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当事者適格の意義と判断(給付・確認・形成の訴え、係争物の譲渡、法人の内部紛争)とは

とうじしゃてきかくのいぎとはんだん

民事訴訟法 当事者

当事者適格とは、特定の訴訟物について、当事者として訴訟を追行し本案判決を求め又は受けることができる資格のことで、訴訟追行権ともいいます。原告の側を原告適格、被告の側を被告適格といい、欠ければ訴えは却下されます。

XがYに貸したお金を返せと訴えたところ、審理の途中で、実際に貸したのはXの兄だったと分かったとします。このとき裁判所が、Xには訴える資格がないとして門前払いにするのか、Xの請求には理由がないとして棄却するのかが問題になります。前者なら権利の有無について既判力が生じず、同じ争いが蒸し返されます。特定の訴訟物について、誰が原告・被告として本案判決を受けるのがふさわしいかを決める物差しが当事者適格です。

法廷の場面。原告席に男性(札「原告X」)、被告席に男性(札「被告Y」)。証言台の横に男性(札「Xの兄」)が立ち、「貸したのは私です」という吹き出し。先生が裁判官役(札「裁判所」)で裁判官席に座り、判決書を手にしている。先生の吹き出し「Xは自

給付の訴えでは、給付請求権を有すると主張する者に原告適格があり、真に権利を有するかどうかは本案の問題です

当事者適格は、特定の訴訟物について当事者として訴訟を追行し本案判決を受ける資格であり、訴訟追行権ともいいます。給付の訴えでは、自らがその給付を請求する権利を有すると主張する者に原告適格があり、その者から義務者と主張された者に被告適格があります(原告について最判平成23年2月15日)。原告が実際に権利を持っているかどうかを当事者適格で判断すると、本案の判断を訴訟要件の段階で先取りしたうえ、権利がないのに訴え却下で終わって既判力が生じないからです。「給付を請求する権利を有すると主張して給付の訴えを提起する者は、真に当該権利を有しているか否かにかかわらず、当該訴えの原告適格を有する」という肢は正しく、「Yに金員を貸与したのがXではなくZであることが明らかとなった場合には,Xの訴えは原告適格を欠くものとして却下される」という肢は誤りです。この場合は請求棄却になります。

訴訟物の権利を訴え提起後に譲渡しても原告適格は失われず、譲渡は本案の抗弁又は訴訟承継の問題になりますが、遺産確認の訴えで相続分の全部を譲渡した者は当事者適格を失います

訴訟の係属中に訴訟物である権利が第三者に移転した場合、民事訴訟法は参加承継や訴訟引受けによって新たな権利者を訴訟に加える仕組み(49条から51条)を用意していますが、譲渡だけで従前の原告が当然に当事者適格を失うわけではありません。原告はなお自分が権利者だと主張でき、被告は債権を失ったことを抗弁として主張し、認められれば請求棄却になります。「訴訟物とされている貸金債権をXが訴えの提起後にZに譲渡したことが明らかとなった場合には,Xの訴えが原告適格を欠くものとして却下されることはない」という肢は正しいです。これと異なるのが、特定の財産が遺産に属することの確認を求める遺産確認の訴えです。判例は、共同相続人のうち自己の相続分の全部を譲渡した者は、遺産全体に対する割合的な持分をすべて失い、遺産分割を求めることができないから、その者との間で遺産帰属性を確定する必要はなく、遺産確認の訴えの当事者適格を有しないとし、訴訟係属後に譲渡した者も当事者適格を失うことを前提としました(最判平成26年2月14日)。「遺産確認の訴えを提起した共同相続人は、提訴後に自己の相続分の全部を譲渡した場合であっても、当該訴えの当事者適格を失わない」という肢は誤りです。

教室の場面。先生が教師役(札「先生」)で黒板の前に立つ。黒板の左に「貸金債権を訴え提起後に譲渡 → 原告適格は失われない(譲渡は抗弁・承継の問題)」、右に「遺産確認の訴え中に相続分の全部を譲渡 → 当事者適格を失う」と書かれ、その間に縦線が

確認の訴えでは、誰との間で確認するのが紛争解決に有効かで当事者適格が決まり、法人の内部紛争では法人を被告とします

確認の訴えの当事者適格は、確認の利益と表裏の関係にあり、その訴訟物を誰と誰の間で確認するのが紛争の解決に有効かで決まります。所有権を争っている者を被告に選べば、確認の利益も被告適格もあります。法人の代表者の地位をめぐる争いについて、判例は、法人を当事者とせずに対立する者だけを被告として理事者の地位の確認を求めても、認容判決の効力は法人に及ばず紛争を根本的に解決できないから、法人を被告とすべきだとしました(最判昭和44年7月10日)。株主総会決議の取消しや無効確認の訴えのように、法律が被告を株式会社と定めているものもあります(会社法834条)。

形成の訴えの当事者適格は法律が定めていることが多く、株式会社の役員の解任の訴えでは会社と役員の双方を被告とします

形成の訴えでは、誰が原告になり誰を被告にするかを法律が定めていることが多くあります。株式会社の役員の解任の訴えについて、会社法855条は、当該株式会社及び当該役員を被告とすると定めています。解任判決の効力は会社と役員の双方に及び、両者について合一に確定する必要があるからで、会社法制定前の判例も、会社と役員を共同被告とすべき固有必要的共同訴訟としていました(最判平成10年3月27日)。「当該会社と解任対象とされた役員の双方を被告とした場合には,役員に対する訴えは被告適格を欠くものとして却下される」という肢は誤りです。筆界確定の訴えの当事者適格は、その訴えの語で扱います。

共有者の一人は保存行為として不実の登記の抹消を求めることができ、建物の共有者に対する建物収去土地明渡請求は共有者全員を被告にする必要がありません

共同で権利を持つ者や共同で義務を負う者がいるとき、誰が単独で当事者になれるかも当事者適格の問題です。判例は、不動産の共有者の一人が持分に基づいて不実の登記名義人にその登記の抹消を求めることは、妨害排除の請求であり保存行為に属するから、単独で登記の全部の抹消を求めることができるとしました(最判昭和31年5月10日)。「土地の共有者の一人が不実の登記名義を有する者を被告としてその抹消登記手続を求める訴えを提起することはできない」という肢は誤りです。また判例は、土地の所有者が地上建物の共有者である共同相続人に建物収去土地明渡しを求める訴訟は固有必要的共同訴訟ではないとしました(最判昭和43年3月15日)。共有者の義務は不可分債務なので、各自が全部を除去する義務を負い、土地所有者は一人ずつ訴えることができるからです。「建物共有者全員を被告にしなければならない」という肢は誤りです。なお、当事者適格は職権調査事項なので、上告裁判所は原判決が確定した事実に拘束されません(322条)。「上告裁判所は,当事者適格の有無を判断するに当たり,原判決において適法に確定した事実に拘束される」という肢は誤りです。

  • 給付の訴え給付請求権を有すると主張する者が原告、義務者と主張された者が被告です。権利がなければ請求棄却です
  • 訴訟物の権利の訴え提起後の譲渡原告適格は失われません。本案の抗弁か訴訟承継で処理します
  • 遺産確認の訴えと相続分全部の譲渡譲渡した者は当事者適格を失います(最判平成26年2月14日)
  • 法人の代表者の地位の確認法人を被告とします(最判昭和44年7月10日)
  • 株式会社の役員の解任の訴え会社と役員の双方が被告です(会社法855条)
  • 共有不動産の不実登記の抹消共有者の一人が保存行為として単独でできます(最判昭和31年5月10日)
  • 建物共有者に対する建物収去土地明渡し共有者全員を被告にする必要はありません(最判昭和43年3月15日)

会社法855条

前条第一項の訴え(次条及び第九百三十七条第一項第一号ヌにおいて「株式会社の役員の解任の訴え」という。)については、当該株式会社及び前条第一項の役員を被告とする。

民事訴訟法322条

前二条の規定は、裁判所が職権で調査すべき事項には、適用しない。

論文ではこう使う

論文では、当事者適格を、特定の訴訟物について本案判決を求め又は受けるのにふさわしい資格と定義し、誰を当事者とするのが紛争の解決に必要で有意義かという観点で判断すると書きます。給付の訴えは原告の主張で決まるので、問題になるのは確認の訴えと形成の訴え、それに第三者が他人の権利について当事者となる訴訟担当です。法人の内部紛争では、判決の効力を法人に及ぼして紛争を根本的に解決するため法人を被告とすべきだという判例の論理を使います。

試験ではこう問われる

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読んだあとに、民事訴訟法の肢別演習を

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