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用語集 / 民事訴訟法 / 弁論主義の内容と主要事実・間接事実

弁論主義の内容と主要事実・間接事実(3つのテーゼ)とは

べんろんしゅぎのないようとしゅようじじつかんせつじじつ

民事訴訟法 審理の原則と手続

弁論主義とは、判決の基礎となる事実と証拠の収集を当事者の権能と責任に委ねる原則のことです。当事者の主張しない事実は判決の基礎にできず、争いのない事実はそのまま基礎にし、証拠は原則として当事者が申し出たものに限るという3つの内容からなり、主要事実についてだけ働きます。

お金を貸した・返したという争いで、どの事実を持ち出して戦うかは、本来当事者が自分で決めることです。裁判所が証拠を読んで「実は返済済みだ」と勝手に見つけ出して判決すれば、誰も主張していない事実で負けた当事者は反論の機会を奪われます。そこで民事訴訟では、判決の基礎となる事実と証拠は当事者が出し、裁判所はその範囲で判断することにしています。これが弁論主義で、私人どうしの財産の争いは当事者の自由に任せてよいという考え方の訴訟での表れです。

民事の法廷の場面。正面の裁判官席で先生が裁判官役(札「裁判所」)として、証拠の書類の山の中から「弁済の領収書」と書かれた紙を見つけて手に取っている。原告(札「原告」)と被告(札「被告」)は左右の席に座っており、どちらの頭上にも吹き出しは無く

弁論主義は、事実と証拠の収集を当事者の権能と責任に委ねる原則で、3つのテーゼに分けて説明されます

弁論主義とは、訴訟物である権利関係の基礎となる事実の確定に必要な資料、つまり事実と証拠の収集を当事者の権能と責任に委ねる原則です。何について判決を求めるかを当事者が決める処分権主義(246条)とは別の原則で、246条は弁論主義の根拠条文ではありません。弁論主義を直接定める条文はなく、人事訴訟について裁判所は当事者が主張しない事実をしん酌できるとする人事訴訟法20条の反対解釈と、自白した事実は証明を要しないとする179条が手がかりになります。内容は、次の3つのテーゼに分けて説明されます。

  • 第1テーゼ(主張原則)当事者が主張しない事実は、判決の基礎にすることができません
  • 第2テーゼ(自白の拘束力)当事者間に争いのない事実は、そのまま判決の基礎にしなければなりません
  • 第3テーゼ(職権証拠調べの禁止)争いのある事実を認定する証拠は、原則として当事者が申し出たものに限られます。当事者尋問(207条1項)・調査の嘱託(186条1項)などの例外があります

当事者が主張していない主要事実は、証拠調べで認められても判決の基礎にできません

第1テーゼにより、ある事実を認めるに足りる証拠があっても、その事実をどちらの当事者も主張していなければ、裁判所はそれを認定できません。主張された事実(訴訟資料)と証拠調べで得た資料(証拠資料)を分けて扱うので、これを訴訟資料と証拠資料の峻別といいます。交通事故の損害賠償請求で、当事者の主張は原告の飛び出しと被告の過失を認める陳述だけだったのに、裁判所が「証拠調べの結果,YがXに対して500万円の弁済をしている事実を認めて,Xの請求を棄却する判決をした」場合、弁済は請求権を消滅させる主要事実なので、この判決は弁論主義に反します。他方、被告が主張した原告の飛び出しの事実を基礎に過失相殺をして一部認容することは、過失相殺の基礎となる事実が弁論に出ているので弁論主義に反しません(当事者からの主張の要否の語で扱います)。

板書の図解。黒板に3段の表が描かれている。1段目「どちらも主張しない事実→判決の基礎にできない(第1テーゼ)」、2段目「争いのない事実(自白)→そのまま判決の基礎にする(第2テーゼ)」、3段目「争いのある事実→当事者が申し出た証拠で認定(第

当事者間に争いのない主要事実は、証拠調べの結果がどうであれ、そのまま判決の基礎にしなければなりません

第2テーゼにより、相手方の主張する自己に不利益な主要事実を認める陳述(裁判上の自白)があれば、その事実は証明を要せず(179条)、裁判所はこれに反する認定ができません。同じ交通事故の事案で、被告は自分に脇見運転による過失があったことを認めているので、過失の具体的な態様について自白が成立しています。それにもかかわらず裁判所が「証拠調べの結果,Yの脇見運転による過失は認められないとして,Xの請求を棄却した」場合、この判決は自白に反する認定をしたことになり、弁論主義に反します。自白の成立要件・撤回・擬制自白は章5の自白の語で扱います。

弁論主義が及ぶのは主要事実だけで、間接事実と補助事実には及びません

主要事実とは、権利の発生・障害・消滅・阻止という法律効果を直接に基礎づける事実です。間接事実は主要事実の存否を推認させる事実、補助事実は証拠の信用性にかかわる事実です。判例(最判昭和41年9月22日)は、間接事実についての自白は裁判所を拘束せず、自白した当事者も拘束しないとしました。書証の成立の真正という補助事実についての自白も、裁判所を拘束しません(最判昭和52年4月15日)。間接事実や補助事実にまで弁論主義を及ぼすと、裁判所は当事者が出した間接事実に縛られて不自然な事実認定を強いられ、自由心証主義(247条)による合理的な推認ができなくなるからです。したがって、間接事実は当事者の主張がなくても証拠から認定でき、自白があってもそれと異なる認定ができます。

法規の内容や顕著な事実は主張と立証を待たずに判断でき、適法に弁論に出ていない資料は判決の基礎になりません

弁論主義が対象とするのは事実であって、法の解釈と適用は裁判所の職責です。外国法も法規なので、裁判所は自ら調査して適用することができ、内容が明らかでなければ当事者に証明を求めることもできます。「外国の法規を適用すべき事件であっても,裁判所は,当事者が当該外国法の内容及び解釈を立証しない限り,これを適用することができない」という肢は誤りです。裁判所に顕著な事実は証明を要しません(179条)。顕著な事実には公知の事実のほか、裁判官が職務の遂行上知った事実(職務上顕著な事実)も含まれ、他の事件を担当して知った事実もこれに当たります。「裁判官が他の事件を担当した結果たまたま知っている事実は,当事者が立証しない限り,判決の基礎とすることができない」という肢は誤りです。ただし、証明が要らないだけで、それが主要事実なら当事者の主張は必要です。また、裁判官が職務と関係なく私的に知った事実(私知)は、顕著な事実に当たらず判決の基礎にできません。弁論の全趣旨(247条)は適法に口頭弁論に現れた資料と状況をいうので、証拠申出が不適法として却下された文書の記載内容は含まれません。「当該証拠申出が不適法として却下されたとしても,当該文書の記載内容は,弁論の全趣旨として判決の基礎となり得る」という肢は誤りです。

民事訴訟法179条

裁判所において当事者が自白した事実及び顕著な事実は、証明することを要しない。

民事訴訟法247条

裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。

論文ではこう使う

論文では、裁判所が当事者の主張しない事実を認定した場面で、①弁論主義の根拠(私的自治の訴訟法的反映・不意打ち防止)、②第1テーゼの内容、③適用対象は主要事実に限られ間接事実・補助事実には及ばないこと、を示してから、その事実が主要事実か(抗弁事実か、否認の理由にとどまるか)を当てはめます。主張は一方当事者から出ていれば足りること(主張共通の原則)や、規範的要件の主要事実を評価根拠事実とみる見解にも触れると、結論の根拠が厚くなります。

試験ではこう問われる

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