訴訟上の和解の要件と方式(89条・264条・265条・275条)とは
そしょうじょうのわかいのようけんとほうしき
訴訟上の和解とは、訴訟の係属中に当事者が期日において互いに譲歩して争いをやめる合意のことです。裁判所は訴訟の程度を問わず和解を試みることができ(89条1項)、和解条項案の書面受諾(264条)や当事者の共同の申立てによる和解条項の定め(265条)でも成立します。
裁判が長引くより、互いに譲り合って早く決着をつけたいと考える当事者は少なくありません。訴訟の途中で当事者が互いに譲歩して争いをやめる合意をすれば、判決を待たずに訴訟は終わります。これが訴訟上の和解です。裁判所は訴訟がどの段階にあっても和解を勧めることができ、和解の中身も訴訟物に限られません。当事者が自主的に決めるものなので、判決よりも柔軟な解決ができる一方、代理人の権限や成立の方式には決まりがあります。
裁判所は訴訟がどの程度にあるかを問わず和解を試みることができ、第1回口頭弁論期日の前でも、口頭弁論の終結後でも、上告審でもできます
裁判所は、訴訟がいかなる程度にあるかを問わず、和解を試み、又は受命裁判官若しくは受託裁判官に和解を試みさせることができます(89条1項)。訴えの提起後であれば第1回口頭弁論期日の前でもでき、「裁判所は,訴訟の係属後であれば,第1回口頭弁論期日前であっても,和解を試みることができる」という肢と、「裁判所は,第1回口頭弁論期日においても和解を試みることができる」という肢は正しいです。口頭弁論の終結後でも、弁論を再開しないまま和解を試みられるので、「口頭弁論の再開を命じなければならない」という肢は誤りです。第一審判決の言渡し後でも確定前なら第一審裁判所で和解ができ、「第一審裁判所で訴訟上の和解をすることはできない」という肢は誤りです。上告審でも和解ができ、「訴訟上の和解は,上告審においてもすることができる」という肢は正しいです。反対に「上告裁判所は,和解を試みることを相当と認める場合には,原審に事件を差し戻さなければならない」という肢は誤りです。受託裁判官にも試みさせられるので、「受託裁判官にさせることはできない」という肢は誤りで、「裁判所は,受命裁判官をして和解を試みさせることができる」という肢は正しいです。
和解の対象は訴訟物に限られず、第三者も参加の手続なしに加わることができます
和解は当事者が互いに譲歩して紛争を解決する合意なので、訴訟物以外の権利や法律関係も含めることができます。「訴訟上の和解は,訴訟物である権利以外の権利をその対象に含めることができる」という肢と、「当該訴訟の訴訟物に加えて訴訟物以外の権利又は法律関係についても和解をすることができる」という肢は正しいです。当事者以外の第三者も、補助参加などの訴訟参加の手続を経ずに和解に加わることができ(大判昭和13年8月9日)、和解条項で第三者が債務を負えば、和解調書はその第三者に対する債務名義にもなります。「そのためには訴訟参加の手続を経ることを要する」という肢は誤りで、「和解調書の執行力は,その第三者にも及ぶ」という肢は正しいです。第三者が被告の債務を保証する和解も、「許されない」という肢は誤りです。被告が請求原因を全部認めていても、明渡しの期限を猶予する和解はできます。請求を全部認めつつ訴訟費用を各自の負担とする和解もでき、和解で費用の負担を定めなかったときは各自が負担します(68条)。「当事者は,建物明渡期限の猶予を内容とする和解をすることができる」という肢、「訴訟費用については当事者の各自の負担とする旨の訴訟上の和解をすることは可能である」という肢、「各当事者が自己の支出した訴訟費用を負担することになる」という肢は正しいです。反対に「当事者双方が半分ずつ平等に負担する」という肢は誤りです。
- 時期訴訟がいかなる程度にあるかを問いません(89条1項)。第1回期日前・口頭弁論終結後・判決言渡し後確定前・上告審でもできます
- 主体受訴裁判所のほか、受命裁判官・受託裁判官に試みさせられます
- 対象訴訟物以外の権利も含められ、第三者も参加の手続なしに加われます
- 代理訴訟代理人は特別の委任(55条2項)、法定代理人・被保佐人・被補助人は特別の授権(32条2項)が必要です
- 費用定めがなければ各自負担です(68条)
- できない場合筆界確定の訴えで筆界を定める和解
訴訟要件を欠く訴えや重複した訴えでも和解はできますが、筆界を定める和解はできません
訴訟上の和解は当事者の自主的な紛争解決なので、本案判決のように訴訟要件の具備は求められません。「訴えの利益を欠く訴訟においてした訴訟上の和解は,無効である」という肢は誤りです。重複する訴えの後訴でも和解でき、「前訴が取り下げられない限り,後訴において訴訟上の和解をすることはできない」という肢は誤りです。共有物分割の訴えのような形式的形成訴訟でも、当事者が処分できる共有関係なので和解ができ、「共有物分割の訴えにおいては,訴訟上の和解をすることができない」という肢は誤りです。離婚も当事者が処分できる身分関係なので、「XとYは,訴訟上の和解により離婚をすることができる」という肢は正しいです。これに対し、筆界は公的な境界で当事者が処分できないので、筆界確定の訴えで筆界を定める和解はできません。「筆界(境界)確定の訴えにおいて,筆界を定める効果を有する内容の和解をすることはできない」という肢と、「所有権確認訴訟では,裁判上の和解により土地所有権の範囲を定めることができるが,筆界(境界)確定訴訟では,裁判上の和解により筆界(境界)を定めることができない」という肢は正しいです。
和解は期日で双方が合意するほか、和解条項案の書面による受諾や、当事者の共同の申立てによる裁判所の和解条項の定めでも成立します
和解は期日で当事者双方が合意して成立するのが基本ですが、それ以外の方法も用意されています。当事者の一方が出頭することが困難なときは、その当事者があらかじめ提示された和解条項案を受諾する書面を出し、他方が期日に出頭して受諾すれば和解が調ったものとみなされます(264条1項)。当事者双方が出頭することが困難なときは、和解が成立すべき日時を定めて提示された和解条項案を双方が書面で受諾し、その日時が経過すれば、その日時に和解が調ったものとみなされます(同条2項。令和4年改正で新設)。これに対し、「当事者双方が,あらかじめ裁判所から提示された和解条項案を受諾する旨の書面を提出し,口頭弁論の期日に出頭しないときは,裁判所は,当事者間に和解が調ったものとみなすことができる」という肢は誤りです。出題当時は一方の書面受諾しか認められず、現在の264条2項も、双方の出頭困難・日時を定めた条項案・日時の経過で当然に成立する仕組みで、期日に欠席した双方について裁判所がみなす制度ではないからです。さらに、当事者の共同の申立てがあれば、裁判所は事件の解決のために適当な和解条項を定めることができ、その告知が双方にされたときに和解が調ったものとみなされます(265条)。職権ではできないので、「裁判所は,当事者双方のための衡平を考慮し,職権で,事件の解決のために適当な和解条項を定めることができ」という部分を含む肢は誤りです。「当事者双方が裁判所に出頭して合意をする方法以外の方法によっては,訴訟上の和解は成立しない」という肢も誤りです。電話会議やウェブ会議で行う弁論準備手続や和解の期日でも和解ができるので、「当事者の一方がその期日に出頭していない場合であっても,いわゆる電話会議システムを利用する方法によって和解をすることができる」という肢は正しいです。反対に「当該期日において和解をすることができない」という肢は誤りです。
訴訟代理人には特別の委任、被保佐人には特別の授権が要り、訴え提起前の和解は簡易裁判所に申し立てます
和解は訴訟物を処分する行為なので、訴訟代理人は特別の委任を受けなければならず(55条2項2号)、被保佐人や法定代理人には特別の授権が必要です(32条2項1号)。相手方の提起した訴えに応訴する場合でも同じです。「訴訟代理人が訴訟上の和解をするには,特別の委任を受けることを要する」という肢と、「被保佐人が相手方の提起した訴えについて訴訟上の和解をするには、保佐人による特別の授権が必要である」という肢は正しいです。補助参加人は当事者ではないので、補助参加人が欠席した期日でも被参加人は和解でき、「被参加人は、補助参加人が不出頭の期日において、相手方との間で訴訟上の和解を成立させることはできない」という肢は誤りです。訴えを提起する前でも、当事者は請求の趣旨・原因と争いの実情を示して、相手方の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所に和解を申し立てられます(275条1項・訴え提起前の和解)。地方裁判所ではないので、「相手方の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所に、訴え提起前の和解の申立てをすることができる」という肢は誤りです。簡易裁判所では、金銭の支払を求める訴えで被告が争わず防御方法も出さないとき、相当と認めれば和解に代わる決定ができ、告知から2週間以内の異議で失効します(275条の2)。「相当と認めるときは,和解に代わる決定をすることができる」という肢は正しいです。反対に「当事者は,その決定に対して異議を申し立てることができない」という肢は誤りです。
民事訴訟法89条1項
裁判所は、訴訟がいかなる程度にあるかを問わず、和解を試み、又は受命裁判官若しくは受託裁判官に和解を試みさせることができる。
民事訴訟法264条2項
当事者双方が出頭することが困難であると認められる場合において、当事者双方があらかじめ裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官から和解が成立すべき日時を定めて提示された和解条項案を受諾する旨の書面を提出し、その日時が経過したときは、その日時に、当事者間に和解が調ったものとみなす。
民事訴訟法265条1項
裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、当事者の共同の申立てがあるときは、事件の解決のために適当な和解条項を定めることができる。
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