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用語集 / 民事訴訟法 / 承継人の範囲

承継人の範囲(紛争の主体たる地位)とは

しょうけいにんのはんい

民事訴訟法 複雑訴訟

承継人とは、訴訟の係属中に訴訟の目的である権利又は義務を承継し、参加承継や引受承継によって訴訟を引き継ぐ第三者です(49条〜51条)。判例は、訴訟物である権利義務そのものに限らず、紛争の主体たる地位を承継した者も含むとしています。

地主が借地人に「借地契約が終わったから建物を壊して土地を返せ」と訴えている途中で、借地人がその建物を別の人に貸したとします。建物を借りた人は、借地人の「建物を壊す義務」そのものを引き継いだわけではありません。それでも、地主とその人の争いは、借地契約が終わったかどうかという同じ争点の上に立っています。そこで判例は、訴訟物の権利義務そのものでなくても、争いの当事者としての立場を引き継いだ人を承継人として扱い、訴訟を引き継がせています。

土地の上に建物が建つ現場の場面。建物の前に男性(札「Y(借地人)」)と、建物の一室の窓から顔を出す男性(札「Z(建物の賃借人)」)。少し離れて男性(札「X(地主)」)が書類(札「建物収去土地明渡請求」)を持って立つ。先生が裁判官役(札「裁判

判例は、訴訟物である義務そのものではなく紛争の主体たる地位を承継した者も、50条の義務承継人に当たるとしています

50条・51条の「承継」は、訴訟物である権利義務そのものを承継した場合に限られず、当事者適格を承継した場合を含むと考えられてきました。判例は、土地の賃貸借の終了を理由とする建物収去土地明渡請求訴訟の係属中に、土地賃借人からその建物の一部を賃借して建物部分と敷地の占有を承継した者は、義務承継人に当たり、原告は訴訟の引受けを申し立てられるとしました(最判昭和41年3月22日)。理由は、建物収去義務は建物から立ち退く義務を含み、退去をめぐる紛争の部分が第三者に移って、第三者が紛争の主体たる地位を土地賃借人から承継したといえること、第三者の退去義務の存否は賃貸借の終了に関する従前の訴訟資料に依存するので訴訟を引き継がせるのが正当であることにあります。原告の第三者に対する請求が所有権に基づく物上請求で、賃借人に対する請求が債権的請求であっても、この結論は左右されないとされています。「当該第三者に訴訟を引き受けさせることができない」という肢(建物の一部の賃借人の事案)は誤りで、建物の全部を借り受けて土地を占有する者に所有権に基づく建物退去土地明渡しを求める引受けの申立てについて「Zに訴訟を引き受けさせることができる」という肢は正しいです。

所有権に基づく建物収去土地明渡請求の係属中に建物を譲り受けた者も、承継人として訴訟を引き受けさせられます

土地所有権に基づいて建物収去土地明渡しを求める訴訟の係属中に、被告が建物を第三者に譲渡した場合、譲受人は建物を所有して土地を占有する者として、被告の建物収去土地明渡義務を承継します。原告は50条1項により譲受人に訴訟を引き受けさせるよう申し立てられます。「建物が被告から第三者に譲渡された場合,裁判所は,原告の申立てがあっても,当該第三者に訴訟を引き受けさせることができない」という肢は誤りです。所有権に基づく建物明渡請求の係属中に被告が建物を譲渡して譲受人が占有している場合も、口頭弁論終結後の承継人と同じように、訴訟承継の問題になります。

教室の場面。先生が教師役(札「先生」)で黒板の前に立つ。黒板の左に「訴訟物たる義務の引受け説:建物の賃借人 → ×」、右に「紛争の主体たる地位説:建物の賃借人 → ○(判例)/建物の譲受人(引渡し・登記)→ ○」、下に「無断入居者 → どち

承継人の範囲を訴訟物たる義務の引受けとみる見解と紛争の主体たる地位の移転とみる見解とでは、引き受けさせられる者が変わります

予備試験では、土地賃貸借の終了に基づく建物収去土地明渡請求訴訟を素材に、50条の「義務承継人」の範囲についての二つの見解から帰結を問う問題が出ています。義務承継人を訴訟物たる義務の引受けをした者と解する見解からは、口頭弁論終結前に被告が建物を第三者に貸し渡しても、第三者は建物収去土地明渡義務を引き受けていないので、引き受けさせることはできないことになります。義務承継人を紛争の主体たる地位の移転を受けた者と解する見解からは、口頭弁論終結前に被告が建物を売却して引き渡し、所有権移転登記をした場合、譲受人は被告の土地占有権原を自分の権原の根拠として援用する可能性があり、主要な争点を共通にするので、引き受けさせることができることになります。他方、空き家だった建物に被告に無断で入居した者は、被告から権利義務や地位を承継したわけではないので、どちらの見解からも承継人に当たらず、紛争の主体たる地位の見解から引き受けさせることができるとはなりません。判例は、紛争の主体たる地位の承継という表現を使っています(最判昭和41年3月22日)。同じ問題の115条1項3号についての肢は、口頭弁論終結後の承継人の語で扱います。

紛争の主体たる地位を承継したかは、主要な争点の共通性と、紛争が前主との紛争から派生・発展したものかで判断します

紛争の主体たる地位の承継に当たるかの基準として、新しい請求と旧い請求とが主要な争点を共通にしていること、承継人との紛争が前主との紛争から派生ないし発展したものと社会通念上みられることが挙げられています。前者は従前の訴訟状態を生かす要請と手続を混乱させない要請の調和点で、後者は訴えの実質的な目的が承継の前後で変わらないことを意味します。口頭弁論終結前の承継(50条・51条)と口頭弁論終結後の承継人(115条1項3号)は同じ考え方で範囲を決めますが、終結後の承継人には承継人固有の抗弁の扱いが加わります。相続による当然承継については、有限会社の社員が提起した社員総会決議取消しの訴えなどについて、社員の地位を相続した者が原告の地位を承継するとした判例があります(最大判昭和45年7月15日)。

民事訴訟法50条1項

訴訟の係属中第三者がその訴訟の目的である義務の全部又は一部を承継したときは、裁判所は、当事者の申立てにより、決定で、その第三者に訴訟を引き受けさせることができる。

最判昭和41年3月22日

地上建物の収去義務は、右建物から立ち退く義務を包含するものであり、当該建物収去義務の存否に関する紛争のうち建物からの退去にかかる部分は、第三者が土地賃借人から係争建物の一部および建物敷地の占有を承継することによって、第三者の土地賃貸人に対する退去義務の存否に関する紛争という型態をとって、右両者間に移行し、第三者は当該紛争の主体たる地位を土地賃借人から承継したものと解される

論文ではこう使う

論文では、訴訟の途中で目的物に関わった第三者を訴訟に引き入れられるかが問われます。訴訟承継主義の趣旨(従前の訴訟状態を生かして紛争を実効的に解決し、相手方の地位を守ること)から、50条の「承継」は訴訟物たる権利義務の承継に限られず、紛争の主体たる地位の承継を含むと論じ、最判昭和41年3月22日を引きます。そのうえで、新旧の請求が主要な争点を共通にするか、承継人との紛争が前主との紛争から派生・発展したといえるかを事案で当てはめます。115条1項3号の承継人と比べ、終結前は訴訟承継、終結後は既判力の拡張という役割分担にも触れます。

試験ではこう問われる

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