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用語集 / 民事訴訟法 / 選定当事者

選定当事者(30条)とは

せんていとうじしゃ

民事訴訟法 当事者

選定当事者とは、共同の利益を有する多数の者が、その中から全員のために原告又は被告となるべき者として選定した者のことです(30条)。選定した者を選定者といい、選定当事者は訴訟代理人ではなく自ら当事者として訴訟を追行し、その判決の効力は選定者に及びます。

同じ欠陥商品で被害を受けた50人が、それぞれ原告となって訴えると、期日の呼出しも書面の送達も50人分になり、一人が亡くなるたびに手続が止まります。そこで民事訴訟法は、共同の利益を有する多数の者が、その中から代表として原告や被告になる者を選び、残りの者はその判決に従うという選定当事者の制度を置きました。選ばれた者は代理人ではなく当事者そのものなので、和解なども自分の判断ででき、選んだ側がその権限を縛ることもできません。

市民会館の会議室の場面。前方のホワイトボードに「被害者50名 → 選定当事者3名」と書かれ、席に多くの男女(札「選定者」)が座って手を挙げている。前に三人(札「選定当事者」)が並んで立っている。先生が弁護士役(札「先生」)で横に立ち、「選定

共同の利益を有する多数の者は、訴訟の前でも後でも、その中から全員のために原告又は被告となる者を選定でき、共同の利益とは権利が同一の原因に基づき主要な攻撃防御方法が共通であることです

30条1項は、共同の利益を有する多数の者で29条の法人でない社団等に当たらないものは、その中から、全員のために原告又は被告となるべき一人又は数人を選定することができると定めています。判例は、訴訟の目的である権利が全員について同一の事実上及び法律上の原因に基づき、当事者双方の主要な攻撃防御の方法が全員について共通であるときは、共同の利益を有する多数者に当たるとしました(最判昭和33年4月17日)。「訴訟の目的である権利が同一の事実上及び法律上の原因に基づき,かつ,主要な攻撃防御方法が共通である複数の者は」共同の利益を有する多数の者に当たるという肢も、選定者と選定当事者はともに共同の利益を有する多数の者に属することが必要で、同様の場合に共同の利益が認められるという肢も正しいです。選定の時期に制限はないので、訴えの提起前に選定して選定当事者が全員のために訴えを提起することもできます。「選定当事者の選定は,訴訟の係属前においてもすることができる」という肢は正しいです。訴訟の係属後に選定したときは、他の当事者は当然に訴訟から脱退します(30条2項)。「他の原告は,当然に訴訟から脱退する」という肢も、「選定者は,脱退のための行為をしなくとも,当該訴訟から脱退する」という肢も正しいです。固有必要的共同訴訟の共同訴訟人の一部がその中から選定当事者を選定することも、選定者に判決の効力が及ぶので許されます。「固有必要的共同訴訟の係属中において,共同訴訟人の一部がその中から選定当事者を選定することは許される」という肢は正しいです。選定は書面で証明しなければなりません(民事訴訟規則15条)。「選定当事者の選定は,書面で証明しなければならない」という肢は正しいです。

係属中の訴訟の当事者と共同の利益を有する第三者は、その当事者を自分のためにも選定でき、選定当事者はその者のための請求を追加できます

30条3項は、係属中の訴訟の原告又は被告と共同の利益を有する者で当事者でないものは、その原告又は被告を自己のためにも原告又は被告となるべき者として選定することができると定めています。自分で訴えを起こして併合を求める必要はありません。「自ら訴えを提起して係属中の訴訟との併合を求め,共同訴訟関係を成立させなければならない」という肢は誤りです。原告を選定したときは、選定当事者は口頭弁論の終結に至るまでその選定者のために請求の追加をすることができ(144条1項)、被告を選定したときは、原告が口頭弁論の終結に至るまでその選定者に係る請求の追加をすることができます(144条2項)。「選定当事者は,口頭弁論の終結に至るまで,選定者となった当該第三者のために請求の追加をすることができる」という肢、「選定当事者は,その選定者のために請求の追加をすることができる」という肢、被告が選定されたときに「原告は,口頭弁論の終結に至るまで,その選定者に係る請求の追加をすることができる」という肢は、いずれも正しいです。

選定当事者は訴訟代理人ではなく当事者なので、和解や取下げも特別の授権なしにでき、選定のときに権限を制限しても効力がありません

判例は、選定当事者は訴訟代理人ではなく当事者であるから、訴訟代理人について特別の委任を要求する規定(現在の55条2項)の適用を受けず、訴訟上の和解を含むいっさいの訴訟行為を特別の委任なしに行うことができ、選定行為においてもその権限を制限することはできないとしました(最判昭和43年8月27日)。たとえ和解を禁じるなどの制限を付けて選定しても、制限の部分が無効になり、無制限の選定として効力を生じます。「選定当事者は,選定者の特別の授権がなければ,選定者のために訴えの取下げ,和解並びに請求の放棄及び認諾をすることができない」という肢も、和解を禁止する制限をしたのに選定当事者が和解をした場合に「当該和解は無効である」という肢も誤りです。同じく当事者なので弁護士代理の原則(54条1項)も及ばず、弁護士でない者を選定当事者にするのに裁判所の許可は要りません。「弁護士以外の者を選定当事者に選定する場合であっても,裁判所の許可は必要でない」という肢は正しいです。選定当事者が受けた確定判決の効力は選定者に及びます(115条1項2号)。「選定当事者が当事者となった訴訟の確定判決の既判力は,選定者にも及ぶ」という肢は正しいです。

選定者はいつでも選定を取り消せますが、取消しや変更は相手方に通知しなければ効力を生じません

選定者は、選定を取り消し、又は選定当事者を変更することができます(30条4項)。時期の制限はありません。「選定者は,いつでも選定を撤回することができる」という肢は正しいです。もっとも、法定代理権の消滅の通知の規定(36条1項)が選定の取消しと変更に準用される(36条2項)ので、本人又は選定当事者から相手方に通知しなければ効力を生じません。誰が訴訟を追行するのかを相手方にはっきりさせるためです。「選定者が選定当事者の選定を取り消した場合であっても、相手方に通知するまでは、取消しの効力は生じない」という肢は正しく、選定者が裁判所に書面で証明しなければ取消しの効力は生じないという肢は誤りです。

選定当事者の一部が死亡しても残りの者が全員のために訴訟を続けるので中断せず、全員が死亡したときに初めて中断し、選定者全員か新たな選定当事者が受け継ぎます

選定当事者のうち死亡その他の事由で資格を失った者があるときは、他の選定当事者が全員のために訴訟行為をすることができます(30条5項)。そのため、一部の者の死亡では訴訟手続は中断せず、他の選定当事者が資格を失うこともありません。「その一部が訴訟係属中に死亡したときは,他の選定当事者は,その資格を失う」という肢も、「複数の選定当事者のうち一部の者が死亡したときは,訴訟手続は中断する」という肢も誤りで、複数の選定当事者のうちの一人が死亡した場合は訴訟手続が中断しない場合に当たります。選定当事者の全員が死亡その他の事由で資格を失ったときは訴訟手続が中断し、選定者の全員又は新たな選定当事者が受け継ぎます(124条1項6号)。訴訟代理人がいなければ中断するので、「訴訟代理人が選任されておらず,かつ,他の選定当事者がいないときは,訴訟手続は中断する」という肢は正しく、選定当事者の全員が死亡した場合は訴え却下の判決をすべき場合に当たりません。選定当事者の地位は選定者の信頼に基づくものなので、相続人には承継されません。「選定当事者が訴訟の係属中に死亡したときは,その相続人が選定当事者の地位を承継する」という肢は誤りです。反対に、選定者の全員が死亡しても、選定当事者が訴訟を追行しているので中断しません。「訴訟代理人のない選定当事者が追行する訴訟の係属中に選定者の全員が死亡したときは、訴訟手続は中断する」という肢は誤りです。

法廷の場面。原告席に二人(札「選定当事者B」「選定当事者C」)が座り、空いた席に喪章付きの札「選定当事者A(死亡)」が置かれている。被告席に男性(札「被告」)。先生が裁判官役(札「裁判所」)で裁判官席に座っている。先生の吹き出し「選定当事者
  • 要件共同の利益を有する多数の者で、法人でない社団等に当たらないこと(30条1項)。同一の原因に基づき主要な攻撃防御方法が共通であること
  • 時期訴訟の係属前でも後でもできます。係属後の選定で他の当事者は当然に脱退します(30条2項)
  • 係属中の当事者の選定当事者でない者も選定でき、請求の追加で審判の対象になります(30条3項・144条)
  • 権限和解・取下げ・放棄認諾も特別の授権なしにでき、制限は無効です(最判昭和43年8月27日)。裁判所の許可は要りません
  • 取消し・変更いつでもできますが、相手方への通知で効力を生じます(36条2項)
  • 死亡一部の死亡では中断しません(30条5項)。全員の死亡で中断します(124条1項6号)。相続人は承継しません。選定者全員の死亡では中断しません
  • 判決効選定者に及びます(115条1項2号)

民事訴訟法30条1項

共同の利益を有する多数の者で前条の規定に該当しないものは、その中から、全員のために原告又は被告となるべき一人又は数人を選定することができる。

民事訴訟法30条5項

選定当事者のうち死亡その他の事由によりその資格を喪失した者があるときは、他の選定当事者において全員のために訴訟行為をすることができる。

民事訴訟法36条2項

前項の規定は、選定当事者の選定の取消し及び変更について準用する。

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