簡易裁判所の訴訟手続の特則とは
かんいさいばんしょのそしょうてつづきのとくそく
簡易裁判所の訴訟手続の特則とは、簡易な手続により迅速に紛争を解決するため(270条)、訴額140万円以下の事件を扱う簡易裁判所について、口頭での訴えの提起、準備書面の省略、尋問に代わる書面の提出、司法委員、和解に代わる決定などを定めた規定です(270条〜280条)。
簡易裁判所は、140万円以下の身近な事件を扱う、市民にいちばん近い裁判所です。弁護士を頼まずに本人が訴えることも多いので、書面を整えなくても口頭で訴えられ、請求の原因を法律どおりに書けなくても、何でもめているかを示せば足ります。期日に毎回出頭できなくても書面を出しておけば陳述したことにしてもらえ、話合いには一般市民の司法委員が加わります。ただし、手続を簡単にしても、反訴を禁じたり証拠を絞ったりはせず、そこは少額訴訟とは違います。
簡易裁判所では訴えを口頭で起こすことができ、請求の原因に代えて紛争の要点を明らかにすれば足ります
簡易裁判所は、訴訟の目的の価額が140万円を超えない請求について第一審の裁判権を持ち(裁判所法33条1項1号)、簡易な手続により迅速に紛争を解決するものとされています(270条)。訴えは口頭で提起でき(271条)、「訴えは,口頭で提起することができる」という肢は正しいです。訴えの提起においては、請求の原因に代えて紛争の要点を明らかにすれば足ります(272条)。法律に詳しくない本人でも訴えやすくするためで、訴状を出して訴える場合にも適用されます。「訴えの提起においては,請求の原因に代えて,紛争の要点を明らかにすれば足りる」という肢は正しく、「訴状を提出して訴えを提起する場合には,紛争の要点を明らかにすることで請求の原因に代えることはできない」という肢は誤りです。当事者双方が任意に出頭して口頭弁論をすることもでき、その場合の訴えの提起は口頭の陳述でします(273条)。訴訟代理人は原則として弁護士に限られますが、簡易裁判所ではその許可を得て、弁護士でない者を訴訟代理人にできます(54条1項ただし書)。「簡易裁判所においては,その許可を得て,弁護士でも司法書士でもない者を訴訟代理人とすることができる」という肢は正しく、「簡易裁判所の事件であっても,弁護士でない者を訴訟代理人とすることは許されない」という肢は誤りです。訴状の記載事項は、訴状の必要的記載事項と請求の特定の語で扱います。
口頭弁論は書面で準備しなくてよいものの、相手方が準備を要する事項は書面か直接の通知が要り、続行期日の欠席でも陳述擬制ができます
簡易裁判所では、口頭弁論は書面で準備することを要しません(276条1項)。ただし、相手方が準備をしなければ陳述をすることができないと認めるべき事項は、書面で準備するか、口頭弁論の前に直接相手方に通知しなければなりません(276条2項)。不意打ちを防ぐためです。「相手方が準備をしなければ陳述をすることができないと認めるべき事項についても,書面で準備する必要はなく,口頭弁論前直接に相手方に通知する必要もない」という肢と、「口頭弁論は,簡易裁判所においても,書面で準備しなければならない」という肢は誤りです。地方裁判所では、提出した書面を陳述したものとみなす158条は最初にすべき口頭弁論の期日に限られますが、簡易裁判所では続行の期日に欠席した場合にも準用されます(277条)。毎回出頭するのが負担になる本人訴訟に配慮したものです。「被告が口頭弁論の続行の期日に欠席した場合においても,裁判所は,被告が提出した準備書面に記載した事項を陳述したものとみなし,出頭した原告に弁論をさせることができる」という肢と、「原告又は被告が口頭弁論の続行の期日に出頭しない場合であっても,裁判所は,その者が提出した準備書面に記載した事項を陳述したものとみなし」とする肢は正しいです。
簡易裁判所は、相当と認めれば当事者に異議があっても、証人尋問などに代えて書面を提出させられます
地方裁判所では、証人の尋問に代えて書面を提出させるには当事者に異議がないことが必要です(205条1項)。簡易裁判所では、相当と認めるときは、証人若しくは当事者本人の尋問又は鑑定人の意見の陳述に代え、書面の提出をさせることができ(278条1項)、当事者の異議の有無は要件になっていません。「当事者に異議がないときに限り,証人の尋問に代え,書面の提出をさせることができる」という肢と、「当事者に異議があるときは、証人の尋問に代えて、書面の提出をさせることはできない」という肢は誤りです。相当と認めるときは、映像と音声の送受信による方法で証人や当事者本人を尋問することもできます(277条の2)。一方、証拠調べを即時に取り調べることができる証拠に限る定めは少額訴訟だけのもので(371条)、簡易裁判所の通常の手続にはありません。100万円の貸金返還請求訴訟について、「証拠調べは,即時に取り調べることができる証拠に限ってすることができる」という肢は誤りです。
司法委員を和解の補助や審理の立会いに使え、被告が争わない金銭請求では和解に代わる決定ができます
裁判所は、必要があると認めるときは、和解を試みるについて司法委員に補助をさせ、又は司法委員を審理に立ち会わせて事件につきその意見を聴くことができます(279条1項)。司法委員は、地方裁判所が毎年あらかじめ選任した一般市民の中から事件ごとに指定されます(279条3項)。「司法委員を審理に立ち会わせて事件につきその意見を聴くことができる」という肢は正しいです。金銭の支払の請求で、被告が口頭弁論で原告の主張した事実を争わず、何らの防御の方法も提出しない場合に、被告の資力その他の事情を考慮して相当と認めるときは、裁判所は原告の意見を聴いて、支払の時期や分割払を定め、遅延損害金の免除も定めて、金銭の支払を命ずる決定(和解に代わる決定)ができます(275条の2第1項)。「相当と認めるときは,和解に代わる決定をすることができる」という肢と、「原告の意見を聴いた上で,当該請求に係る金銭の支払について分割払の定めをして,当該金銭の支払を命ずる決定をすることができる」という肢は正しいです。当事者は告知を受けた日から2週間の不変期間内に異議を申し立てられ、異議があれば決定は効力を失い、異議がなければ裁判上の和解と同一の効力を持ちます(275条の2第3項〜5項)。「当事者は,その決定に対して異議を申し立てることができない」という肢は誤りです。電子判決書の事実と理由には、請求の趣旨及び原因の要旨、その原因の有無と請求を排斥する理由である抗弁の要旨を記録すれば足ります(280条)。「請求の原因の有無と,請求を排斥する理由である抗弁の要旨を表示すれば足りる」という肢は正しいです。
簡易裁判所でも反訴はでき、地方裁判所の管轄に属する反訴は相手方の申立てがあれば本訴とともに地方裁判所に移送します
簡易裁判所の通常の手続では反訴の提起は禁じられていません。反訴を禁じるのは少額訴訟と手形訴訟です。「反訴の提起は,することができない」という肢と、「被告は,反訴を提起することができない」という肢は誤りです。被告が反訴で地方裁判所の管轄に属する請求をした場合に、相手方の申立てがあるときは、簡易裁判所は決定で本訴と反訴を地方裁判所に移送しなければならず(274条1項)、この決定には不服を申し立てられません(274条2項)。移送は相手方(本訴原告)の申立てによるので、「簡易裁判所は,職権により,決定で,本訴及び反訴を地方裁判所に移送しなければならない」という肢と、50万円の本訴に200万円の反訴があった場合に「簡易裁判所は、職権で、本訴及び反訴を地方裁判所に移送しなければならない」という肢は誤りです。簡易裁判所の管轄に属する不動産に関する訴訟は、被告が本案について弁論をする前に申し立てれば地方裁判所に移送しなければなりません(19条2項)。「当該訴訟を不動産の所在地を管轄する地方裁判所に移送しなければならない」という肢は正しいです。簡易裁判所は相当と認めれば裁量で地方裁判所に移送することもできます(18条)。移送の詳細は、移送の種類と要件の語で扱います。口頭弁論の公開を停止する特則は簡易裁判所にも無く、「口頭弁論の期日を公開せずに行うことができる」という肢は誤りです。
- 訴えの提起口頭でできる(271条)。請求の原因に代えて紛争の要点で足りる(272条)
- 訴訟代理人裁判所の許可で弁護士でない者も可(54条1項ただし書)
- 準備書面不要。ただし相手方が準備を要する事項は書面か直接の通知(276条)
- 欠席と陳述擬制続行期日にも準用(277条)。地裁は最初の期日だけ(158条)
- 尋問に代わる書面相当と認めれば当事者の異議があっても可(278条)。地裁は異議がないことが要件(205条)
- 司法委員和解の補助・審理の立会いと意見(279条)
- 和解に代わる決定被告が争わない金銭請求。異議2週間(275条の2)
- 反訴できる。地裁管轄の反訴は相手方の申立てで移送(274条)
- 証拠の即時性の制限無い(少額訴訟だけ。371条)
民事訴訟法274条
被告が反訴で地方裁判所の管轄に属する請求をした場合において、相手方の申立てがあるときは、簡易裁判所は、決定で、本訴及び反訴を地方裁判所に移送しなければならない。(略)2 前項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
民事訴訟法278条1項
裁判所は、相当と認めるときは、証人若しくは当事者本人の尋問又は鑑定人の意見の陳述に代え、書面の提出をさせることができる。
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