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用語集 / 民事訴訟法 / 給付の訴えの利益

給付の訴えの利益(現在給付・執行障害・時効の完成猶予のための再訴)とは

きゅうふのうったえのりえき

民事訴訟法 訴えの提起

給付の訴えの利益とは、給付の訴えについて判決を求めることが正当と認められる利益のことです。履行期の到来した請求権を主張する現在給付の訴えには原則として認められ、執行が事実上できない事情があっても失われませんが、すでに確定した給付判決がある場合には、時効の完成猶予のためにほかに方法がないときなどに限って認められます。

お金を返してもらう約束の期限が来ているのに払ってもらえないなら、裁判所に「払え」という判決を求めるのは当然の権利です。給付の訴えでは、原告が履行期の来た請求権を主張していれば、それだけで判決を求める利益があるのが原則です。相手に財産がなくて執行できそうになくても、判決を得ておく意味はあります。逆に、すでに勝訴判決を持っている人が同じ請求で重ねて訴えるのは、原則として無駄なので許されません。ただし時効を止めるためにほかに方法がなければ例外が認められます。

法廷の場面。裁判官席の先生(札「裁判所」)の前に、原告席の男性(札「原告」)と被告席の男性(札「被告」)。被告席の机に「仮差押え」と書かれた封印の札が貼られた金庫が置かれている。原告が訴状を掲げ、訴状に「被告は、原告に対し、500万円を支払

現在給付の訴えは、履行期の到来した請求権を主張すれば原則として訴えの利益があります

現在給付の訴えは、すでに履行期が来ている給付請求権を主張して給付判決を求めるものです。履行期が来たのに履行されていないこと自体が紛争なので、原告がそう主張すれば訴えの利益は原則として認められます。被告が義務を認めていても、後で翻意するおそれがあるので訴えの利益は失われません。執行証書(民事執行法22条5号)を持っている債権者も、執行証書には既判力がないので、既判力のある判断を得るために給付の訴えを起こせます。将来の給付を求める訴えは、あらかじめ請求する必要がある場合に限られ(135条)、こちらは「将来給付の訴え」で扱います。給付の訴えの利益は、給付判決を得ても執行が難しい事情があるだけでは否定されません。訴訟物は給付請求権の存在と範囲であり、それを執行できるかどうかは執行の段階の問題だからです。

請求権に仮差押えの執行がされていても、強制執行をしない合意があっても、給付の訴えの利益は失われません

判例は、債権に仮差押えの執行がされると、第三債務者は支払を差し止められ、仮差押債務者は取立てや譲渡ができなくなるが、それは禁止に反する行為を仮差押債権者に対抗できないという意味にとどまり、仮差押債務者は第三債務者に対する給付訴訟を起こし、無条件の勝訴判決を得ることができるとしました(最判昭和48年3月13日)。仮差押えは財産の現状を保存して執行を保全するためのもので、その目的に必要な限度でしか効力がないからです。「その債権に対して仮差押えの執行がされた場合には,訴えの利益が認められない」という肢は誤りです。また判例は、給付訴訟の訴訟物は給付請求権の存在と範囲であり、強制執行をしない旨の合意(不執行の合意)があるかどうかは本来その審判の対象にならないとしました(最判平成5年11月11日)。「その給付に係る請求権について強制執行をしない旨の合意がある場合であっても,訴えの利益が認められる」という肢は正しいです。同じ判決は、被告が不執行の合意を主張した場合には、それも訴訟物に準じるものとして審判の対象になり、合意が認められれば強制執行できないことを判決主文で明らかにするのが相当だとしています。執行段階での紛争を防ぐためです。「強制執行をすることができないことを主文において明示しなければならない」という肢は正しいです。

教室の場面。先生が教師役(札「先生」)で黒板の前に立つ。黒板に左から右への時間の矢印があり、左端に「給付判決の確定」、右端に「10年(民法169条1項)」、その手前に「再度の訴え」と書かれ、再度の訴えから右へ「時効の完成猶予・更新」と矢印が

確定した給付判決があっても、時効の完成猶予のためにほかに方法がなければ同じ請求で再び訴えられます

確定した給付判決を持っている原告は、それで強制執行ができるので、同じ請求権について重ねて給付判決を求める利益は原則としてありません。しかし、判決で確定した権利も10年で時効にかかります(民法169条1項)。債務者に財産がなくて差押えなどができず、承認も得られないときは、時効の完成を止めるには裁判上の請求しかありません。判例は、このように時効を止めるためにほかに方法がない場合には、同一の請求権について再び給付の訴えを起こす利益があるとしました(大判昭和6年11月24日)。現行の民法では、裁判上の請求で時効の完成が猶予され(民法147条1項1号)、確定判決で権利が確定すれば時効が更新されます(同条2項)。「確定した給付判決が存在しても,時効中断のため他に方法がないときには,同一訴訟物につき再度給付の訴えを提起する利益が認められる」という肢、確定判決後に無資力の債務者に対して再び代金の支払を求める訴えに「訴えの利益が認められる」とする肢は正しいです。旧規定の「時効中断」は、現行法では完成猶予と更新に当たります。

中間の登記の抹消を求める訴えは、最終の登記の抹消請求が棄却されて実行できなくても、訴えの利益を失いません

A所有の不動産にB名義の登記がされ、さらにC、Dへと移転登記が重ねられた場合、Aが最終名義人Dへの抹消請求で敗訴すると、B・C名義の登記の抹消判決を得ても、後の登記が残るので現実には抹消を実行できません。それでも判例は、登記の抹消登記手続を求める請求は被告に抹消登記申請という意思表示を求めるもので、認容判決が確定すれば被告が意思表示をしたものとみなされ(民事執行法177条1項)、それで判決の執行は完了するから、抹消登記を現実に実行できないことは訴えの利益を失わせないとしました(最判昭和41年3月18日)。「AのB及びCに対する各請求は,訴えの利益を欠く」という肢は誤りで、後の名義人への抹消請求が棄却された後に前の名義人を被告とする抹消請求について「訴えの利益が認められる」とする肢は正しいです。給付の実現が事実上難しいことは訴えの利益を否定する理由にならないという考え方が、仮差押えや不執行の合意の場面と共通しています。

民法169条1項

確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。

民事執行法177条1項

意思表示をすべきことを債務者に命ずる判決その他の裁判が確定し、又は和解、認諾、調停若しくは労働審判に係る債務名義が成立したときは、債務者は、その確定又は成立の時に意思表示をしたものとみなす。

論文ではこう使う

論文では、給付の訴えの利益が正面から問われることは少なく、登記請求訴訟で執行が事実上できない場合や、確定判決後の再訴の場面で使います。現在給付の訴えは履行期の到来した請求権を主張すれば原則として利益があること、執行の可否は執行段階の問題であって訴えの利益を左右しないことを示し、例外として、確定判決がある場合の再訴は時効の完成猶予のためにほかに方法がないときに限られることを書きます。

試験ではこう問われる

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