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用語集 / 民事訴訟法 / 訴状審査と訴状却下

訴状審査と訴状却下(137条〜138条・140条)とは

そじょうしんさとそじょうきゃっか

民事訴訟法 訴えの提起

訴状審査とは、訴状が提出されたときに、裁判長が必要的記載事項の記載、手数料の納付、送達の可否といった形式面を点検することをいいます。不備があれば期間を定めて補正を命じ(手数料は裁判所書記官が納付を命じる処分をします)、補正されなければ裁判長が命令で訴状を却下します。これを訴状却下といいます。

訴状が裁判所に届くと、被告に送る前に、裁判長が書式の点検をします。当事者や請求の趣旨が書かれているか、手数料が納められているか、被告に届けられるかといった、形の上の不備を見るだけで、中身の勝ち負けは判断しません。不備があれば期間を決めて直させ、直さなければ裁判長の命令で訴状を受け付けずに終わらせます。被告に訴状が届いて訴訟が始まった後は、この簡単な処理はできず、裁判所が判決で訴えを却下することになります。

裁判官室の場面。机の上に訴状が置かれ、付箋に「代表者の記載なし」と書かれている。先生が裁判官役(札「裁判長」)で座り、補正命令の書面を持っている。書面の見出し「補正命令 14日以内に代表者を記載すること」。横に裁判所書記官の男性(札「裁判所

訴状審査は裁判長がし、必要的記載事項の不備は期間を定めて補正を命じ、補正がなければ命令で訴状を却下します

訴状が134条2項(当事者・法定代理人、請求の趣旨及び原因)に違反する場合、裁判長は相当の期間を定めてその期間内に不備を補正すべきことを命じなければならず(137条1項)、原告が補正しないときは命令で訴状を却下しなければなりません(同条2項)。記載の有無は定型的で判断が容易なので、合議体全体(受訴裁判所)ではなく裁判長の権限にしています。「訴状の審査は,受訴裁判所が行う」という肢、補正命令は「裁判所書記官がする」という肢、「裁判所書記官は,自ら訴状を審査し,不備があれば補正を命ずることができる」という肢は誤りです。民事訴訟規則は、裁判長が訴状の記載について必要な補正を促すときは裁判所書記官に命じて行わせることができると定めており(規則56条)、これは補正命令とは別の事実上の促しです。「補正命令の対象となる事項については,裁判所書記官に命じて補正を促すことができない」という肢は誤りです。補正命令を経ずにいきなり却下することはできないので、株式会社の代表者の記載がない訴状について「補正すべきことを命じた上でなければ,訴状を却下することはできない」という肢は正しいです。

  • 審査する者裁判長です(137条1項)。手数料の納付命令だけは裁判所書記官の処分です(137条の2第1項)
  • 審査の対象必要的記載事項・手数料の納付・送達の可否です。立証方法や証拠の記載は対象外です
  • 補正命令期間を定めて命じます。独立の不服申立てはできません
  • 訴状却下命令補正がなければ命令で却下します。即時抗告ができます(137条3項)
  • 時期訴状が被告に送達されるまでです。送達後は判決で訴えを却下します

審査の対象は必要的記載事項で、立証方法や証拠の記載の不備は補正命令の対象になりません

補正命令と訴状却下の対象は、134条2項の必要的記載事項の不備です。法人の代表者は法定代理人の規定が準用される(37条)ので、その記載があるかどうかは審査の対象です。「当事者が法人である場合において,訴状にその代表者の記載があるかどうかは,訴状審査の対象となる」という肢は正しいです。これに対し、立証方法や証拠の記載は規則が求めるもので、欠けていても訴状は不適法になりません。「訴状における立証方法に関する記載も,訴状審査の対象となる」「証拠の引用又は添付の不備は,補正命令の対象となる」という肢は誤りです。必要的記載事項と請求を理由付ける事実の区別は「訴状の必要的記載事項と請求の特定」で扱います。

手数料を納めないときは裁判所書記官が納付を命じる処分をし、納めなければ裁判長が訴状を却下します

令和4年改正により、訴え提起の手数料を納付しない場合は、裁判所書記官が相当の期間を定めてその期間内に納付すべきことを命じる処分をしなければならないことになりました(137条の2第1項)。この処分への異議は告知を受けた日から1週間の不変期間内に申し立て(同条3項)、原告が命じられた手数料を納付しないときは、裁判長が命令で訴状を却下します(同条6項)。出題当時は、手数料の不納付も裁判長の補正命令の対象でした(旧137条1項後段)。どちらの規定でも、納付を命じないままいきなり却下することはできないので、「訴えの提起の手数料を納付しない場合,直ちに訴状を却下することができる」という肢は誤りです。判例は、手数料の納付を命じる裁判長の補正命令を受けた者が期間内に納付しなくても、却下命令が確定する前に納付すれば不納付の瑕疵は補正されるとしました(最決平成27年12月17日。抗告状の事案)。「訴状却下命令が発せられる前にこれを納付したときは,裁判長は,訴状を却下することはできない」という肢は正しいです。手数料の額や訴訟費用は「訴訟費用と訴訟上の救助」で扱います。

訴状を送達できないときも、送達費用を予納しないときも、補正命令と訴状却下の手続によります

訴状は被告に送達しなければならず(138条1項)、送達できない場合(送達に必要な費用を予納しない場合を含む)には137条が準用されます(同条2項)。裁判長は相当の期間を定めて補正(住所の調査や費用の予納)を命じ、補正がなければ命令で訴状を却下します。「裁判長が補正を命じても訴状の送達をすることができない場合には,その訴状は,命令で,却下される」「原告が訴状の送達に必要な費用を予納しない場合には,裁判長は,相当の期間を定め,その期間内に当該費用を予納することを命じなければならない」という肢は正しいです。旧住所の記載で被告を特定できていても、現住所が分からず送達できなければこの手続に乗るので、「裁判長は,補正を命ずることはできない」という肢は誤りです。予納がないときに却下するのは裁判長の命令であって、「裁判所は,…決定で,訴状を却下しなければならない」という肢は誤りです。

教室の場面。先生が教師役(札「先生」)で黒板の前に立つ。黒板に左から右への時間の矢印があり、途中に縦線と「訴状の送達(訴訟係属)」の文字。縦線の左に「裁判長の命令で訴状却下(137条)」、右に「裁判所の判決で訴え却下(140条)」と書かれて

訴状が被告に送達された後は訴状却下はできず、裁判所が判決で訴えを却下します

訴状却下命令は、まだ被告が手続に加わっていない入口の段階で、裁判長が命令という簡易な形で事件を打ち切るものです。訴状が被告に送達されて訴訟係属が生じると、被告も当事者として手続に関わる立場に立つので、以後は裁判所が判決で訴えの適否を判断します。「訴状が被告に送達された後は,訴状を却下することができない」「訴状が被告に送達された後は,その訴状に不備があっても,命令で訴状を却下することはできない」という肢は正しく、「訴状が被告に送達された後であっても,裁判長は,当該訴状を却下することができる」という肢は誤りです。却下できなくなる時期を送達時とする見解と口頭弁論の開始時とする見解がありますが、どちらでも第1回口頭弁論期日の後は却下できないので、「訴状は,第一回の口頭弁論期日後は,これを却下することができない」という肢は正しいです。送達後に手数料の不足が分かり、裁判所が納付を命じても原告が従わないときは、判決で訴えを却下します。この場面を「訴え却下の判決をすべき場合」とする肢は正しいです。

補正できない不適法な訴えは裁判所が判決で却下し、訴状却下命令には即時抗告ができ、被告の意見は要りません

訴状の形の不備ではなく、訴えそのものが不適法で補正できない場合(提訴期間を過ぎた訴えなど)は、裁判長の訴状却下ではなく、裁判所が口頭弁論を経ないで判決で訴えを却下することができます(140条)。「訴えが不適法でその不備を補正することができないことが判明した場合,裁判長は,直ちに訴えを却下することができる」「提訴期間経過後に提起された場合,直ちに訴状を却下することができる」という肢は誤りで、「裁判所は,口頭弁論を経ないで,判決で,その訴えを却下することができる」という肢は正しいです。訴状却下命令に対しては即時抗告ができ(137条3項)、期間は告知を受けた日から1週間です(332条)。「訴状を却下する命令に対しては,不服を申し立てることができない」という肢は誤りで、「訴状却下命令に対しては,即時抗告をすることができる」という肢は正しいです。簡易裁判所の裁判官の命令に対する抗告は地方裁判所が扱う(裁判所法24条4号)ので、「簡易裁判所の裁判官の訴状却下命令に対しては,地方裁判所に即時抗告をすることができる」という肢も正しいです。一方、補正命令には独立の不服申立てができず、その当否は却下命令への即時抗告の中で争います。「原告は,その補正命令に対して不服を申し立てることができない」という肢は正しいです。訴状却下命令は訴訟係属の前にされ、対立する被告がまだいないので、被告の意見を聴く必要はありません。「訴状を却下する命令を発するためには,被告の意見を聴かなければならない」という肢は誤りです。また、却下命令が確定しても訴訟は始まっていないので、不備を補正して改めて訴えることができます。「その不備を補正した上で,再度訴えを提起することは妨げられない」という肢は正しいです。訴状が却下されれば訴え提起による時効の効果も生じないことは「訴え提起の効果」で扱います。

民事訴訟法137条1項

訴状が第百三十四条第二項の規定に違反する場合には、裁判長は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。

民事訴訟法137条の2第1項

民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)の規定に従い訴えの提起の手数料を納付しない場合には、裁判所書記官は、相当の期間を定め、その期間内に当該手数料を納付すべきことを命ずる処分をしなければならない。

民事訴訟法140条

訴えが不適法でその不備を補正することができないときは、裁判所は、口頭弁論を経ないで、判決で、訴えを却下することができる。

試験ではこう問われる

「訴状審査と訴状却下」が短答式でどう出題されてきたか、ひっかけの型11件と関係する過去問の肢43本は、無料のアカウントでログインすると読めます。

読んだあとに、民事訴訟法の肢別演習を

この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。

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