控訴審の判決(控訴棄却・取消自判・差戻し・移送)とは
こうそしんのはんけつ
控訴審の判決とは、控訴裁判所が控訴について最終的な判断を示す終局判決で、不適法な控訴の却下、第一審判決を相当とする控訴棄却、第一審判決を不当とする取消しがあります。取り消したときは自判が原則で、訴え却下判決を取り消すときは原則として第一審に差し戻し、管轄違いで取り消すときは管轄裁判所に移送します(302条〜309条)。
控訴審が審理を終えると、第一審判決の結論が正しければ控訴を退け、間違っていれば第一審判決を取り消します。取り消したあとは、控訴審自身が代わりの判決をするのが原則です。控訴審も事実を調べ直せる裁判所なので、わざわざ第一審に戻す必要がないからです。ただ、第一審が訴えを門前払いにしていた場合は、中身の審理を一度も受けていないので、第一審に戻して審理させるのが原則になります。
第一審判決を相当とするときは控訴を棄却し、理由が不当でも他の理由で結論が正しければ控訴を棄却します
控訴裁判所は、第一審判決を相当とするときは、控訴を棄却しなければなりません(302条1項)。第一審判決がその理由によれば不当である場合でも、他の理由により正当であるときは、控訴を棄却しなければなりません(302条2項)。既判力は主文に包含するものに限って生じるので、主文の結論が同じなら第一審判決を維持すれば足りるからです。「第一審判決がその理由によれば不当である場合においても,他の理由により正当であるときは,控訴裁判所は,控訴を棄却しなければならない」という肢は正しいです。第一審が弁済の抗弁を認めて請求を棄却したところ、控訴裁判所は弁済を認めないものの消滅時効の完成の心証を得た場合も、請求棄却という結論は正しいので、「当該控訴を棄却しなければならない」という肢は正しいです。ただし、相殺の抗弁で棄却された判決は、理由が違えば既判力の範囲が変わるので別に扱われ、これは不利益変更禁止の原則の語で扱います。訴え却下判決に対する控訴でも、却下の結論が相当なら控訴棄却で、「控訴裁判所は、第一審判決を相当とするときは、控訴を棄却しなければならない」という肢は正しいです。
控訴審で訴えの交換的変更があったときは、新訴について第一審として判断し、結論が同じでも控訴棄却とはしません
控訴審で訴えが交換的に変更されると、第一審が判断したのは旧訴で、新訴については控訴裁判所が実質上初めて判断することになります。判例は、第一審が認容した貸金債権に基づく請求が控訴審で求償債権に基づく同額の請求に変更された事案で、新請求を認容するのは実質上第一審としての裁判であって第一審判決の当否を解決するものではないから、控訴棄却ではなく新請求について給付判決をすべきであるとしました(最判昭和32年2月28日)。「新訴についての判決の結論が第一審判決の主文と全く同一となっても,控訴棄却の裁判をすべきではない」という肢は正しいです。「変更後の訴えに対する控訴裁判所の判断の内容が第一審判決の主文と同じものとなるときは,控訴裁判所は,控訴を棄却するとの判決をしなければならない」という肢は誤りです。控訴審での訴えの変更の要件は、訴えの交換的変更の語で扱います。
第一審判決を取り消すときは、控訴裁判所が自ら判決をするのが原則です
控訴裁判所は、第一審判決を不当とするとき(305条)や、第一審の判決の手続が法律に違反したとき(306条)は、第一審判決を取り消さなければなりません。続審である控訴審は自ら事実を認定できるので、取り消したあとは請求について自ら裁判をする自判が原則です。「控訴裁判所は,第一審判決を取り消す場合には,事件を第一審裁判所に差し戻さず,自判をすることができる」という肢は正しいです。事件につき更に弁論をする必要があるときは、第一審裁判所に差し戻すこともできます(308条1項の任意的差戻し)。第一審の訴訟手続の法律違反を理由に差し戻したときは、その訴訟手続は取り消されたものとみなされます(308条2項)。
訴え却下判決を取り消すときは第一審に差し戻さなければなりませんが、更に弁論をする必要がなければ自判できます
控訴裁判所は、訴えを不適法として却下した第一審判決を取り消す場合には、事件を第一審裁判所に差し戻さなければなりません(307条本文の必要的差戻し)。第一審で本案の審理を受けていない当事者の審級の利益を守るためです。ただし、事件につき更に弁論をする必要がないときは、この限りでありません(307条ただし書)。第一審が本案についても審理を尽くしていた場合がその例です。「第一審裁判所において本案の審理が尽くされていれば,事件を第一審裁判所に差し戻さなくてもよい」という肢は正しいです。控訴裁判所が却下判決は不当だと判断しても、自分で訴えを却下し直すのではなく、取り消して差し戻すか自判するかを選ぶことになります。
第一審判決を取り消して差し戻す判決も終局判決なので、直ちに上告できます
差戻判決があると事件は第一審に戻りますが、控訴審の手続はこの判決で終わるので、差戻判決は控訴審の終局判決です。判例は、第一審判決を取り消して差し戻した控訴審判決を終局判決と解し、これに対して直ちに上告できるとしました(最判昭和26年10月16日)。「当該差戻判決に対して上告をすることはできない」という肢は誤りです。差戻判決は控訴人の控訴を認めたものですが、判例は、控訴人であった者も取消しの理由となった判断を争うために上告する利益を有するとしています(最判昭和45年1月22日)。上級審の裁判所の判断は差戻し後の下級審を拘束する(裁判所法4条)ので、理由中の判断でも争う機会を与える必要があるからです。
管轄違いを理由に取り消すときは判決で管轄裁判所に移送し、控訴権の濫用には金銭の納付を命じられます
控訴裁判所は、事件が管轄違いであることを理由として第一審判決を取り消すときは、判決で、事件を管轄裁判所に移送しなければなりません(309条)。「控訴裁判所は、事件が管轄違いであることを理由として第一審判決を取り消すときは、判決で、事件を管轄裁判所に移送しなければならない」という肢は正しいです。移送は第一審では決定でしますが、ここでは第一審判決の取消しと一体なので判決の形式をとります。もっとも、控訴審では任意管轄違いと合意による専属管轄違いは主張できないので(299条1項)、309条が働くのは法定の専属管轄の違反の場合です。控訴裁判所は、302条1項で控訴を棄却する場合に、控訴人が訴訟の完結を遅延させることのみを目的として控訴を提起したと認めるときは、控訴の提起の手数料の10倍以下の金銭の納付を命ずることができ(303条1項)、「控訴の提起の手数料として納付すべき金額の10倍以下の金銭の納付を命ずることができる」という肢は正しいです。この裁判は判決の主文に掲げ、本案判決を変更する判決の言渡しで効力を失います(303条2項・3項)。
- 控訴却下控訴が不適法なとき(補正できなければ口頭弁論を経ないで判決で却下できる。290条)
- 控訴棄却第一審判決が相当なとき、理由が不当でも他の理由で正当なとき(302条)
- 取消し・自判第一審判決が不当なとき・判決の手続が違法なとき(305条・306条)
- 必要的差戻し訴え却下判決を取り消すとき。更に弁論の必要がなければ自判できる(307条)
- 任意的差戻し更に弁論をする必要があるとき(308条1項)
- 移送管轄違いを理由に取り消すとき。判決でする(309条)
民事訴訟法302条
控訴裁判所は、第一審判決を相当とするときは、控訴を棄却しなければならない。2 第一審判決がその理由によれば不当である場合においても、他の理由により正当であるときは、控訴を棄却しなければならない。
民事訴訟法307条
控訴裁判所は、訴えを不適法として却下した第一審判決を取り消す場合には、事件を第一審裁判所に差し戻さなければならない。ただし、事件につき更に弁論をする必要がないときは、この限りでない。
民事訴訟法309条
控訴裁判所は、事件が管轄違いであることを理由として第一審判決を取り消すときは、判決で、事件を管轄裁判所に移送しなければならない。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。