抗告の種類と手続とは
こうこくのしゅるいとてつづき
抗告とは、判決以外の裁判である決定・命令に対する上訴です。期間の定めのない通常抗告と、法律に定めがある場合に告知から1週間内にする即時抗告があり、抗告裁判所の決定に対する再抗告、最高裁判所への特別抗告と許可抗告があります(328条〜337条)。
訴訟の途中では、移送するか、文書を出させるか、訴状を受け付けるかといった判断が、判決ではなく決定や命令という簡単な形でされます。これに不服があるときに上の裁判所へ申し立てるのが抗告です。手続を止めないよう、法律が特に定めた重要な決定・命令は1週間という短い期間で争わせ、これを即時抗告といいます。最高裁判所は判決の上告で手一杯なので、決定・命令については憲法違反か、高等裁判所が重要だと許可したものしか扱いません。
抗告は決定・命令に対する上訴で、口頭弁論を経ずに訴訟手続に関する申立てを却下した裁判などに対してできます
口頭弁論を経ないで訴訟手続に関する申立てを却下した決定又は命令に対しては、抗告をすることができます(328条1項)。決定又は命令で裁判をすることができない事項について決定・命令がされたとき(違式の裁判)も抗告ができます(328条2項)。反対に決定ですべき事項を判決でした場合について、判例は、判決の形式に応じて法定の上告期間内にされた上告は不服申立ての形式と期間の点では適法としつつ、審理の対象は抗告理由の範囲にとどまるとしました(最判平成7年2月23日)。抗告には期間の定めのない通常抗告と、法律に定めがある場合にだけ認められる即時抗告があります。訴状却下命令に対しては即時抗告ができ(137条3項)、「訴状を却下する命令に対しては,不服を申し立てることができない」という肢は誤りで、「訴状却下命令に対しては、即時抗告をすることができる」という肢は正しいです。簡易裁判所の決定・命令に対する抗告は地方裁判所が、地方裁判所の決定・命令に対する抗告は高等裁判所が扱います(裁判所法24条4号・16条2号)。簡易裁判所の裁判官が出した訴状却下命令も簡易裁判所の命令なので、「簡易裁判所の裁判官の訴状却下命令に対しては,地方裁判所に即時抗告をすることができる」という肢は正しいです。どの裁判に独立の不服申立てができるかは、独立の不服申立てができない裁判の一覧の語にまとめています。
即時抗告は、法律に定めがある場合に限り、裁判の告知を受けた日から1週間の不変期間内にし、執行停止の効力があります
即時抗告は、裁判の告知を受けた日から1週間の不変期間内にしなければなりません(332条)。判決に対する控訴・上告が送達から2週間であるのと違い、起算点は告知で、期間も短くなっています。決定・命令は簡易迅速に手続を進めるための裁判なので、争うかどうかを早く決めさせる趣旨です。「即時抗告期間は,裁判の告知を受けた日から1週間の不変期間である」という肢は正しいです。抗告は、即時抗告に限り執行停止の効力を有し(334条1項)、通常抗告では原裁判の執行は止まりません。抗告裁判所や原裁判所は、抗告について決定があるまで原裁判の執行の停止その他必要な処分を命ずることができます(334条2項)。
- 通常抗告期間の定めなし・執行停止の効力なし(328条)
- 即時抗告法律に定めがある場合・告知から1週間・執行停止の効力あり(332条・334条1項)
- 再抗告抗告裁判所の決定に対し、憲法違反・決定に影響を及ぼすことが明らかな法令違反を理由に(330条)
- 特別抗告不服申立てができない地裁・簡裁の決定命令と高裁の決定命令に対し、憲法違反を理由に最高裁へ・告知から5日(336条)
- 許可抗告高裁の決定命令に対し、高裁が判例違反・法令解釈の重要事項を含むとして許可したときに限り最高裁へ(337条)
抗告に理由があると認めれば、原裁判をした裁判所又は裁判長が自らその裁判を更正します
原裁判をした裁判所又は裁判長は、抗告を理由があると認めるときは、その裁判を更正しなければなりません(333条)。これを再度の考案といいます。判決は言い渡すと自ら変更できない強い自己拘束力がありますが、決定・命令は簡易迅速な裁判で自己拘束力が弱いので、抗告裁判所の判断を待たずに原裁判所に誤りを正させるのが合理的だからです。「適法に即時抗告がされた場合,原裁判をした裁判所又は裁判長は,抗告を理由があると認めるときは,その裁判を更正しなければならない」という肢は正しいです。受命裁判官又は受託裁判官の裁判に対しては、まず受訴裁判所に異議を申し立て、その異議についての裁判に抗告をします(329条)。
抗告裁判所の決定には再抗告ができ、高等裁判所の決定・命令に対しては特別抗告と許可抗告しかできません
抗告裁判所の決定に対しては、その決定に憲法違反があること、又は決定に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があることを理由とするときに限り、更に抗告(再抗告)ができます(330条)。最高裁判所は訴訟法が特に定める抗告しか扱わないので(裁判所法7条2号)、高等裁判所の決定・命令に対して一般の抗告や再抗告をすることはできません。高等裁判所の決定・命令には、憲法違反を理由とする特別抗告(336条1項。告知から5日)と、高等裁判所が許可した場合の許可抗告(337条)だけが用意されています。高等裁判所が再抗告についてした決定も高等裁判所の決定なので、「その決定が憲法に違反することを理由として,特別抗告をすることができる」という肢は正しいです。許可抗告は、高等裁判所が、最高裁判所の判例と相反する判断がある場合その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むと認めて許可したときに限られ(337条1項・2項)、上告受理の申立てのように最高裁判所自身が事件を選んで受理する仕組みはありません。「高等裁判所がその決定に対する許可抗告の申立てについて抗告を許可しなかった場合であっても,最高裁判所は,法令の解釈に関する重要な事項を含むと認めるときは,抗告を受理することができる」という肢は誤りです。高等裁判所が再抗告についてした決定は、許可抗告の対象から除かれています(337条1項括弧書)。
即時抗告で不服を申し立てられる決定・命令が確定したときは、再審の申立てができます
即時抗告をもって不服を申し立てることができる決定又は命令で確定したものに対しては、再審の申立てをすることができます(349条1項)。これを準再審といい、338条から348条までの再審の規定が準用されます(349条2項)。即時抗告が認められる決定・命令は当事者に重大な影響を与え、期間の経過で確定するので、関与した裁判官の職務犯罪や代理権の欠缺のような重大な瑕疵が後で分かったときに救済の道を残す必要があるからです。「決定に対して再審の申立てをすることはできない」という肢は誤りで、「決定又は命令に対しても再審の申立てが許される場合がある」という肢は正しいです。再審の事由と手続は、再審事由と補充性、再審の手続と原告適格の語で扱います。
民事訴訟法328条
口頭弁論を経ないで訴訟手続に関する申立てを却下した決定又は命令に対しては、抗告をすることができる。2 決定又は命令により裁判をすることができない事項について決定又は命令がされたときは、これに対して抗告をすることができる。
民事訴訟法332条
即時抗告は、裁判の告知を受けた日から一週間の不変期間内にしなければならない。
民事訴訟法337条1項
高等裁判所の決定及び命令(第三百三十条の抗告及び次項の申立てについての決定及び命令を除く。)に対しては、前条第一項の規定による場合のほか、その高等裁判所が次項の規定により許可したときに限り、最高裁判所に特に抗告をすることができる。(略)
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。