法定訴訟担当の類型と任意的訴訟担当(差押債権者の取立訴訟・破産管財人・業務執行組合員・支配人との区別)とは
ほうていそしょうたんとうのるいけいとにんいてきそしょうたんとう
訴訟担当とは、権利義務の帰属主体に代わって、第三者が自己の名で当事者となり、その判決の効力が本人に及ぶ場合のことです(115条1項2号)。法定訴訟担当とは法律の規定によるもの、任意的訴訟担当とは本人の授権によるものをいいます。
本来、訴訟の当事者になるのは、争いになっている権利や義務の持ち主です。ところが、会社が破産すれば会社の財産について訴訟をするのは破産管財人ですし、建設工事の共同企業体では代表の会社が全員の分をまとめて訴えることがあります。このように、権利義務の主体に代わって第三者が自分の名で当事者となることを訴訟担当といいます。法律が認める法定訴訟担当と、本人の授権による任意的訴訟担当があり、後者は弁護士代理の原則をすり抜ける道具にならないよう歯止めがかかっています。
訴訟担当には、法律の規定による法定訴訟担当と、本人の授権による任意的訴訟担当があり、担当者の受けた判決の効力は本人に及びます
訴訟担当は、権利義務の帰属主体に代わって、又はこれと並んで、第三者が当事者適格を持つ場合です。担当者は代理人ではなく当事者そのものであり、確定判決の効力は、当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人に及びます(115条1項2号)。法定訴訟担当には、担当者自身の利益のためのものとして、債権者代位訴訟の債権者、金銭債権を差し押さえた差押債権者が第三債務者に対して提起する取立訴訟(民事執行法155条1項・157条)の原告などがあります。「債務者の債権を差し押さえた差押債権者は,第三債務者に対する取立訴訟の原告となることができる」という肢は正しいです。もう一つは、一定の職務にある者に当事者適格が与えられる職務上の当事者で、破産財団に関する訴訟の破産管財人、遺言執行者、人事訴訟で被告とすべき者が死亡した場合の検察官(人事訴訟法12条3項)がこれに当たります。「認知の訴えにおいて,被告とすべき父が死亡している場合には,検察官をその訴えの被告としなければならない」という肢は正しいです。任意的訴訟担当の典型は、法律に定めのある選定当事者(30条)です。
- 担当者のための法定訴訟担当債権者代位訴訟の債権者、取立訴訟の差押債権者(民事執行法157条)、株主代表訴訟の株主
- 職務上の当事者破産管財人、遺言執行者、人事訴訟で被告とすべき者が死亡した後の検察官(人事訴訟法12条3項)
- 法律に定めのある任意的訴訟担当選定当事者(30条)
- 明文のない任意的訴訟担当業務執行組合員(最大判昭和45年11月11日)、債券管理会社(最判平成28年6月2日)
職務上の当事者が解任などで資格を失えば訴訟手続は中断しますが、支配人は訴訟代理人なので、その辞任では中断しません
一定の資格を有する者で自己の名で他人のために訴訟の当事者となるものが、死亡その他の事由で資格を失ったときは、訴訟手続は中断し、同一の資格を有する者が受け継ぎます(124条1項5号)。破産管財人が解任されれば、この資格の喪失に当たるので、訴訟代理人がいなければ訴訟手続は中断します。「当事者である破産管財人が解任された場合」は、訴訟手続が中断しない場合には当たりません。これに対し、支配人は、会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を持ちます(会社法11条1項)が、会社の名で代理人として訴訟をする法令上の訴訟代理人であって、当事者ではありません。「株式会社の支配人は,当該株式会社のために,その事業に関する訴訟の当事者となることができる」という肢は誤りです。支配人の辞任は訴訟代理人の代理権の消滅にすぎないので、訴訟手続は中断しません。「当事者が支配人によって訴訟追行している場合において,当該支配人が辞任したとき」は、訴訟手続が中断しない場合に当たります。
明文のない任意的訴訟担当は、弁護士代理の原則や訴訟信託の禁止を回避・潜脱するおそれがなく、かつ、これを認める合理的必要がある場合に許されます
本人の授権さえあれば誰でも訴訟担当者になれるとすると、弁護士でない者が他人の訴訟を引き受けて弁護士代理の原則(54条1項)をすり抜けたり、訴訟行為をさせることを主たる目的とする信託を禁じた信託法10条の趣旨を損なったりします。大法廷判決は、選定当事者の制度は任意的訴訟担当が許される原則的な場合を示すにとどまり、それ以外でも、これらの制限を回避、潜脱するおそれがなく、かつ、これを認める合理的必要がある場合には許されるとしました(最大判昭和45年11月11日)。そのうえで、民法上の組合で、組合規約に基づいて自己の名で組合財産を管理し対外的業務を執行する権限とともに訴訟追行の権限を与えられた業務執行組合員は、組合財産に関する訴訟について自己の名で訴訟を追行する当事者適格を有するとしました。「民法上の組合において,組合規約により自己の名で組合財産を管理し対外的業務を執行する権限を与えられた組合員は,組合財産に関する訴訟の当事者となることができる」という肢も、業務執行組合員は「特段の事情のない限り、組合財産に関する訴訟の当事者適格を有する」という肢も正しいです。その後、円建て外国国債の債券管理会社が債券保有者のために償還を求めて訴えた事案でも、同じ枠組みで任意的訴訟担当が認められました(最判平成28年6月2日)。他方、労働組合が組合員の労働契約上の権利について訴訟を追行することは否定した判例があります。
民事訴訟法115条1項
確定判決は、次に掲げる者に対してその効力を有する。(略)二 当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人
民事執行法155条1項
金銭債権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から一週間を経過したときは、その債権を取り立てることができる。
最大判昭和45年11月11日
これらの制限を回避、潜脱するおそれがなく、かつ、これを認める合理的必要がある場合
論文ではこう使う
論文の定番は、明文のない任意的訴訟担当の可否です。当事者適格は訴訟物について管理処分権を持つ者にあるのが原則であることを示し、選定当事者以外にも本人の授権による訴訟担当が許されるかを論じます。弁護士代理の原則(54条1項)と訴訟信託の禁止(信託法10条)の趣旨から無制限には許されないとしたうえで、判例の基準(制限の回避・潜脱のおそれがなく、合理的必要があること)を立て、担当者が本人の権利関係について固有の利益や管理権限を持っているか、授権の経緯が明確か、弁護士による代理で足りないか、を事実から拾って当てはめます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。