債務不存在確認訴訟の申立事項と一部認容とは
さいむふそんざいかくにんそしょうのもうしたてじこうといちぶにんよう
債務不存在確認訴訟とは、債務者とされる者が原告となり、債権者と主張する者を被告として、債務の全部又は一定額を超える部分が存在しないことの確認を求める訴えのことです。一定額を超える部分の不存在確認では、債権の総額から原告が自認する額を控除した残額の部分が申立事項になり、裁判所はその範囲で一部認容判決をします。
借りたお金のうち200万円は残っていると認めつつ、「それ以上は払う必要がない」とはっきりさせたい借主は、債務不存在確認の訴えを起こします。このとき借主が争っているのは200万円を超える部分だけなので、裁判所が判断するのもその部分に限られます。裁判所が借主の認めた額より少ない債務しかないと考えても、借主自身が求めていない有利な判決はできません。逆に借主の言い分より多くの債務が残っていても、すぐに請求を棄却せず、残額をはっきりさせて紛争を解決します。
債務不存在確認の訴えでは、原告が不存在の確認を求めた部分が審判の対象になり、原告が自認した額はその外にあります
判例(最判昭和40年9月17日)は、一定額を超える債務の不存在確認を求める訴えでは、債権の総額から原告が残存を自認する額を控除した残額の部分が申立ての範囲(訴訟物)になるとしました。500万円の債務のうち200万円は認めて、それを超える部分の不存在確認を求めた場合、審判の対象は200万円を超える300万円分です。裁判所が300万円の債務が残っていると認めたときは、300万円を超える部分の不存在を確認し、その余(200万円を超え300万円までの部分)を棄却します。そのため、「500万円の債務のうち300万円を超える債務の不存在を確認し,その余の部分につき請求を棄却する判決をしなければならない」という肢は正しいです。
原告が自認した額を下回る債務しかないと認めても、自認額より原告に有利な判決をすることはできません
原告が100万円を超える部分の不存在確認を求めた場合、100万円までの部分は原告が自ら認めていて審判の対象になっていません。裁判所が債務は50万円しかないと考えても、「50万円を超える部分が不存在」と判決すれば、原告が求めた以上に原告に有利な判決をすることになり、246条に反します。被告も100万円までは争われていないと考えて防御しているので、不意打ちにもなります。したがって、「損害賠償債務のうち100万円を超える部分の不存在確認請求に対し,裁判所は,その損害賠償債務のうち50万円を超える部分が不存在であることを確認するとの判決をすることができる」という肢は誤りです。同じ理由で、50万円を超える部分の不存在確認を求めた訴えで債務が20万円と認めても、20万円を超える部分の不存在を確認することはできません。「100万円の債務のうち20万円を超える部分が不存在であることを確認する判決をすることができる」という肢は誤りです。この場合の判決は、50万円を超える部分の不存在を確認する全部認容判決になります。
原告の主張より多くの債務が残っていると認めたときは、残額を明らかにして一部認容し、直ちに請求を棄却することはできません
債務不存在確認の訴えの訴訟物は金額で量的に分けられるので、給付の訴えと同じく一部認容ができます。100万円全額の不存在確認を求めた訴えで10万円の債務が残っていると認めたときは、100万円のうち10万円を超える債務の不存在を確認し、その余を棄却します。したがって、「100万円のうち10万円を超える債務の不存在を確認し,その余の請求を棄却する」という肢は正しいです。上限を示さずに一定額を超える債務の不存在確認を求めた場合も同じで、判例(最判昭和40年9月17日)は、裁判所は申立ての範囲である残額の存否ないしその限度を明確に判断しなければならず、残額を明らかにしないまま直ちに請求を棄却したのは違法であるとしました。原告は通常、一部認容でも残債務の額を確定してほしいと考えているからです。「貸金残額の存否ないしその限度を明確に判断することなく,直ちに請求を棄却する判決をすることができる」という肢は誤りです。
- 原告の自認額より多い債務を認定認定額を超える部分の不存在を確認し、その余を棄却します(一部認容)
- 原告の自認額より少ない債務を認定自認額を超える部分の不存在を確認する全部認容にとどまり、自認額より原告に有利な判決はできません
- 上限を示さない請求残額を明らかにして判断し、直ちに棄却はできません
- 全額の不存在確認で一部の債務を認定認定額を超える部分の不存在を確認し、その余を棄却します
債務の発生原因は債権者である被告が主張・立証し、被告が給付の反訴を起こせば本訴は確認の利益を失います
債務不存在確認の訴えでは、原告(債務者)は訴訟物を特定すれば足り、債権の発生原因事実は、権利を主張する被告(債権者)が抗弁として主張・立証します。原告が債務者だからといって、主張責任と証明責任の分配は変わりません。また、債務不存在確認の訴えの係属中に被告が同じ債務の履行を求める給付の反訴を提起すると、本訴は確認の利益を失うとされます(最判平成16年3月25日)。給付の反訴で債務の存否が判断されるので、確認の訴えを続ける必要がなくなるからです。確認の利益と重複起訴の扱いは確認の利益・重複起訴の禁止の語で、請求認容判決が確定したときの既判力(債権の不存在が確定する)は既判力の客観的範囲の語で扱います。
民事訴訟法246条
裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない。
論文ではこう使う
論文では、債務不存在確認訴訟の判決の範囲が問われたら、①申立事項は総額から自認額を控除した残額部分であること(最判昭和40年9月17日)、②自認額を下回る認定をしても自認額より原告に有利な判決は246条に反すること、③自認額を上回る債務を認定したときは残額を明らかにした一部認容判決をすべきで、直ちに棄却するのは原告の合理的意思に反すること、の順で書きます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。