確認の利益(方法選択の適否・対象選択の適否・即時確定の利益)とは
かくにんのりえき
確認の利益とは、確認の訴えについて本案判決をすることが紛争解決のために有効適切であると認められる利益をいいます。判例・通説は、確認という方法を選ぶことの適否、確認の対象の選び方の適否、即時確定の利益(原告の権利・地位に現存する危険・不安を除く必要)の三つの観点から判断します。
「この土地は自分のものだと確認してほしい」という訴えは、相手が本当に争っていれば意味がありますが、誰も争っていないのに判決を求めても裁判所の手間が無駄になるだけです。確認の訴えは、理屈の上ではどんなことでも対象にできてしまうので、判決で確認する値打ちがある場合に絞る必要があります。その絞りが確認の利益です。判例と通説は、確認という手段を選ぶのが適切か、確認の対象の選び方が適切か、いま確認する必要があるかの三つの観点から判断します。
確認の利益は、方法選択の適否・対象選択の適否・即時確定の利益の三つの観点で判断します
確認判決は既判力で争いに決着を付けるだけで執行力がないので、確認の訴えが紛争解決の手段として有効適切な場合にだけ利益が認められます。第一の観点は方法選択の適否で、給付の訴えなど他の方法の方が適切なら確認の訴えは使えません。第二は対象選択の適否で、原則として現在の権利・法律関係を、それも自己の権利の積極的な確認の形で選ぶべきだとされます。第三は即時確定の利益で、原告の権利や法的地位に現に危険・不安があり、それを確認判決で取り除く必要があることが求められます。被告が原告の権利を争っていることが典型です。
- 方法選択の適否給付の訴えなど他により適切な方法があれば確認の訴えは使えません
- 対象選択の適否原則として現在の権利・法律関係を、自己の権利の積極的確認の形で選びます
- 即時確定の利益原告の権利・地位に現存する危険・不安を確認判決で除去する必要があることです
給付の訴えができる場合でも、基本となる所有権の確認には確認の利益が認められます
請求権そのものは給付の訴えで求めれば既判力に加えて執行力も得られるので、給付の訴えができる請求権の確認には原則として利益がありません。しかし判例は、所有権に基づく給付の訴えができる場合でも、その基本となる所有権について即時確定の利益があれば所有権確認の訴えは適法だとしました(最判昭和29年12月16日)。給付判決の理由中の所有権の判断には既判力が生じない(114条1項)ので、所有権そのものを確定しておけば、そこから派生するほかの紛争も防げるからです。「XがYに対して甲土地の所有権に基づきその返還を請求することができるときは,甲土地についてのXの所有権を確認する訴えの利益を認めることはできない」という肢と、建物収去土地明渡しを請求できる場合には所有権確認の利益が「認められない」とする肢は誤りで、「即時確定の利益があると認められる限り,訴えの利益が認められる」という肢は正しいです。原告の所有権確認の本訴に対し、被告が自己の所有権の確認を求めて反訴を起こすのも、自己の権利の積極的な確認なので利益があります。「反訴として提起された被告の所有権の確認を求める訴えには,訴えの利益が認められる」という肢は正しいです。
債務不存在確認の本訴の係属中に同じ債務の給付の反訴が起こされると、本訴の確認の利益は失われます
債務者が債務不存在確認の訴えを起こすことは、給付の訴えという手段がない立場なので利益があります。しかし判例は、債務不存在確認の本訴の係属中に、被告が同じ債権の支払を求める反訴を起こした場合には、もはや本訴の確認の利益は認められないとしました(最判平成16年3月25日)。給付の反訴の本案判決には既判力が生じ、認容されれば執行力も生じるので、重ねて消極的確認判決をする意味がないからです。確認の利益は事実審の口頭弁論終結時を基準に判断されるので、訴え提起の時にあっても後で失われれば訴えは却下されます。「債務不存在の確認を求める本訴に対し,当該債務の履行を求める給付の反訴が提起されたときは,本訴の訴えの利益は失われる」という肢は正しいです。別訴で給付の訴えを起こすことが重複起訴に当たるかは「重複起訴の禁止」で扱います。
過去の法律行為の効力の確認は原則として利益がなく、紛争の抜本的解決に必要な場合に例外が認められます
過去の法律関係を確認しても、その後に法律関係が変わっている可能性があるので、現在の紛争の解決には役立たないのが通常です。そのため売買契約の無効確認のような過去の法律行為の効力の確認は、原則として即時確定の利益がなく、売買が無効である結果生じる現在の所有権などの確認を求めるべきだとされます。「売買契約の無効確認を求める訴えについて,確認の利益が認められることはない」という肢は正しいです。ただし判例は、基本的な法律関係から生じた法律効果について現在紛争があり、その基本となる法律関係を確定することが紛争の直接かつ抜本的な解決のため最も適切かつ必要な場合には、過去の法律関係でも確認の利益があるとしています(最判昭和47年11月9日)。会社法が株主総会決議の無効確認の訴えを定めているのも、この考え方の表れです。遺言無効確認の訴えも同じ観点から認められ、これは「相続をめぐる確認の訴え」で扱います。将来の権利の確認は原則として認められませんが、賃貸借の継続中に賃借人が敷金返還請求権の存在の確認を求める訴えは、条件付きの現在の権利の確認として利益があるとされました(最判平成11年1月21日)。
事実や記載内容の真実性は確認の対象にならず、訴訟手続の中で判断すべき事項を別訴で確認することもできません
単なる事実の存否は法律上の争訟に当たらないので、確認の対象になりません。例外として、法律関係を証する書面の成立の真否、つまり作成者とされる人の意思で作られたかどうかは確認できます(134条の2)。しかし書面の記載内容が真実かどうかはこれに当たらないので、「法律関係を証する書面の記載内容の真実性に争いがある場合には,その記載内容が真実であることの確認を求める訴えについては,訴えの利益が認められる」という肢は誤りです。また、訴訟代理権の有無は、それが問題になっている訴訟の手続の中で審判すべきであり、別訴で確認する利益はないとされます。訴訟代理権を証する書面の真否の確認も同じで、「別訴として提起された,訴訟代理権を証すべき書面の真否確認を求める訴えについて,確認の利益が認められることはない」という肢は正しいです。さらに判例は、弁護士会照会(弁護士法23条の2)に対する報告義務の確認の訴えは、確定しても照会先の任意の履行を期待するほかなく、紛争の解決に役立たないとして確認の利益を否定しました(最判平成30年12月21日)。
民事訴訟法134条の2
確認の訴えは、法律関係を証する書面の成立の真否を確定するためにも提起することができる。
論文ではこう使う
論文では、確認の利益を、確認の訴えが紛争解決にとって有効適切かという一般論から始め、方法選択の適否・対象選択の適否・即時確定の利益の三つの観点に分けて当てはめます。方法選択では給付の訴えとの関係(基本となる権利の確認は可)、対象選択では現在の権利・自己の権利の積極的確認の原則と、過去の法律関係でも紛争の直接かつ抜本的な解決に最も適切かつ必要なら許されるという例外(最判昭和47年11月9日)、即時確定では原告の地位に現存する不安と被告の争い方を、事案の事実から拾って書きます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。