証人尋問の方式(交互尋問・順序・書面尋問・映像等による尋問)とは
しょうにんじんもんのほうしき
証人尋問の方式とは、証人に口頭で問いを発して証言を得る手続の進め方をいい、尋問の順序(202条)、書類に基づく陳述の禁止(203条)、映像と音声の送受信による尋問(204条)、尋問に代わる書面の提出(205条)などの規律がこれに当たります。
証人が法廷で話すとき、誰がどの順番で質問するかが決まっていないと、都合のよい話だけを引き出す尋問になりかねません。そこで、尋問を申し出た当事者が先に聞き、相手方がその話を吟味し、最後に裁判長が補うという順序が法律で決められています。証人には記憶のまま口頭で話させるのが原則ですが、裁判所に来るのが難しい証人のために、ビデオ通話による尋問や書面で答えてもらう方法も用意されています。
証人の尋問は、申出をした当事者、他の当事者、裁判長の順序でするのが原則で、裁判長は当事者の意見を聴いて順序を変えることができます
証人の尋問は、その尋問の申出をした当事者、他の当事者、裁判長の順序でします(202条1項)。当事者同士が交互に問いを重ねることで証言の信用性を確かめるしくみなので、交互尋問と呼ばれます。規則では、当事者による尋問は、申出をした当事者の主尋問、相手方の反対尋問、申出をした当事者の再主尋問の順に行い(民事訴訟規則113条1項)、裁判長はいつでも自ら証人を尋問できるとされています(同条3項)。裁判長は、適当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、この順序を変更することができます(202条2項)。「証人の尋問は,その尋問の申出をした当事者,他の当事者,裁判長の順序で行うが,裁判長は,適当と認める場合には,当事者の意見を聴いて,その順序を変更することができる」という肢は正しいです。裁判長が当事者に先立って尋問するのも順序の変更に当たるので、「裁判長は,地方裁判所で行う証人の尋問において,当事者に先立って尋問をしようとするときは,当事者の意見を聴かなければならない」という肢は正しく、「証人の尋問は,その尋問の申出をした当事者及び他の当事者より先に裁判長がすることはできない」という肢は誤りです。当事者が順序の変更に異議を述べたときは、裁判所が決定でその異議について裁判します(202条3項)。受命裁判官や受託裁判官が証人尋問をする場合には、裁判所と裁判長の職務はその裁判官が行いますが、この異議についての裁判だけは受訴裁判所がします(206条)。「受命裁判官が証人尋問を行う場合において,裁判所及び裁判長の職務は,その裁判官が行うが,尋問の順序の変更についての異議の裁判は,受訴裁判所が行う」という肢は正しいです。なお、少額訴訟では、証人や当事者本人の尋問は裁判官が相当と認める順序でします(372条2項)。
証人は記憶に基づいて口頭で陳述するのが原則であり、書類に基づいて陳述するには裁判長の許可が要ります
証人尋問は、証人が自分の記憶をもとに話す内容を、反対尋問で吟味し、裁判官が供述の様子を見て評価する手続です。あらかじめ用意した書面を読み上げるだけでは、この吟味ができません。そのため、証人は書類その他の物に基づいて陳述することができず、裁判長の許可を受けたときに限って書類に基づく陳述ができます(203条)。日付や数量のように記憶だけに頼らせるとかえって不正確になる事項があるので、許可の道が残されています。「証人は、裁判長の許可を受けたときは、書類に基づいて陳述することができる」という肢と、「証人は,裁判長の許可を受けた場合を除き,書類に基づいて陳述することはできない」という肢は、どちらも正しいです。同じ期日に複数の証人を尋問するときは、後の証人が前の証人の証言に影響されないように退廷させるのが原則ですが、裁判長は、必要があると認めるときは、後に尋問すべき証人に在廷を許すことができます(民事訴訟規則120条)。「同一期日において後に尋問を受ける証人であっても、裁判長の許可があれば、先行する他の証人の尋問中に在廷することができる」という肢は正しいです。証言が食い違うときは、裁判長が証人同士を同時に尋問する対質を命ずることもできます(同規則118条1項)。反対尋問の機会がなかった証言の扱いは、自由心証主義の語で扱います。
映像と音声の送受信による尋問は、出頭が困難な場合、圧迫を受けるおそれがある場合、当事者に異議がない場合のいずれかで、相当と認めるときにできます
裁判所は、①証人の住所、年齢又は心身の状態その他の事情により受訴裁判所に出頭することが困難であると認める場合、②事案の性質や証人と当事者本人との関係などから、法廷で陳述すると圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合、③当事者に異議がない場合のいずれかであって、相当と認めるときは、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をする方法で証人を尋問することができます(204条)。令和4年改正の前は、「証人が遠隔の地に居住するとき」と圧迫のおそれがあるときの二つに限られていました。「証人尋問は,映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によってすることはできない」という肢は誤りです。「裁判所は,証人が遠隔の地に居住するときには,映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって,証人の尋問をすることができる」という肢は、出題当時の204条1号そのままの文言で正しいとされました。現在は、遠隔地に住んでいることは出頭が困難な事情の一つとして①で読み、そのうえで相当と認めることが要ります。この方法は当事者本人の尋問にも準用されます(210条)。少額訴訟では、相当と認めるときは、音声だけの電話会議の方法でも証人を尋問できます(372条3項)。「少額訴訟においては,電話会議によって証人を尋問することができる」という肢は正しいです。
証人の尋問に代わる書面の提出は、地方裁判所では当事者に異議がないことが要りますが、簡易裁判所では要りません
裁判所は、当事者に異議がない場合であって、相当と認めるときは、証人の尋問に代え、書面の提出をさせることができます(205条1項)。書面尋問は反対尋問の機会を奪うので、当事者が異議を述べないことを要件にして手続保障を図っています。「裁判所は,相当と認める場合において,当事者に異議がないときは,証人の尋問に代え,その証人に書面の提出をさせることができる」という肢と、「裁判所は,当事者が異議を述べたときは,証人の尋問に代え,書面の提出をさせることはできない」という肢は、どちらも正しいです。これに対し、簡易裁判所では、相当と認めるときは、当事者の異議の有無にかかわらず、証人や当事者本人の尋問、鑑定人の意見の陳述に代えて書面を提出させることができます(278条1項)。少額で簡易な事件を迅速に処理するための特則です。「裁判所は,相当と認める場合には,当事者に異議がないときに限り,証人の尋問に代え,書面の提出をさせることができる」という簡易裁判所の手続についての肢と、「簡易裁判所は、相当と認める場合であっても、当事者に異議があるときは、証人の尋問に代えて、書面の提出をさせることはできない」という肢は、どちらも誤りです。地方裁判所では当事者本人の尋問を書面に代える規定がないことは、当事者尋問の語で扱います。
- 地方裁判所(205条1項)証人の尋問に限り、当事者に異議がなく、相当と認めるときに書面を提出させられます
- 簡易裁判所(278条1項)証人・当事者本人の尋問と鑑定人の意見の陳述について、相当と認めるときは、当事者に異議があっても書面を提出させられます
- 映像等による尋問(204条)出頭困難・圧迫のおそれ・当事者に異議がない場合のいずれかで、相当と認めるときにできます
- 電話会議による尋問(372条3項)少額訴訟の証人尋問で、相当と認めるときにできます
民事訴訟法202条1項
証人の尋問は、その尋問の申出をした当事者、他の当事者、裁判長の順序でする。
民事訴訟法202条2項
裁判長は、適当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、前項の順序を変更することができる。
民事訴訟法203条
証人は、書類その他の物に基づいて陳述することができない。ただし、裁判長の許可を受けたときは、この限りでない。
民事訴訟法204条
裁判所は、次に掲げる場合であって、相当と認めるときは、最高裁判所規則で定めるところにより、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、証人の尋問をすることができる。一 証人の住所、年齢又は心身の状態その他の事情により、証人が受訴裁判所に出頭することが困難であると認める場合 二 事案の性質、証人の年齢又は心身の状態、証人と当事者本人又はその法定代理人との関係その他の事情により、証人が裁判長及び当事者が証人を尋問するために在席する場所において陳述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合 三 当事者に異議がない場合
民事訴訟法205条1項
裁判所は、当事者に異議がない場合であって、相当と認めるときは、証人の尋問に代え、書面の提出をさせることができる。
民事訴訟法278条1項
裁判所は、相当と認めるときは、証人若しくは当事者本人の尋問又は鑑定人の意見の陳述に代え、書面の提出をさせることができる。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。