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用語集 / 民事訴訟法 / 職権証拠調べの可否

職権証拠調べの可否とは

しょっけんしょうこしらべのかひ

民事訴訟法 証拠

職権証拠調べとは、当事者の申出によらずに裁判所が自ら証拠調べをすることです。弁論主義の下では証拠は当事者が申し出たものに限られるのが原則なので、職権証拠調べは、当事者本人の尋問・調査の嘱託・管轄に関する事項・検証の際の鑑定・訴訟係属中の証拠保全・人事訴訟など、法律が定めた場合に限ってできます。

私人どうしの財産の争いでは、どの証拠を出すかは当事者の責任です。裁判所が勝手に証人を呼べば、一方の当事者に肩入れすることになりかねません。ただ、当事者本人の話を聞くことや官庁への問合せのように、中立的で手軽な方法まで禁じると、真相に近づく道が狭くなります。そこで法律は、裁判所が職権で証拠を調べられる場面を一つずつ決めています。

裁判官室の場面。机の先生(札「裁判官」)の前に二つの箱が置かれている。左の箱には「職権でできる」と書かれ、中に札「当事者本人の尋問」「調査の嘱託」「管轄の証拠調べ」「検証の際の鑑定」「係属中の証拠保全」が入っている。右の箱には「申出が必要」

弁論主義の下では証拠は当事者が申し出たものに限られ、証人尋問を職権ですることはできません

弁論主義の第3テーゼにより、争いのある事実を認定するための証拠は、原則として当事者が申し出たものに限られます。現行の民事訴訟法には、裁判所が広く職権で証拠調べをできるとする一般的な規定はなく、職権証拠調べは個別の明文がある場合に限られます。証人尋問について職権で行えるとする規定はないので、証人は当事者の申出によってのみ尋問します。「裁判所は、職権で、証人の尋問をすることができる」という肢は誤りです。

当事者本人の尋問、調査の嘱託、管轄に関する事項、検証の際の鑑定、公文書の成立の照会は職権でできます

裁判所は、申立てにより又は職権で、当事者本人を尋問することができます(207条1項)。当事者は事件を最もよく知る者であり、中立的な第三者を呼び出す証人尋問とは事情が違うからです。「裁判所は,職権で当事者本人を尋問することができる」という肢は正しいです。官庁・公署・団体などへの調査の嘱託も職権でできます(186条1項)。条文に申立ての要件がなく、嘱託先の中立性も高いからで、調査の嘱託を職権でできるとする肢は正しいです。管轄に関する事項は職権で証拠調べができ(14条)、「裁判所は,管轄の原因事実について,職権で,証拠調べをすることができる」という肢は正しいです。検証をするに当たり必要があると認めるときは職権で鑑定を命ずることができ(233条)、公文書の成立の真否に疑いがあるときは職権で当該官庁に照会できます(228条3項)。「裁判所は,検証をするに当たり,職権で,鑑定を命ずることができる」という肢は正しいです。

  • 当事者本人の尋問申立てにより又は職権でできます(207条1項)
  • 調査の嘱託職権でできます(186条1項)
  • 管轄に関する事項職権で証拠調べができます(14条)
  • 検証の際の鑑定職権で命じられます(233条)
  • 公文書の成立の照会職権でできます(228条3項)
  • 訴訟係属中の証拠保全職権でできます(237条)。訴え提起前は申立てが必要です(234条)
  • 人事訴訟職権で証拠調べができます(人事訴訟法20条)
  • 証人尋問・文書提出命令職権ではできません

証拠保全は、訴訟が係属している間に限って職権ですることができます

証拠保全は、あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使うことが困難になる事情があるときに、申立てにより行うのが原則です(234条)。しかし訴訟の係属中であれば、裁判所自身が審理の中で証拠が失われるおそれに気付くことがあるので、必要があると認めるときは職権で証拠保全の決定をすることができます(237条)。「裁判所は,訴訟の係属中,職権で,証拠保全をすることができる」という肢は正しく、必要があると認めるときに職権で証拠保全の決定をすることができるとする肢も正しいです。訴えの提起前には事件が裁判所に係属していないので、職権の証拠保全はできません。

法廷の場面。被告席の机の上に書類(札「被告が引用した契約書」)が置かれている。裁判官席の先生(札「裁判所」)が手を振って「職権で提出命令は出せません」と言い、原告席の男性(札「原告」)が書類「文書提出命令の申立書」を手に立ち上がっている。先

文書提出命令は当事者の申立てによるもので、当事者が引用した文書でも職権で提出を命ずることはできません

文書提出命令は、裁判所が文書提出命令の申立てを理由があると認めるときに決定で発するものです(223条1項)。当事者が訴訟で引用した文書を自ら所持していれば提出義務を負いますが(220条1号)、提出命令はあくまで相手方の申立てを待って発するので、職権で提出を命ずることはできません。「裁判所は,当事者が訴訟において引用した文書を自ら所持するときは,証拠調べのため,職権で,その提出を命ずることができる」という肢は誤りです。これと紛らわしいのが釈明処分で、裁判所は訴訟関係を明瞭にするため、当事者が所持する引用文書を提出させることができます(151条1項3号)。しかしこれは主張の内容を明らかにするための処分であり、証拠調べとして文書を取り調べるものではありません。

人事訴訟や公益性の高い訴訟要件では職権で証拠調べができますが、それは裁判所の権限であって常に行う義務ではありません

人事訴訟では身分関係の真実に合った解決が求められるので、裁判所は当事者が主張しない事実をしん酌し、職権で証拠調べをすることができます(人事訴訟法20条)。「裁判所は,人事訴訟においては,職権で,証拠調べをすることができる」という肢は正しいです。重複する訴えに当たるかどうかのように公益性の強い訴訟要件の審理でも、資料の収集は職権探知によるとされ、職権で証拠調べができます。「重複する訴えに当たるか否かの審理においては、職権証拠調べをすることができる」という肢は正しいです。もっとも、職権証拠調べは当事者の立証を補う権限です。最判昭和28年12月24日は、当時の行政事件訴訟特例法の職権証拠調べの規定について、証拠について十分な心証を得られない場合に職権で調べることができるとしたものであり、当事者の提出した証拠で十分な心証が得られている以上、職権でさらに調べる必要はないとしました。

民事訴訟法207条1項

裁判所は、申立てにより又は職権で、当事者本人を尋問することができる。この場合においては、その当事者に宣誓をさせることができる。

民事訴訟法237条

裁判所は、必要があると認めるときは、訴訟の係属中、職権で、証拠保全の決定をすることができる。

民事訴訟法233条

裁判所は、検証をするに当たり、必要があると認めるときは、鑑定を命ずることができる。

論文ではこう使う

裁判所の証拠調べが当事者の申出によらずに行われた事例では、まず弁論主義の第3テーゼにより職権証拠調べは原則として許されないことを示し、その証拠調べが207条1項・186条1項・14条・233条・237条などの明文の例外に当たるかを確認します。例外に当たらない証人尋問などを職権で行った場合は第3テーゼに反すると書き、釈明処分(151条)との区別にも触れます。

試験ではこう問われる

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