継した者も含むとしています。

任意的当事者変更

任意的当事者変更とは、訴訟係属後に、実体関係の変動がないのに、原告が最初の被告以外の者に訴えを向け変え、又は最初の原告以外の者が原告に代わって訴えを提起することです。当事者に同一性がある表示の訂正や、実体関係の変動による訴訟承継とは区別されます。

上訴

12語

上訴総論(確定遮断・移審・上訴不可分の原則)

上訴とは、確定前の裁判について、上級の裁判所にその取消し・変更を求める不服申立てです。適法な上訴があると判決の確定が遮断され(確定遮断効)、事件が上級審に移り(移審効)、この二つの効力は不服を申し立てた部分に限らず原判決の全部について生じます(上訴不可分の原則)。

上訴の利益

上訴の利益とは、原判決に対して上訴をするために必要な不服の利益で、上訴要件の一つです。判例・通説は、原審での当事者の申立てと判決の主文を比べて、全部勝訴でないときに上訴の利益を認めます(形式的不服説)。

控訴の提起

控訴の提起とは、第一審の終局判決に不服のある当事者が、控訴状を第一審裁判所に提出して控訴審の審判を求めることです。電子判決書(又は判決に代わる電子調書)の送達を受けた日から2週間の不変期間内にしなければならず、控訴状には控訴の理由を書かなくてもかまいません(285条・286条)。

控訴審の審理(続審制)

控訴審の審理とは、控訴裁判所が、第一審で提出された資料に控訴審で新たに提出された資料を加えて、不服申立ての限度で第一審判決の当否を判断する手続です。現行法は、第一審の口頭弁論を引き継いで続ける続審制を採っています(296条・298条1項)。

控訴審の判決(控訴棄却・取消自判・差戻し・移送)

控訴審の判決とは、控訴裁判所が控訴について最終的な判断を示す終局判決で、不適法な控訴の却下、第一審判決を相当とする控訴棄却、第一審判決を不当とする取消しがあります。取り消したときは自判が原則で、訴え却下判決を取り消すときは原則として第一審に差し戻し、管轄違いで取り消すときは管轄裁判所に移送します(302条〜309条)。

不利益変更禁止の原則

不利益変更禁止の原則とは、控訴審は不服申立ての限度においてのみ第一審判決を取り消し・変更できるので、相手方の控訴・附帯控訴がない限り、控訴人に第一審判決より不利な判決をすることができないという原則です(304条)。申し立てた範囲を超えて控訴人に有利な判決もできず、こちらを利益変更禁止の原則といいます。

附帯控訴

附帯控訴とは、相手方の控訴によって開かれた控訴審で、被控訴人が口頭弁論の終結までに、第一審判決のうち自分に不利な部分の変更を求めて審判の範囲を広げる申立てです。控訴権が消滅した後でもでき、控訴が取り下げられると原則として効力を失います(293条)。

控訴の取下げ・控訴権の放棄・不控訴の合意

控訴の取下げとは、控訴人が控訴審の終局判決までに控訴を撤回することで、控訴権の放棄とは、控訴をする権利を捨てることです(292条・284条)。不控訴の合意は当事者双方が控訴をしないと約束するもので、上告する権利を留保して終局判決後にする合意(飛越上告の合意)は281条1項ただし書が定めています。

上告理由と上告受理申立て

上告理由とは、上告をするために主張しなければならない原判決の違法の事由で、最高裁判所への上告では憲法違反(312条1項)と絶対的上告理由(同条2項)に限られます。上告受理の申立てとは、判例違反その他法令の解釈に関する重要な事項を含む事件について、最高裁判所に上告審として受理するよう求める申立てです(318条)。

上告審の審理と判決

上告審とは、原判決に法令の違反があるかだけを審査する法律審で、原判決で適法に確定した事実に拘束されます(321条1項)。上告審の判決には、上告棄却と、原判決を破棄して差し戻し・移送する破棄差戻し、自ら裁判をする破棄自判があり、破棄の理由とした判断は差戻しを受けた裁判所を拘束します(325条・326条)。

抗告の種類と手続

抗告とは、判決以外の裁判である決定・命令に対する上訴です。期間の定めのない通常抗告と、法律に定めがある場合に告知から1週間内にする即時抗告があり、抗告裁判所の決定に対する再抗告、最高裁判所への特別抗告と許可抗告があります(328条〜337条)。

独立の不服申立てができない裁判の一覧

独立の不服申立てができない裁判とは、法律が不服申立てを禁じている決定・命令や、訴訟指揮・証拠の採否のように、それだけを取り出して抗告することができず、争うなら終局判決に対する上訴の中で争うしかない裁判です(283条)。これに対し、移送・補助参加の許否・文書提出命令の申立てについての決定などは、法律が即時抗告を定めています。

再審・簡易手続

8語

再審事由と補充性

再審事由とは、確定した終局判決を再審の訴えで取り消すために必要な重大な瑕疵で、338条1項1号から10号に限って定められています。補充性とは、当事者がその事由を控訴・上告で主張したとき、又は知りながら主張しなかったときは再審の訴えを起こせないという制限です(338条1項ただし書)。

再審の手続と原告適格

再審の手続とは、確定判決をした裁判所に再審の訴えを起こし、まず再審事由があるかを決定で判断し、再審開始の決定が確定した後に不服申立ての限度で本案を審理し直す二段階の手続です(340条〜348条)。再審の原告適格は、確定判決の当事者とその口頭弁論終結後の承継人など、判決の効力を受けて取消しに利益を持つ者にあります。

確定判決の不当取得(騙取判決)と救済

確定判決の不当取得(騙取判決)とは、当事者が相手方の権利を害する意図で、相手方の訴訟手続への関与を妨げたり、虚偽の事実を主張して裁判所を欺いたりして、本来ありえない内容の確定判決を得ることです。被害を受けた当事者は、控訴の追完や再審のほか、特別の事情がある場合に限り、判決の既判力と矛盾する損害賠償を請求できます。

手形訴訟・小切手訴訟

手形訴訟とは、手形による金銭の支払とその法定利率による損害賠償の請求について、原告の選択で利用できる、証拠を書証などに限った簡易迅速な訴訟手続です(350条以下)。小切手訴訟にも同じ規定が準用されます(367条)。

少額訴訟

少額訴訟とは、簡易裁判所で、訴訟の目的の価額が60万円以下の金銭の支払請求について、原告の選択により、原則として1回の期日で審理を終えて直ちに判決をする特別の手続です(368条以下)。同じ簡易裁判所で同じ年に利用できる回数は、最高裁判所規則で10回までとされています。

支払督促

支払督促とは、金銭その他の代替物又は有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について、債権者の申立てにより、簡易裁判所の裁判所書記官が債務者を審尋しないで発する給付の命令です(382条・386条)。債務者が争わなければ仮執行宣言を経て債務名義になり、督促異議があれば通常の訴訟に移ります。

簡易裁判所の訴訟手続の特則

簡易裁判所の訴訟手続の特則とは、簡易な手続により迅速に紛争を解決するため(270条)、訴額140万円以下の事件を扱う簡易裁判所について、口頭での訴えの提起、準備書面の省略、尋問に代わる書面の提出、司法委員、和解に代わる決定などを定めた規定です(270条〜280条)。

法定審理期間訴訟手続

法定審理期間訴訟手続とは、令和4年改正で新設された、当事者双方の申出又は一方の申出と相手方の同意により、口頭弁論の終結と判決の言渡しまでの期間を法律で区切って審理する特別の手続です(381条の2〜381条の8)。消費者契約に関する訴えと個別労働関係民事紛争に関する訴えには使えません。

民事執行・民事保全の基礎

2語

債務名義・執行文と請求異議の訴え

債務名義とは、強制執行によって実現される請求権の存在と範囲を表示し、強制執行の根拠となる文書で、確定判決・仮執行宣言付判決・仮執行宣言付支払督促・和解調書などがこれに当たります(民事執行法22条)。執行文は債務名義に執行力があることを裁判所書記官などが公証するもので、請求異議の訴えは債務名義に表示された請求権の存在や内容を争って強制執行の不許を求める訴えです(同法26条・35条)。

民事保全の基本構造(仮差押え・仮処分・疎明・当事者恒定)

民事保全とは、本案の判決を待っていては権利の実現ができなくなるおそれがあるときに、仮の救済を与える手続で、金銭債権の執行を保全する仮差押え、特定物の請求権を保全する係争物に関する仮処分、争いのある権利関係について仮の地位を定める仮処分の三つがあります(民事保全法1条・20条・23条)。保全命令の要件である被保全権利と保全の必要性は疎明で足ります(同法13条2項)。

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