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用語集 / 民事訴訟法 / 送達の瑕疵と再審・上訴の追完

送達の瑕疵と再審・上訴の追完(補充送達の利害対立・送達の不正取得)とは

そうたつのかしとさいしんじょうそのついかん

民事訴訟法 審理の原則と手続

送達の瑕疵とは、送達が法定の方式に反していたり、有効な送達でも書類が本人に届かなかったりして、受送達者が手続に関与できなかったことです。判例は、補充送達の効力と、本人が訴訟を知らないまま判決が確定したことの救済(再審・上訴の追完)とを分けて扱っています。

訴状が同居の家族に渡されたのに本人の手元に届かず、本人が訴えられたことを知らないまま敗訴判決が確定してしまうことがあります。送達そのものを無効にすると、受け取った人が誰かによって手続の安定が揺らぎます。そこで判例は、送達の効力と、本人が手続に関与する機会を奪われたことの救済とを分けて考え、送達は有効としつつ再審や上訴の追完で救う途を開いています。

住宅の居間の場面。同居の家族(札「同居者」)が封筒(札「訴状」)を受け取り、本人に気づかれないように引き出しにしまっている。奥の部屋では本人(札「受送達者」)が新聞を読んでいて訴えに気づいていない。窓の外に先生が立ち、吹き出し「同居者に渡し

同居者と受送達者が事実上の利害対立の関係にあっても、同居者への補充送達は有効です

最決平成19年3月20日は、受送達者宛ての訴訟関係書類の交付を受けた同居者等が、その訴訟において受送達者の相手方当事者又はこれと同視し得る者に当たる場合は別として、受送達者との間に事実上の利害関係の対立があるにすぎない場合には、その同居者等に書類を交付することで受送達者に対する送達の効力が生ずるとしました。106条1項は相当のわきまえのある同居者等に交付すれば送達の効力が生ずるとしており、その後に書類が受送達者に渡されたかどうかは送達の効力に影響しないからです。「当該同居者と受送達者との間に,その訴訟に関して事実上の利害関係の対立があるときは,受送達者に対する送達の効力が生じない」という肢は誤りで、利害関係の対立があっても送達の効力が生ずるとする肢は正しいです。妻が夫に無断で夫を連帯保証人として借入れをし、銀行が夫に保証債務の履行を求めた訴訟で、同居の妻が訴状を受領した場合も、「同居中の妻がこれを受領しても,補充送達として有効である」という肢は正しいです。

同居者が訴状を渡さず本人が訴訟を知らないまま判決が確定したときは、代理権の欠缺に準じて再審の訴えを起こせます

送達が有効でも、同居者が書類を受送達者に渡さず、受送達者が訴訟の提起を知らないまま判決がされたときは、手続に関与する機会を与えられなかった点で、代理人として訴訟行為をした者に代理権がなかった場合と変わりません。最決平成19年3月20日は、この場合に338条1項3号の再審事由があるとしました。それより前に最判平成4年9月10日は、訴状が7歳9か月の子に交付され、子がこれを父に渡さなかった事案で、送達の趣旨を理解して書類を受送達者に渡すことを期待できる程度の能力がない者への交付は有効な送達にならないとし、そのため訴訟に関与する機会のないまま判決がされたときは338条1項3号の再審事由に当たるとしました。同じ判決は、判決正本が同居の妻に交付されていても、再審事由を現実に知ることができなかった者は、上訴で主張しなかったことを理由に再審を拒まれない(338条1項ただし書)としています。クレジットカードを無断で使った同居の妻が訴状を受け取って隠したため被告が訴えを知らないまま敗訴判決が確定した事案で、「当該判決に対して再審の訴えを提起することができる」という肢は正しいです。

教室の黒板の板書の図解。左に「補充送達(106条1項)」の箱、矢印で「送達は有効(事実上の利害対立にとどまる)」。その下に分岐して「書類が本人に渡らず、訴訟を知らないまま判決確定」の箱、矢印で「再審事由(338条1項3号に準じる)」。右端に

住所を知りながら不明として公示送達を申し立てられた被告は、控訴の追完ができます

原告が被告の住所を知りながら住所不明として公示送達を申し立て、被告が訴えの提起を知らないまま敗訴し控訴期間を過ぎた場合、被告は責めに帰することができない事由により不変期間を守れなかったものとして、控訴を追完することができます(97条1項。最判昭和42年2月24日)。この点を問う肢は正しいです。追完は、被告が判決のあったことを知るなど事由が消滅した時から1週間以内にしなければなりません。原告が相手方の住所を知りながら公示送達で判決をだまし取ったときは、確定判決の不正取得として、再審の訴えや損害賠償請求の可否も問題になります。

受送達権限のない同居者が訴状を受領した瑕疵も、被告の訴訟代理人が異議なく弁論すれば異議権の喪失で治癒されます

送達の瑕疵は、もっぱら受送達者の利益にかかわるので、受送達者側が遅滞なく異議を述べなければ異議権を失い(90条)、瑕疵は治癒されます。最判昭和28年12月24日は、後見人に送達すべき訴状を本人が受領した事案で、後見人側が委任した弁護士が第1回口頭弁論期日に出頭して異議なく弁論した以上、責問権を失い瑕疵は治癒されたとしました。「被告が委任した訴訟代理人が最初にすべき口頭弁論の期日に出頭し異議なく弁論をしたときは,その瑕疵は,異議権の喪失によって治癒される」という肢は正しいです。異議権の放棄と喪失の全体は異議権の語で扱っています。

民事訴訟法106条1項前段

就業場所以外の書類の送達をすべき場所において送達を受けるべき者に出会わないときは、使用人その他の従業者又は同居者であって、書類の受領について相当のわきまえのあるものに書類を交付することができる。

民事訴訟法338条1項3号

法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと。

論文ではこう使う

論文では、同居者が訴状を受領して隠した事例で、①補充送達の有効性(相当のわきまえ・事実上の利害対立にとどまるか)、②有効でも本人が訴訟を知らないまま判決が確定したことが338条1項3号に準じる再審事由に当たるか、③判決正本の送達を受けた後も再審の補充性(338条1項ただし書)に触れないか、の順に論じます。送達を無効とする構成と、有効としたうえで再審事由を認める構成の違いを示すことが求められます。

試験ではこう問われる

「送達の瑕疵と再審・上訴の追完」が短答式でどう出題されてきたか、ひっかけの型6件と関係する過去問の肢6本は、無料のアカウントでログインすると読めます。

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