法人でない社団の当事者能力と財産関係の訴訟(29条)とは
ほうじんでないしゃだんのとうじしゃのうりょくとざいさんかんけいのそしょう
法人でない社団とは、法人格はないものの、団体としての組織をそなえ、多数決の原則が行われ、構成員が変わっても存続し、代表の方法・総会の運営・財産の管理など団体としての主要な点が確定している団体のことです。代表者又は管理人の定めがあれば、その名において訴え、又は訴えられることができます(29条)。
町内会やゴルフクラブの会員団体は、法人ではありませんが、会費を集め、規約に従って活動し、取引の相手方とトラブルになることもあります。こうした団体と争うたびに構成員全員を探し出して訴えるのは現実的ではありません。そこで29条は、代表者の定めがある法人でない社団に、その名で訴え、訴えられる資格を認めました。ただし実体法上は権利能力がないので、団体の財産は構成員全員の総有に属するという民法の考え方と、訴訟での扱いをどう合わせるかが問題になります。
法人でない社団に当たるには、団体としての組織・多数決の原則・構成員が変わっても存続すること・代表の方法や財産の管理など主要な点の確定が必要です
29条は、法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができると定めています。どのような団体が法人でない社団に当たるかについて、判例は、団体としての組織をそなえ、そこには多数決の原則が行なわれ、構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、その組織によって代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定していることを要件としました(最判昭和39年10月15日)。この要件を当てはめて、地方公共団体の区域内の特定地域の住民がその福祉のための事業を目的として結成した任意団体で、区長・評議員等の役員の選出、多数決による役員会と区民総会の運営、財産の管理、事業の内容等について規約を持ち、これに基づいて存続・活動しているものに当事者能力を認めた判例があります(最判昭和42年10月19日)。地方自治法上の行政区画でなくてもかまいません。「普通地方公共団体の区域に属する特定地域の住民により、その福祉のため各般の事業を営むことを目的として結成された任意団体であって、当該地方公共団体の下部行政区画ではなく」から始まる、規約に基づいて存続・活動している団体は当事者能力を有するという肢は正しいです。
固定資産や基本的財産がなくても、活動に必要な収入を得る仕組みと収支を管理する体制があれば、当事者能力が認められます
財産の管理という要件について、団体固有の財産を持っていることが不可欠かが争われました。判例は、預託金会員制のゴルフ場の会員によって組織され会員相互の親睦等を目的とする団体について、財産的側面についていえば、必ずしも固定資産ないし基本的財産を有することは不可欠の要件ではなく、団体として内部的に運営され、対外的に活動するのに必要な収入を得る仕組みが確保され、かつ、その収支を管理する体制が備わっているなど、他の諸事情と併せて総合的に観察し、当事者能力が認められる場合があるとしました(最判平成14年6月7日)。団体として独立した社会活動をしているかが本質であり、財産の有無はその判断材料の一つにすぎないからです。「法人でない社団が,団体としての固定資産ないし基本的財産を有しない場合,当該団体に当事者能力が認められる余地はない」という肢も、ゴルフ場の会員の団体は収入の仕組みと収支管理の体制があっても「固定資産ないし基本的財産がない限り、当事者能力を有しない」という肢も誤りです。
社団の財産は構成員全員の総有に属するので、社団自身の所有権の確認は認められませんが、総有権の確認を求める原告適格はあります
29条で当事者能力が認められても、社団が実体法上の権利の主体になるわけではありません。判例は、権利能力のない社団である門中が、土地が自分の所有に属することの確認を求めた事案で、社団自体は財産について私法上所有権等の主体となることができないから、その請求はすでに失当であるとして請求を棄却しました(最判昭和55年2月8日)。訴えは却下されずに棄却される点に注意が要ります。「ある土地が法人でない社団の所有に属することの確認を求める訴えにつき,当該団体が原告となり認容判決を得る余地はない」という肢は正しいです。これに対し、構成員全員の総有に属することの確認であれば、社団が原告になることができます。判例は、村落住民が入会団体を形成し、それが権利能力のない社団に当たる場合には、当該入会団体は、構成員全員の総有に属する不動産につき、これを争う者を被告とする総有権確認請求訴訟を追行する原告適格を有するとしました(最判平成6年5月31日)。入会権は団体的色彩の濃い共同所有の権利形態なので、構成員全員でなく団体に訴訟を追行させるのが紛争の解決に有意義だからです。ただし、代表者が団体を代表して訴訟を追行するには、規約等で不動産の処分に必要とされる総会の議決等による授権が要るとされました。「一定の村落住民が入会団体を形成し、それが権利能力のない社団に当たる場合には」総有権確認請求訴訟の原告適格を有するという肢は正しく、「ある土地が法人でない社団の構成員全員の総有に属することの確認を求める訴えにつき,当該団体が原告となる余地はない」という肢は誤りです。
総有不動産の登記は代表者の個人名義で行い、新代表者も社団自身も、その名義への移転登記を求めて原告になることができます
社団の名義では登記ができないので、構成員全員の総有に属する不動産は代表者の個人名義などで登記されます。判例は、社団の構成員の総有に属する不動産は構成員全員のために信託的に代表者個人の所有とされるものであるから、代表者が交代すると、新代表者は旧代表者に対し、自己の個人名義への所有権移転登記手続を求めることができるとしました(最判昭和47年6月2日)。「法人でない社団の旧代表者の個人名義で登記されている不動産に関し,代表者の交代に伴い,新代表者の個人名義への所有権移転登記手続を求める訴えにつき,新代表者が原告となる余地はない」という肢は誤りです。さらに判例は、権利能力のない社団は、構成員全員に総有的に帰属する不動産について、その所有権の登記名義人に対し、当該社団の代表者の個人名義に所有権移転登記手続をすることを求める訴訟の原告適格を有するとしました(最判平成26年2月27日)。実質的には社団が有している不動産なので、社団に訴訟を追行させて本案判決を受けさせるのが簡明で、関係者の意識にも合うからです。「当該社団の代表者の個人名義に所有権移転登記手続をすることを求める訴訟の原告適格を有する」という肢は正しく、「原告適格を有しない」という肢は誤りです。反対に、社団を債務者とする金銭債権の債務名義を持つ債権者は、代表者など第三者の名義で登記された総有不動産について、その不動産が社団の構成員全員の総有に属することを確認する確定判決などの文書を添えて、社団を債務者とする強制執行を申し立てることができるとされています(最判平成22年6月29日)。「当該団体の代表者の個人名義で登記された不動産に対して強制執行をする余地はない」という肢は誤りです。
- 社団自身の所有権の確認を求める当事者能力はあるので却下ではなく、所有権の主体になれないので請求棄却です(最判昭和55年2月8日)
- 入会団体が構成員全員の総有権の確認を求める原告適格があります。代表者には総会の議決等による授権が要ります(最判平成6年5月31日)
- 新代表者が旧代表者に自己の個人名義への移転登記を求める新代表者が原告になれます(最判昭和47年6月2日)
- 社団が登記名義人に代表者の個人名義への移転登記を求める社団に原告適格があります(最判平成26年2月27日)
- 社団に対する債務名義で代表者名義の総有不動産に執行する総有を確認する確定判決等を添えて、社団を債務者として申し立てられます(最判平成22年6月29日)
民事訴訟法29条
法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができる。
最判昭和39年10月15日
権利能力のない社団といいうるためには、団体としての組織をそなえ、そこには多数決の原則が行なわれ、構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、しかしてその組織によって代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているものでなければならない
最判平成26年2月27日
権利能力のない社団は、構成員全員に総有的に帰属する不動産について、その所有権の登記名義人に対し、当該社団の代表者の個人名義に所有権移転登記手続をすることを求める訴訟の原告適格を有する
論文ではこう使う
論文では三段で書きます。第一に、団体が29条の法人でない社団に当たるかを、昭和39年判決の要件に事実を当てはめて判断します。財産の点は、固定資産がなくても収入の仕組みと収支管理の体制があればよいとした平成14年判決を使います。第二に、当事者能力が認められても権利の主体にはならないので、請求の立て方を確認します。社団の所有権確認は棄却されるので、構成員全員の総有権の確認や、代表者の個人名義への移転登記を求める形にします。第三に、社団が当事者として受けた判決の効力が構成員に及ぶかを、訴訟担当として構成するか、社団と構成員の特殊な関係から説明するかを示して論じます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。