法人の代表者(37条:訴状の記載・送達・当事者尋問・表見法理・職務代行者・代表権消滅の通知)とは
ほうじんのだいひょうしゃ
法人の代表者とは、法人に代わって訴訟行為をし、又は受ける者のことで、株式会社では代表取締役などがこれに当たります。37条により法定代理及び法定代理人の規定が準用されるので、訴状・判決書への記載、送達、尋問の方式、代表権消滅の通知、追認と補正は法定代理人と同じに扱われます。
会社を訴えるとき、会社という組織そのものは法廷で話すことも訴状を受け取ることもできません。実際に訴訟行為をするのは代表取締役などの代表者です。本人に代わって訴訟をするという点で、代表者は未成年者の親権者と似た立場にあります。そこで37条は、法定代理と法定代理人の規定を法人の代表者に準用しました。訴状と判決書に代表者を書くこと、代表者を当事者尋問の方式で尋問すること、代表権の消滅には相手方への通知が要ることなどは、すべてこの準用から出てきます。
法人の代表者には法定代理人の規定が準用されるので、訴状と判決書に記載し、欠けていれば裁判長が補正を命じ、補正がなければ訴状を却下します
37条は、この法律中法定代理及び法定代理人に関する規定は、法人の代表者及び法人でない社団又は財団の代表者又は管理人について準用すると定めています。訴状には当事者及び法定代理人を記載しなければならない(134条2項1号)ので、法人が当事者のときは代表者が訴状の必要的記載事項になり、記載があるかどうかは訴状審査の対象です。「当事者が法人である場合において,訴状にその代表者の記載があるかどうかは,訴状審査の対象となる」という肢は正しいです。記載がなければ、裁判長は相当の期間を定めて補正を命じ、補正されなければ命令で訴状を却下します(137条1項・2項)。補正命令を経ずにいきなり却下することはできません。「株式会社の代表者の記載は訴状の必要的記載事項であり,これを欠く場合には,補正されない限り,訴状が却下される」という肢も、代表者の記載がない場合は相当の期間を定めて補正を命じた上でなければ訴状を却下できないという肢も正しいです。電子判決書にも当事者及び法定代理人を記録する(252条1項5号)ので、「判決書には,株式会社の代表者を記載しなければならない」という肢も正しいです。
法人への送達は代表者に宛ててし、代表者の住所等のほか法人の営業所や事務所でもすることができます
訴訟無能力者に対する送達は法定代理人にする(99条1項)という規定が準用されるので、株式会社に対する送達はその代表者に宛ててします。「株式会社に対する送達は,その代表者に対してされる」という肢は正しいです。送達の場所は、送達を受けるべき者の住所、居所、営業所又は事務所が原則ですが、法定代理人に対する送達は本人の営業所又は事務所においてもすることができます(103条1項ただし書)。そのため、会社への送達は代表者の住所等でなくても、会社の営業所や事務所ですることができます。「株式会社に対する送達は,その訴訟において会社を代表すべき者の住所においてしなければ,その効力を有しない」という肢は誤りです。なお、法人の普通裁判籍は主たる事務所又は営業所により、事務所又は営業所がないときは代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まります(4条4項)。「株式会社がその事業を停止し,その事務所又は営業所が存在しなくなったときは,当該株式会社の普通裁判籍は,代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まる」という肢は正しいです。
代表者は当事者尋問の方式で尋問し、代表者がいないときは特別代理人の選任を申し立てられ、唯一の代表者が死亡すれば訴訟手続は中断します
法定代理人の尋問には当事者本人の尋問の規定が準用される(211条)ので、会社を代表する代表取締役も当事者尋問の方式で尋問します。「株式会社を訴訟において代表している代表取締役を尋問するには,当事者本人の尋問の手続によらなければならない」という肢は正しく、代表取締役は証人として出頭し宣誓する義務を負うという肢は誤りです。会社に代表者がいない場合は、35条1項の準用により、会社を訴えようとする者は、遅滞のため損害を受けるおそれがあることを疎明して特別代理人の選任を申し立てることができます。「株式会社に代表者がない場合において,当該株式会社に対し訴えを提起しようとする者は,遅滞のため損害を受けるおそれがあることを疎明して,特別代理人の選任を申し立てることができる」という肢は正しいです。また、法定代理人の死亡は中断事由(124条1項3号)なので、訴訟代理人のいない会社の唯一の代表取締役が死亡すれば訴訟手続は中断します。「Y社の唯一の代表取締役が訴訟係属中に死亡した場合,訴訟手続は中断する」という肢は正しいです。
代表者の交替は相手方に通知しなければ効力を生じず、相手方が交替を知っていても通知が要りますが、代表権の消滅が公知の事実なら通知がなくても効力を生じます
法定代理権の消滅は、本人又は代理人から相手方に通知しなければ効力を生じない(36条1項)という規定も準用されます。代表者が交替しても通知がなければ訴訟手続は当然には中断せず、通知の有無で画一的に処理して手続の安定と明確を図る趣旨です。判例は、法定代理権の消滅について、相手方が消滅の事実を知っているかどうかにかかわらず、通知をしなければ消滅の効力は生じないとしています(大判昭和16年4月5日)。「相手方がその交替の事実を知っている場合には,通知は不要である」という肢は誤りです。もっとも判例は、代表権の消滅が公知の事実である場合には、36条1項の通知があったものと同視し、代表権の消滅は直ちにその効力を生ずるとしました(最判平成19年3月27日)。「その代表権の消滅が公知の事実であるときは,相手方にその旨の通知がなくとも,代表権の消滅があった時点で訴訟手続は中断する」という肢は正しいです。相手方が知っているだけの場合と、世間一般に知られている公知の事実の場合とを区別する必要があります。
登記簿上の代表者に代表権がなかった場合、表見法理は適用されないので、会社は代表権の欠缺を理由に再審の訴えを提起でき、追認があれば訴訟行為は有効になります
原告は通常、商業登記簿に従って被告会社の代表者を訴状に書きます。登記簿上の代表者が実は代表権を持っていなかった場合に、民法109条や会社法354条のような表見法理の規定を使ってそれまでの訴訟行為を有効にできるかが争われてきました。判例は、これらの規定は取引の相手方を保護し取引の安全を図るための規定であるから、取引行為と異なる訴訟手続において会社を代表する権限を有する者を定めるにあたっては適用されないとしました(最判昭和45年12月15日)。表見支配人の規定が裁判上の行為を除いていることも理由に挙げています。そのため、代表権のない者を代表者として進められた訴訟は、代表権を欠いた訴訟として、確定後は再審事由(338条1項3号)になります。「株式会社は,代表権限がなかったことを理由として再審の訴えを提起することはできない」という肢は誤りです。同じ判決は、控訴審で代表権の欠缺が分かっても直ちに訴えを却下するのではなく、第一審に差し戻して訴状の補正や特別代理人の選任をさせるべきだとしています。他方、代表権のない者がした訴訟行為も、代表権のある者が追認すれば行為の時にさかのぼって有効になります(34条2項・37条)。「株式会社の代表権限のない者がした訴訟行為も,代表権がある者の追認があれば,訴訟行為の時にさかのぼってその効力を生じる」という肢は正しいです。
取締役の職務執行停止と職務代行者選任の仮処分が出ていれば、取締役選任決議の無効確認訴訟でも会社を代表するのは職務代行者です
代表取締役の職務の執行を停止し、その職務を代行する者を選任する仮処分が出ると、職務を停止された代表取締役は会社を代表できなくなります。判例は、その取締役を選任した株主総会決議の無効確認を求める本案訴訟でも、被告会社を代表して訴訟を追行するのは職務代行者であって、職務の執行を停止された代表取締役ではないとしました(最判昭和59年9月28日)。決議の無効確認訴訟は会社だけが被告となる訴訟であり、代表取締役が訴訟を追行できるのも会社の代表機関の地位に基づくにすぎず、取締役個人の利益を守るために代表させる理由はないからです。「当該株式会社を代表すべき者は,当該職務を代行する者である」という肢は正しいです。
民事訴訟法37条
この法律中法定代理及び法定代理人に関する規定は、法人の代表者及び法人でない社団又は財団でその名において訴え、又は訴えられることができるものの代表者又は管理人について準用する。
民事訴訟法103条1項
書類の送達は、送達を受けるべき者の住所、居所、営業所又は事務所(以下この款において「住所等」という。)においてする。ただし、法定代理人に対する書類の送達は、本人の営業所又は事務所においてもすることができる。
最判平成19年3月27日
本件のように代表権の消滅が公知の事実である場合には、民訴法37条で準用される同法36条1項所定の通知があったものと同視し、代表権の消滅は、直ちにその効力を生ずると解するのが相当である
論文ではこう使う
論文の定番は、登記簿上の代表者に代表権がなかった場合の処理です。まず37条で法定代理の規定が準用され、代表権のない者による訴訟行為は無効で追認がなければ訴えが不適法になることを示します。そのうえで、表見法理(民法109条・会社法354条・908条など)の適用を否定する判例の立場を、訴訟は取引行為でないこと、表見支配人の規定が裁判上の行為を除いていること、法人の裁判を受ける権利と手続の安定を理由に示し、登記を信頼した原告の保護と公平を重視して適用を肯定する見解と対比します。判例の立場でも、直ちに却下せず補正の機会を与えるべきことを書き添えます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。