裁判の種類(判決・決定・命令)とは
さいばんのしゅるい
裁判の種類とは、民事訴訟の裁判を、誰が裁判するかと手続の重さで判決・決定・命令の3つに分けたものです。判決と決定は裁判所の裁判で、命令は裁判長・受命裁判官・受託裁判官などの裁判官の裁判です。
裁判所の判断には、訴えに答える重い判断から、期日の変更や移送のような手続の途中の判断まで、いろいろな重さのものがあります。全部を法廷で言い渡す判決で決めていたら、訴訟がいつまでも進みません。そこで民事訴訟法は、事件の中身に答える判断は判決で慎重に、手続の付随的な判断は決定や命令で簡易迅速にする、という使い分けをしています。誰が裁判をするかでも、裁判所の裁判(判決・決定)と個々の裁判官の裁判(命令)に分かれます。
判決と決定は裁判所がする裁判で、命令は裁判長や受命裁判官などの個々の裁判官がする裁判です
判決と決定は、単独体か合議体かを問わず、裁判機関としての裁判所がする裁判です。両者の違いは主体ではなく手続にあり、判決は原則として口頭弁論を経て言渡しでする重い裁判、決定は口頭弁論を開くかどうかを裁判所が決める簡易な裁判です。これに対し、裁判長・受命裁判官・受託裁判官が、その資格でする裁判を命令といいます。訴状の不備について裁判長がする補正命令と訴状却下命令(137条)が典型です。したがって、「判決は裁判所による裁判であるが,決定は裁判長による裁判である」という肢は、決定の主体を取り違えているので誤りです。条文が「裁判所は、決定で」と書くか「裁判長は、命令で」と書くかで、主体を確かめることができます。
- 判決主体は裁判所です。原則として口頭弁論を経て(87条1項本文)、言渡しで効力を生じ(250条)、不服申立ては控訴・上告です
- 決定主体は裁判所です。口頭弁論を開くかは裁判所が決め(87条1項ただし書)、相当と認める方法の告知で効力を生じ(119条)、不服申立ては抗告です
- 命令主体は裁判長・受命裁判官・受託裁判官です。手続と効力の発生は決定と同じで、不服申立ても抗告です
判決は公開の法廷での言渡しで効力を生じ、決定と命令は相当と認める方法で告知すれば効力を生じます
判決は言渡しによって効力を生じます(250条)。憲法82条1項は判決を公開法廷で行うと定めているので、判決の言渡しは公開の法廷でします。これに対し、決定と命令は相当と認める方法で告知することによって効力を生じます(119条)。期日に口頭で告げる、書面を送付するなど、告知の方法は裁判所の裁量に任されています。決定・命令の対象は手続の付随的な事項が多く、簡易迅速に処理する必要があるからです。「判決は公開の法廷における言渡しによってその効力を生ずるが,決定は相当と認める方法で関係人に告知することによってその効力を生ずる」という肢は正しいです。決定と命令には、その性質に反しない限り判決に関する規定が準用されます(122条)。
決定で完結すべき事件では、口頭弁論を開くかどうかを裁判所が決め、判決にも口頭弁論を経ないでできる場合があります
当事者は、訴訟について、裁判所で口頭弁論をしなければなりません(87条1項本文。必要的口頭弁論)。ただし、決定で完結すべき事件については、口頭弁論をすべきかどうかを裁判所が定めます(同項ただし書。任意的口頭弁論)。口頭弁論を開かないときは、当事者を審尋することができます(同条2項)。決定は口頭弁論を経てもよく、経なくてもよいので、「判決は口頭弁論を経てしなければならないが,決定は口頭弁論を経ないでしなければならない」という肢は誤りです。前半の判決についても例外があり、補正できない不適法な訴えの却下(140条)、補正できない不適法な控訴の却下(290条)、理由のない上告の棄却(319条)は、口頭弁論を経ないで判決ですることができます。いずれも口頭弁論を開いても結論が変わらない場合です。
決定と命令は自己拘束力が弱いので、抗告に理由があると認めれば原裁判所や原裁判長が自ら更正しなければなりません
言い渡した判決は、裁判所自身も撤回・変更できません(判決の自己拘束力)。例外は判決の更正決定と変更の判決に限られ、詳しくは「判決の自己拘束力と更正決定・変更判決」で扱います。これに対し、決定と命令は自己拘束力が弱く、訴訟の指揮に関する決定と命令はいつでも取り消すことができます(120条)。抗告があったときも、原裁判をした裁判所又は裁判長は、抗告を理由があると認めるときは、その裁判を更正しなければなりません(333条)。これを再度の考案といい、抗告裁判所の判断を待たずに原裁判所の段階で誤りを正させる趣旨です。「適法に即時抗告がされた場合,原裁判をした裁判所又は裁判長は,抗告を理由があると認めるときは,その裁判を更正しなければならない」という肢は正しいです。条文は「更正しなければならない」と義務の形で書いています。決定・命令ですることができない事項について決定・命令がされたとき(違式の裁判)は抗告ができる(328条2項)など、抗告の詳細は上訴の語で扱います。
民事訴訟法87条1項
当事者は、訴訟について、裁判所において口頭弁論をしなければならない。ただし、決定で完結すべき事件については、裁判所が、口頭弁論をすべきか否かを定める。
民事訴訟法119条
決定及び命令は、相当と認める方法で告知することによって、その効力を生ずる。
民事訴訟法333条
原裁判をした裁判所又は裁判長は、抗告を理由があると認めるときは、その裁判を更正しなければならない。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。