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手続のIT化(令和4年改正)と旧規定で出た肢の読み替えとは

てつづきのあいてぃーかときゅうきていででたしのよみかえ

民事訴訟法 民訴の基礎と訴訟の構造

手続のIT化とは、令和4年の民事訴訟法改正により、口頭弁論や弁論準備手続をウェブ会議・電話会議で行えるようにし、判決書・調書・訴訟記録を電子化し、訴えの提起や送達をオンラインでできるようにしたことです。改正前の規定を前提にした過去問の肢は、現行の条文で読み替える必要があります。

以前は、裁判に出るには裁判所へ足を運ぶのが当然で、電話で手続に加わるにも誰か一人は法廷にいる必要がありました。令和4年の改正で、口頭弁論はウェブ会議で、弁論準備手続は電話会議でも、当事者が誰も裁判所に来ないまま進められるようになり、判決書や記録も電子データになりました。過去問の多くは改正前に出題されているので、肢の前提になっている条文がいまも同じかを確かめてから正誤を考える必要があります。

裁判所の準備手続室(ラウンドテーブル)の場面。テーブルの奥に先生が裁判官役(札「受命裁判官」)として座り、テーブルの上に電話会議用のスピーカーと、ウェブ会議の画面が映ったノートパソコンが置かれている。画面には原告代理人(札「原告」)、スピー

令和4年改正は期日・尋問・和解・判決書・送達・記録を電子化し、過去問の一部はいまの条文で結論が変わります

令和4年改正(令和5年から段階的に施行され、現在は全面施行済み)は、裁判所に出頭することを前提にしていた規定を広く改めました。口頭弁論の期日は、相当と認めるときに当事者の意見を聴いてウェブ会議で行うことができ(87条の2第1項)、審尋の期日は電話会議でも行えます(同条2項)。弁論準備手続の電話会議から当事者の一方の出頭の要件がなくなり(170条3項)、書面による準備手続を受命裁判官に行わせられるようになりました(176条の2)。判決書は電子判決書に(252条)、調書は電子調書になり、手数料を納めないときの補正は裁判所書記官の処分になり(137条の2)、公示送達はインターネットによる公開と裁判所の掲示場の掲示等を組み合わせて行います(111条)。過去問の肢のうち「遠隔の地に居住」「当事者の一方が期日に出頭した場合に限る」「判決書の原本」「裁判長が補正を命じる(手数料)」を決め手にするものは旧規定を前提にしています。

  • 弁論準備手続の電話会議旧規定は当事者の一方が期日に出頭した場合に限っていましたが、現在は相当と認めるとき当事者の意見を聴いて行え、双方とも出頭しなくてよくなりました(170条3項)
  • 口頭弁論ウェブ会議で行えます(87条の2第1項)。音声だけの電話会議は審尋の期日に限られます(同条2項)
  • 書面による準備手続旧規定は裁判長が行い、高等裁判所に限り受命裁判官に行わせられましたが、現在は地方裁判所でも受命裁判官に行わせられます(176条の2)
  • 和解条項案の書面受諾旧規定は一方が出頭して受諾することが必要でしたが、現在は当事者双方が出頭困難なときも、日時を定めた和解条項案を双方が書面で受諾すれば、その日時に和解が調ったものとみなされます(264条2項)
  • 映像による尋問旧規定は証人が遠隔の地に居住するときなどに限っていましたが、現在は出頭困難・圧迫のおそれ・当事者に異議がない場合で相当と認めるときにできます(204条)
  • 判決書判決書の原本は電子判決書になり、言渡しは電子判決書に基づいてします(252条・253条)
  • 手数料不納の補正旧規定は裁判長の補正命令でしたが、現在は裁判所書記官が納付を命じる処分をし、納付しなければ裁判長が命令で訴状を却下します(137条の2)
  • 公示送達旧規定は裁判所の掲示場への掲示でしたが、現在はインターネットで閲覧できる状態に置く措置もとり、措置を開始した日から2週間で効力を生じます(111条・112条)

弁論準備手続の電話会議は、いまは当事者双方が出頭しなくても行え、関与した当事者は出頭したものとみなされます

旧170条3項はただし書で、電話会議による弁論準備手続を「当事者の一方がその期日に出頭した場合に限る」としていました。現行の170条3項は、裁判所が相当と認めるとき当事者の意見を聴いて電話会議で期日の手続を行えるとし、ただし書を削りました。「電話会議によって弁論準備手続の期日における手続を行うことができるのは,当事者の一方が期日に出頭した場合に限られる」という肢は、出題当時は正しいとされましたが、現在は誤りです。逆に「当事者双方が期日に出頭することができない場合であっても,裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって,期日における手続を行うことができる」という肢は、出題当時は誤りとされましたが、現在は正しいです。「弁論準備手続の期日においては必ず当事者の一方が裁判所に出頭しなければならないが,書面による準備手続の協議においてはいずれの当事者も裁判所に出頭しなくともよい」という肢も、出題当時は正しいとされましたが、現在は前段が成り立たないので誤りです。電話会議で関与した当事者は期日に出頭したものとみなされるので(170条4項)、その期日で訴えを取り下げることも和解をすることもできます。「期日に出頭していない原告は,訴えを取り下げることはできない」という肢も、「当該期日において和解をすることができない」という肢も誤りで、「当事者の一方がその期日に出頭していない場合であっても,いわゆる電話会議システムを利用する方法によって和解をすることができる」という肢は正しいです。書面による準備手続では電話会議で当事者双方と協議できる(176条2項)ので、「書面による準備手続においては,いわゆる電話会議システムを利用することができない」という肢は誤りですが、協議は期日ではないので口頭で和解を成立させることはできません。「弁論準備手続期日においては当事者双方が口頭により訴訟上の和解をすることができるが,書面による準備手続の協議においてはすることができない」という肢は正しいです。他方、準備的口頭弁論は口頭弁論なので、音声だけの電話会議では行えず、ウェブ会議によることになります(87条の2)。「準備的口頭弁論においては,いわゆる電話会議システムの方法を利用することはできない」という肢は今も正しく、「準備的口頭弁論と弁論準備手続のいずれにおいても,当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認める場合には,当事者の一方が期日に出頭したときに限り」電話会議で手続を行えるとする肢は、準備的口頭弁論について電話会議を認める点でも、弁論準備手続に一方の出頭を求める点でも誤りです。

板書の図解。黒板を左右に分け、左の見出し「改正前」、右の見出し「いま」。行ごとに、「弁論準備手続の電話会議:一方の出頭が必要 → 双方不出頭でも可」「書面による準備手続:裁判長(高裁のみ受命可)→ 受命裁判官にも可」「和解条項案の書面受諾:

書面による準備手続は受命裁判官にも行わせられ、和解条項案の書面受諾は当事者双方が出頭困難でも使えるようになりました

旧176条1項は「書面による準備手続は、裁判長が行う。ただし、高等裁判所においては、受命裁判官にこれを行わせることができる」と定めていました。現行の176条の2第1項は、裁判所は受命裁判官に書面による準備手続を行わせることができるとし、地方裁判所と高等裁判所の区別をなくしました。「地方裁判所においては,弁論準備手続及び書面による準備手続のいずれであっても,受命裁判官が手続を主宰することができる」という肢は、出題当時は誤りとされましたが、現在は正しいです。和解条項案の書面による受諾も変わりました。旧264条は、出頭困難な当事者の一方が書面で受諾し、他方が期日に出頭して受諾したときに和解が調ったものとみなす制度だけでした。現行の264条は、この1項に加えて2項で、当事者双方が出頭することが困難と認められる場合に、裁判所等が和解が成立すべき日時を定めて示した和解条項案を双方が書面で受諾し、その日時が経過したときは、その日時に和解が調ったものとみなすとしました。「当事者双方が,あらかじめ裁判所から提示された和解条項案を受諾する旨の書面を提出し,口頭弁論の期日に出頭しないときは,裁判所は,当事者間に和解が調ったものとみなすことができる」という肢は、出題当時は一方の出頭が必要だったので誤りでした。現在は双方の書面受諾による和解の途がありますが、要件は双方の出頭困難と日時を定めた和解条項案の提示であり、日時の経過で当然に和解が調ったとみなされるので、期日に欠席したことを捉えて裁判所がみなす制度ではありません。

証人・当事者本人・鑑定人の映像による尋問は、遠隔地居住に限らず条文の場合に当たり相当と認めるときにできます

現行の204条は、証人の住所・年齢・心身の状態などにより受訴裁判所に出頭することが困難な場合、圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがある場合、当事者に異議がない場合のいずれかで、相当と認めるときに、映像と音声の送受信による方法で証人を尋問できるとしています。旧規定は証人が遠隔の地に居住するときなどに限っていましたが、遠隔地に住んでいて出頭が困難なときは今も1号に当たります。「証人が遠隔の地に居住するときには,映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって,証人の尋問をすることができる」という肢は正しく、「証人尋問は,映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によってすることはできない」という肢は誤りです。204条は当事者尋問に準用される(210条)ので、「テレビ会議によって当事者本人を尋問することはできない」という肢も誤りです。鑑定人に口頭で意見を述べさせる場合も、相当と認めるときは映像と音声の送受信による方法によれます(215条の3)。「テレビ会議によって鑑定人に口頭で意見を述べさせることができるのは,鑑定人が遠隔の地に居住している場合に限られる」という肢も、「通話をすることができる方法によっては、鑑定人に口頭で意見を述べさせることはできない」という肢も誤りです。少額訴訟では、相当と認めるときは電話会議で証人を尋問できる(372条3項)ので、「少額訴訟においては,電話会議によって証人を尋問することができる」という肢は正しいです。

判決書は電子判決書になり、手数料不納の補正は裁判所書記官の処分になり、公示送達はインターネットの措置と組み合わせて行います

判決の言渡しをするときは電子判決書を作成し(252条1項)、言渡しは電子判決書に基づいてします(253条1項)。言渡しの前に作成しておく必要があるので、「判決書の原本は,判決の言渡し後に作成することもできる」という肢は、旧規定でも現行法でも誤りです。被告が原告の主張した事実を争わず何らの防御方法も提出しない場合などに原告の請求を認容するときは、電子判決書に基づかないで言い渡すことができ、裁判所書記官に電子調書へ要旨を記録させます(254条)。「判決書の原本に基づかないですることができる」という肢は、いまは電子判決書と読み替えて正しく、その際に当事者の意見を聴かなければならないとする肢は誤りです。手数料を納めない場合、出題当時は裁判長が相当の期間を定めて補正を命じましたが、現在は裁判所書記官が相当の期間を定めて納付を命じる処分をし(137条の2第1項)、処分への異議は告知を受けた日から1週間の不変期間内にします(同条3項)。期間内に納付しないときに初めて裁判長が命令で訴状を却下するので(同条6項)、「原告が,訴えの提起の手数料を納付しない場合,直ちに訴状を却下することができる」という肢は今も誤りです。最決平成27年12月17日は、手数料の納付を命じられた者が期間内に納付しなくても、却下命令が確定する前に納付すれば不納付の瑕疵は補正されるとしました。この判例の考え方から、「訴状却下命令が発せられる前にこれを納付したときは、裁判長は、訴状を却下することはできない」という肢は正しいです。公示送達は、裁判所書記官が申立てにより行い(110条1項)、裁判長の許可は要りません。現在は、送達すべき書類を保管していつでも交付する旨などをインターネットで閲覧できる状態に置き、あわせて裁判所の掲示場への掲示等をし(111条)、措置を開始した日から2週間を経過すると効力を生じますが、同じ当事者への2回目以降の公示送達は翌日に効力を生じます(112条1項)。「公示送達は、申立てにより、裁判長の許可の裁判を得て、裁判所書記官が行う」という肢も、2回目の判決の公示送達も掲示から2週間で効力を生じるとする肢も誤りです。なお、管轄の合意を電磁的記録でしたときは書面でしたものとみなされ(11条3項)、ウェブ上の申込みフォームによる合意も有効です。

裁判所書記官室の受付の場面。カウンターの奥に女性(札「裁判所書記官」)がパソコンに向かい、画面に「手数料納付命令(処分)」と表示されている。カウンターの手前に男性(札「原告」)が訴状を持って立っている。奥の部屋の扉に「裁判長」の札があり、先

民事訴訟法170条3項

裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、弁論準備手続の期日における手続を行うことができる。

民事訴訟法170条4項

前項の期日に出頭しないで同項の手続に関与した当事者は、その期日に出頭したものとみなす。

民事訴訟法87条の2第1項

裁判所は、相当と認めるときは、当事者の意見を聴いて、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方が映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、口頭弁論の期日における手続を行うことができる。

民事訴訟法264条2項

当事者双方が出頭することが困難であると認められる場合において、当事者双方があらかじめ裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官から和解が成立すべき日時を定めて提示された和解条項案を受諾する旨の書面を提出し、その日時が経過したときは、その日時に、当事者間に和解が調ったものとみなす。

民事訴訟法137条の2第1項

民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)の規定に従い訴えの提起の手数料を納付しない場合には、裁判所書記官は、相当の期間を定め、その期間内に当該手数料を納付すべきことを命ずる処分をしなければならない。

試験ではこう問われる

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この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。

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