司法試験・予備試験AIブートラボ 司法試験AIブートラボ
用語集 / 民事訴訟法 / 上訴総論

上訴総論(確定遮断・移審・上訴不可分の原則)とは

じょうそそうろん

民事訴訟法 上訴

上訴とは、確定前の裁判について、上級の裁判所にその取消し・変更を求める不服申立てです。適法な上訴があると判決の確定が遮断され(確定遮断効)、事件が上級審に移り(移審効)、この二つの効力は不服を申し立てた部分に限らず原判決の全部について生じます(上訴不可分の原則)。

第一審で負けた人が納得できないとき、同じ事件をもう一度上の裁判所で見てもらう手続が上訴です。上訴をすると、判決はその間確定せず、事件は記録ごと上の裁判所へ移ります。一つの判決の中に請求が二つあって、その一つだけに不服を言った場合でも、判決は全体として確定しません。判決は一体として言い渡されたものなので、上の裁判所で不服の範囲を広げたり相手が反撃したりする余地を残しておく必要があるからです。

地方裁判所の書記官室から高等裁判所へ記録が運ばれる場面を、左右二コマで描く。左コマ:書記官室のカウンターで、男性(札「被告」)が「控訴状」と書かれた書面を差し出し、その書面に小さく「不服:貸金の部分だけ」と書いてある。カウンターの上には「第

適法な上訴があると判決の確定が遮断され、事件は上級の裁判所に移ります

判決は、控訴・上告の期間が満了するまで確定せず、期間内に適法な控訴・上告の提起や上告受理の申立てがあれば確定が遮断されます(116条)。これが確定遮断効です。同時に、事件は原裁判所を離れて上訴裁判所に係属します。これが移審効です。判決に対する上訴は控訴と上告で、地方裁判所が第一審の事件は高等裁判所が控訴審、最高裁判所が上告審になり、簡易裁判所が第一審の事件は地方裁判所が控訴審、高等裁判所が上告審になります(裁判所法16条・24条)。決定・命令に対する上訴は抗告です。確定した判決に対する不服申立ては上訴ではなく再審の訴えで、判決をした裁判所自身に申し立てる手形訴訟・少額訴訟の異議も上訴ではありません。

  • 控訴地方裁判所が第一審としてした終局判決・簡易裁判所の終局判決に対する上訴(281条)
  • 上告・上告受理の申立て控訴審の終局判決などに対する上訴(311条・318条)
  • 抗告決定・命令に対する上訴(328条以下)
  • 上訴でないもの確定判決に対する再審の訴え、判決をした裁判所に対する異議(手形訴訟・少額訴訟・法定審理期間訴訟手続)

判決の一部だけに上訴しても、判決の全部について確定が遮断され、全部が移審します

確定遮断効と移審効は、上訴人が不服を申し立てた範囲に限られず、原判決で判断された全部について生じます。これを上訴不可分の原則といいます。「第一審判決が同一当事者間の数個の請求についてされた1個の判決である場合,その中の一つの請求についてだけ控訴の申立てがあっても,全請求について確定遮断及び移審の効力が生じる」という肢は正しいです。貸金返還請求と不法行為の損害賠償請求を併合した訴えで、貸金だけが認容され被告だけが控訴した場合も、原告が負けた損害賠償の部分まで移審するので、「第一審判決のうち不法行為に基づく損害賠償請求に係る部分は、控訴期間の満了に伴い確定する」という肢は誤りです。一つの請求の数量的な一部も同じで、300万円の認容判決のうち100万円だけを不服として控訴しても、「その余の部分については,控訴期間の満了により,第一審判決が確定する」という肢は誤りです。もっとも、移審することと控訴審が審判することは別で、控訴審の審判の範囲は不服申立ての限度に限られます(296条1項・304条)。控訴人は口頭弁論の終結まで不服の範囲を広げられ、被控訴人は附帯控訴で審判の範囲を広げられるので、全部を移審させておく意味があります。不服申立てのない部分は、控訴裁判所が申立てにより決定で仮執行の宣言をすることができます(294条)。

教室の黒板の図解。黒板の左半分に見出し「通常共同訴訟(39条)」、原告Xから二本の矢印が「Y1」「Y2」に伸び、Y1の線だけに「控訴」の札、Y2の線に「確定」の判子。右半分に見出し「必要的共同訴訟(40条1項)・独立当事者参加(47条4項)

通常共同訴訟では、上訴した者とその相手方の間の部分だけが移審し、他の共同訴訟人の部分は確定します

上訴不可分の原則は、同じ当事者の間の判決を前提にしています。通常共同訴訟では、共同訴訟人の一人の訴訟行為は他の共同訴訟人に影響を及ぼさないので(39条)、一人が控訴しても、他の共同訴訟人に関する部分は控訴がなければ控訴期間の満了で確定します。主債務者Y1への貸金請求を認容し保証人Y2への請求を棄却した判決にXだけが控訴した場合、Y1に対する部分は移審しないので、「第一審判決のうちY1に対する請求に関する部分については,移審の効果は生じない」という肢は正しいです。「判例の趣旨によれば,通常共同訴訟において,共同訴訟人の一人が控訴したときは,他の共同訴訟人についても判決の確定が遮断される」という肢は誤りです。共同不法行為の被害者が加害者二人を訴えた訴訟も通常共同訴訟なので、Y1が控訴しても、「第一審判決中のY2に対する請求を認容した部分も確定が遮断される」という肢は誤りです。同時審判の申出がある共同訴訟でも、各共同被告に対する請求は通常共同訴訟なので、Zだけが控訴すれば「XのYに対する請求を棄却した部分は確定する」という肢は正しいです。原告と共同被告がそれぞれ控訴して同じ控訴裁判所に係属したときに限り、弁論と裁判を併合しなければなりません(41条3項)。

必要的共同訴訟と独立当事者参加では、一人の上訴で全員について確定が遮断され、全体が移審します

訴訟の目的が全員について合一にのみ確定すべき場合は、一人の訴訟行為は全員の利益においてのみ効力を生じ(40条1項)、上訴は全員に有利な行為として全員に効力を生じます。「必要的共同訴訟において共同訴訟人の一人が上訴をすれば,共同訴訟人の全員に対する関係で判決の確定が遮断され,当該訴訟は全体として移審する」という肢は正しいです。独立当事者参加の訴訟にも40条1項から3項が準用されます(47条4項)。判例は、原告・被告・参加人の三者の請求について一個の判決がされ、原告だけが控訴した事案で、参加人の被告に対する請求を認容した部分も原告の控訴によって確定が遮断されて移審するとし、控訴審は合一確定に必要な限度でその部分を参加人に不利に変更できるとしました(最判昭和48年7月20日)。「当該終局判決のうち、その一人が当事者となっている部分は確定することなく移審し、その余の部分は確定する」という肢は誤りです。合一確定のための不利益変更は、不利益変更禁止の原則の語で扱います。

終局判決前の裁判は、終局判決に対する控訴とともに控訴裁判所の判断を受けます

中間判決や訴訟手続の中でされた決定・命令のような終局判決前の裁判は、原則として独立に上訴できず、終局判決に対する控訴があれば控訴裁判所の判断を受けます(283条本文)。ただし、不服を申し立てることができないとされている裁判と、抗告によって不服を申し立てることができる裁判は、控訴裁判所の判断を受けません(283条ただし書)。前者は法律が判断を確定させたもので、後者は抗告という別の道が用意されているからです。訴訟費用の負担の裁判は独立して控訴できず(282条)、本案の控訴とともにだけ争えます。どの裁判に独立の不服申立てができないかは、独立の不服申立てができない裁判の一覧の語にまとめています。

民事訴訟法116条

判決は、控訴若しくは上告(略)の提起、第三百十八条第一項の申立て又は(略)異議の申立てについて定めた期間の満了前には、確定しないものとする。2 判決の確定は、前項の期間内にした控訴の提起、同項の上告の提起又は同項の申立てにより、遮断される。

民事訴訟法283条

終局判決前の裁判は、控訴裁判所の判断を受ける。ただし、不服を申し立てることができない裁判及び抗告により不服を申し立てることができる裁判は、この限りでない。

試験ではこう問われる

「上訴総論」が短答式でどう出題されてきたか、ひっかけの型8件と関係する過去問の肢10本は、無料のアカウントでログインすると読めます。

読んだあとに、民事訴訟法の肢別演習を

この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。

関連する用語

上訴

附帯控訴