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用語集 / 民事訴訟法 / 証明の対象と不要証事実

証明の対象と不要証事実(顕著な事実・経験則・外国法)とは

しょうめいのたいしょうとふようしょうじじつ

民事訴訟法 証拠

証明の対象とは、裁判所が判決の基礎とするために証拠によって認定しなければならない事項のことで、中心は当事者間に争いのある主要事実です。裁判所において当事者が自白した事実と顕著な事実は証明することを要しない事実(不要証事実)とされ(179条)、法規や経験則は原則として証明の対象になりませんが、外国法や専門的な経験則は証拠調べによって明らかにすることがあります。

裁判で証拠を出して証明しなければならないのは、当事者の言い分が食い違っている事実です。相手が認めた事実や、誰でも知っている歴史上の出来事まで証拠で裏付けさせるのは無駄だからです。また、どの法律をどう解釈するかは裁判所の仕事なので、当事者が法律の内容を証明する必要はありません。ただし、外国の法律や専門家しか知らない経験則のように裁判官が当然には知らないものは、調べる手段が用意されています。

法廷の場面。裁判官席の先生(札「裁判所」)の横にホワイトボードがあり、左の欄に「証明が要る」として「争いのある主要事実」、右の欄に「証明は要らない(179条)」として「自白された事実」「顕著な事実」と書かれている。原告席の男性(札「原告」)

証拠で認定しなければならないのは争いのある事実で、自白された事実と顕著な事実は証明を要しません

訴訟で証明の対象となるのは、判決の結論を左右する主要事実のうち当事者間に争いのあるものです。間接事実や補助事実も、主要事実の認定に必要な限りで証明の対象になります。179条は、裁判所において当事者が自白した事実と顕著な事実は証明することを要しないと定め、この二つを不要証事実と呼びます。裁判上の自白は、口頭弁論や弁論準備手続で弁論としてされた陳述について成立するものです。当事者尋問で当事者が述べたことは証拠資料であって弁論としての陳述ではないので、自分に不利な事実を認める供述をしても裁判上の自白にはなりません。「当事者が本人尋問の際に自己に不利な事実を認める旨を陳述したとしても,裁判上の自白とはならない」という肢は正しいです。自白の成立要件・撤回・擬制自白は、自白の各語で扱います。

顕著な事実には公知の事実と裁判所に顕著な事実があり、裁判官が職務上知った事実も証明なしに判決の基礎にできます

顕著な事実は、公知の事実と裁判所に顕著な事実に分かれます。公知の事実とは、歴史上の有名な出来事や、ある日時が到来したことのように、一般に知れ渡っている事実です。裁判所に顕著な事実とは、裁判官がその職務を行う中で知った事実で、自分が下した判決の内容や、他の事件を担当して知った事実がこれに当たります。これらは証拠によらずに認定しても判断の公正が疑われないので、証明を要しません。「裁判官が他の事件を担当した結果たまたま知っている事実は,当事者が立証しない限り,判決の基礎とすることができない」という肢は誤りです。これに対し、裁判官が職務と関係なく個人的に知った事実(私知)は顕著な事実に当たらず、証拠によらずに認定することはできません。また、顕著な事実は証明が不要になるだけで、主要事実である以上は弁論主義により当事者の主張が必要です。

  • 公知の事実歴史上の有名な出来事、確定期限の到来のような日時の経過など、一般に知れ渡っている事実です
  • 裁判所に顕著な事実裁判官が職務上知った事実です。自ら下した判決の内容、他の事件を担当して知った事実が当たります
  • 裁判官の私知職務と関係なく個人的に知った事実は顕著な事実に当たらず、証拠で認定します

法規は裁判所が調べて適用するもので、外国法も当事者が立証しなければ適用できないわけではありません

どの法規をどう解釈して適用するかは裁判所の職責であり、法規は当事者の証明の対象ではありません。外国法を適用すべき事件では、裁判官がその内容を当然に知っているとは限らないので、裁判所は当事者に資料の提出を求めたり、外国の官庁や公署に調査を嘱託したり(186条1項)して内容を調べます。外国法も法規である以上、当事者が立証しないからといって適用できなくなるわけではなく、裁判所が自ら調査して適用できます。「外国の法規を適用すべき事件であっても,裁判所は,当事者が当該外国法の内容及び解釈を立証しない限り,これを適用することができない」という肢は誤りです。外国法の調査は法定の証拠調べ手続によらない自由な証明で足りるとする考え方がありますが、異論もあります。

裁判官室の場面。机に向かう先生(札「裁判官」)の前に、表紙に「外国法」と書かれた分厚い本と、宛先が「外国の官庁」と書かれた封筒(札「調査の嘱託(186条)」)が置かれている。机の横に立つ男性(札「当事者」)が「外国法の内容は立証していません

経験則は、一般常識に属するものは証明を要しませんが、専門的な経験則は鑑定などによって明らかにします

経験則とは、経験から得られた知識や法則のことで、証拠から事実を読み取ったり、間接事実から主要事実を推認したりするときの物差しになります。誰でも知っている一般的な経験則は、裁判官がそのまま使ってよく、証明を要しません。これに対し、医学や工学などの専門的な経験則は、裁判官が当然に知っているものではないので、鑑定(212条以下)などの証拠調べによって明らかにします。経験則をどう取捨選択して事実を認定するかは自由心証主義(247条)に委ねられますが、高度の蓋然性のある経験則に反する認定は違法とされることがあり、その点は自由心証主義の語で扱います。

民事訴訟法179条

裁判所において当事者が自白した事実及び顕著な事実は、証明することを要しない。

民事訴訟法186条1項

裁判所は、必要な調査を官庁若しくは公署、外国の官庁若しくは公署又は学校、商工会議所、取引所その他の団体に嘱託することができる。

論文ではこう使う

答案で事実認定の構造を示すときは、まず問題の事実が主要事実か間接事実かを確認し、争いがなければ自白(179条)として証明不要、争いがあれば証拠による認定が要ると整理します。顕著な事実を使うときは、公知の事実か裁判所に顕著な事実かを特定し、裁判官の私知は使えないことに触れます。外国法の適用が問題になる事例では、外国法は法規であり裁判所が職権で調査すべきものであって、当事者の立証がないことを理由に適用を拒めないことを示します。

試験ではこう問われる

「証明の対象と不要証事実」が短答式でどう出題されてきたか、ひっかけの型6件と関係する過去問の肢5本は、無料のアカウントでログインすると読めます。

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