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用語集 / 民事訴訟法 / 権利自白

権利自白とは

けんりじはく

民事訴訟法 訴訟行為・攻撃防御

権利自白とは、請求の当否の判断の前提となる権利や法律関係(所有権など)を、相手方の主張どおり認める陳述のことです。法の適用は裁判所の職責なので原則として裁判所を拘束しませんが、相手方はその権利の取得原因を主張立証する必要が一応なくなります。

土地の明渡しを求める原告に、被告が「その土地があなたのものであることは認めます」と言ったとします。所有権は事実ではなく法的な判断なので、厳密には自白の対象になりません。しかし所有権を認めてもらえないと、原告は誰がいつ原始取得し、どう転々と移転したかまでさかのぼって証明しなければならなくなります。そこで実務では、所有権のような日常的な権利を相手方が認めた場合、原告はそれ以上取得原因を証明しなくてよいと扱っています。

法廷の場面。原告代理人(札「原告」)の背後のパネルに「原始取得→A→B→X」と所有権の移転の矢印が長く連なる図が描かれ、原告代理人が汗をかいて「全部さかのぼって証明しなければ…」とつぶやいている。被告代理人(札「被告」)が「その土地がXの所

権利自白は、請求の前提となる権利や法律関係を相手方が認める陳述で、代表例は所有権を認める場合です

権利自白とは、訴訟物そのものではなく、請求の当否を判断する前提となる権利・法律関係を直接の対象とする自白です。所有権に基づく明渡請求で被告が原告の所有権を認める場合が典型で、原告の過去のある時点の所有(もと所有)や、原告の前主の所有を認める場合も同じです。権利は喪失事由がない限り存続するので、もと所有が認められれば、その後の所有権喪失は被告が抗弁として主張すべきことになります。所有権に基づく動産引渡請求で、原告がAから購入したと主張し、被告がAの所有だけを認めた事例について、判例(最判昭和40年2月23日)は、第三者が所有者であることに当事者間の争いがなければ、裁判所はそれを前提に判断できるとしています。「裁判所は,Aが当該動産を所有していたことを判決の基礎とすることができる」という肢は正しいです。

法の適用は裁判所の職責なので、権利自白は原則として裁判所を拘束せず、相手方の証明の必要をなくす限度で働きます

事実に法を当てはめるのは裁判所の職責で、弁論主義が及ぶのは事実だけです。そのため権利自白には、事実の自白のような確定的な拘束力はないとするのが従来の通説と実務です。権利自白があれば、相手方は一応その権利の取得原因を主張立証する必要がなくなり、通常はそれを前提に判断されますが、裁判所が権利自白の内容を否定する判断をすることもでき、自白した当事者も事実の自白といえる部分を除いて撤回できるとされます。判例(最判昭和30年7月5日)も、一定額について消費貸借が成立したとの陳述は法律上の意見の陳述であって直ちに自白とはいえないとして、その撤回を認めなかった原判決を破棄しました。これに対し、当事者が権利の内容を理解したうえで争わない意思が明らかな場合には、権利自白にも裁判所を拘束する効力を認めるべきだとする見解も有力です。実務で権利自白の対象とされるのは事実上所有権などに限られ、過失や契約の成立は、その基礎となる事実について通常の自白を考えれば足りるとされています。

教室の黒板の板書の図解。左に「事実の自白(例:Aから買った)」として「裁判所を拘束する」、右に「権利自白(例:Xの所有である)」として「法の適用は裁判所の職責→原則として拘束しない」「ただし相手方は取得原因の立証が一応不要」と書かれている。

権利自白に拘束力を認める見解によれば、原告の所有を被告が認めた以上、原告は取得原因の売買を立証する必要がありません

Aから土地を買ったと主張して所有権に基づく明渡しを求める原告に対し、被告が原告の所有を認めた場合を考えます。権利自白に自白の拘束力を認める見解からは、原告の現在の所有について自白が成立し、所有権取得の原因である売買の事実は請求の当否に関係しなくなるので、原告はAからの買受けを立証する必要はないことになります。「権利自白として自白の拘束力を認める見解によれば,Xは,請求原因事実として,甲土地をAから買い受けたことについて立証する必要がない」という肢は、この見解からの帰結として正しいです。拘束力を否定する従来の通説からも、権利自白があれば原告は一応取得原因を主張立証する必要がなくなるので、通常は同じ扱いになります。

被告が原告の所有を認めていれば、取得の経緯が原告の主張と違っても、占有権原の抗弁が認められない限り請求は認容されます

Xが「Aから相続した」と主張して所有権に基づき建物の明渡しを求め、Yが「Xが所有していることは認めるが、XはCから買ったのであり、XはYに賃貸した」と主張した事例では、Xの現在の所有について権利自白が成立しています。証拠調べの結果、XはAから相続したのではなくCから買ったと認められても、Xの所有という請求原因は揺らがず、取得の経緯の違いは請求の当否に影響しません。残るのはYの占有権原(賃貸借)の抗弁で、これが認められなければXの請求は認容されます。「XY間の建物賃貸借が認められないと判断したときでも,Xの請求を認容することはできない」という肢は誤りです。所有権に基づく請求の請求原因と抗弁の組立ては、要件事実と主張立証責任の分配の語で扱います。

民事訴訟法179条

裁判所において当事者が自白した事実及び顕著な事実は、証明することを要しない。

論文ではこう使う

論文では、権利自白の拘束力を論じます。法の解釈適用は裁判所の専権であるから権利自白は原則として裁判所を拘束しないとしつつ、所有権のように日常的な法概念で、当事者がその内容を理解して争わない意思が明らかな場合には、原始取得まで遡る立証の困難を避けるため事実の自白に準じて扱う、という順で書くのが標準的です。撤回については、事実の自白と同じ三類型を当てはめますが、錯誤の場合の反真実の証明があらゆる取得原因の否定を要求しかねないことにも触れると深みが出ます。

試験ではこう問われる

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