訴え提起の効果(訴訟係属・時効の完成猶予と更新・期間の遵守)とは
うったえていきのこうか
訴え提起の効果とは、訴えを提起したことによって生じる訴訟法上・実体法上の効果をいい、訴状が被告に送達された時に生じる訴訟係属と、訴状を裁判所に提出した時に生じる時効の完成猶予と法律上の期間の遵守があります(147条)。
時効があと数日で完成しそうなときに訴状を出しても、被告に届くまでに時間がかかれば、その間に時効が完成してしまうのでは困ります。被告への送達は裁判所が職権でするので、その遅れを原告に負わせるのは酷です。そこで、時効の完成猶予や出訴期間の遵守の効果は、訴状を裁判所に出した時に生じるとされています。他方、訴訟係属という状態は、訴状が被告に届いた時に始まります。訴えの提起にはこうした効果があり、それぞれ生じる時点が違います。
時効の完成猶予と期間遵守の効果は、訴状を裁判所に提出した時に生じます
訴えが提起されたとき、または訴えの変更などの書面が裁判所に提出されたときは、その時に時効の完成猶予または法律上の期間の遵守のために必要な裁判上の請求があったものとされます(147条)。訴えの提起は訴状を裁判所に提出してするので(134条1項)、効果が生じるのは訴状の提出時です。被告への送達時とすると、職権でする送達(98条1項)の遅れで時効が完成するおそれがあるからです。「訴えの提起による時効の中断の効力発生の時期は,被告に対する訴状の送達の時である」「訴えの提起による時効中断の効力は,訴状が被告に送達された時に生ずる」という肢は誤りです(旧規定の「中断」は、現行法では完成猶予に当たります)。訴えの変更で請求を追加した場合は、変更の書面(143条2項)を裁判所に提出した時に効果が生じます。追加した債権について「請求の変更の書面が裁判所に提出された時に,甲債権の消滅時効は中断する」という肢は正しいです。出訴期間のある訴えも、訴状の提出時を基準に期間を守ったかを判断します。訴訟係属は訴状が被告に送達された時に生じ、重複起訴の禁止(142条)などはそこから働きます。
- 訴訟係属訴状が被告に送達された時に生じます
- 時効の完成猶予・期間の遵守訴状を裁判所に提出した時に生じます(147条)
- 訴えの変更・反訴・中間確認の訴えでの追加その書面を裁判所に提出した時に生じます
- 時効の更新確定判決や和解など確定判決と同一の効力を有するもので権利が確定した時に生じます(民法147条2項)
裁判上の請求による完成猶予は訴訟の終了まで続き、確定判決や和解で権利が確定すれば時効は更新されます
現行の民法では、裁判上の請求があると、その事由が終了するまで時効は完成せず、確定判決または確定判決と同一の効力を有するもので権利が確定することなく終了した場合(訴えの却下や取下げ)には、終了の時から6か月を経過するまで完成しません(民法147条1項)。確定判決などで権利が確定したときは、時効はその事由の終了の時から新たに進行を始めます(同条2項、更新)。訴訟上の和解は確定判決と同一の効力を持つので(267条1項)、和解で請求権が確定すれば時効は更新されます。「和解が成立した結果,原告の被告に対する貸金返還請求権が確定した場合には,消滅時効が更新される」という肢は正しいです。訴訟が承継されても効果は引き継がれるので、原告が死亡して相続人が訴訟を承継した場合に「時効中断の効力は承継人に及ぶ」という肢は正しいです。移送の裁判が確定すると訴訟は初めから移送を受けた裁判所に係属していたものとみなされる(22条3項)ので、時効期間の経過後に移送が確定しても、訴え提起による効果は影響を受けません。この内容の肢は正しいです。債権者代位訴訟では、訴訟物である被代位権利(債務者の第三債務者に対する債権)について時効の効果が生じるので、代位債権者が訴えを提起した時点で被代位権利の時効について効力が生じるとする肢は正しいです。
訴えが却下・取下げで終わっても、現行法では終了から6か月の完成猶予が残ります
旧規定では、訴えが却下されたり取り下げられたりすると時効の中断の効力は生じなかったものとされていました(旧民法149条)。現行法では、権利が確定しないまま訴訟が終わっても、終了の時から6か月は完成猶予が続きます(民法147条1項)。訴状却下も訴えの却下に準じて扱われます。そのため、「訴状審査の結果として訴状が却下された場合であっても,訴えの提起による時効中断の効力が生ずる」という肢は、出題当時は誤りでしたが、現行法では訴状却下の後も6か月の完成猶予の効力が生じるので、完成猶予の意味で読めば正しいことになります。ただし時効の更新の効力は生じません。同じく、請求の減縮(訴えの一部取下げ)をした部分について「時効中断の効力は遡及的に消滅する」という肢は、出題当時は正しかったものの、現行法では減縮した部分も終了から6か月の完成猶予が残り、効力がさかのぼって消えるわけではないので、誤りになります。旧規定の下でも、同じ請求について二重に係属していた訴訟の弁論が併合された後に、前訴を取り下げて後訴を続ける場合には、権利行使の意思が継続しているとして前訴の提起による効果は消えないとされていました(最判昭和50年11月28日)。この内容の肢は正しいです。
債務不存在確認の訴えや留置権の抗弁は、それだけでは被告の債権の裁判上の請求に当たりません
時効の完成猶予を生じる裁判上の請求は、権利者が自分の権利を主張して行うものです。債務者が債務不存在確認の訴えを起こしても、債権者の権利行使ではないので、訴えの提起の時点では債権の時効は止まりません。判例は、被告である債権者が応訴して債権の存在を主張し請求棄却を求めたときに、裁判上の請求に準じる効果を認めています(大連判昭和16年2月24日)。「当該訴えが提起された時点で,甲債権の消滅時効は中断する」という肢は誤りです。また判例は、物の引渡請求訴訟で被告が被担保債権の存在を主張して留置権の抗弁を出しても、それは被担保債権の裁判上の請求には当たらないが、訴訟が係属している間は被担保債権について催告が続いているものとしました(最大判昭和38年10月30日)。そのため訴訟中に時効期間が経過しても、原告は被担保債権の時効消滅を主張できず、訴訟の終了後6か月以内に裁判上の請求などをすれば時効を止められます。「その後に甲債権の消滅時効期間が経過すれば,Bは,当該訴訟において,同債権の時効消滅を主張することができる」という肢は誤りです。明示的一部請求の残部の扱いは「一部請求」で扱います。
民事訴訟法147条
訴えが提起されたとき、又は第百四十三条第二項(第百四十四条第三項及び第百四十五条第四項において準用する場合を含む。)の書面が裁判所に提出されたときは、その時に時効の完成猶予又は法律上の期間の遵守のために必要な裁判上の請求があったものとする。
民法147条1項
次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。一 裁判上の請求
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。