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用語集 / 民事訴訟法 / 債務名義・執行文と請求異議の訴え

債務名義・執行文と請求異議の訴えとは

さいむめいぎしっこうぶんとせいきゅういぎのうったえ

民事訴訟法 民事執行・民事保全の基礎

債務名義とは、強制執行によって実現される請求権の存在と範囲を表示し、強制執行の根拠となる文書で、確定判決・仮執行宣言付判決・仮執行宣言付支払督促・和解調書などがこれに当たります(民事執行法22条)。執行文は債務名義に執行力があることを裁判所書記官などが公証するもので、請求異議の訴えは債務名義に表示された請求権の存在や内容を争って強制執行の不許を求める訴えです(同法26条・35条)。

裁判で勝っても、相手が払わなければ、最後は国の力で財産を差し押さえて取り立てるしかありません。そのとき執行機関は、もう一度権利があるかを調べ直すのではなく、判決や和解調書のような、権利を確かめた文書を見て手続を進めます。これが債務名義です。判決の後に相手が亡くなったり物を売ったりしたときは、相続人や買主にも執行できるという証明(執行文)を付けてもらいます。逆に、判決の後に払い終えたのに執行されそうなときは、請求異議の訴えで止めます。

地方裁判所の書記官室の受付の場面。男性(札「債権者」)が「判決正本」と表紙に書かれた書面と「相続を証する戸籍」を差し出している。先生が裁判所書記官役(札「裁判所書記官」)として判決正本の末尾に「承継執行文」の判子を押している。カウンターの横

強制執行は債務名義によって行い、確定判決・仮執行宣言付判決・仮執行宣言付支払督促・和解調書などが債務名義になります

強制執行は、確定判決、仮執行の宣言を付した判決、仮執行の宣言を付した支払督促、執行証書、確定判決と同一の効力を有するものなど、法律が定めた債務名義によって行います(民事執行法22条)。執行機関は債務名義に表示された請求権をそのまま実現し、請求権の有無を自ら判断しません。権利の判定と実現を分けて、執行を速くするためです。訴訟上の和解や請求の認諾を記載した調書は確定判決と同一の効力を有するので(民事訴訟法267条1項)、債務名義になります(民事執行法22条7号)。強制執行は、執行文の付された債務名義の正本に基づいて実施します。執行文は、事件の記録のある裁判所の裁判所書記官が、債権者が債務者に対しその債務名義により強制執行をすることができる場合に付与します(民事執行法26条)。

  • 確定判決民事執行法22条1号
  • 仮執行の宣言を付した判決同条2号
  • 仮執行の宣言を付した支払督促同条4号
  • 執行証書(強制執行に服する旨の陳述がある公正証書)同条5号
  • 和解調書・認諾調書など確定判決と同一の効力を有するもの同条7号

債務名義の執行力は口頭弁論終結後の承継人などにも及び、承継人に対しては承継執行文の付与を受けて執行します

強制執行は、債務名義に表示された当事者のほか、他人のために当事者となった場合のその他人(訴訟担当の被担当者)、これらの者の口頭弁論終結後の承継人、これらの者のために請求の目的物を所持する者に対しても、することができます(民事執行法23条)。既判力の主観的範囲(民事訴訟法115条1項)と同じ範囲です。債務名義に表示された当事者以外の者に対する執行文は、その者に対して執行できることが裁判所書記官に明白であるか、債権者がそれを証する文書を提出したときに限り付与されます(民事執行法27条2項。承継執行文)。文書を出せないときは執行文付与の訴え(同法33条)を、債務者の側はその付与を争う執行文付与に対する異議の訴え(同法34条)を使います。もっとも、承継人でも、実体法上自ら取得した固有の地位は前の判決で奪われません。判例は、通謀虚偽表示による登記名義人に対する登記手続を命じる判決が確定した後、その土地を善意で取得した第三者について、虚偽表示の無効を善意の第三者に対抗できない以上、第三者は登記義務を承継するものではなく、承継執行文の付与を受けて執行することは許されないとしました(最判昭和48年6月21日)。「Xは前訴の確定判決に基づき,Zに対する承継執行文の付与を受けて当該土地の所有名義をX名義に回復することができる」という肢は誤りです。承継人の範囲は、口頭弁論終結後の承継人の語で扱います。法人でない社団を債務者とする債務名義でも、代表者の個人名義の総有不動産に対し、総有を確認する確定判決などを添えて執行を申し立てられるとされ(最判平成22年6月29日)、「当該団体の代表者の個人名義で登記された不動産に対して強制執行をする余地はない」という肢は誤りです。

請求異議の訴えでは、確定判決については口頭弁論終結後に生じた事由に限って主張できます

債務名義に係る請求権の存在又は内容について異議のある債務者は、その債務名義による強制執行の不許を求めるために、請求異議の訴えを提起することができます(民事執行法35条1項)。確定判決についての異議の事由は、口頭弁論の終結後に生じたものに限られます(同条2項)。それより前の事由は既判力で遮断されているからです。口頭弁論終結後の弁済はこれに当たり、3月16日に口頭弁論が終結し5月9日に確定した判決について、5月1日の弁済を主張する場合に、「同月1日にこの貸金に対して弁済したことを請求異議の事由として主張することができる」という肢は正しいです。和解調書や支払督促のように確定判決でない債務名義には35条2項の制限は無く、成立前の事由も主張できます。裁判以外の債務名義の成立について異議のある債務者も、請求異議の訴えを起こせます(同条1項後段)。

教室の黒板の図解。黒板に左から右へ時間の矢印。中ほどに縦線「口頭弁論終結(基準時)」。縦線の左に「弁済・取消原因・時効完成」、右に「弁済(終結後)・相殺の意思表示(終結後)・建物買取請求(終結後)」の札。右側の札に丸印、左側の札のうち「取消

基準時前に行使できた形成権を基準時後に行使した場合に請求異議の事由にできるかは、形成権の種類によって分かれます

口頭弁論終結前から相殺適状にあった反対債権で終結後に相殺した場合、判例は、相殺は意思表示によって効力を生じ、訴求債権そのものに付着する瑕疵ではないから、その効果を請求異議の事由として主張できるとしました(最判昭和40年4月2日)。「相殺の意思表示をし,その効果を異議の事由として主張することができない」という肢は誤りです。建物収去土地明渡請求の認容判決が確定した後の建物買取請求権の行使も、判例は、請求権の発生原因に内在する瑕疵に基づく権利とは別個の制度目的と原因に基づく権利なので既判力で遮断されず、請求異議の事由にできるとしました(最判平成7年12月15日)。「賃借人は,その後に提起した請求異議の訴えにおいて,建物買取請求権を行使し,その効果を異議の事由として主張することができる」という肢は正しいです。これに対して、詐欺による取消権や、基準時前に完成していた消滅時効の援用は遮断されます。形成権ごとの判断の理由は、基準時前の形成権と遮断効の語で扱います。

給付訴訟で不執行の合意が認められても訴えの利益は失われず、判決主文で強制執行をすることができないことを明示します

判例は、給付訴訟の訴訟物は給付請求権の存在と範囲であり、請求権について強制執行をしない旨の合意があっても訴えの利益は否定されないとしたうえで、不執行の合意が主張されたときは訴訟物に準ずるものとして審判の対象になり、合意が認められれば、執行段階の紛争を防ぐため、強制執行をすることができないことを判決主文で明らかにすべきであるとしました(最判平成5年11月11日)。「その給付に係る請求権について強制執行をしない旨の合意がある場合であっても,訴えの利益が認められる」という肢と、「その請求権について強制執行をすることができないことを主文において明示しなければならない」という肢は正しいです。給付の訴えの利益は、給付の訴えの利益の語で扱います。

民事執行法23条

執行証書以外の債務名義による強制執行は、次に掲げる者に対し、又はその者のためにすることができる。一 債務名義に表示された当事者 二 債務名義に表示された当事者が他人のために当事者となつた場合のその他人 三 前二号に掲げる者の債務名義成立後の承継人(前条第一号、第二号又は第六号に掲げる債務名義にあつては口頭弁論終結後の承継人(略))(略)3 第一項に規定する債務名義による強制執行は、同項各号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者に対しても、することができる。

民事執行法35条

債務名義(略)に係る請求権の存在又は内容について異議のある債務者は、その債務名義による強制執行の不許を求めるために、請求異議の訴えを提起することができる。裁判以外の債務名義の成立について異議のある債務者も、同様とする。2 確定判決についての異議の事由は、口頭弁論の終結後に生じたものに限る。

論文ではこう使う

論文では、既判力の遮断効の問題が、後訴としての請求異議の訴えの形で出されます。まず請求異議の訴え(民事執行法35条1項)の異議事由が確定判決では口頭弁論終結後のものに限られること(同条2項)を示し、これが既判力の時的限界の表れであると位置づけます。そのうえで、基準時前に発生していた形成権を基準時後に行使した場合について、取消権・相殺権・建物買取請求権ごとに、訴求債権に内在する瑕疵か別個の制度目的に基づく権利かという判例の基準で当てはめます。承継執行文の場面では、承継人に固有の抗弁があるかを検討します。

試験ではこう問われる

「債務名義・執行文と請求異議の訴え」が短答式でどう出題されてきたか、ひっかけの型9件と関係する過去問の肢21本は、無料のアカウントでログインすると読めます。

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