将来給付の訴え(135条:請求適格と事前請求の必要)とは
しょうらいきゅうふのうったえ
将来給付の訴えとは、事実審の口頭弁論終結時よりも後に履行期が到来する給付を求める訴えで、あらかじめその請求をする必要がある場合に限って起こせます(135条)。継続的不法行為による将来の損害などでは、判例の示す基準を満たす請求権でなければ請求権としての適格がありません。
土地を不法に占拠している人に明渡しを求めるとき、明け渡すまでの間も毎月の賃料相当の損害が生じ続けます。判決の後の分まで今のうちに請求しておかないと、明渡しが済むまで何度も訴えなければなりません。そこで、口頭弁論の終結より後に履行期が来る請求も、前もって請求しておく必要があれば訴えられます。これが将来給付の訴えです。ただし、将来どうなるか分からない請求まで認めると、事情が変わったときに被告がいちいち争わなければならなくなるので、範囲が絞られています。
将来給付の訴えは、あらかじめ請求する必要がある場合に限って起こせます
将来の給付を求める訴えは、あらかじめその請求をする必要がある場合に限り、提起することができます(135条)。将来かどうかは事実審の口頭弁論終結時を基準に決め、それより後に履行期が来る給付を求めるなら将来給付の訴えです。あらかじめ請求する必要が認められるのは、主に二つの場合です。一つは、定期売買の目的物や扶養料のように、履行期にきちんと履行されることが強く求められる場合です。もう一つは、義務者がすでに義務を争っている場合や、継続的・反復的な給付について現に不履行がある場合のように、将来の任意の履行が期待できない場合です。土地の不法占有者に明渡しまでの賃料相当損害金を求める請求は、明渡しも過去分の支払もされていない以上、将来分についてもこの必要が認められます。
継続的不法行為による将来の損害も、判例の三つの基準を満たせば請求適格があります
判例は、135条はおよそ将来生じうる請求権すべてに将来給付の訴えを許したものではないとし、継続的不法行為に基づき将来発生すべき損害賠償請求権でも、①請求権の基礎となる事実関係と法律関係がすでに存在しその継続が予測され、②請求権の成否と内容について債務者に有利な将来の事情の変動があらかじめ明確に予測できる事由に限られ、③その変動を請求異議の訴え(民事執行法35条)で債務者に主張・立証させても格別不当とはいえない場合には、期限付債権などと同じく将来給付の訴えの請求権としての適格があるとしました(最大判昭和56年12月16日、大阪国際空港事件)。空港の騒音による将来の損害は、成否や額をあらかじめ一義的に明確に認定できないとして、この適格が否定されました。他方、不動産の不法占有者に対する明渡しまでの賃料相当損害金の請求は、この基準を満たす典型例です。「自らの所有する土地を継続的に不法に占有されている者が将来の賃料に相当する額の損害の賠償を求める訴えには,訴えの利益が認められる」という肢は正しく、「継続的不法行為に基づき,将来発生すべき損害の賠償を請求する将来給付の訴えは,不適法なものとして許されない」と一律に言う肢は誤りです。請求権としての適格は135条の必要とは別の要件なので、「請求権としての適格を有しない請求権に基づく将来給付の訴えは,あらかじめその請求をする必要がある場合であっても,不適法なものとして許されない」という肢は正しいです。
共有地を賃貸して得る収益の将来分の不当利得返還請求には、請求適格がありません
判例は、共有者の一人が共有地を第三者に駐車場として賃貸して収益を得ている場合に、他の共有者が持分割合を超える部分の不当利得の返還を求める請求のうち、事実審の口頭弁論終結の日の翌日以降の分は、将来給付の訴えを起こせる請求としての適格がないとしました(最判平成24年12月21日)。賃貸借が続くかは賃借人の解約などに左右され、賃料が実際に支払われるかも賃借人次第なので、請求権の発生や内容が変わる事情をあらかじめ明確に予測できず、収益が得られないたびに請求異議の訴えで争わせるのは債務者に酷だからです。「事実審の口頭弁論終結後にYが得る収益のうち,Yの持分割合を超える部分について不当利得の返還を請求する将来給付の訴えは,不適法なものとして許されない」という肢は正しいです。同じ継続的な請求でも、不法占有者の賃料相当損害金とは結論が分かれます。
物の引渡しに併せて執行不能の場合の代償請求をするのは、将来給付の訴えとして許されます
物の引渡しを求める債権者は、引渡しの強制執行ができなかった場合に備えて、履行に代わる損害賠償(代償請求)をあわせて求めることができます。判例は、本来の給付を命じると同時に、その強制執行が不能のときは価額相当の損害賠償をすべきことを命じる判決ができるとしました(大連判昭和15年3月13日)。本来の義務を履行していない以上、それに代わる義務の将来の履行も期待できないので、あらかじめ請求する必要があります。「物の引渡しが執行不能となる場合に備えての代償請求は,将来の給付の訴えとしてその利益が認められる」「損害賠償請求は将来の給付を求めるものであるが,あらかじめ請求をする必要があるものと認められる」という肢は正しく、「その執行不能の場合における履行に代わる損害賠償を請求する将来給付の訴えは,不適法なものとして許されない」という肢は誤りです。ただし、本来の給付が意思表示を求めるもので判決の確定によって執行が完了する場合のように、執行不能がおよそありえないときは、条件が成就する可能性がないので代償請求は不適法です。「本来の給付請求の強制執行が不能となることがあり得ない場合には,不適法なものとして許されない」という肢は正しいです。
代償請求は本来の給付請求と単純併合で、裁判所は代償請求についても判決しなければなりません
代償請求は、本来の給付請求が認容されることを前提に、その執行不能を条件とする請求なので、本来の請求と両立します。そのため両者は単純併合で、主位的・予備的の順序を付ける予備的併合ではありません。「機械の引渡請求を主位的請求とし,代償金の支払請求を予備的請求としなければならない」という肢は誤りです。単純併合ではすべての請求について判決しなければならないので、本来の請求を認容するときも代償請求について判断が必要で、代償請求に理由がないと考えるならそれを棄却する判決をします。「前者の請求を認容するときは,後者の請求について判決をする必要はない」という肢と、「代償請求に法律上の根拠がないと判断したときは,代償請求について判決をする必要はない」という肢は誤りです。請求の併合の形態は「請求の併合」で扱います。
民事訴訟法135条
将来の給付を求める訴えは、あらかじめその請求をする必要がある場合に限り、提起することができる。
論文ではこう使う
論文では、将来給付の訴えの適法性を二段階で論じます。まず請求権としての適格を、大阪国際空港事件の三つの基準(基礎となる事実関係・法律関係の存在と継続の予測、債務者に有利な事情の変動があらかじめ明確に予測できる事由に限られること、請求異議の訴えでの起訴責任を債務者に負わせても不当でないこと)に当てはめ、次に135条のあらかじめ請求する必要(履行期の履行の要請・任意の履行が期待できない事情)を検討します。賃料相当損害金と共有地の将来の収益(最判平成24年12月21日)を対比すると、変動が債務者の側の事情か第三者の意思に左右されるかで結論が分かれることを示せます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。