訴えの交換的変更と控訴審での訴えの変更とは
うったえのこうかんてきへんこうとこうそしんでのうったえのへんこう
訴えの交換的変更とは、旧請求に代えて新請求を審判の対象にする訴えの変更で、判例は新請求の追加と旧請求の取下げ又は放棄が組み合わさったものとみます。控訴審での訴えの変更は、控訴審にも143条が準用されることから、相手方の同意なしにすることができます。
貸金の返還を求めていた原告が、途中で「貸金ではなく立替金の返還を求める」と請求を差し替えたいと考えることがあります。古い請求を捨てて新しい請求だけにするこのやり方が訴えの交換的変更です。ところが被告から見ると、せっかく古い請求で勝てそうだったのに、原告の一存で勝手に手を引かれては困る場合があります。そこで判例は、古い請求を消すには訴えの取下げか請求の放棄という別の手続を通すように求めています。
判例は、交換的変更を新請求の追加と旧請求の取下げ又は放棄の組合せとみるので、旧請求の係属を消すには相手方の同意か放棄が要ります
143条の訴えの変更によって新請求が加わっても、それだけでは旧請求の訴訟係属は消えず、追加的変更と同じ状態になります。判例は、請求の原因の変更とは旧訴の係属中に新訴を追加的に併合提起することを指し、旧訴の維持が難しいと自認して新訴だけの審判を求める場合でも、旧訴の係属を消滅させるには訴えの取下げ又は請求の放棄が必要であるとしました(最判昭和32年2月28日)。被告が本案について準備書面を提出し又は口頭弁論をした後の取下げには被告の同意が要るので(261条2項)、被告は旧請求について請求棄却の判決を得る利益を守ることができます。「いわゆる訴えの交換的変更においては,旧請求について訴えの取下げ及び相手方の同意又は請求の放棄がなくても,旧請求の訴訟係属は消滅する」という肢は誤りです。もっとも、被告が交換的変更に異議を述べずに応訴したときは、旧訴の取下げに暗黙に同意したものと解されます(最判昭和41年1月21日)。旧請求の取下げなので再訴禁止(262条2項)も問題になりますが、判例は、第一審で本案判決を得た後の控訴審での交換的変更について、同じ紛争を蒸し返すものでない事情があれば同じ訴えを起こすことは妨げられないとしました(最判昭和52年7月19日)。
控訴審にも143条が準用されるので、控訴審でも相手方の同意なしに訴えを変更できます
控訴審の訴訟手続には、特別の定めがある場合を除き、第一審の訴訟手続の規定が準用されます(297条)。訴えの変更について控訴審に特別の定めはないので、143条の要件を満たせば控訴審でも訴えを変更できます。「控訴審においては、訴えの変更をすることができない」という肢は誤りです。請求の基礎に変更がなければ、請求の基礎に関する部分はすでに第一審で審理されているので、新請求についても事実上第一審があったのと同じで、相手方の審級の利益を不当に害しません。判例も、控訴審での請求の基礎に変更のない訴えの変更に相手方の同意は要らないとしています(最判昭和29年2月26日)。「控訴審における訴えの変更は,請求の基礎に同一性が認められる場合であっても,相手方の同意が必要である」という肢は誤りです。ここは控訴審の反訴と違います。反訴は相手方の同意がある場合に限られますが(300条1項)、それは反訴が被告の側から新しい請求を持ち込み、原告から第一審で審理を受ける機会を奪うからです。交換的変更で旧請求を取り下げる部分にだけは、第一審と同じく相手方の同意が要ります。
控訴審で交換的変更があれば、控訴審は新請求について事実上第一審として裁判するので、結論が第一審判決の主文と同じでも控訴棄却とはしません
控訴審の本案判決は第一審判決の当否を判断するもので、第一審判決を相当とするときは控訴を棄却します(302条1項)。しかし、控訴審で交換的変更があると、新請求は第一審で判決されていないので、控訴審は新請求について実質上第一審として裁判しなければなりません。そのため判例は、新請求に対する控訴審の結論が請求棄却で、第一審判決の主文の文言と合致する場合でも、控訴棄却の判決をすべきではなく、新請求について請求棄却の判決をすべきであるとしました(最判昭和31年12月20日)。新請求を認容する場合も同じで、控訴を棄却するのではなく新請求について給付判決をすべきだとした判例があります(最判昭和32年2月28日)。「変更後の訴えに対する控訴裁判所の判断の内容が第一審判決の主文と同じものとなるときは,控訴裁判所は,控訴を棄却するとの判決をしなければならない」という肢は誤りです。「新訴についての判決の結論が第一審判決の主文と全く同一となっても,控訴棄却の裁判をすべきではない」という肢は正しいです。
第一審で全部勝訴した原告も、被告が控訴すれば、附帯控訴の方式で請求を拡張できます
控訴審の審判は不服申立ての範囲に限られるので、被控訴人が第一審判決より有利な判決を得るには附帯控訴をする必要があります。被控訴人は、控訴権が消滅した後でも口頭弁論の終結に至るまで附帯控訴ができます(293条1項)。判例は、第一審で全部勝訴の判決を得た原告も、相手方が控訴した場合には、附帯控訴の方式で請求の拡張ができるとしました(最判昭和32年12月13日)。附帯控訴には不服の利益は要らないと解されているからです。400万円の一部請求で全部勝訴した原告が、被告の控訴を受けて1000万円全部に請求を拡張する場合がこれに当たります。「第一審裁判所がXの請求を全部認容し,Yがこれを不服として控訴した場合,Xは,附帯控訴の方式により,請求を1000万円に拡張することができる」という肢は正しいです。附帯控訴の要件と効力は、附帯控訴の語で扱います。
民事訴訟法297条
前編第一章から第七章までの規定は、特別の定めがある場合を除き、控訴審の訴訟手続について準用する。ただし、第二百六十九条の規定は、この限りでない。
民事訴訟法261条2項
訴えの取下げは、相手方が本案について準備書面を提出し、弁論準備手続において申述をし、又は口頭弁論をした後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。ただし、本訴の取下げがあった場合における反訴の取下げについては、この限りでない。
論文ではこう使う
論文では、控訴審での交換的変更を審級の利益の観点から論じます。まず、控訴審にも143条が準用され(297条)、請求の基礎に変更がなければ第一審で実質的な審理を経ているので相手方の同意なしに変更できることを示します。次に、交換的変更は新請求の追加と旧請求の取下げの組合せであるから、旧請求の取下げに261条2項の同意が要り、同意がなければ旧請求も係属したまま審判の対象になることを指摘します。そのうえで、控訴審は新請求について実質上第一審として判断するので、主文は控訴棄却ではなく新請求についての判決になると結論づけます。
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