控訴の取下げ・控訴権の放棄・不控訴の合意とは
こうそのとりさげこうそけんのほうきふこうそのごうい
控訴の取下げとは、控訴人が控訴審の終局判決までに控訴を撤回することで、控訴権の放棄とは、控訴をする権利を捨てることです(292条・284条)。不控訴の合意は当事者双方が控訴をしないと約束するもので、上告する権利を留保して終局判決後にする合意(飛越上告の合意)は281条1項ただし書が定めています。
第一審の判決に控訴したものの、考え直して控訴をやめることがあります。控訴をやめても相手に有利な第一審判決が残るだけなので、相手の同意は要りません。最初から控訴しないと決めたなら、控訴する権利を捨てることもできます。また、当事者が話し合って、事実の争いは第一審で終わりにし、法律問題だけを最高裁判所などに判断してもらう約束をすることもでき、これを飛越上告の合意といいます。
控訴は控訴審の終局判決があるまで相手方の同意なしに取り下げられ、取り下げると控訴は初めから係属しなかったものとみなされます
控訴は、控訴審の終局判決があるまで、取り下げることができます(292条1項)。訴えの取下げと違い、相手方の同意を要する261条2項は準用されていません。控訴を取り下げても相手方に有利な第一審判決が残るだけだからです。「控訴の取下げには,相手方の同意を要しない」という肢と、「控訴人は,控訴審の終局判決の後に控訴を取り下げることはできない」という肢は正しいです。控訴審の判決が出た後に控訴を取り下げて都合の悪い控訴審判決を消すことは許されないので、「控訴審の終局判決があった後においても,当該判決が確定するまでは,控訴を取り下げることができる」という肢は誤りです。取下げがあると控訴は初めから係属しなかったものとみなされ(292条2項・262条1項)、控訴期間が過ぎていれば第一審判決が確定します。控訴審で当事者双方が欠席して1か月以内に期日指定の申立てをしないときなどは、263条の準用で、訴えではなく控訴の取下げがあったものとみなされます。「訴えの取下げがあったものとみなされる」という肢は誤りです。訴えの取下げとの違いは、訴えの取下げと控訴の取下げの語でまとめています。
控訴権は放棄でき、控訴権を持つ全ての当事者が放棄すれば、控訴期間の満了前でも判決は確定します
控訴をする権利は、放棄することができます(284条)。放棄は、控訴の提起前は第一審裁判所に、控訴の提起後は訴訟記録のある裁判所に申述してし、控訴の提起後は控訴の取下げとともにしなければなりません(民事訴訟規則173条)。控訴権を持つ当事者全員が放棄すれば、もう第一審判決が控訴で取り消される可能性が無いので、控訴期間の満了を待たずにその時に判決が確定します。「控訴権を有する全ての当事者が控訴権を放棄したときは,控訴期間の満了前であっても,第一審判決は確定する」という肢は正しいです。判決の言渡し前の控訴権の放棄は、控訴権がまだ生じていないので認められないとするのが通説です。控訴権を放棄しても、相手方が控訴すれば附帯控訴はできます。
不控訴の合意は当事者双方がすれば判決前でも有効ですが、一方だけが控訴しない合意は無効です
当事者双方が控訴をしないと約束する不控訴の合意は、第一審判決を最終のものとする訴訟契約として、判決の言渡し前のものでも有効と解されています。上告する権利を留保しない普通の不控訴の合意をすれば、控訴も上告もできず、第一審判決は言渡しとともに確定します。これに対して、判例は、当事者の一方だけが控訴しない旨の合意は無効であるとしました(大判昭和9年2月26日)。判決の内容が分からない段階で一方だけに上訴の道を閉ざすのは不公平だからです。「判決の言渡し前にされた当事者の一方のみが控訴しない旨の合意は,有効である」という肢は誤りです。訴訟上の合意の一般論は、訴訟上の合意の語で扱います。
上告する権利を留保した不控訴の合意は、終局判決の後に、書面又は電磁的記録でしなければなりません
終局判決後、当事者双方が共に上告をする権利を留保して控訴をしない旨の合意をしたときは、控訴はできず(281条1項ただし書)、第一審判決に対して直ちに上告できます(311条2項。飛越上告)。事実の争いは第一審で終わらせ、法律問題だけを上告審に判断させる仕組みです。この合意は終局判決の後でなければならず、判決の言渡し前にしても281条1項ただし書の効力は生じません。「第一審の終局判決の言渡し前に、当事者双方が共に上告をする権利を留保して控訴をしない旨の合意をしたときは、この合意は有効である」という肢は誤りです。「当事者双方が,第一審の終局判決の後,共に上告をする権利を留保して控訴をしない旨の合意をしたときは,その合意は,有効である」という肢は正しいです。合意には管轄の合意の方式の規定が準用され、書面又はその内容を記録した電磁的記録でしなければ効力を生じません(281条2項・11条2項・3項)。「書面又はその内容を記録した電磁的記録によってされなければならない」という肢は正しいです。この合意があると控訴権は消滅するので、「控訴が提起されてもその控訴は不適法である」という肢は正しいです。上告先は、地方裁判所の判決なら最高裁判所、簡易裁判所の判決なら高等裁判所です(311条2項)。
飛越上告では、上告裁判所は事実の確定が法律に違反したことを理由に原判決を破棄できません
原判決で適法に確定した事実は上告裁判所を拘束しますが(321条1項)、飛越上告の場合は、さらに、上告裁判所は原判決における事実の確定が法律に違反したことを理由として、その判決を破棄することができません(321条2項)。当事者は自ら控訴審で事実を争う機会を捨てているので、事実認定の過程の誤りを上告審で争わせるのは相当でないからです。ただし、職権調査事項にはこの制限は及びません(322条)。「上告裁判所は、職権調査事項を除き、事実の確定が法律に違反したことを理由として、原判決を破棄することができない」という肢は正しいです。
- 控訴の取下げ控訴審の終局判決まで・相手方の同意不要(292条1項)
- 控訴権の放棄いつでも申述で(284条・規則173条)。全員が放棄すれば判決確定
- 普通の不控訴の合意双方なら判決前でも有効。一方だけの合意は無効
- 飛越上告の合意終局判決後・双方・上告権の留保・書面又は電磁的記録(281条)
- 飛越上告の審理事実の確定の法律違反では破棄できない(321条2項)。職権調査事項は除く
民事訴訟法281条
控訴は、地方裁判所が第一審としてした終局判決又は簡易裁判所の終局判決に対してすることができる。ただし、終局判決後、当事者双方が共に上告をする権利を留保して控訴をしない旨の合意をしたときは、この限りでない。2 第十一条第二項及び第三項の規定は、前項の合意について準用する。
民事訴訟法292条
控訴は、控訴審の終局判決があるまで、取り下げることができる。2 第二百六十一条第三項及び第四項、第二百六十二条第一項並びに第二百六十三条の規定は、控訴の取下げについて準用する。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。