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用語集 / 民事訴訟法 / 上告審の審理と判決

上告審の審理と判決とは

じょうこくしんのしんりとはんけつ

民事訴訟法 上訴

上告審とは、原判決に法令の違反があるかだけを審査する法律審で、原判決で適法に確定した事実に拘束されます(321条1項)。上告審の判決には、上告棄却と、原判決を破棄して差し戻し・移送する破棄差戻し、自ら裁判をする破棄自判があり、破棄の理由とした判断は差戻しを受けた裁判所を拘束します(325条・326条)。

上告審は、事実を調べ直すところではなく、控訴審までに確定した事実を前提に、法律の当てはめに誤りがないかだけを見る裁判所です。書類を読んで上告に理由がないと分かれば、法廷を開かずに退けられます。逆に原判決を覆すときは、当事者の言い分を聞くために法廷を開くのが原則です。原判決を破棄して控訴審に差し戻したときは、差戻しを受けた裁判所が同じ誤りを繰り返さないよう、上告審の判断に従わなければなりません。

最高裁判所の小法廷の裁判官室の場面。大きな机の上に「上告状」「上告理由書」「答弁書」と書かれた書類が並ぶ。先生が裁判官役(札「上告裁判所」)として書類を読み、手元に二つの判子「上告棄却(口頭弁論なし)」「破棄(原則として口頭弁論を開く)」が

上告状は原裁判所に提出し、上告審は原判決で適法に確定した事実に拘束されますが、職権調査事項は別です

上告の提起は、上告状を原裁判所に提出してしなければなりません(314条1項)。上告期間は控訴と同じく判決の送達から2週間で(313条・285条)、上告状の審査は原裁判所の裁判長が行います(314条2項)。「最高裁判所への上告の提起は,上告状を最高裁判所に提出してしなければならない」という肢は誤りです。上告裁判所は、上告の理由に基づき不服の申立てがあった限度で調査し(320条)、原判決において適法に確定した事実に拘束されます(321条1項)。ただし、これらの規定は職権で調査すべき事項には適用されません(322条)。「上告裁判所は,職権調査事項を除いて,原判決において適法に確定された事実に拘束される」という肢は正しいです。当事者適格は職権調査事項なので、上告裁判所は自ら事実を調べて判断でき、「上告裁判所は,当事者適格の有無を判断するに当たり,原判決において適法に確定した事実に拘束される」という肢は誤りです。

上告に理由がなければ口頭弁論を経ずに判決で棄却でき、最高裁判所は明らかに上告理由に当たらない上告を決定で棄却できます

上告裁判所は、上告状、上告理由書、答弁書その他の書類により、上告を理由がないと認めるときは、口頭弁論を経ないで、判決で、上告を棄却することができます(319条)。「口頭弁論を開かずに,上告棄却の判決をすることができる」という肢は正しいです。さらに、上告裁判所である最高裁判所は、上告の理由が明らかに312条1項・2項の事由に当たらない場合には、決定で上告を棄却することができます(317条2項)。「上告人が主張している事由が上告理由に該当しないことが明らかなとき,最高裁判所は,決定で,当該上告を棄却することができる」という肢は正しいです。上告が不適法で補正できないときや上告理由書が出されないときは、上告裁判所も決定で上告を却下できます(317条1項)。

原判決を破棄するには原則として口頭弁論が要りますが、判例は口頭弁論を開く意味がない場合に例外を認めています

319条は棄却の場合だけを定めているので、上告に理由があるとして原判決を破棄するには口頭弁論を開くのが原則です。「上告裁判所は,上告を理由があると認める場合,口頭弁論を開かなければならない」という肢は正しいです。もっとも判例は、口頭弁論を経ない訴えの却下(140条)と口頭弁論を経ない上告棄却(319条)の趣旨から、例外を認めています。不適法でその不備を補正できない訴えについて原審が本案判決をしていた場合、上告裁判所は口頭弁論を経ないで訴えを却下でき、その前提として原判決を破棄する判決も口頭弁論を経ないでできるとしました(最判平成14年12月17日)。「訴えを却下する判決をする場合には、口頭弁論を経ないですることができる」という肢は正しいです。判決の基本となる口頭弁論に関与していない裁判官が判決をした裁判官として署名押印していることを理由に原判決を破棄して差し戻す場合も、必ずしも口頭弁論を経ることを要しないとしました(最判平成19年1月16日)。絶対的上告理由があることが明らかで、口頭弁論を開いても意味がないからです。「事件を原審に差し戻す判決をする場合には、口頭弁論を経ないですることができる」という肢は正しいです。

高等裁判所の差戻し後の法廷の場面。法壇に男性の裁判官(札「差戻しを受けた裁判所」)が座り、手元に最高裁判所からの「破棄判決」と表紙に書かれた書面がある。その書面から一本の線が裁判官の机の「判断」の札へ伸び、線に「破棄の理由とした判断は拘束す

最高裁判所は、上告理由に当たらなくても、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があれば原判決を破棄できます

上告理由(312条1項・2項)があるときは、上告裁判所は原判決を破棄し、事件を原裁判所に差し戻すか同等の他の裁判所に移送します(325条1項)。上告裁判所である最高裁判所は、312条1項・2項の事由がない場合でも、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるときは、原判決を破棄できます(325条2項)。当事者が上告理由として主張できるかと、上告裁判所が破棄できるかは別の問題で、適法な上告があった以上、明らかな法令違反を見過ごさないための定めです。「最高裁判所は,上告理由や上告受理の申立ての理由において上告人が主張していない限り,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反が認められる場合であっても,原判決を破棄することはできない」という肢は誤りです。「上告裁判所である最高裁判所は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があることを理由として、原判決を破棄することができない」という肢も誤りです。判例は、上告審係属中に原判決の基礎となった行政処分が変更されて再審事由が生じた事案で、原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして325条2項で破棄しました(最判平成15年10月31日)。確定した事実に基づいて裁判ができるときなどは、上告裁判所が自ら裁判をします(326条の破棄自判)。

破棄の理由とした事実上・法律上の判断は差戻しを受けた裁判所を拘束しますが、別個の法律的見解で同じ結論を出すことは妨げられません

差戻し又は移送を受けた裁判所は新たな口頭弁論に基づいて裁判をし、上告裁判所が破棄の理由とした事実上及び法律上の判断に拘束されます(325条3項)。差戻し後に同じ判断が繰り返されて上告が往復するのを防ぐためです。上告審は法律審なので、ここでいう事実上の判断は、職権調査事項について上告審がした事実上の判断に限られます(最判昭和36年11月28日)。「上告裁判所が、職権調査事項について一定の事実上の判断をし、それを理由として原判決を破棄し、事件を原裁判所に差し戻した場合には、当該事実上の判断は、差戻しを受けた裁判所を拘束する」という肢は正しいです。拘束力は破棄の理由となった範囲でのみ生じるので、判例は、差戻し後の裁判所が同じ認定事実のもとで、破棄理由で誤りとされた法律的見解とは別個の法律的見解に立って差戻し前と同じ結論の判決をすることは、破棄判決の拘束力に反しないとしました(最判昭和43年3月19日)。「破棄判決の拘束力に違反しない」という肢は正しいです。原判決に関与した裁判官は、差戻し後の裁判に関与できません(325条4項)。

高等裁判所が上告審としてした判決には憲法違反を理由に最高裁判所へ特別上告ができますが、判決の確定は遮断されません

高等裁判所が上告審としてした終局判決に対しては、その判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに限り、最高裁判所に更に上告をすることができます(327条1項)。最高裁判所が違憲審査の終審裁判所であることから、憲法判断を受ける機会を保障するものです。「高等裁判所が上告審としてした終局判決に対しては,憲法違反を理由として最高裁判所に対して更に不服を申し立てることができる」という肢は正しいです。ただし、116条1項は確定を妨げる上告から327条1項の上告を除いているので、特別上告をしても判決の確定は遮断されません。「特別上告がされた場合には、判決の確定が遮断される」という肢は誤りです。特別上告は確定した判決に対する非常の救済で、執行を止めるには403条1項1号の執行停止の申立てによります。

  • 上告却下不適法で補正できないとき・上告理由書を出さないとき(原裁判所316条、上告裁判所317条1項)
  • 上告棄却(決定)最高裁判所で上告の理由が明らかに312条1項・2項に当たらないとき(317条2項)
  • 上告棄却(判決)書類で理由がないと認めれば口頭弁論を経ずにできる(319条)
  • 破棄差戻し・移送上告理由があるとき、最高裁判所は明らかな法令違反があるときも(325条1項・2項)
  • 破棄自判確定した事実で裁判ができるときなど(326条)

民事訴訟法321条

原判決において適法に確定した事実は、上告裁判所を拘束する。2 第三百十一条第二項の規定による上告があった場合には、上告裁判所は、原判決における事実の確定が法律に違反したことを理由として、その判決を破棄することができない。

民事訴訟法325条2項・3項

上告裁判所である最高裁判所は、第三百十二条第一項又は第二項に規定する事由がない場合であっても、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるときは、原判決を破棄し、次条の場合を除き、事件を原裁判所に差し戻し、又はこれと同等の他の裁判所に移送することができる。3 前二項の規定により差戻し又は移送を受けた裁判所は、新たな口頭弁論に基づき裁判をしなければならない。この場合において、上告裁判所が破棄の理由とした事実上及び法律上の判断は、差戻し又は移送を受けた裁判所を拘束する。

論文ではこう使う

論文で破棄判決の拘束力が問われたときは、325条3項の趣旨(差戻しと上告の往復を防ぎ、上級審の判断の実効性を確保する)を示し、拘束力の性質を既判力とは異なる羈束力として位置づけます。そのうえで、拘束力は破棄の理由となった範囲でのみ生じ、事実上の判断は職権調査事項についての判断に限られること(最判昭和36年11月28日)、差戻審が新たな事実を認定したり別個の法律的見解に立ったりすることは妨げられないこと(最判昭和43年3月19日)を当てはめます。

試験ではこう問われる

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